不動産投資ローンの種類と選び方とは?おすすめのローンや気になる注意点も解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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不動産投資ローンの種類

アパートローン

アパートローンとは、投資用のアパートやマンションなどを購入する際に利用できるローンのことです。

住宅ローンとは借り入れた資金の用途が異なっており、住宅ローンは自分が住むために購入する不動産の購入にしか利用できません。一方で、アパートローンは用途が投資するための不動産購入にしか利用できないようになっています。

住宅ローンと比較すると、アパートローンは金利が高く借入限度額も制限されているなど、利用条件が厳しい点も特徴的です。

住宅ローンとの違い

住宅ローンは住むための家を購入することが目的とされているため、比較的条件が緩く設定されています。その一方で、アパートローンは不動産の賃貸運用という事業を営むための資金とされているため、審査基準や借り入れ条件などが厳しくなっています。

なお、住宅ローンを利用して購入した不動産を、やむを得ないと認められる理由なしに賃貸運用すると、金融機関から一括返済を求められることがあるため要注意です。

アパートローンは、完成済みのアパート・マンションだけではなく建築やリフォームなど工事するための資金や、借り換えのためにも利用可能です。

アパートローンはメガバンクと呼ばれる都市銀行だけでなく、地方銀行や信用金庫に加えてノンバンクなど、様々な金融機関が取り扱っています。

プロパーローン

アパートローンと同じく、プロパーローンも投資用不動産の購入に利用できるローンです。プロパーローンとアパートローンとでは、保証会社の有無が異なります。

アパートローンを利用するに当たっては、保証会社を利用するため保証料の支払いを求められます。しかし、プロパーローンの利用に当たっては、金融機関が自ら貸し倒れリスクを引き受けることになるため、保証会社を入れません。

保証会社の役割は、ローンの利用者が返済に行き詰まって債務不履行に陥った場合、利用者に代わって残債を金融機関へ返済することです。

金融機関から見ると、保証会社を入れないことは貸し倒れリスクを高めることになるため、アパートローンと比較するとプロパーローンは審査基準が厳しくなっています。

プロパーローンはだれでも利用できるというわけではありません。その金融機関からローンを借りた実績がある人や、関連金融機関の証券口座に一定以上の資産があると認められる場合などでないと、そもそも審査を受けられないことが多くなっています。

しかし、一定以上の資産があると認められる場合はアパートローンよりも好条件で利用できる場合があるため、資産規模が大きい人は金融機関にプロパーローンの利用を持ちかけるのも有効です。

不動産投資ローンの選び方

金利で選ぶ

不動産投資ローンを選ぶ最大の基準となるのは金利です。不動産投資における支払金利はコストの中でも比較的大きな割合を占めるため、金利を抑えることが利益の拡大につながります。

実際の金利は金融機関や審査結果によって異なりますが、1%~2%台で借りられるのが理想的です。借入金額にもよりますが3.5%以上などになってくると、毎月のキャッシュフロー(手残り収入)を出すのが難しくなってきます。

また、不動産投資ローンの金利にも住宅ローンと同じく変動金利と固定金利の2種類があることを抑えておく必要があります。

変動金利の場合

変動金利の場合は半年から1年に1回程度の割合で金利が変動します。日銀が設定する長期金利に合わせる形で変動することが多いため、変動金利の利用を検討する場合は長期金利のチェックが重要です。

なお、変動金利は比較的低めに設定されるため利益を出しやすい特長があるものの、毎月の支払金利が上下動するため、計画的な返済は難しいデメリットを持っています。

固定金利の場合

固定金利には返済開始当初から完済までの間、完全に金利が固定される全期間固定型と、「固定金利特約付きローン」などと称される一定期間固定型の2種類があります。

固定金利特約付きローンは、1年~10年などの一定期間にわたって金利が固定されるものです。固定される期間は変動金利よりも長くなります。しかし、固定期間が短いほど低金利となるのが特徴的です。

全期間固定型の金利は返済開始から完済までの間、完全に金利が固定されるタイプのものです。金利が動かないため返済計画を立てやすくなりますが、変動金利や一定期間固定型と比較して高金利になります。

金融機関の種類で選ぶ

不動産投資ローンを選ぶ2つ目の方法は、商品を展開している金融機関の種類で選ぶというものです。

一般的に金融機関の規模が大きいほど金利などは低くなる傾向があります。しかし、例えば3大メガバンクのような都市銀行では審査基準が非常に厳しく、限られた人しかローンを利用できません。

不動産投資ローンの借り入れ元としてよく利用されているのは、地方銀行や信用金庫・信用組合などです。地方銀行や信用金庫などは、都市銀行と比較すると借り入れ条件が厳しいところもありますが、審査基準が比較的緩いところも多いため利用される割合が高くなっています。

そのほか、ノンバンクや日本政策金融公庫などでも不動産投資ローンを利用できます。ノンバンクは審査基準が緩く利用しやすい特長を持っている一方で、貸出金利は比較的高めです。

