築古アパートの収益化改善を図るための方法と検討タイミングを解説
目次
アパート経営をしていて築年数が経過したとき、「どのような対策をすれば、入居率が上がり収益が改善できるのだろう?」と悩むこともあるでしょう。
実は、アパート経営をする上で出口戦略の手法とタイミングを間違えてしまうと、大きな損をしてしまいます。そのため、築古アパートの収益化改善を図るための方法を覚えておきましょう。
この記事を読めば、築古アパートの出口戦略を考えるべきタイミングから、どのような方法が良いかまで把握できます。ぜひ、アパート経営の出口戦略に悩んでいる方は、この記事をお読みください。
築古アパートの寿命はどのぐらい?
アパートの寿命は、建物の構造や管理状態により異なります。建物管理やメンテナンスを行っていると建物の寿命は長くなります。
アパート経営を成功させるためには、平均寿命を理解した上での収支計画が必要です。収支計画を立てる際、アパートの寿命は「国土交通省の住宅データ」と「法定耐用年数」を目安にしましょう。
国土交通省の住宅データでは「38.2年」
国土交通省「令和4年度 住宅経済関連データ」では、アパートの寿命は平均38.2年と述べられています。築38年が経過したら、大半のアパートが建替えられている現状です。
アパートは建物管理やメンテナンス次第で寿命を伸ばせると説明しました。しかし、築38年が過ぎたアパートは取り壊されることが大半だと理解しておき、賃貸経営の計画を立てておくと安心できるでしょう。
法定耐用年数では「22年~47年」
法定耐用年数(対象資産を使用できる会計上の期間)は、22年~47年と建物の構造で変わります。例えば、木造アパートの場合は建築費用を22年にかけて減価償却費として計上できます。
◆法定耐用年数
構造 | 耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
鉄骨造(3mm以下) | 19年 |
鉄骨造(3mm~4mm以下) | 27年 |
鉄骨造(4mm以上) | 34年 |
RC造 | 47年 |
補足:アパートの寿命は法定耐用年数で考えよう
アパートの寿命の数え方はさまざまですが、法定耐用年数で考えることをおすすめします。
その理由は、法定耐用年数を超えると、アパートの建築費用が減価償却費として経費計上できなくなるためです。その結果、所得金額が増えて税金の負担が大きくなります。
また、法定耐用年数を超えたアパートは金融評価の価値がないとみなされて、金融機関の融資が受けにくくなります。つまり、アパート売却時に買主を見つけにくくなってしまうのです。想像していた以上に不動産売却に苦戦するなど、出口戦略に失敗してしまうかもしれません。
そのため、アパートの法定耐用年数が近づいたら、築古アパートの収益化改善の方法を見直してみることをおすすめします。
築古アパートの収益化を改善する方法
築古アパートの収益化を改善する方法は3通りあります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
リノベーション | 資産価値が上げられる 建築費用が安い 工期が短い |
自由設計はできない 臨時出費がかかる恐れがある スケジュールが遅延しやすい |
建て替え | 希望の間取りが実現できる 安定収入が得られる 節税効果が見込める |
建築費用が高い 工期が長い 立ち退き交渉が必要になる |
売却 | 現金化できる 税金の支払いがなくなる 立ち退き交渉が不要 |
仲介手数料や譲渡所得税がかかる 希望の期間に売却できない恐れがある 良い条件で売却できない恐れがある |
ここでは、それぞれの方法について詳しく解説します。
リノベーション
リノベーションとは、築古アパートの大規模工事を行って、住宅性能を上げて資産価値を高めることをいいます。
メリット
築古アパートを時代のニーズに合わせてリノベーションすると、住宅性能が上がり資産価値が上げられます。エリアのニーズを把握して、住宅設備を充実させたり間取りを変更させたりすれば、需要が増えて入居率を上げていけます。
建て替えと比較すると、建築費用が安いことも魅力です。限られた予算内で必要な工事ができます。また、リノベーションの工期は約1ヵ月~3ヵ月と短いため、空室になった部屋のみリノベーションすることも可能です。
デメリット
リノベーションは、自由設計ができるわけではありません。建物の構造を支える柱や梁は撤去できないため、完全に自由な間取りが実現できるわけではありません。
また、壁を壊したら構造上の柱が腐敗していたなど、予想外の出来事が起きて、建築費用が高くなったり工期が長くなったりする場合があります。このようなトラブルを防止したい方は、リノベーションの実績を豊富に持つ建築会社に相談して建物調査をしてもらいましょう。
とくに、1981年5月以降の旧耐震基準で建てられたアパートを所有している方は、構造上の問題が出やすいため、リノベーションには向いていません。建て替えか売却を検討することをおすすめします。
向いている人
アパートの収益化を改善する方法としてリノベーションが向いている人は、以下に該当する方です。
- 賃貸物件を引き継ぐ人がいない人
- 予算内で築古アパートの改修工事をしたい人
- 入居者を退去させたくない人
- 状態が良いアパートを所有している人
- 1981年6月以降の新耐震基準に建てられたアパートを所有している人
建て替え
建て替えとは、既存住宅を基礎部分から取り壊して、ゼロからアパートを建築することをいいます。
メリット
築古アパートを建て替えると、オーナーの希望の間取りが実現できます。そのため、賃貸併用住宅にすることも可能です。新築アパートは、中古アパートと比較して修繕の負担がかかりにくいです。そのため、家賃収入が安定的に見込めて、支出を抑えられるようになりキャッシュフローが安定しやすいです。
さらに、建物の相続税評価額と時価の差は新築時が一番大きいため、相続効果が見込めます。
