アパートの老朽化リスクとは?老朽化の対策方法まで徹底解説!

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

不動産に強い税理士をお探しの方へ
不動産税務に特化している税理士事務所
マルイシ税理士法人に相談してみませんか?

相続が発生して相続税申告が必要な方について、マルイシ税理士法人では面談相談(初回無料)を行っています。
累計1万件以上の相談実績のある相続専門の税理士が、個別の案件ごとに見解やアドバイスをお伝えします。
記事では書ききれないような、具体的な実務上の取り扱いなどもお話しできますので、お気軽にお問合せください。

アパートの老朽化が進行すると、入居者募集が上手くいかなかったり設備が故障しやすくなったりします。それ以外にも老朽化リスクが発生するため、アパートの老朽化対策を行いましょう。
今回はアパート老朽化の対策方法について解説します。この記事を読めば、アパート老朽化の対策として建て替えを判断すべき基準まで分かるようになります。そのため、アパートの老朽化で悩んでいる方は、この記事を参考にしてみてください。

アパート老朽化のリスク

アパート老朽化を放置するとトラブルが起きます。そのため、トラブルを防止するためにも、アパート老朽化について理解を深めておきましょう。まずは、アパート老朽化のリスクをご紹介します。

空室の増加

アパートの築年数が経過すると空室率が上昇してしまいます。
その理由は、賃貸物件の紹介サイトでは「賃料」「駅徒歩分」と共に「築年数」で物件情報が絞り込めるようになっており、物件の状態が良くても築年数の関係で物件探しの候補から外れてしまうためです。
また、外観や内観、設備が劣化してしまうと、同じエリアの物件と比較すると条件が悪くなり賃料を下げないと入居希望者が現れないことも多いです。そのため、アパートが老朽化すると入居募集に苦戦して空室が増えてしまいます。

耐震性リスク

アパートは経年劣化で耐震性が低下していきます。
例えば、木造アパートの場合は湿気による腐朽や、昆虫類の食害による木材の欠損などで耐震性が低下します。構造材の変色を見かけた場合は耐震性の低下を疑いましょう。
また、鉄骨アパートの場合は鉄の錆による耐震性の低下に注意しなければいけません。
アパートの耐震性の低下はメンテナンスで遅らせられますが、リスクをゼロにはできません。
地震でアパートの外壁タイルが落下して、通行人や入居者に怪我をさせてしまったら、アパート所有者が損害賠償責任を負うことになります。このようなトラブルを発生させないためにも、アパート老朽化による耐震性の低下には気をつけるようにしましょう。

資産価値の低下

アパートが老朽化すると、建物の資産価値は低下します。
建物は土地とは異なり、築年数の経過により価値が下がります。建物は法定耐用年数と深く関係しており、定められた期間であれば建物価格を減価償却費として経費として計上できるのです。そのため、法定耐用年数を超えた建物でアパート経営を行うと減価償却費が計上できなくなり、不動産事業所得にかかる所得税や住民税の負担が大きくなります。
また、耐用年数を超えたアパートを購入する場合は融資が受けられません。一般的に現金でないと購入できなくなるため、耐用年数を超えた物件は売却しにくくなります。このような資産価値の低下を回避するためにも、耐用年数を超える前に売却するか検討をするようにしましょう。

アパートが老朽化対策とメリット・デメリット

アパート老朽化対策には「建て替え」「リノベーション」「買い替え」があります。

メリット デメリット
建て替え
  • 入居率や収益の改善が見込める
  • 耐震面の不安が払拭できる
  • 減価償却費を経費計上できる
  • 多額の費用が必要になる
  • 建築工事の期間が長い
  • 立ち退き交渉が必要になる
リノベーション
  • 予算内で工事内容を決められる
  • 入居率や収益の改善が見込める
  • 費用が安く抑えられる
  • 構造上の制約を受ける
  • 定期的な修繕は避けられない
売却
  • アパート売却益が得られる
  • 物件の買い替えができる
  • 立ち退き交渉が不要
  • 希望の価格で売れない恐れがある
  • 希望の時期に売れない恐れがある

