資産税専門の税理士の業務内容とは?一般税理士との違いや求める人物像について
目次
医師に専門医がいるように、最近では税理士の中にも特定の税目に特化して業務を行っている税理士がいます。その代表が、相続税をはじめとする資産税を専門としている資産税専門税理士です。
税理士は税務業務を行うことが認められている唯一の存在であり、他の職業と比べて年収が高いことは広く世間一般に知られています。
しかし、近年では税理士同士の競争の激化や人口減少による国内市場の縮小などにより、今後の生き残りを賭けた税理士の差別化が模索されています。税理士の専門化はそうした流れのひとつであり、資産税専門の税理士は、いわばその最先端にいると言っても過言ではありません。
そこで本日は、資産税専門の税理士の業務内容にはどのようなものがあり、一般の税理士とどのように違うのか、また資産税の税理士に求められる人物像とはどういったものなのかなどを解説していきます。
資産税とは
「資産税」という税目は、税法をどれだけ探しても残念ながら見つけることはできません。なぜなら資産税とは、資産の取得や保有、売却などの際に課税される各種の税金の総称であり、法律でその区分などが定められているものではないからです。
ちなみに資産税は、国税として課税されるものと地方税として課税されるものの2種類に分類することができます。国税の方を管轄している税務署内の部署は「資産課税部門」と呼ばれ、地方税の方を管轄している市区町村役場内の部署は「資産税課」と呼ばれています。
国税における資産税とは
資産の取得や売却などに対して課税される国税は、以下の3つです。
- 相続税
- 贈与税
- 譲渡所得税
相続税
相続税とは、亡くなった人が生前所有していた財産(金銭や不動産だけでなく、すべての権利・義務を含みます)を配偶者や子供などが相続する際に課税される税金のことをいいます。相続税は財産の所在地と関係なく課税されるため、たとえば海外の別荘などを相続した場合であっても、原則として相続税が課税されます。
贈与税
贈与税とは、個人から個人へ、対価などをともなわず財産が贈与された場合に課税される税金のことをいいます。ちなみに法人から個人が贈与を受けた場合は、贈与税でなく所得税が課税されます。なお、保険料を負担していない生命保険を受け取った場合や、借金などの債務を免除された場合なども、贈与税が課税されます。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、土地、建物、株式などの資産を譲渡した際に生じた利益に対して課税される税金のことをいいます。ただし、事業用の商品(棚卸資産など)の譲渡によって生じた利益には、譲渡所得税は課税されません。
地方税における資産税とは
資産の保有に対して課税される地方税は、以下の2つです。
- 固定資産税
- 都市計画税
固定資産税
固定資産税とは、宅地、畑、田などの土地や、住宅、店舗、工場などの建物、そして工場の機械や会社の備品などの事業用資産(償却資産)に対して、毎年課税される税金のことをいいます。
なお、さきほど紹介した相続税や贈与税、譲渡所得税は個人にのみ課税されますが、固定資産税は法人に対しても課税されます。
都市計画税
都市計画税とは、都市計画事業や土地区画事業の費用に充てることを目的にした市町村税(東京23区の場合は都税)で、市街化区域内に土地や家屋を持っている人に対して、毎年課税される税金のことをいいます。
こちらも固定資産税と同様で、該当する資産を保有していれば、個人・法人に関係なく課税されます。
資産税専門税理士の実際の仕事内容
では次に、資産税専門税理士が実際にどのような業務を行っているのかを解説します。資産税専門税理士が行う業務は、おもに以下の2つです。
- 実際の税務申告
- 事前の節税対策
実際の税務申告
一般的に、国税は、納税者自身(もしくは代理人としての税理士)が税務申告と納税を行う「申告納税制度」を採用しているのに対し、地方税は地方自治体が納めるべき金額を計算して納税者に通知する「賦課課税制度」を採用しています。したがって、資産税専門税理士が行う税務申告は、基本的に国税である相続税・贈与税・譲渡所得税の3つとなります。
