不動産の等価交換とは?メリットやデメリットをわかりやすく解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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土地活用の一つの手段として「等価交換」があります。
好立地の土地を持っている方は、デベロッパーから「お持ちの土地に、私たちが建物を建てるため一緒に賃貸経営を始めませんか?」と声をかけられることもあるでしょう。
突然、業者から等価交換の話を切り出されるため、驚いてしまうかもしれません。
しかし、等価交換にはメリット・デメリットがあるため、それらを理解した上で返事をするようにしましょう。今回は、等価交換について解説します。

不動産の等価交換とは?

不動産の等価交換とは、土地活用の一つの手段です。土地所有者が土地、デベロッパーが建物を出資し合い、各自の出資比率に応じて土地建物を区分することをいいます。
「資金が用意できないけれど、所有している土地を活用したい」という土地所有者と「マンションやビルを建てたいけど好条件の土地がない」という業者の双方の願いを叶える方法です。

等価交換の仕組み

等価交換の仕組みを簡単に説明すると、以下の通りになります。

  1. 土地の所有者にデベロッパーが声をかける
  2. デベロッパーの事業計画を聞いて同意する
  3. 等価交換の方式(全部譲渡方式、部分譲渡方式)を決める
  4. 等価交換の契約を交わす
  5. 土地所有者がデベロッパーに土地を提供する
  6. デベロッパーが土地に建物を建てる
  7. 出資割合に応じて、土地と建物の所有割合を決める
  8. 区分所有権の登記をする
  9. 賃貸経営やテナント経営などの事業が開始される

土地所有者が土地、デベロッパーが建物を出資して、出資割合に応じて所有割合を決める仕組みです。土地所有者は土地を出資するだけで済み、建物の建築費用を支払わずに賃貸経営やテナント経営など事業が行えます。

等価交換の方式

等価交換の方式には「全部譲渡方式」と「部分譲渡方式」があります。2つの方式の違いは、名義変更のタイミングです。

全部譲渡方式

全部譲渡方式とは、土地所有権をデベロッパーに移して建物をつくり、工事完成後に出資割合に応じて土地と建物を分配します。
この方式は、土地の所有者が複数名いる場合に選ばれます。なぜなら、複数の土地所有者がいると、事業計画の途中で揉めるなどトラブルが出てきてしまう恐れがあるためです。このようなトラブルを防止するために、土地の所有権を業者に移してしまうのです。全部譲渡方式であれば、建築プロジェクトを円滑に進めていけます。
しかし、工事完成後に土地所有者が出資比率に応じて土地を買い戻すため、不動産登録免許税や不動産取得税を支払わなければいけません。そのため、不動産登録免許税や不動産取得税がいくらになるか不安を抱いたら、業者との打ち合わせの段階で尋ねましょう。

部分譲渡方式

部分譲渡方式とは、土地所有者がデベロッパーから取得する建物代金に相当する一部の土地を売却して建築工事を始めることをいいます。
土地の所有者が1名の場合は、部分譲渡方式が採用されることが多いです。建築工事が完成したら、出資比率に応じた建物の一部が土地の所有者に譲渡されます。
部分譲渡方式を採用すると、土地の登録免許税や取得税の負担がかかりません。
しかし、土地と建物に対して、どの部分を譲渡するかで揉めやすいです。特にこだわりがなく、デベロッパーのノウハウの恩恵を受けたいという方であれば、部分譲渡方式で問題なく進めていけるでしょう。

補足:誠実な業者を選ぼう

複数の土地権利者がいる場合は事業が円滑に進むように「全部譲渡方式」、土地権利者が1名の場合は税負担を軽くするために「部分譲渡方式」を選ぶと良いです。
デベロッパーの中には、全部譲渡方式しか選択できないところもありますが、このような業者には注意が必要です。なぜなら、土地の所有権を譲渡した直後にデベロッパーが倒産してしまう恐れがあるためです。デベロッパーが倒産してしまうと、土地所有権が返ってこない恐れがあります。
このような詐欺被害に巻き込まれないように、全部譲渡方式と部分譲渡方式の2つの魅力を説明してくれる誠実な業者を選ぶようにしましょう。

