大家が知っておきたい木造アパートの防音・騒音対策
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SUUMOジャーナルの調査結果によると、入居者トラブルで多いのが「騒音」に関するものです。45.9%の入居者が騒音に不満を抱いていることが調査結果から分かります。騒音トラブルは、部屋の退去の引き金となり、入居率が下がり収益が悪化してしまう恐れがあります。そのため、木造アパート経営をする場合は音漏れを防ぐために防音対策しましょう。
今回は木造アパートの防音対策・騒音対策について詳しく解説します。この記事を読めば、木造アパートの遮音性の低さから改善方法まで理解できるようになります。ぜひ、木造アパートの大家は、この記事を参考にしてみてください。
木造アパートの遮音性が低い理由
賃貸経営では騒音トラブルに注意しなければいけませんが、なぜ、木造アパートは遮音性が低いのでしょうか?まずは、木造アパートの遮音性が低い理由について簡単に解説します。
音が伝わる仕組み
音は「空気伝播音」と「固体伝播音」の2種類に分類できます。生活音は床や壁を振動して伝わったり、隙間から伝わったりします。
空気伝播音
空気により伝播する音をいいます。床下や天井裏の空気や窓の隙間から入る空気を介して音が伝わります。音が発生した場所から距離が離れるほど音が小さくなります。
【例】テレビの音・話し声・楽器演奏・車両のエンジン音など
固体伝播音
壁や床が振動して伝播する音をいいます。音が発生した場所から距離が離れても音が小さくなりません。
【例】子供が走る音・椅子を引く音・水道管内の水の流れる音・ドアを閉じる音・換気扇の回転音など
RCやSRCとの違い
生活音は建物の隙間や薄い壁や床の振動により伝わります。従って、床や壁に使用している材料の質量(体積×密度)で遮音性能は変わります。
質量が高いモルタルやコンクリートを使用したSRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)やRC(鉄筋コンクリート造)は遮音性が高いです。その一方で、質量が低い石膏ボードや構造用合板を使用した木造は遮音性が低くなります。
日本建築学会「建築物の遮音性能基準と設計指針」
日本建築学会の報告書による構造別の遮音性能は以下の通りです。日本建築学会は、建築に関する学術・技術・芸術に進歩を図ることを目的とした学術団体です。報告書から木造建築物の遮音性の低さが分かります。
大家ができる防音対策8選
木造アパートは他の構造と比較すると遮音性が低いと説明しました。しかし、木造アパートの遮音性は改善できるのでご安心ください。ここでは、大家ができる防音対策をご紹介します。
1.床・壁を二重構造にする
音は床や壁が振動して伝播するため、床や壁を二重構造にして振動を減らすことで防音効果が見込めます。単価の安い石膏ボードを二重貼りする方は多いです。しかし、石膏ボード自体は高音と低音に弱点があり、二重貼りしても弱点は解消できません。防音対策の効果を高めたい場合は、遮音制振ゴムを使用するなど工夫しましょう。
2.窓の隙間に遮音テープを貼る
空気伝播音は窓の隙間を通して伝播するため、隙間を埋めると防音効果を高めることができます。しかし、遮音テープを使用して窓の隙間を埋めただけでは完全に防音効果は見込めません。その他の対策と併用することをおすすめします。
3.遮音マットを床材の下に入れる
畳やフローリングの下に遮音マットを入れておくことで衝撃音を軽減できます。遮音マットとは、高い遮音性能と優れた防振効果を最大限に発揮できるように研究開発されたマットです。床材剥がしは、必要な道具と知識があれば誰でも簡単に行えます。
4.防音カーテンを取り付ける
窓に防音カーテンを取り付けることで、防音効果を高めることができます。レースカーテンと厚手のドレープカーテンを二重に掛けるようにしましょう。手軽に試せて、ブラインドを取り付けるよりも防音効果が見込めます。
5.内窓を設置する
窓は音が入りやすいですが、内窓を取り付けると防音効果が高められます。今あるサッシ窓との間にできる空気の層がクッションの役割をし、窓の隙間から侵入する音を和らげられます。また、最新の高気密なサッシ窓に交換しても防音効果を高めることが可能です。
6.遮音換気口に付け替える
換気口は空気が入ってくるので音も漏れます。窓は開口すると面積が大きいですが閉めることができます。その一方で換気口は小さいですが開放し続けなければいけません。そのため、換気口を遮音換気口に付け替えると防音効果が高められます。遮音換気口とは、テレワークの防音対策としても注目を浴びています。
7.内見をする際に確認する
アパート購入時に内見をしますが、建物の状況や広さ、窓からの景色だけではなく防音性を確認しましょう。隣の住人が留守にしているなど内見時に音漏れが確認できない場合もあるかもしれません。その場合は、建物の口コミを確認したり、仲介業者の担当者に音漏れの心配がないかを確認してみたりしましょう。
8.防音を得意とする建築会社を選ぶ
所有する土地にアパート建築を検討している方は、防音を得意とする建築会社を選びましょう。木造アパートでも遮音性は物件により異なります。
例えば、居室にパイプシャフト(給排水管やガス管を通すスペース)を設置すると水の流れる音が響きます。そのため、水廻り設備の近くにパイプシャフトを設置すべきです。また、隣戸と壁を挟み、居室とユニットバスが隣り合うと音が気になるでしょう。ユニットバス同士が隣り合うように設置すべきです。このように設計だけでも物件の遮音性は異なるため、アパートを建築する場合は防音を得意とする建築会社に草案をしてみてください。
防音・騒音対策なら専門家に相談
アパートの防音・騒音対策をご紹介しましたが、施行方法で防音効果が大きく異なります。よくある失敗は、性能の高い防音材を使用しても施工技術が悪くて、つなぎ目に隙間が出ると理想通りの防音効果が見込めません。そのため、防音対策は専門業者へ依頼することをおすすめします。
防音対策費用の負担が大きくなると感じてしまうかもしれません。しかし、入居者トラブルが発生して空室が出る場合を想定すると費用対効果は感じられるはずです。
まとめ
木造アパートで賃貸経営をする場合は騒音対策が重要です。高い入居率を維持するためにも、入居者が生活しやすい空間にしましょう。今回は木造アパートの防音・騒音対策をご紹介しました。DIYでも対応可能な防音対策ですが、施行力により防音効果は変わります。そのため、施行に不安を感じる方や高い防音効果を期待したい方は専門業者に相談をしてみてください。
この他にも、安定したアパート経営を実現するためのノウハウは豊富にあるため積極的に学んでいきましょう。アパート経営のノウハウを知りたい方は「マルイシ税理士法人」までお気軽にご相談ください。