家を売却するときの大まかな流れから相場・不動産会社のリサーチ方法

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

家の売却を考えたとき、不動産会社にいきなり査定を依頼するのは避けましょう。その前に、売却したい人に欠かせない基礎知識を得ることを優先すべきです。そうすることで結果的に段取りがスムーズになる、適正価格で売却しやすくなるなどの利点があります。

家を売却するときの大まかな流れは?

家の売却を考えとき、絶対に知っておきたいのは大まかな流れです。これを抑えることで段取りをイメージしやすくなるため、先回りして準備をしやすくなります。

ステップ1:相場を調べる

自宅の相場を知らなければ、「提示された査定価格が高いのか安いのか」さえ判断できません。そのため、まずは査定を依頼する前に、自宅の相場を調べるところからはじめましょう。
※家の相場を調べる具体的な方法については後述します。

ステップ2:査定を依頼する

不動産の査定には、売却したい家の基本条件を入力すれば目安価格を出してくれる「ネットによる簡易査定(机上査定)」と、専門業者が現地調査をして売却価格に近い目安価格を出してくれる「訪問査定」があります。

両者の上手な使い分けとしては、まずは複数の不動産会社に簡易査定を出してもらい、「査定価格が高い業者」や「印象がよかった業者」などに訪問査定をお願いするとよいでしょう。

査定を依頼するときに注意したいのは、1社にお願いしてしまうと不動産会社の言いなりになりやすい点です。これを避けるため、簡易査定はもちろん、訪問査定でも複数の不動産会社に依頼することが大切です。

ステップ3:買主を探す

査定を依頼した不動産会社のなかから信頼できそうな業者と媒介契約を結びます。査定価格を参考にしながら売出価格を決め、売却したい家の基本情報を仲介会社のネットワーク「レインズ」に登録すると販売活動がスタートします。

ステップ4:買主と売買契約を締結する

価格や条件で折り合う人が現れれば、売買契約を締結します。その後、残金の決済や権利証の引き渡しなどを経て家の売却が完了します。

家の相場を調べる方法は?

前出の「ステップ1」で触れた通り、売却したい家の相場がわからなければ、不動産会社が提示する査定額が適正なのかが判断できません。こんな事態にならないよう、査定を依頼する前にだいたいの相場を把握しておきたいところです。

インターネットを駆使すれば、だいたいの相場が手軽につかめます。具体的な手段としては、「公的機関のネットワーク」「民間の情報サイト」の2通りがあります。

公的機関のネットワークで相場を調べる

一般の人が手軽に利用できる公的機関のネットワークには、「レインズ・マーケット・インフォメーション(運営:不動産流通機構)」「土地総合情報システム(運営:国土交通省)」などがあります。たとえば、レインズ・マーケット・インフォメーションであれば、下記の条件を選択すると類似物件の取引履歴が確認できます。

  • 物件の種類(マンションまたは戸建)
  • 都道府県
  • 地域(都心5区、東京23区など)

※さらに細かい条件での絞り込み検索も可能です。

民間の情報サイトで相場を調べる

「家 売却 相場」などのキーワードで検索すると、たくさんの不動産売買の情報サイトが表示されます。そのなかから使い勝手よいものを選びましょう。たとえば、「オウチーノ−不動産相場」では、下記の条件を設定すると、「平均的な平米単価」と「類似物件の過去の売買履歴」がわかります。

  • エリア(都道府県、市町村、最寄り駅など)
  • 不動産の種類(マンション、一戸建て、土地など)

※ただし、取扱い案件数が少なく、相場信頼度の低いエリアもあります。

不動産会社の探し方と選び方のコツは?

家の査定を依頼する不動産会社を探す方法には、次の4つの選択肢があります。

  • つきあいのある不動産会社に相談する
  • 知り合いに紹介してもらう
  • 近隣の不動産会社を探す
  • インターネットの一括査定サイトで探す

それぞれの違いを選び方のコツを交えながらご紹介します。

方法1:つきあいのある不動産会社に相談する

過去に賃貸や物件購入で取引したことがあり、相性のよかった不動産会社に査定をお願いする方法です。安心感がある一方で、売却が不得意な可能性もあります。ミスマッチにならないよう、ファーストコンタクトのときに実績を確認するのが無難です。

方法2:知り合いに紹介してもらう

この方法も安心感はありますが、知り合いに紹介してもらっただけに査定価格に納得できなかったときに断りにくいデメリットもあります。とくに大事な人からの紹介だと気を使います。この辺を考慮しながら、紹介してもらうべきかを検討しましょう。

方法3:近隣の不動産会社に相談する

この方法を選択したときには、対象エリアのミスマッチがなくなります。ただし、地域密着の不動産会社には賃貸に特化しているところもあるため、売却で実績があるかを確認した上で媒介契約をするのが賢明です。

方法4:インターネットの一括査定サイトで探す

ネットの一括査定を使えば、ミスマッチの可能性は低くなります。そもそも売却を得意にしていない不動産会社はほぼ登録していませんし、対象エリアを得意とする業者が査定を出してくるケースがほとんどだからです。

一括査定の傾向としては、登録している不動産会社が大手に偏りがちです。「中小の不動産会社のほうが相談しやすい」という人は他の方法を選択したほうがよいかもしれません。

家を売却するまでにかかる期間と費用は?