この3つの国税については、上述のように申告・納税の義務があるため、相続税であれば亡くなってから10ヶ月以内に、贈与税や譲渡所得税であれば翌年の3月15日までに、納税者から依頼を受けた税理士が申告書を作成し税務署に提出します。これが、税務申告の中心業務となります。
ただし、相続税の申告は、法定相続人の確定や遺産の分割、土地や非上場株式などの相続税評価額の算出などやるべきことが山積みされている上に、申告書を提出した後で税務調査が行われた場合は、その立ち会いも行わなければなりません。
事前の節税対策
税務申告業務とならび、資産税専門税理士にとってもう一つの大切な業務が、事前の節税対策です。資産税はどれも高額になることが多いため、事前の準備次第で納税額は大きく変わります。
この事前の節税対策には、生前贈与で相続財産を減らしたり、現預金を活用して不動産投資を行ったり、一時払いで生命保険に加入したり、さまざまな方法があります。
資産税専門税理士は、このような節税に関する知識を屈指し、納税者一人一人の状況に合わせて最適な方法を組み合わせ、オーダーメイドの節税対策を作り上げていきます。
一般税理士との違い
一般税理士の業務の中心は、法人や個人の確定申告です。法人であれば決算後2ヶ月以内、個人であれば翌年の3月15日までに税務申告を済ませます。したがってその業務サイクルは、新規の顧客が増えない限りは、原則として毎年ほぼ同じです。
これに対し、相続はいつ起こるかまったく予測がつかないため、資産税専門税理士は突発的に起こる業務に常に対応しなければなりません。急に何件もの相続案件を抱えることもあるだけに、どのような状況になっても冷静に対応できる税理士としての基礎体力の高さが求められます。
なお、一般の税理士が資産税に関する業務を行うこともありますが、不慣れな上にイレギュラーな仕事のため、後の税務調査を嫌って、財産評価を高めに見積もる傾向にあります。こういった一般税理士が作成した申告書に対して更正の請求を行い、相続税の還付を専門に行う資産税専門税理士もいます。
求める人物像
最後に、資産税専門税理士に求められる人物像とはどのようなものなのかを紹介します。資産税に特化して業務を行う税理士に求められる理想の人物像とは、以下の3つです。
- 資格の取得
- 深いコミュニケーション能力
- 富裕層に対するアプローチ
資格の取得
資格の取得とは、税理士試験において相続税法に合格することを意味します。相続税法は税理士試験の必修科目ではないため、相続税法を選択しなくても税理士試験に合格することはできます。
しかし、税理士資格を取得して資産税専門税理士となるのであれば、相続税法を基礎から学び、専門的な知識を身に着けておくことが求められます。
深いコミュニケーション能力
相続は人の死に関わることであり、それにまつわる業務は非常にデリケートです。言葉を選び、相手を気遣い、安心して信頼されるように最大限の努力をしなければ、相手が心を開いてくれることはありません。
言いにくいことなども話してもらわなければ、仕事になりません。こういった業務を行うためには、人として深いコミュニケーション能力を兼ね備えていることが求められます。
富裕層に対するアプローチ
資産税の申告を行う方の多くは、不動産や金融資産などを持つ資産家です。資産税専門税理士として活躍するためには、この資産家である富裕層に対して、安心して多くの財産を任せてもらえるようにならなければなりません。
富裕層は、一般の人と比べると多くの人と接する機会が多い分だけ、人を見る目が備わっている方が多いと言えます。そういった方々から信頼されるように、クライアントの相談に対して自分事のように一生懸命真摯に向き合える「人柄の良い人」が求められます。
まとめ
税理士同士の競争の激化や市場の縮小などにより、資産税に特化した資産税専門税理士が脚光を浴びつつあります。
一般税理士と比べると業務サイクルは不規則で、時にはハードな毎日を送らなければならない時もありますが、高い専門性や特殊業務を磨いていけば、厳しい競争を勝ち抜いて30年先でも税理士として活躍できることは間違いありません。
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