効果的な相続税対策・節税方法9選を税理士が解説【2024年完全版】
税理士の見解
「相続税対策のポイント」
- 不動産を用いた相続税対策は難易度が高い
→不動産を専門とする税理士による相続財産全体を見たタックスプランニングが必要 - 税制改正などにより取り扱いが変わる可能性がある
→常に最新の情報を取り入れる必要がある - 節税ばかりに気を取られていないか
→不動産の承継など他の相続対策のポイントが抑えられていなかったり、不動産自体の価値が将来減少しないかなどを考えていないケースがある
目次
みなさん、こんにちは。
マルイシ税理士法人の税理士の鈴木雅人です。
財産規模にもよりますが、相続税はその税率が高いことから「3回の相続で財産がなくなってしまう」と言われます。
不動産をお持ちの場合も、確かに3回の相続を経るとだいぶ目減りして可能性があります。
とはいえ、私の経験上は、しっかりと相続税対策をしている方はそれを抑えることができているという印象があります。
そこで本記事では、不動産と相続の専門家として活動している税理士が、実際に活用されている不動産に関するさまざまな節税対策をご紹介し、その具体的な活用方法などについて解説していきます。
相続税対策の基本とは?
相続税の節税対策は、「相続財産を減らす」か「財産の評価額を下げる」という2つの視点から行います。
その上で、相続税の節税対策には様々な方法があり、どの方法を用いるのがベストなのかは相続人の数や相続財産の状況によって大きく変わります。
目にした節税対策を片っ端からやるなど、計画もなく進めるのではなく税理士に相談しながら行っていくのが望ましいです。
それでは、実際に具体的な不動産に関する相続税対策について説明していきますが、
- A.相続財産を減らす方法
生前贈与やリフォームを活用した相続税対策 - B.相続税評価額を下げる方法
不動産を活用した相続税対策
の2つに分類しました。
A.相続財産を減らす方法
相続税は、基本的に、相続財産の金額に応じて増減します。
したがって、相続財産が減れば、その分相続税を減らすことが可能になります。
この相続税の基本的な性質を用いた節税対策が、生前贈与やリフォームを活用した相続税対策です。
相続税がかからないように財産を生前に子や孫に贈与してしまえば良いと考える人も少なくないと思います。しかし、これを認めてしまえば、簡単に相続税の課税逃れができてしまいます。
そのため、相続税の課税逃れをを補完する税金として「贈与税」があります。
贈与税は、贈与により、一定額の財産をもらった人が払う税金です。
一般に相続税よりも贈与税の方が税負担が重いとされていますので、生前贈与により相続財産を減らした結果、相続税よりも高額な贈与税が課税されてしまうこともあるため注意が必要です。
B.相続税評価額を下げる方法
不動産を用いることで、現預金で財産を持っている場合に比べ、評価額を下げることができます。この特徴を活かして相続税額を節税する対策です。
不動産税理士が実際に行う相続税対策9選
種類 | 方法 |
---|---|
A.相続財産を減らす方法 生前贈与やリフォームを活用した相続税対策 |
1.暦年課税贈与 |
2.相続時精算課税贈与 | |
3.家賃収入や収益不動産の贈与 | |
4.おしどり贈与 | |
5.住宅取得資金の贈与 | |
6.不動産管理会社への貸付金の贈与 | |
7.不動産をリフォームする | |
B.相続税評価額を下げる方法 不動産を活用した相続税対策 |
8.賃貸不動産(マンション、アパート)の購入・建築 |
9.小規模宅地等の特例が使える環境の整備 |
A.生前贈与やリフォームを活用した相続税対策
相続財産を減らす方法としては、主に以下の方法が考えられます。
では実際に、これらの相続税対策の具体的な中身について解説していきます。
生前贈与を活用した相続税の節税対策を確認する前に、まずは贈与税について確認しましょう。
贈与税を計算する上では暦年課税贈与と相続時精算課税贈与のいずれかを選択することとなります。
1.暦年課税贈与
暦年課税贈与の場合、贈与税の基礎控除は110万円と定められています。
これは、110万円までの贈与に対しては、贈与税がかからないということです。
この基礎控除額を利用して、毎年110万円以内の生前贈与を行なえば、将来の相続財産を減らすことができます。
生前贈与加算の取り扱い
相続開始前3年以内に贈与された財産は、相続税の計算上相続財産に加算する「生前贈与加算」の取扱いがあります。
