不動産売却の査定の流れとは?査定には3つの方法がある!

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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不動産売却の査定をはじめて受ける人はご不安な面もあるでしょう。査定前に知っておきたい必須情報をわかりやすくまとめました。この記事の前半では「不動産の査定の基本」「査定価格が出されるまでの流れ」を紹介。後半では「3つの査定方法の違い」について解説していきます。これをお読みいただければ、安心して査定が受けられます。

不動産売却の査定とは?

不動産を売却するときには、なぜ複数の査定を受ける必要があるのでしょうか。また、査定価格で実際に不動産は売却できるのでしょうか。まずは、不動産の査定の基本を確認しましょう。

なぜ複数の査定を受ける必要があるのか?

不動産の査定では、物件を売却したときに「どれくらいで売れそうか」の見込額を不動産会社や不動産鑑定士などに算出してもらいます。査定してもらうことで、不動産を売りたい人は「その物件を本当に売却すべきか」「住み替えなどの資金計画をどうすればよいか」などを判断しやすくなります。

この不動産の査定は、複数の不動産会社から提示してもらうことが絶対条件です。なぜなら、不動産会社ごとに査定価格が違うからです。たとえば、不動産査定サイト「イエウール」では、同一物件の査定価格でも「4社で最大400万円」もの差が出たケースを紹介しています。

  • A社:2,300万円〈最安値の査定価格〉
  • B社:2,700万円〈最高値の査定価格〉
  • C社:2,400万円
  • D社:2,550万円

不動産会社によって査定価格が違う理由は、使っている取引データや得意分野などが違うためです。複数の査定価格をとることで最安値での売却を避けられます。加えて、複数の査定価格の平均値を計算することで相場もつかめます。

査定価格は最終的な成約価格ではない

ただし、不動産の査定価格はあくまでも「これくらいで売れるだろう」という見込額でしかありません。必ずしも、その価格で売却できるわけではないのです。

不動産の売却時には「査定価格」「売り出し価格」「成約価格」の3つの価格があります。これらの違いを把握して売却を進めていきましょう。

不動産の売却においては、「査定価格」などをもとに不動産会社を絞り込み、その後、実際に不動産マーケットに出すときの「売り出し価格」を決めます。さらに購入希望者が現れたら価格交渉を行い最終的に「成約価格」が決定します。
※価格交渉がない場合もあります。

不動産査定の流れ:査定依頼から結果が出るまで

ここでは、最近人気の「ネットの一括査定サイト」を利用したときの流れを見てみましょう。

一括査定は不動産の基本情報に基づいて、おおまかな査定価格を出す「机上査定(簡易査定)」と専門家が現地調査を行い精度の高い査定価格を出す「訪問査定(詳細査定)」があります。

机上査定と訪問査定のどちらを利用しても、無料査定が基本です。ここでは、机上査定を受けた後、訪問査定を受けたときの一般的な流れを確認します。

1.不動産会社に机上査定を依頼する

査定を受けたい不動産の基本情報(住所、土地・建物の面積、築年数など)をネット上で登録します。必要情報の入力が終わると、査定の依頼が可能な不動産会社(仲介会社)が提示されますので査定の申し込みを行います。

たとえば最大10社など複数の不動産会社を選択することも可能です。ただあまりに多くの不動産会社に依頼をすると対応が大変なため、ある程度絞るのが無難でしょう。

はじめから訪問査定を選択することもできますが、まずは机上査定を受けるのがよいでしょう。査定価格はもとより、担当者の対応力や査定を出すスピードなども確認できます。

2.不動産会社に訪問査定を依頼する

机上査定を受けた不動産会社のなかで気に入ったところに訪問査定(現地調査)を依頼すると、さらに精度の高い査定価格が受けられます。訪問査定は基本的に申込者が在宅している日時に行われます。不動産会社と調整して都合のよい日時を設定しましょう。

なお、査定前のリフォームやクリーニングは不要です。実際に売り出す際などに「キレイにした方がよい」と不動産会社からアドバイスされた段階で実施すれば十分です。

3.査定で必要な書類を準備・提示する

訪問査定のときには下記の書類があると、不動産会社が査定価格を出しやすくなります。手元にある場合はこれらの書類が必要かを確認してみましょう。

  1. 登記事項説明書
  2. 間取り図・測量図
  3. 購入時の物件説明書
  4. 固定資産税納税通知書

など

4.査定結果を教えてもらう

訪問査定の結果はその場で提示されるわけではありません。後日、正式な書面(査定書)で査定価格のお知らせが来ます。金額の確認はもちろん、査定書で不明点があれば遠慮なく問い合わせてみましょう。

査定価格は○○万円〜○○万円といった具合に上限・下限で示されるケースが多いようです。注意したいのは他社よりも極端に査定価格が高い業者です。媒介契約を結んでもらうために査定価格を膨らませている可能性もありますので、「この査定価格の根拠は何か」「実際の売り出し価格はどれくらいが目安か」を必ず確認しましょう。

どの一括査定サイトを選ぶべき?

