アパート経営に必要な初期費用や運営費用は?目安を詳しくご紹介

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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新築アパート経営を始めたいと考えている人向けの記事です。本稿をお読みいただければ、「アパート経営には、ざっくりどれくらいのお金が必要か」がしっかり理解できます。具体的には、アパートの初期費用、自己資金、ローン、維持費用などの目安をくわしく解説します。

アパート経営を始めるのに必要なお金は?

新築アパート経営を始めるのに必要な初期費用は、大きく「土地取得費・建築工事費(※)」と「諸費用」にわかれます。ただし、このうち「土地取得費・建物工事費」の大半はローンでまかなうことが多いため、実際には「自己資金(頭金にあてる現金)」と「諸経費」が必要ということになります。
※所有地にアパートを建てる場合、土地取得費は不要です。

これを踏まえた上で新築アパート経営の初期費用を考えると、一般的な目安は「諸費用=取得価格の5%程度」と「自己資金=10〜30%程度」です。つまり、1億円の新築アパートを取得するのであれば1,500〜3,500万円が必要ということです。その内容をチェックしていきましょう。

アパート経営にかかる初期費用の種類

新築アパート経営の初期費用の大半を占めるのは、「土地取得費」と「建築工事費」です。ここに「諸費用」が加わって全体の初期費用になります。

初期費用の種類1:土地取得費

当然ながら、もともと所有している土地にアパート建築する場合、土地取得費は不要です。つまり、アパート建設費用の所有地があるかないかで、初期費用は大きく変わってくるのです。とくに大都市圏内で土地を取得しつつ、アパート経営を始めようとすると、地価が高いだけに費用はかさみます。

初期費用の種類2:建築工事費

建築工事費は、アパート経営の初期費用の大半を占めます(実際はローンで大半をまかないます)。その内訳は次の通りです。

工事の種類 工事の内容
建物本体工事 ●建築費●設計費●監理費
付帯設備工事 ●電気設備●給排水設備
外構工事 ●門・フェンス●敷地内・駐車場の舗装●植栽●融雪・消雪設備(寒冷地の場合)

上記のうち、建築費は構造で目安が変わってきます。アパートの主な構造は、木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造。坪単価の目安は次の通りです。

構造 坪単価
木造 77〜97万円
鉄筋コンクリート造 84〜104万円
鉄骨造 92〜120万

ただし、上記はあくまでも目安です。次の要素によって割高になる可能性もあります。

建築費に影響のある要素:工事時期

建築費は時期によっても変動します。たとえば、好況で工事が盛んになって職人が足りなくなり、人件費がかさむケースもあります。また、資材高騰の影響で、建築費が割高になることもあります。

建築費に影響のある要素:ブランド力

ブランド力のあるハウスメーカーが提供するアパートも建築費が割高になります。特に富裕層向け高級ハウスメーカーのブランドを冠したアパートは、一般の建物に比べてかなり割高になるケースもあります。

建築費に影響のある要素:仕様や設備

当然ながら、仕様(例:外壁・室内の床・天井・壁など)のグレードが上がれば建築費はかさみます。設備(例:オートロック、IH・ウォークインクローゼットなど)も同様に充実させるほど費用が増えます。

建築費に影響のある要素:規模

アパート全体の面積、部屋の数、階数などによっても建築費は変わってきます。一般的に規模が大きくなるほど全体の建築費は高くなりますが、坪当たりの建築費は割安になります。

初期費用の主な種類3:諸費用

諸費用の主な内容は、不動産取得税、登記関連費用、登録免許税、印紙税などです。

初期費用の種類4:ローン関連の費用

アパートローンを利用する場合、融資をしてくれる金融機関に払う手数料、保証会社に払う保証料などがかかります。金融機関の手数料の一例では、某銀行のアパートローンの場合、事務取扱手数料と不動産担保取扱手数料がそれぞれ5万5,000円ずつかかります。

アパート経営向けローンの融資割合は?自己資金はいくら用意すればいい?