どのようなアパート老朽化対策を打つかでメリット・デメリットは変わるため、各対策について理解を深めておきましょう。

建て替え

アパートの建て替えでは、入居者に立ち退きしてもらい、既存の建物を壊して新たなアパートを建てます。
建て替えを選択すれば、地域の需要に合わせたアパート経営ができ、入居率や収益の改善が見込めます。新築のアパートであれば、耐震に関する心配も必要ありません。
また、法定耐用年数分の減価償却費を経費計上できます。アパートの建築費用を減価償却年数で割り、毎年、原価償却費として経費計上できるため税負担を軽減できることも魅力です。
しかし、解体費用や立ち退き料、建築費用など多額の資金が必要になります。さらに、建築工事の期間が長く、その期間は家賃収入が入ってきません。
そのため、長期的にアパート経営をしたい人には建て替えがおすすめです。

建て替えの費用相場

木造アパート 50~60万円/坪
鉄骨造アパート 70~100万円/坪
鉄筋コンクリート造アパート 100万円以上/坪

リノベーション

アパートのリノベーションとは、基礎部分を残しながら、外装や内装、設備のグレードを上げていく大規模修繕工事をいいます。
リノベーションを選択すれば、予算内で内装や設備を刷新できます。地域の需要に合わせた内装や設備に刷新すれば、入居率や収益の改善が見込めるでしょう。また、建て替えと比較すると工事期間が短くて建築費用も安くなります。
しかし、建物の構造上で必要な壁や柱を壊せません。そのため、構造上の制約を受けて希望通りの間取りやデザインが実現できない恐れがあります。また、リノベーション後に定期的な修繕が必要になる場合があります。
このような特徴があるため、予算内でアパートの外装や内装、設備を刷新して入居率や収益を向上させたいという方にリノベーションがおすすめです。

リノベーション費用相場

リノベーション費用の平均相場 200~500万円
壁紙や床材の張替え工事 20~40万円
キッチンリフォーム 20~70万円
トイレのリフォーム 10~20万円
洗面所のリフォーム 20万円程度
浴室のリフォーム 50~100万円程度
和室から洋室へ変更 20~40万円
外壁リフォーム 150~300万円

※どのようなリノベーション工事を希望するかで費用相場は変動します。

売却

アパートを売却すれば、入居者がいる状態でオーナーチェンジできます。そのため、入居者に立ち退きを依頼する必要はありません。売却したいときに不動産会社に相談すれば、手続きが進められます。また、アパートを売却して得た利益で他の物件に買い替えることも可能です。
しかし、アパートが希望する価格で売れるとは限りません。また、買主が見つからずに希望日までにアパートが売却できないこともあります。

アパート老朽化による建て替えの判断基準

アパート老朽化対策について解説してきましたが、建て替えた方が良い場合は、どのような場合なのでしょうか?次にアパート老朽化による建て替えの判断基準をご紹介します。

建物の構造部分の劣化が激しい

建物の構造部分(基礎や柱、梁)の劣化が激しい場合は、建て替えを選択したほうが良いです。その理由は、シロアリ被害などが発生している場合は基礎や柱がボロボロの状態になっている恐れがあるためです。
リノベーションでも耐震補強はできますが、構造部分が痛んでいる場合の倒壊の危険性は解消されません。そのため、建物の構造部分の劣化が激しい場合は建て替えをおすすめします。

法定耐用年数を超えている

アパートの築年数が法定耐用年数を超えている場合は、建て替えを選択したほうが良いです。その理由は、アパート老朽化のためにリノベーションをしても法定耐用年数が伸びないためです。
建物の修繕に該当する箇所は支出で経費計上できますが、リノベーション費用を減価償却費として経費計上はできません。
その一方で、アパートの建て替えであれば、建て替え費用を法定耐用年数で割り、毎年、減価償却費として計上できます。減価償却費で経費計上することで、不動産投資事業収入に課税される税負担を軽減できます。その結果、リノベーションより高い収益が見込めることも多いです。
そのため、築年数が法定耐用年数を超えている場合は、建て替えを検討してみると良いでしょう。

アパート構造別の法定耐用年数

構造体 法定耐用年数
木造 22年
木造モルタル 20年
石造 38年
鉄骨造 厚3mm以下 19年
厚3mm超4mm以下 27年
厚4mm超 34年
鉄筋コンクリート 47年