等価交換のメリット


等価交換には、6つのメリットがあります。

不動産投資ローンを組む必要がない

土地活用の手段として等価交換を選択すれば、不動産投資ローンを組まずに賃貸経営やテナント経営が行えます。
なぜなら、マンションやビルの建築費用はデベロッパーが負担してくれるためです。そのため、「賃貸経営に失敗してローン返済ができなくなるのでは?」と不安を抱かずに済みます。
不動産投資ローンの返済義務が生じないため、土地活用を始めるハードルが低くなります。

譲渡税の繰延措置がある

土地を売却する場合は譲渡所得に対して所得税と住民税が課税されます。このような譲渡税を負担しなければいけません。しかし、等価交換の場合は「立体買換えの特例」が使える場合が多く、譲渡税の繰延措置が講じられます。
立体買換えの特例が使えるのは、中高層の耐火共同住宅で地上階数が3階以上の場合です。一部が3階以上になっている建物でも対象となります。

デベロッパーのノウハウが生かせる

不動産の等価交換は、事業が開始できる土地の所有者にデベロッパーが声をかけることから始まります。等価交換の契約を締結した後は、デベロッパーが主体となり建築プロジェクトが進んでいきます。デベロッパーも賃貸経営で利益を得たいと思っているため、最大限の努力をしてくれるはずです。
建築プロジェクトに関する業務は情報収集から設計、施工まで多岐に渡ります。これらの業務を業者にお任せできることも等価交換の魅力です。

■建築プロジェクトに関する各種業務

情報収集 土地情報の整理
現地調査
周辺の地価調査
権利関係調査
行政法規調査
事業企画 市場調査
企画検討
建築プランの作成
建築スケジュールの検討
事業収支計画書の作成
近隣折衝 近隣挨拶
所轄行政許認可取得
設計 実施設計図作成
行政検査の立ち会い
施行 工事費算出
施行管理

専有部分を自由に使用できる

等価交換では、出資比率に応じて区分所有権を持ちます。区分所有権として受け取った部屋を居住用として使用しても、賃貸として第三者に貸し出しても構いません。専有部分であれば、どのように利用しても区分所有者の自由です。
等価交換をした区分所有者の多くが、専有部分で賃貸経営をしており、月々の家賃収入を得ています。

遺産分割がしやすい

土地の所有権利者が複数名いる場合、土地の分筆で揉めることがあります。その理由は、土地の面積で均等に分筆しても、角地か否かで揉める恐れがあるためです。また、複数名で土地を分筆すると、土地面積が小さくなって土地活用できなくなることもあります。このような理由により、土地の遺産分割がしにくくなるのです。
しかし、等価交換でマンションやビルを建てれば、区分所有権として受け取った部屋を当分することが可能になります。
また、賃貸経営やテナント経営の収益を分割して分け合うこともできるでしょう。そのため、等価交換をすれば、公平な遺産分割が行えるようになります。

相続対策ができる

等価交換は相続対策にもおすすめです。その理由は土地を相続すると土地評価額に相続税が乗じられてしまいます。その一方で、等価交換すれば、建物の入居割合に応じて土地評価額が減額されます。また、賃貸アパートや賃貸マンションを建てた場合は、小規模宅地等の特例が適用できて、更に土地評価額を下げることも可能です。
相続税の負担が減らせるだけでなく、子供に安定的に家賃収入が得られる物件を相続すれば喜んでもらえることでしょう。

等価交換のデメリット

等価交換にはメリットだけでなくデメリットもあるため気をつけてください。次に、等価交換の5つのデメリットについて解説します。

等価交換に時間と労力がかかる

等価交換は交渉から始まることが多く、時間と労力がかかります。なぜなら、土地の価格には定価が存在しないためです。
土地所有者は「土地の価格を高く見込んで、より多くの区分所有権を得たい」と思います。その一方で、デベロッパーは「土地の価格を低く見込んで、区分所有権を渡したくない」と思っています。双方の利益が相反するため、プロジェクトが始まるまでの等価交換の交渉に時間と労力がかかってしまうのです。