デメリット
アパートを建て替えるには、多額の建築費用がかかります。国土交通省「建築着工計調査」による平均費用相場は以下の通りです。2階建てのアパートを建てる場合、4,000万円以上の資金が必要になります。
坪単価 | 建築費用(80坪) | |
---|---|---|
木造 | 56万円~73万円 | 4,480万円~5,840万円 |
鉄骨造 | 83万円~108万円 | 6,640万円~8,640万円 |
RC造 | 83万円~108万円 | 6,640万円~8,640万円 |
また、アパートを建て替える場合は、建物設計から確認申請、建築工事を含めて6ヵ月~1年程度かかります。工事期間が長いため、1年間は賃貸経営による収益は見込めません。
さらに、アパートに入居者がいる場合は、工事前に立ち退き交渉が必要になります。立ち退き交渉では、入居者の引越し費用をオーナー側が負担しなければいけません。
向いている人
アパートの収益化を改善する方法として建て替えが向いている人は、以下に該当する方です。
- 長期的な賃貸経営を検討している人
- 賃貸物件を引き継ぐ人がいる人
- アパートの間取りなど大きく変えたい人
- 状態が悪いアパートを所有している人
- 1981年5月以前に建てられたアパートを所有している人
売却
不動産売却とは、築古アパートに販売価格を付けて売ることをいいます。
メリット
築古アパートを売却する場合は、入居者がいる場合でも関係なく販売できます。入居者にはオーナーチェンジすることを伝えるだけで済むため、立ち退き交渉などの手間がかかりません。築
古アパートでも現金化できて、毎年支払っていた固定資産税や都市計画税などを支払わずに済みます。仲介手数料や譲渡所得税を支払う必要がありますが、建て替えやリノベーションと比較すると費用の負担が小さくて済みます。
デメリット
築古アパートは、希望通りの価格やスケジュールで売れるとは限りません。不動産会社選びを間違えてしまうと、ローン残債より安い金額で物件を手放さなければいけなくなります。このような問題が起きないように、信頼できる不動産会社に依頼しましょう。
また、法定耐用年数が過ぎてしまった築古アパートを購入する場合は、金融機関の融資が受けにくくなります。そのため、新たなオーナーが見つからずに、不動産売却に苦戦してしまうかもしれません。
向いている人
アパートの収益化を改善する方法として売却が向いている人は、以下に該当する方です。
- 現金化したい人
- 新たな物件を購入したい人
- 立ち退き交渉などの手間を省きたい人
- 1981年5月以前に建てられたアパートを所有している人
築古アパートでも魅力を高めるテクニック
築古アパートの収益化を改善する方法には、ご自身のみで行えるものもあります。簡単にできる方法をご紹介するため、参考にしてみてください。
ハウスクリーニングを行う
ハウスクリーニングを行って、部屋の状態をキレイにするだけでも入居率が上がります。とくに、入居募集時の内見では水回り設備がチェックされやすいです。そのため、浴室やトイレの黄ばみや、キッチンのシンクの水垢などはキレイに取り除いておきましょう。
水回り設備の汚れを取り除くだけでも、アパートの入居率が変わります。誰でもできるお手軽な方法です。
宅配ボックスを設置する
インターネット通販を楽しむ方が増えてきており、宅配ボックスの需要が増えてきています。インターネット通販は非常に便利である一方で、商品の受け取り時には家にいなければいけないと面倒に感じる方は多いです。
このような問題は、宅配ボックスを設置することで解決できます。忙しい人の中には「宅配ボックスのある物件が条件」という方も増えてきているため、入居率を上げるために導入を検討してみてください。
「ペット可」の物件にする
築古アパートをペット可の物件にすると入居率を上げられます。その理由は、ペット可の物件は全体の12%と少なく、需要があるためです。
大抵の部屋が、ペット飼育による壁や床の傷やアレルギーを気にしてペット不可にしています。そのため、ペット可の物件に切り替えたら、お問い合わせが殺到して空室が埋まったケースも多く見られます。
他の住人との間でトラブルにならないよう、「ペット飼育誓約書」を取り交わす必要がありますが、築古アパートでも高い入居率が期待できます。
外国人を入居者ターゲットにする
築古アパートの入居者の設定を見直して、外国人をターゲットにする方法もあります。外国人は、物件に清潔感があれば、築年数にこだわらない傾向があります。外国の暮らしでは、トイレと浴室が一緒になっていることも普通です。
文化やマナーの違いに不安を感じる方もいますが、外国人専門の賃貸管理会社に業務委託して、受け入れ体制を整えれば問題も起きにくいです。外国人を入居者ターゲットにすれば、築年数を気にせず、賃貸経営がしやすくなります。
DIY可能物件にする
不動産オーナー側で、リノベーションの費用が支払えない場合は、DIY可能物件に変更する方法もあります。近頃は、DIYをして自分好みの部屋で暮らしたいという方が増えており、DIY可能物件に注目が集まっています。
各部屋でテイストがバラバラになってしまいがちですが、借主負担でリフォームができるため、資金に余裕がないけれど修繕したい方におすすめです。
まとめ
今回は、築古アパートの収益化を改善する方法について解説しました。法定耐用年数が経過する前に、築古アパートの収益化の改善方法(リノベーション・建て替え・売却)を検討してみてください。その理由は、法定耐用年数を過ぎると、建物費用を減価償却費として経費計上できなくなり、建物の金融評価がゼロになり売却しにくくなるためです。
しかし、必ず大規模工事が必要になるわけではありません。この記事では、不動産オーナーが気軽に取り組めるアパートの収益化の改善方法までご紹介しました。大切なことは、建物の状態や不動産オーナーの意思です。そのため、築古アパートの収益化に悩んだら、専門家に相談をしてみてください。