家を売却するまでにかかる期間と費用の目安を知っておくと、そのときになって慌てることがありません。

家を売却するまでにかかる期間:数ヶ月〜1年程度が目安

家を売却するまでにかかる期間の目安は、数ヶ月〜1年程度と考えられます。しかし、実際には次の要素に左右されるため、ケースバイケースというのが実状です。

  • エリア(人気エリアほど有利)
  • 季節(春先の直前に売り出すと有利)
  • タイミング(好景気や低金利の時期が有利)
  • 物件の種類や築年数
  • 売出価格と値引き幅
  • 不動産会社の営業力
  •  など

加えて、「運」の要素も大きいです。不利な条件の物件でも、それを欲しいと思う人とすぐに出会えれば、すみやかに売却が決まることもあります。

家を売却するときにかかる費用:仲介手数料や引っ越し代など

家を売却するときにかかる費用は、間接的なものも含めるとたくさんあります。主な項目は次の通りです。

  • 売買契約書に貼り付ける印紙代
  • 売却年度の固定資産税等(売主分を負担)
  • 引っ越し代
  • 解体費や廃棄物処分費(家を取り壊す場合)
  • 測量図の作成費用(必要な場合)
  • 新居にかかる費用
  • ローン残債の支払い
  • 不動産会社に支払う仲介手数料
  •  など

このほか、必要に応じて修繕費やハウスクリーニング代がかかることもあります。

仲介手数料については宅地建物取引業法で取引額の3〜5%の範囲で上限が決められています。たとえば400万円超の取引の場合、「売買価格×3%+6万円」プラス消費税が上限です。

家を売却するときにかかる譲渡税の仕組みとは?

もうひとつ、家を売却するときに欠かせない知識に「譲渡税の基本」があります。

譲渡税の基本的な考え方

家を売却したときに「譲渡所得=売却時の利益」が発生した場合、税金(譲渡税)がかかります。もちろん、売却して利益が出なければ税金を納める必要はありません。譲渡所得(利益)の計算式は次の通りです。

譲渡所得=譲渡価格−(取得費+譲渡費用)−特別控除

上記のうち取得費とは、売却する家を購入したときの価格(※)です。もう1つの譲渡費用は、家を売却するためにかかった費用を計上します。仲介手数料や印紙税などがその代表です。そして、特別控除については「マイホームの3,000万円特別控除の特例」をはじめ、条件に該当する場合には特例が適用できます。
※建物については、所有していた期間の減価償却費を差し引いた後の金額

所有期間で譲渡税の税率は変わる

譲渡所得にかかる(譲渡税) 税金の種類は次の3つです。

  • 所得税
  • 住民税
  • 復興特別所得税

これらを合算した譲渡税は、所有期間によって税率が変わってきます。

  • 長期譲渡(5年超):20.315%=所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%
  • 短期譲渡(5年以下):39.63%=所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%
  • ※所有期間は譲渡する年の1月1日時点の所有期間で判定します。

関連記事:不動産売却とは?知っておきたい基礎知識【完全版】

家を売却して利益が出そうな人は税理士へ早めに相談

さきほど触れたように、家を売却して発生した利益には税金がかかります。そして、この税金は確定申告が義務づけられています。なかには、提携している税理士を紹介してくれる不動産会社もありますがごく一部です。あくまでも、確定申告は売主の自己責任なのです。

そのため、家を売却して利益が出そうな人は、不動産に強い税理士に早めに相談しておくと安心です。そもそも「売却で利益が出るかわからない」というケースもあると思いますが、このような人も含めて相談すべきです。

税理士事務所によっては、無料相談サービスを用意しているところもあります。まずは、無料相談を利用して、税金の概算や特例の適用有無など注意ポイントなどをアドバイスしてもらうのがよいでしょう。

まとめ

最後に、ここで解説してきた「家を売却する前に知っておきたい基礎知識」をおさらいしましょう。まず、家を売却するときのおおまかな流れは次の4つのステップでした。

  1. 相場を調べる
  2. 査定を依頼する
  3. 買主を探す
  4. 買主と売買契約を締結する

上記のうち、「家の相場を調べる方法」には次の2つがありました。

  • 公的機関のネットワークで調べる
  • 民間の情報サイトで調べる

そして、実際に査定を依頼する不動産会社を探す方法は次の4つでした。

  • つきあいのある不動産会社に依頼する
  • 知り合いに紹介してもらう
  • 近隣の不動産会社に相談する
  • インターネットの一括査定サイトで探す

どの方法を選択しても構いませんが、複数の査定を必ずとることが肝心です。また、「査定価格」と市場に出すときの「売出価額」、実際に売れたときの「契約価格」は違います。査定価格の高さだけに惑わされず、信頼できる不動産会社を選ぶことが家の売却で成功する秘訣です。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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