自己判断で土地・建物が売却できない

等価交換をして不動産を共有してしまうと、自己判断で売却や改修工事ができなくなります。
例えば、マンションの改修工事をする場合は過半数の同意が必要になり、マンションの売却をする場合は全員の同意が必要になります。そのため、土地や建物を売却したいと思っても融通が利かず、デベロッパーに相談しなければいけません。
等価交換をすると、土地所有者とデベロッパーは共同経営のような複雑な関係を築くことになります。
共有持分だけを手放すことはできますが、一般的な不動産売却と比較すると売価が安くなってしまいます。

一般的な賃貸経営と比較して利回りが低くなる

一般的な賃貸経営では、建物費用を減価償却費として毎年計上できます。賃貸経営やテナント経営で得た収入に原価償却費を経費計上することで、事業所得額が下がり所得税や住民税に負担を軽くできます。
等価交換の場合は、建物の持分のみしか減価償却費を経費計上できません。したがって、事業所得が上がり所得税や住民税の負担が重くなってしまうのです。
一般の不動産投資と比較して利回りが低くなる恐れがあるため、契約締結前にシミュレーションしてみることをおすすめします。

デベロッパーの意見が反映されやすい

等価交換は不動産投資ローンの返済をせずに済み、賃貸経営やテナント経営ができます。そのため、土地所有者はデベロッパーの言いなりになりがちです。また、突然、等価交換の話をされるため、賃貸経営に関する知識がなく戸惑ってしまうこともあるでしょう。
その結果、意見が述べられず、業者の意見が反映された建物が完成してしまうのです。「本当は土地活用してオフィスビルを建てたかったのに、業者の意向でマンションになってしまった」など後悔しないように気をつけましょう。

魅力的な土地を所有してないと話を持ちかけられない

不動産の等価交換は、デベロッパーが賃貸経営やテナント経営して収益が見込める土地を見つけて土地所有者に話を持ち掛けることで行われます。そのため、不動産投資事業で相応の収入が見込める土地の所有者にしか基本的に話が持ちかけられません。
不動産投資事業で相応の収入が見込める土地とは、駅からアクセスが良かったり、100坪など面積が広かったりする土地をいいます。良い条件の土地ではないと等価交換の話は出てきません。

等価交換に向いている人の特徴

等価交換のメリット・デメリットについて解説しましたが、向いている人は以下に該当する方です。

  • 土地活用の資金が用意できない人
  • 賃貸やテナント経営に興味がある人
  • 安定収入を得たい人

ここでは、等価交換に向いている人の特徴をご紹介します。

土地活用の資金が用意できない人

賃貸経営やテナント経営に興味はあるけれど、自己資金がなくローン返済に不安を感じる方に等価交換はおすすめです。なぜなら、建物費用はデベロッパーが負担してくれるためです。
土地の一部を業者に譲渡する必要がありますが、現金は必要ありません。したがって、等価交換は、土地活用に興味はあったけれど資金が用意できない人に向いています。

賃貸やテナント経営に興味がある人

賃貸やテナント経営に興味がある人も、等価交換に向いています。その理由は、デベロッパーと共同経営という立場で意見を述べることができるためです。基
本的には、デベロッパーが主体となりますが、土地・建物の所有権利を持っているためプロジェクトに意見を伝えても問題ありません。低リスクで土地活用したかった方であれば、等価交換すれば満足できるでしょう。

安定収入を得たい人

等価交換した専有部分で賃貸経営を行えば、安定収入が得られます。ローンの返済もする必要がないため、家賃収入で管理費や税金を支払うだけです。不動産は価値がゼロになることが極めて少ないため、安定収入を得られる投資として支持を集めています。
例えば、「毎月8万円の安定収入があれば老後にゆとりが出る」など、毎月の安定収入を得たい人に等価交換はおすすめです。

まとめ

不動産の等価交換を行えば、不動産投資ローンを組まずに賃貸経営やテナント経営ができます。デベロッパーと共同経営の立場になれるため、土地活用に興味があり、安定した収入を得たい人におすすめです。また、相続税対策にもなります。
しかし、等価交換をして不動産を共有すると自由に売却ができなくなるため注意してください。どのような方法が良いかは、お客様の価値観やライフプランにより変わります。
そのため、等価交換するべきか悩んだら、第三者の立場である不動産コンサルティング専門家に相談してみてください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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