そのため、相続開始直前の贈与は、相続税対策とならない可能性があります。
また、「令和5年度税制改正」において、相続開始前「7年以内」と加算対象年が延長されることとなりました。
令和6年の贈与から加算対象となるため、具体的には令和9年以降の財産から4年分遡って加算され、令和13年以降の相続においては、7年分遡って加算されることとなります。
なお、3年から7年に延長されましたので、延長された4年間でされた贈与については、総額で100万円まで相続財産に加算しなくてよいこととされました。
いずれにしても、「なるべく早いうちから生前贈与を行うべき」だということは変わりません。
孫への贈与
生前贈与加算の対象となるには、「相続又は遺贈により財産を取得した者」に対する贈与です。
そのため、相続の開始が3年以内となってしまう可能性がある場合には、贈与の対象者を相続人となる子でなく、その孫にすると良いでしょう。
孫への贈与は一代飛ばしで財産を移転できるので相続税対策としても有効です。
また、令和5年度改正でも生前贈与加算の対象者に変更はありませんでしたので、従来通り孫への贈与は有効な手段だと考えられます。
2.相続時精算課税贈与
相続時精算課税制度は上記の暦年課税制度と異なり、贈与者ごとに2,500万円までの非課税枠が設けられています。
一見、2,500万円までの贈与が非課税となるため、とても有利な制度にも思えますが、一度選択すると撤回できないなど慎重にその適用を検討する必要があります。
また、贈与時点では2,500万円まで非課税で移転できますが、生前にこの相続時清算課税制度を利用して贈与を行っても、その贈与した財産は、将来の相続税の計算で、相続財産に持ち戻しがなされます。つまり、これ自体が相続税の節税になりませんが、生前にまとめて財産を移転するという意味では効果があります。
なお、2,500万円を超えた部分の贈与財産については、一律20%の贈与税が課税されます。
あげる人(贈与者)やもらう人(受贈者)にも年齢や関係性などで制限がありますし、相続時精算課税制度を選択した年分以降は、仮に少額の贈与であっても贈与税の申告が必要となるため、暦年課税贈与に比べて制限が多いと言えます。
また、相続財産への持ち戻し加算も、110万円の基礎控除を控除したあとの残額となります。
3.家賃収入や収益不動産の贈与
今現在、賃貸不動産から得られる家賃収入は、その不動産オーナーの将来の相続財産となってしまいます。
そのため、現預金として貯まっていく家賃収入を生前から贈与すれば、将来の財産の増加を抑えることができるため、相続税対策となります。
また、すでに収益化している不動産を、生前贈与すれば、相続財産を減らして相続税を節税することが可能になります。
例えば、自分の子に賃貸している建物を贈与すれば、家賃収入を子に移転することができるため、自分の現預金の増加を抑制することができます。
また、仮に自分よりも子の所得税の税率が低ければ、所得が子に移転するため所得税の負担を毎年軽減することができます。
建物など評価額が高額になる可能性がある財産を一気に子などに移転することを考えれば、相続時精算課税を選択する方が良さそうにも思えますが、相続時精算課税制度は一度選択すると撤回ができませんので注意が必要です。
築古の建物で固定資産税評価額が低く、継続して子に現金贈与を行う予定の場合など暦年課税贈与でも贈与税負担がそこまで大きくならずに贈与することができる可能性もありますので、慎重に検討したいところです。
収益化した不動産の贈与のポイント
アパートなどの家賃収入はあくまで建物から生じるため、建物のみを子や孫などの下の代に贈与するのが一般的です。
土地も合わせて贈与してしまうと、贈与する財産の評価額が大きくなり贈与税の負担も上がってしまいます。
また、理由は少し難しいのでここでは割愛しますが、入居者から敷金を預かっている場合には、賃貸建物の贈与とともに敷金も贈与するようにしましょう。
4.おしどり贈与
婚姻期間が20年以上の夫婦が、一定の要件を満たして、配偶者に対して「居住用不動産」もしくは「居住用不動産の購入資金」を贈与する場合には、2,000万円(基礎控除と合わせれば2,110万円)までを非課税で贈与することができます。
5.住宅取得資金の贈与
一定期間中に、直系尊属(父母や祖父母など)から住宅を購入等するための資金援助を受けた場合には、一定の要件の元、最大1,000万円(基礎控除と合わせれば最大1,110万円、或いは相続時精算課税贈与と組み合わせて使うこともできます)までを非課税で贈与することができます。
