REIT(不動産投資信託)の仕組みとは?メリット・リスクを解説
目次
「REIT(不動産投資信託)のことが前々から気になっている」そんな人向けのコンテンツです。不動産に強い税理士という客観的な立場からREITを解説しているため、メリットだけでなく、デメリットについてもしっかり触れています。記事の後半では、REITを購入する際の手順についてもわかりやすく紹介しています。
REIT(不動産投資信託)とは?
REIT(リート)はReal Estate Investment Trustの略称です。アメリカで1960年代に誕生し、日本では2001年から市場がスタートしました。国内REITは「J−REIT(ジェイリート)と呼ばれます。
REIT(不動産投資信託)とは
REIT(リート)は、不動産投資信託のことです。通常の不動産投資では、実物のアパートやマンションを所有し、それを貸すことで賃料収入を得ます。REITは、現物の不動産を直接所有しない金融商品(投資信託)です。
REIT(不動産投資信託)の仕組み
REITの仕組みは、投資家が出資したお金で投資法人が複数の不動産を運用。そこから生まれた賃料や売却益をもとに投資家に分配金を払うというものです。REITの投資法人は、不動産を運用するためにつくられた法人です。ただし、実際の不動産の購入・管理・資金調達などは業務委託先である資産運用会社が行っています。
REIT(不動産投資信託)の主な種類と特徴
一口にREITといっても、それぞれの銘柄に種類(セクター)があります。セクターによって特徴が大きく変わります。
REITの種類1:賃貸住宅
大都市の賃貸住宅を中心に運用するREITです。住宅セクターは景気に左右されにくいため、一般的に安定性が高いといわれます。
REITの種類2:オフィスビル
オフィスビルは、REITのなかでもとくに市場規模が大きいセクターです。ただし、オフィスの賃料は景気の影響をダイレクトに受けるため、慎重な投資判断が無難です。加えて、コロナ以降に普及の高まったテレワークが空室率にどう影響するかの見極めも大切です。
REITの種類3:物流施設
倉庫などの物流施設を中心に運用するREITです。最近ではネット通販の利用拡大、コロナ禍の巣ごもり需要などの影響で追い風を受けているセクターです。一方で、好調なセクターは割高感が出ることもあるため、 パフォーマンスを確認して購入すべきでしょう。
REITの種類4:商業施設
ショッピングセンターなどを中心に運用するREITです。同じショッピングセンターでも郊外型と都市型では顧客や業績の傾向が異なるため、 このセクターに投資をする場合は運用の中身を確認することが必須です。
このほかのREITのセクターとしては、ホテルやインフラ施設もあります。加えて、数多くのセクターを対象にした総合型や複数のセクターを対象にした複合型のREITもあります。
REIT(不動産投資信託)のメリット
REITには、次の5つのメリットがあります。下記のうち、1〜4は現物の不動産投資と比較したとき、5は株上場株式と比較したときのメリットです。
REITのメリット1:少額での投資が可能
通常の不動産投資では、1人または少数のオーナーが多額の資金を投資しなければなりません。これに対してREITは数多くの投資家から資金を集める仕組みのため、少額からの投資が可能です。
REITのメリット2:いつでも売買できる
国内のREITは、東京証券取引所のJ−REIT市場を通じて、一般的な上場株式とほぼ同じように取引されます。そのため証券会社の総合口座のある人なら、取引所が開設している平日の9時−15時の間、いつでも売買できます。
これに対して、実物の不動産(アパートやマンションなど)を売却する場合は、査定の依頼、媒介契約、買主探しといった手間がかかります。買主が見つかるまで現金化することもできません。
REITのメリット3:運用の手間がかからない
REITは、不動産のプロフェッショナル・チームが、物件の購入・運用・売却を実行します。そのため、一般的な人が不動産投資をするときよりもリスクが低いと考えられます。加えて、個人投資家が不動産投資をしようとすると、契約や客付けなどの手間がかかります。REITであれば、投資家はこういった業務を負担しなくて済みます。
REITのメリット4:分散投資でリスクが軽減できる
個人投資家が不動産投資をする場合は、資金力が限られます。これに対して、REITは潤沢な資金力があるため、数多くの物件を所有して分散投資が可能になります。
REITのメリット5:高利回りでの運用が期待できる
REITは投資家への還元率が高い金融商品といわれます。その背景には「運用などで得た利益の90%超を投資家に分配すれば法人税を課せられない」というREIT特有の税制制度があります。