ローンを利用してアパート経営を始めるケースでは、「必要な費用のうち、どれくらいの割合を金融機関が融資をしてくれるのか」が気になる人も多いでしょう。それによって用意する自己資金の額も額が変わってきます。

アパート経営向けローンの融資割合の目安は70〜90%

アパート経営向けのローンは、「アパートローン」と「プロパーローン」にわかれます。アパートローンは、会社員などでも利用しやすいパッケージ商品。融資条件や金利の基準がある程度決まっています。もうひとつのプロパーローンは、担保評価額などをもとに個別に融資上限が判断されるもの。低金利なケースが多いです。

このうちアパートローンに限定すると、融資割合の目安は必要金額の70〜90%程度です。これが一般的によくいわれる目安ですが、実際にはオーナーの属性・信用力・資産状況・立地などによって融資割合はかなり変わってきます。金融機関によっても審査基準は違います。

アパート経営にかかる維持費用の種類

次に、完成後のアパート経営の維持費用についても見ていきましょう。維持費用がかかるタイミングとしては、毎月・定期・その都度にわかれます。

内容 タイミング 一般的な目安
光熱費 毎月 数千円~
委託管理費 毎月 賃料の5%程度
火災・地震保険等 定期 10~20万円程度(5年契約)
修繕費 その都度・定期 ケースバイケース
仲介手数料 その都度 賃料の半月分
AD・媒体料 その都度 賃料の0〜3ヶ月分(AD)

アパート経営の維持費用1:光熱費(毎月)

光熱費は、アパートの共用部分の電気代や水道代が主です。寒冷地のアパートで駐車場に融雪・消雪設備(ロードヒーティング)がある場合は、水道代や灯油代がかなりかかるケースもあります。

アパート経営の維持費用2:委託管理費(毎月)

委託管理費は、アパートの清掃や入居者対応をしてくれる管理会社に払うものです。管理会社によってフィーが違い、一般的には賃料の5%程度の設定です。 アパートの管理業務をオーナー自身が行う自主管理であれば、委託管理費はかかりません。

アパート経営の維持費用3:火災・地震保険(定期)

火災保険は、アパート経営をするなら加入が必須です。保険会社によって保険料やカバーする範囲が変わってきます。加入する際は、相見積もりをとって比較するのが賢明です。

不安定な地盤のアパートや倒壊リスクが気になる方は、地震保険にも入った方がよいでしょう。なお地震保険は、火災保険の特約で入ることができます。単体では加入できません。

この他、アパートの敷地内で住民や通行人にケガを負わせた場合に保証してくれる施設賠償責任保険、入居者が自殺や孤独死をしたときの原状回復費をカバーする孤独死保険、滞納家賃をカバーしてくれる家賃滞納保証などがあります。

アパート経営の維持費用4:修繕費(都度・定期)

修繕費は、建物に傷みが発生したときにその都度対応する小規模修繕費と、定期的に行う大規模修繕があります。その都度対応する小規模修繕費は 築10年以内は比較的かからないといわれます。築年数が経つほどかかるのが一般的です。

大規模修繕費は、外壁や防水工事などを全面的に行うもので、一棟アパートであれば百万単位の費用がかかるのが普通です。国土交通省のガイドラインでは大規模修繕の目安を12年程度と示しています。一般的には10~15年程度で行われることが多いようです。

アパート経営の維持費用5:仲介手数料(都度)

仲介手数料は、空室発生時に入居者を紹介してくれた仲介会社に払うもの。通常は賃料の半月分の設定です。

アパート経営の維持費用6:AD・媒体料(都度)

空室発生時に仲介会社に払う費用としては、ADもあります。ADは広告料と訳されることも多いですが、実質上は仲介会社へのインセンティブです。ADの相場はエリアによって変わってきます。家賃の0~3ヶ月が相場です。

この他、入居者の集客に使う費用としては、賃貸情報メディアに物件情報を掲載する際の媒体料などもあります。

まとめ:ベストな融資割合はオーナーによって違う

最後に、アパート経営の成功の鍵を握る融資の基本についてです。

アパート経営は、急な修繕や空室発生のリスクがあるため、手元に現金を残しておくことがとても重要です。この手元現金を重視するなら「融資割合をいかに上げるか(自己資金を減らすか)」がポイントになってきます。

一方、融資割合を高めたり、返済期間を長期に設定したりすると、金利負担が重くなります。これにより、月々のキャッシュフローが悪くなってしまいます。金利負担を軽くすることを重視するなら「融資割合をいかに上げるか(自己資金を増やすか)」がポイントになってきます。

どちらを重視すべきか、そして、どのようなバランスで融資割合を設定するか。これについては、オーナーごとにベストな割合が変わってきます。この部分で間違いたくない人は、不動産コンサルタントや税理士などの専門家に相談した上で契約を交わすのが無難です。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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