6.不動産管理会社への貸付金の贈与
個人が不動産管理会社に対する貸付金を残したまま相続が発生した場合には、その法人に対する貸付金は、相続税の課税対象となります。
個人の不動産を不動産管理会社に移転した場合(不動産賃貸経営を法人化した場合)、個人の不動産を時価で法人に売却しているため、建物の購入代金を個人へ一括払いできないときは、個人から法人への貸付金となります。また、個人が長年、会社の経費を立替払いしていた場合、精算されず残った部分も個人から法人への貸付金とされます。
これらの貸付金は額面額で課税されてしまいます(現預金と同じで金額に対してそのまま課税されてしまいます)。
そのため、そうならないように、その貸付金債権を生前に配偶者や子や孫に贈与することで相続財産を減らすことができます。
7.不動産をリフォームする
所有している不動産のリフォームを行うと、その支出分だけ相続財産を減らすことができます。
相続財産となる建物は、固定資産税評価額をもとに評価されます。
ここで、通常の維持管理のためのリフォーム工事であれば、基本的に固定資産税評価額が増加することはないようです。
そのため、現預金を減らすことができますが、建物の評価が増えないため相続税額を抑えることができます。
反対に、増築のように床面積を変えるリフォームなどを行うと、リフォーム後の固定資産税評価額の増加に繋がるため、注意が必要です。
相続開始の直前に大規模なリフォーム工事を行って、現預金が減少している場合には、相続税の税務調査において、建物の価値を増加させるような増改築でなかったか確認される可能性もあるため、リフォーム工事の工事見積書などの詳細が分かる資料を保管しておきましょう。
B.不動産を活用した相続税の節税対策
次は、不動産を活用した相続税の節税対策です。この節税対策としては、おもに以下の例が挙げられます。
8.賃貸不動産(マンション、アパート)の購入・建築
相続税を算出するためには、相続財産の評価額を算定しなければなりません。
現金のように残高がそのまま評価額となるような財産もあれば、それに則した評価を行うように定められているものもあります。
ただし、算出された評価額と市場における取引価額は、必ずしも同じという訳ではありません。評価額と取引価額が大きく乖離する場合もあります。
このように評価の上で大きな乖離が生じる可能性の高い資産が、「不動産」です。
同じ金額の財産でも、現金で持っているのと不動産に換えて持っているのとでは相続税額が大きく変わる理由はこのためです。
建物の評価方法
建物の相続税評価額は、その建物の所在地を管轄している市区町村役場が算出する固定資産税評価額を使います。
この固定資産税評価額は、おおむね時価の6割程度に設定されているため、建物を建てることにより現金を持っている場合に比べ、相続財産の評価額を4割程度下げることができます。
また、「借家権割合」といい、建物を借りている人がその建物を使う権利が全国一律30%に定められているため、賃貸している建物はさらに評価減を受けることができます。
土地の評価方法
土地の評価は、国税庁が定める「路線価方式」もしくは「倍率方式」によって評価額を算定します。
どちらを使うのかは評価する土地の所在地によって定められています。
例えば、路線価は公示価格のおおむね8割程度に設定されていますので、建物と同様に、土地も現金をそのまま持っているよりも評価額を圧縮することができます。
この土地の上に賃貸用のアパートやマンションなどを建てると、「貸家建付地」としてさらに評価額を圧縮することができます。
以下の算式をご覧ください。
算式中の「自用地の評価額」とは、上記の「路線価方式」もしくは「倍率方式」によって算出された評価額をいいます。
次に「借地権割合」ですが、これは土地の利用価値などに応じて国税庁が30%~90%の範囲で定めているもので、一般に都心に近づく程高くなる傾向にあります。
最後に「賃貸割合」ですが、これは入居率によって決まります。満室であれば100%ですが、すべて空室であれば0%となります。
ではこれらをもとに、以下の条件で土地の評価額を計算してみましょう。
- 自用地の時価・・・1億円
- 自用地の相続税評価額・・・8千万円
- 借地権割合・・・70%
- 借家権割合・・・30%
- 賃貸割合・・・80%(全10室のうち2室が空室)
貸家建付地の評価額=8千万円(自用地の評価額)-(8千万円×70%×30%×80%)(評価減)
=8,000万円-1,344万円=6,656万円