主な一括査定サイトには、「イエウール」「HOME4U」「オウチーノ」などがあります。査定の流れはほぼ共通ですが、提携企業・カバーエリア・細かい機能は違います。実際に使って相性を試してみましょう。

不動産売却にあたっての3つの査定方法

不動産の査定方法には「原価法」「取引事例比較法」「収益還元法」があります。これらの違いを解説します。

不動産の査定には3つの方法がある

不動産に限らず、一般的にモノの価値(価格)は次の3つの要素で決まるといわれます。

  1. 費用性:それをつくるのに費用がどれくらいかかりそうか
  2. 市場性:価格がどれくらいで売れそうか
  3. 収益性:利益がどれくらい見込めそうか

これらは「価格の3面性」と呼ばれ、不動産の査定もこれに基づいて行われます。

具体的には、費用性を重視した「原価法」、市場性を重視した「取引事例比較法」、収益性を重視した「収益還元法」という3つの査定方法があります。

3つの査定方法の具体的な違い

3つの査定方法である「原価法」「取引事例比較法」「収益還元法」の違いを見ていきましょう。

査定方法1:原価法

原価法は、対象となる不動産と同じ建物をつくるのにいくらかかるか(=再調達原価)を計算して、それに基づいて査定する方法です。

まず新築で建物をつくった場合の原価を計算し、そこから築年数に伴って減っていく原価額を控除することで不動産の価値を計算します。なお土地の価格については、次に解説する取引事例比較法などを使って更地価格を計算します。

査定方法2:取引事例比較法

取引事例比較法は、過去の類似した取引データに基づき査定する方法です。土地のみを査定する場合、地価公示価格や過去の取引データに基づいて査定を行います。

一方、土地と建物(または建物のみ)を査定する場合、まったく同じ不動産がないので査定が難しくなります。建物の広さだけではなく、建物の品質や住宅設備の充実なども考慮しなければならないからです。建物の簡易的な査定方法としては、床面積(床単価)で価格を割り出す方法もあります。

査定方法3:収益還元法(直接還元法・DCF法)

収益還元法は、その不動産が将来生み出すと考えられる収益に基づき不動産の価値を査定する方法です。なお収益還元法には「直接還元法」と「DCF法」という2つの方法があります。

「直接還元法」は、1年間の収益を還元利回りで割り出して計算する方法です。「DCF法」は、現在から将来売却すると考えられる期間までの運用収益を計算して見込み額を計算して価値を査定する方法です(正確には、保有期間後の復帰価格も考慮します)。

査定方法は不動産の種類によって違う

3つの査定方法うちどれを使うかは、不動産の種類によって異なります。

不動産(仲介)業界の査定の標準指針ともいえる「価格査定マニュアル(作成:不動産流通推進センター)」では、戸建住宅は「原価法」、マンションや土地(住宅地)は「取引事例比較法」を採用しています。そのため一般的な不動産会社では、上記の方法をベースに査定を行うことが多いようです。

ただし、不動産の査定は多面的な視点で行われることも多く、複数の査定方法を組み合わせたり、不動産会社独自の基準を加味したりすることもあります。

また、賃貸不動産では収益還元法に他の査定方法を加味して価値が割り出されるため、不動産会社や金融機関ごとに査定(評価)の方法が変わってきます。

税理士への確定申告の相談はどのタイミングがベター?

今回は不動産の査定をテーマに解説してきました。補足すると、査定後は下記の流れで契約や売却が進みます。

  1. 不動産会社との媒介契約
  2. 売り出し価格の決定
  3. 購入希望者探し・交渉
  4. 売買契約
  5. 残債の支払い・引き渡し

さらに、基本的に購入時よりも売却時の不動産価格が高ければ、差額の売却益に所得税・住民税がかかります。確定申告が必要なため、不動産分野に強い税理士にサポートしてもらうと安心です。税理士に相談するタイミングとしては上記の流れのうち、売買契約前後~引き渡しあたりがよいでしょう。「税金がいくら発生するか不安」という人は早めの相談が賢明です。

まとめ

ここでは不動産を売却したいときの査定の流れや査定方法について解説してきました。不動産の査定では、業者によって百万単位の差額になることも珍しくありません。また、査定価格が安い不動産会社にお願いしたばかりに本来得られる売却益を逃したというケースも考えられます。必ず複数の不動産会社に査定を依頼してください。

超高額商品の不動産は価格が数%変わっただけで大きな差になります。売り出し価格や成約価格のベースになる査定価格は慎重に検討してください。

一方で本文中でも触れた通り、必ずしも査定価格通りに成約するわけではない点に注意しましょう。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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