J−REITの全銘柄の分配金の平均利回りは3%台後半です。好調時の利回りは4%台に達することもあります。これに対して、東証1部の全銘柄の配当金の平均利回りは1%台後半でREITが大きく上回っています。
REIT(不動産投資信託)のデメリット
REITには価格変動・災害・倒産などのリスクもあります。メリットとデメリットを比較したうえで、投資判断をすることが重要です。
REITのデメリット1:価格変動リスクがある
一般的な不動産投資は、経済危機などのときにも物件価格や賃料が急落する可能性が低いといわれます。これに対してREITは金融商品のため、実物の不動産と比べると投資口価格(株式でいうところの株価)の値動きが激しいというウィークポイントがあります。
たとえば、コロナショック前後の東証REIT指数は2200超から1100台まで急落しました。このような激しい値動きを見ると、上場株式と同等のリスクを想定してREITに投資をするのが賢明かもしれません。
REITのデメリット2:災害・テナント退去リスクがある
REITで運用している不動産が地震や台風などで大きな被害を受けると、投資家の分配金にも影響が出る可能性があります。災害リスクを意識するのであれば、投資しようとしているREITが運用している不動産の用途や地域、大災害が起こる可能性をチェックするべきでしょう。また、営業している不動産のテナント退去によって運用益が減少すれば、分配金に影響が出る可能性もあります。
REITのデメリット3:倒産・上場廃止リスクがある
経済危機や運用環境の変化などによってREITの運用がうまくいかなければ、大もとの投資法人が倒産してしまうリスクがあります。また、投資法人が証券取引所の上場廃止基準にあてはまってしまうリスクもあります。
投資法人が倒産・上場廃止したときには、その時点で所有している不動産を売却、その資金を元手に投資家に返金されます。ただし、全額が返金されるとは限りません。このリスクを意識するのであれば、REITの決算時の報告書などを確認し、運用の中身をチェックすることが大切です。
REITのデメリット4:金融機関からの借り入れができない
これは、不動産投資と比較した時のウィークポイントです。実物の不動産を購入して投資を行う場合、金融機関からの借り入れが可能です。場合によっては、手元資金をほとんど使わないフルローンもあります。しかし、REITは実物の不動産を購入するわけではないため、金融機関からの借り入れができません。あくまでも手元資金の範囲内で投資を行うことになります。
REIT(不動産投資信託)を購入する際の流れ
REITを購入する流れは、上場株式を買うときとほぼ同じです(売却時も同様)。ここでは購入までの手順を確認してみましょう。
手順1:証券会社を選ぶ
REITの購入は、証券会社の総合口座を経由して東証市場で行います。総合口座の開設は、「店舗型の証券会社」または「ネット証券」の選択があります。手軽に購入でき、手数料が安いのはネット証券の方です。なお、楽天証券、SBI証券などの大手ネット証券であれば、手数料はほぼ横並びです。
手順2:総合口座で買い注文を入れる
証券会社の総合口座での具体的なREITを購入方法は、総合口座で国内株式を選択し、証券コードや銘柄名で検索をかけると対象のREITが見つかります。その後、通常の株式と同様に「現物買い」または「信用買い」を選択し、希望する数量や価格などを指定すれば買い注文が入れられます。
REIT取引の手数料の一例では、業界大手の楽天証券の場合、 現物取引なら国内株式と同一、信用取引なら手数料なしという条件になっています。
※執筆時点の手数料です。
手順3:取引成立(約定)になる
取引成立(約定)になれば、証券総合口座の預かり金からその分が差し引かれます。上場株式と比べたときに唯一違う点があるとすれば、単元株数(購入するときの最低単位)が上場株式は100株単位が多いですが、REITは1株単位に設定されています。
まとめ
ここではREITの特徴を、不動産投資や上場株式などと比較しながら解説してきました。REITのメリットには、 「少額での投資が可能」「不動産のプロによる安定運用」「高利回り運用が期待できる」などがありました。また上場株式と同様、ネット証券の総合口座を利用すれば手軽に売買できるのも魅力です。これに対して、REITのデメリットには、価格変動・災害・倒産などのリスクがありました。
投資商品にはそれそれぞれメリット・デメリットがあります。デメリットのない投資手法はこの世にありません。だからこそ、いくつもの投資商品を組み合わせてリスクヘッジをすることが大切になってきます。
分散投資をするためのREIT以外の投資商品例としては、上場株式、不動産投資、投資信託、金などの現物資産などが挙げられます。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身のリスク許容度に合わせてポートフォリオを作成していきましょう。