このように、時価が1億円の土地が、相続税評価額では8千万円となり、ここに賃貸マンションを建てることにより6,656万円にまで評価額を下げることができます。
マンション購入による節税
マンションを購入すると、その評価額の大半は建物が占めることになります。
建物の評価は上記のように時価と比べると60%程度で、さらにこれを賃貸すると30%の借家権が生じるため、最終的な評価額は時価と比べるとおおむね40%程度にまで減額できることがあります。
さらに、土地についてですが、特にタワーマンションなどの戸数が多い物件は、土地の評価も大きく下げることができる可能性があります。
タワーマンションのように戸数が多い物件だと、1戸あたりに占める土地の持分が小さくなるため、評価額が市場価格を大きく下回ることが顕著に起こりやすいです。
また、タワーマンションの販売価格は、高層階になればなるほど高額になるのが一般的です。
しかし、固定資産税の評価額は、高層でも低層でも同じ方法で計算します。
こういった不動産の評価通達を利用したものが、タワーマンション購入による相続税の節税の手法です。
※相続税におけるマンションの評価については、相続税評価額と市場価格との間に大きな乖離があり、
この実態を踏まえ、2023年現在、国税庁は、マンションの評価に関する通達を改正する方針でいると言われており、2024年1月以降、適用される見通しだと言われております。
上記の不動産の評価は、財産評価基本通達という税務署内部のお達しによるものです。
一般的には、相続財産はこの通達によって評価することになるのですが、この財産評価基本通達6項(これを「総則6項」といいます)では、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する」としています。
つまり、専ら節税を目的として不動産評価の通達を利用した評価をしている場合には、不動産鑑定による価格など他の合理的な価格で評価すると言っています。
実際に、タワーマンション購入による節税が認められなかった事案もありますので、特に、高齢者の方が不動産を購入する場合には、慎重に進める必要があります。
〜区分マンション評価の評価方法も変わりました〜
上記のように、特に都心のタワーマンションの相続税評価と市場価格の乖離が大きいこととなるため、令和6年1月1日以後の相続、贈与等により取得した区分マンションについては、新たな評価通達により評価額が計算されることになりました。
これにより以前ほどは相続税対策としての効果が期待できなくはなりました。
ただし、このように評価方法の改正がなされて行き過ぎた相続税対策にメスが入ったとは言え、区分マンションの相続税評価額は新しい評価方法でも想定時価の6割程度には評価が抑えられるため、相続税対策としては以前有効なものであると考えられます。
また、この通達ができたと言っても、総則6項の適用が完全になくなったわけではありませんので、不動産を用いた相続対策は注意しながら行わなければならないことには変わりはありません。
9.小規模宅地等の特例を使える環境の整備
被相続人が所有していた宅地等が一定の要件を満たした場合には、その宅地等の評価額を最大330㎡まで80%評価減できる特例(小規模宅地等の特例)があります。
小規模宅地等の特例は、特定居住用宅地等、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等と複数の種類があるため、生前から減額特例の要件を満たすような環境の整備をしておくのは有効な手段と言えます。
例えば、小規模宅地等の特例のうち特定居住用宅地等に該当した場合には、自宅の土地の評価額が330㎡(約100坪)まで80%減となります。
この特例の適用を受けるための要件は様々ありますが、そのうちの一つに被相続人と同居している親族が挙げられますので、生前から親と同居するなどが対策例としてして挙げられます。
その他、自己利用している不動産があった場合に、これを賃貸するなど一定の要件を満たすと貸付事業用宅地等に該当する可能性があります。
この場合にも、貸している土地の評価額が200㎡まで50%減となります。
小規模宅地等の特例を受けることは、相続税額を減少させることに非常に効果がありますので、適用が受けられる環境を整えることが望ましいです。
相続税対策でよくある質問
最後に、相続税対策でよくある質問を、Q&A方式でまとめてみます。
Q1:生前贈与で贈与税を支払うよりは、節税対策を行った上で相続税を支払った方が得でしょうか?