建物の築年数が旧耐震基準に該当する

アパートの築年数が旧耐震基準に該当する場合は、建て替えた方が良いでしょう。その理由は、アパート入居者は旧耐震基準を避ける傾向があるためです。
旧耐震基準は1981年5月31日まで適用されていた基準で、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊しないことを意味します。1981年6月1日から適用されはじめた新耐震基準は、震度7強程度の揺れでも建物が倒壊しないことを意味します。
日本は地震大国で、東日本大震災では最大震度7を観測しました。このような大震災の影響で、入居者も旧耐震基準か新耐震基準かを気にするようになったため、耐震基準が入居率に大きな影響をもたらすのです。したがって、建物の築年数が旧耐震基準に該当する場合は、建て替えを検討するようにしましょう。

アパートの維持費が上昇している

アパートの維持費には「修繕費用」「各種税金」「保険料」「ローン返済」「管理費用」がありますが、この中で修繕費用が上昇している場合は建て替えを検討した方が良いです。
アパートの老朽化が進行すると、設備の不具合が発生したり、天候が悪いときは雨漏れしてしまったりします。このような入居トラブルは迅速に対応しなければいけず、修繕費用が高いです。
収支計画に含めていない修繕が必要になった場合は、理想の収益が見込めなくなります。そのため、アパートの修繕費用が上昇してきたら建て替えを検討してみましょう。

アパートも相続対策を検討している

相続税対策を検討している方にも、アパートの建て替えがおすすめです。その理由は、アパート建築費用の借入をした場合、残債の額面金額が相続財産評価額をマイナスにしてくれて、相続税の負担を軽減できるためです。
また、アパートの相続税評価額は満室の状態が最も評価額が下がります。基本的に新築アパートは満室状態になることが多いため、最も低い評価額でアパートを相続することが可能です。そのため、相続税対策を検討している方にも建て替えがおすすめです。

アパート建て替え時に知っておきたい注意点

老朽化したアパートを建て替える際に失敗しないための注意点を押さえておきましょう。ここでは、アパート建て替え時に知っておきたい注意点をご紹介します。

解体費用が必要になる

アパートを建て替える場合は、既存アパートを解体しなければいけません。アパートの解体費用は1坪5万円程度となっており「アパートの延床面積×解体費用の坪単価」で計算できます。例えば、延床面積80のアパートを解体する場合は、400万円の解体費用が必要です。建築費用の他に解体費用がかかることを想定しておかないと、自己資金が足りないなどの問題が出てくるため注意しましょう。

入居者に立ち退きを依頼する必要がある

アパートを建て替える場合は、入居者に立ち退きを依頼しなければいけません。アパート経営者から入居者に立ち退きを依頼する場合は、賃貸借契約が終了する6か月以上前に、契約を更新しない旨を伝える必要があります。主な流れは以下の通りですが、入居者が新居に引っ越すための費用は、基本的にアパート経営者が負担しなければいけません。そのため、100万円程度の立ち退き料を用意しておく必要があります。

【立ち退きの依頼の流れ】

  • 賃貸借契約を更新しない旨を伝える
  • 入居者と立ち退き料の交渉をする
  • 入居者に引っ越しをしてもらう

一定期間の賃料収入がなくなる

アパートの建て替えは、リノベーションと比較すると工期が長いです。設計、施工、入居者募集まで1年かかる場合もあり、その期間は収入が得られません。
建設会社が工程表を作成してくれて、工程通りに建築工事を進めてくれますが、災害や事故でスケジュールが変更になる場合もあります。その場合は予定していた賃料収入が見込めなくなります。

信頼できる業者に相談する

アパートの建て替えを成功させたい場合は、信頼できる業者を見つけることが大切です。なぜなら、各業者の提案力や得意とする仕様・デザイン・性能が異なるためです。また、アパート建築が得意かも各社で異なります。
そのため、複数社に同じ条件で相見積もりを依頼して、信頼できる業者を探すようにしましょう。

まとめ

アパートが老朽化すると空室が増えたり経年劣化で耐震性が低下したりします。また、設備が故障しやすく修繕費が増える恐れがあります。このような状態に陥ると、収益が見込めなくなるため、早急にアパート老朽化の対策をしましょう。
今回はアパート老朽化の対策方法をご紹介しましたが、どの対策方法が良いかは各自で異なります。そのため、アパート老朽化で悩んでいる方は専門家にご相談してみてください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

税理士紹介はこちら

  • ページタイトルと
    URLがコピーされました