A:状況によってどちらが得かは変わります。
贈与税も相続税も、どちらも累進税率です。贈与税を支払った方が得になるケースもあれば、相続税を支払った方が得になるケースもあるため、一概に「こうした方が得」とは言い切れません。したがって、相続税の節税をするためには、状況に応じて最適なプランニングを行う必要があります。
Q2:年間110万円まで贈与税が非課税なら、子や孫へ毎年110万円の贈与を続ければ相続税を節税できますか?
A:必ずしも節税できるわけではありません。
暦年贈与を非課税で行うためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。非課税で贈与をしているつもりが定期贈与とみなされてしまうと、高額な贈与税が課税されてしまう恐れがあります。
(定期贈与とは、例えば、10年間、100万円贈与するといった贈与契約をした場合に、1,000万円の贈与がはじめにあり、それを分割して贈与しているというものです。この場合には、1,000万円に対して贈与税が計算されます。)
また、毎年の贈与が適正に行われていないと、贈与が遡って無効とされ被相続人の「名義財産」として相続税が課税される可能性があるため、正しい手続きを踏んで贈与することを注意しなければなりません。
(名義財産とは、名義が相続人などの名義になっていても、実質的に所有者は被相続人だったといえる財産です。例えば、親が子の名前で預金口座を作り、そこに預金していた場合、確かに口座の名義は子ですが、相続税の計算においては親の財産とされます。)
Q3:遺産の総額が約1億5千万円程度なので、配偶者の税額軽減(取得財産1億6千万円までの配偶者の相続税額はゼロとなる制度)を利用して、すべての財産を配偶者に相続させておけば何もしなくて良いですか?
A:相続税の申告書を期限内に作成し、提出しなければなりません。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの特例を用いるためには、期限内に遺産分割協議書の作成を終え、申告書を税務署に提出しなければなりません。税額軽減や特例などを使えば税額が0円になる場合であっても、原則として期限内に申告書を提出しなければ、これらの特例の適用は認められません。
Q4:小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の要件の1つに被相続人と「同居」がありますが、住民票だけ一緒にしておけば、同居の要件を満たしますか?
A:住民票が一緒なだけでは同居と認められません。実際に同居していたかどうかは税務調査官も目を光らせてくるところです。
住民票という形式だけでなく、きちんと同居の実態を伴わせるようにしましょう。
Q5:税務署に行けば申告書を作成してもらえますか?
A:相談には乗ってもらえますが、申告書の作成や税額計算は自身で行わなければなりません。
相続税は申告納税方式をとっています。したがって、基本的に申告書の作成や税額計算は納税者本人が行わなければなりません。税務署でもある程度の相談には乗ってくれますが、申告書の作成や節税の提案はしてもらえません。
申告書の作成に不安な方は、税理士に依頼することをおすすめします。
また、税理士の中でも相続税の申告が得意な税理士もいれば、法人税の申告は得意でも相続税の申告は一切行ったこともない税理士もおりますので、税理士選びにも注意が必要です。
Q6:税理士に依頼した場合の相場はどれくらいですか?
A:遺産の総額や相続人の数、保有している不動産の状況などによりさまざまです。
税理士は報酬を自由に設定できるため、税理士によって報酬は大きく変わります。
また、遺産の総額などによっても報酬金額の相場は大きく変わります。
ただし、不動産や相続に詳しい税理士に依頼すると、他の税理士に依頼する場合よりも不動産の評価が適正に行え、納税額を抑えることができる可能性があり、トータルすると支出を少なく抑えられる可能性があります。
まとめ
今回まとめた対策以外にも、相続税対策は様々な手法があります。
取り分けその中でも難易度が高いのが不動産を用いた相続税対策となります。
例えば、収益不動産を贈与するにしても、相続税が安くなるからと飛びつけば、所有権の移転でかかるその他のコストの方が高くついてしまうこともあります。
そのため、相続財産全体を見た上でのタックスプランニングが必要となります。
また、税法は毎年改正がなされますし、見解の一つの拠り所とする判例なども常に新しいものが出てきます。一度対策をしてしまえばそれで終わりとはいかないケースもありますので、継続的に自分の対策を見直していく必要があります。
節税対策にばかり目を向けていると思わぬところに落とし穴が待っている可能性もありますので、相続税について心配な不動産オーナーは、不動産や相続を専門に行っている税理士に相談しながら相続対策を行っていくようにしましょう。