また、日本政策金融公庫も比較的低めの固定金利で貸し出しているため利用するメリットが大きくなっています。しかし、投資ではなく事業に対して融資するというスタンスを取っているため、審査に当たって詳細な事業計画を求められたり、返済期間が比較的短かったりなどの点には要注意です。

年収で選ぶ

現在の年収に見合った不動産投資ローンを選ぶのも1つの方法です。多くの金融機関はアパートローンや不動産投資ローンなどの借り入れ条件をウェブサイトで公開しています。複数の金融機関を比較して、自分に見合った金融機関を選ぶのが良いでしょう。

なお、年収500万円以下の人は比較的審査を通過しにくいほか、通過出来てもあまり良い条件を提示されないことが多くなります。この場合は、日本政策金融公庫やノンバンクの金融機関などを選ぶのが適当です。

年収が500万円~1,000万円に該当する人は、地方銀行や信用金庫のローンを利用するのがおすすめです。これらの金融機関は地元振興を目的として事業を営んでいます。自分が住んでいるエリアや、購入する物件が立地しているエリアを営業範囲とする金融機関を探すのがポイントです。

年収が1,000万円以上の人は、地方銀行・信用金庫に加えて都市銀行も視野に入れると良いでしょう。資産状況が良ければ好条件で融資を受けられる可能性が高くなります。

おすすめの不動産投資ローン3選

オリックス銀行の不動産投資ローン

オリックス銀行は以下の条件で不動産投資ローンを展開しています。

条件 詳細
申込資格 個人・資産管理会社
年齢 満20歳以上60歳未満で最終返済時80歳未満
年収 前年度の税込年収が500万円以上で、返済期間中安定した収入が必要
借入限度額 1,000万円以上2億円以内(10万円単位)
借入期間 1年以上35年以内(1ヶ月単位で設定可能)
金利 2.300%~3.675%(固定金利期間特約付変動金利または変動金利)

※参照:オリックス銀行https://www.orixbank.co.jp/personal/property/
※上記は2022年6月末時点の情報であり、諸条件や金利などは時期によって変わる可能性があります。

オリックス銀行が展開する不動産投資ローンの特徴は、個人でも資産管理会社でも利用できる点と、借入期間を最長35年と長期間に設定できることです。

資産管理会社での借り入れは法人扱いとなって審査基準が厳しくなることもあります。しかし、オリックス銀行では、代表者や出資者を連帯債務者とすることで、個人での利用と同等の条件で資産管理会社でも不動産投資ローンを利用可能です。

また、借入期間を長期化することで毎月の返済額を抑制できます。ただし、借入期間が長くなるほど金利の支払総額は高くなるため、長期間の運用を予定している場合は事前のシミュレーションが重要です。

セゾンファンデックスの不動産投資ローン

セゾンファンデックスはクレディセゾングループのノンバンク金融機関です。セゾンファンデックスが展開する不動産投資ローンは以下の条件となっています。

条件 詳細
申込資格 個人・資産管理法人
年齢 満20歳以上70歳未満で最終返済時85歳未満
年収 安定した収入が必要(金額は非公開)
借入限度額 100万円から5億円
借入期間 5年から30年
金利 3.75%~4.55%(変動金利)

※参照:セゾンファンデックス
https://www.fundex.co.jp/personal/investment/?PHPSESSID=f4rqakl8tt4uo3qnaar8qkj050
※上記は2022年6月末時点の情報であり、諸条件や金利などは時期によって変わる可能性があります。

セゾンファンデックスの不動産投資ローンを利用するメリットは、銀行など他の金融機関で審査が通らなかった場合でも相談を受け付けている点と、自己資金なしのフルローンも利用できる点などです。

あくまでも相談を受け付けているとしているだけなので、確実に審査を通過できるわけではありませんが、年収が低い人などでも相談できる点はメリットと言えるでしょう。

また、かぼちゃの馬車問題やスルガショックなどを経た2022年現在では、自己資金を入れないフルローンを借りられる人はかなり限られているのが実態です。しかし、他の資産を共同担保に入れることでフルローンを利用できる点はメリットと言えます。

その一方で、支払金利が変動金利のみとされている点及び金利の下限が3.75%と比較的高い点には要注意です。

不動産投資ローンを選ぶ際のポイントと注意点

金利に関する条件を確認する

不動産投資ローンの利用において、収益に直接かかわってくるのは支払金利です。ローンを利用して不動産投資をする場合は、以下について事前に確認することが必要になります。

  • 金利が何%なのか
  • 毎月いくらの金利を支払うことになるのか
  • 元本返済と金利支払いを経るといくらの利益が残るのか

物件購入前の段階で支払える頭金と希望の借入額は概ね計算できるため、希望の利回りと金利について明確化しておくことで、より毎月の利益を残しやすくなります。

なお、既に解説したポイントと重複しますが、例えば物件購入金額を全額ローンで賄うフルローンを利用する場合に、支払金利が3.5%を超えてくると毎月の利益を残しにくくなる点に要注意です。

そのほか、変動金利や一定期間固定型の変動金利の場合は、金利が変わるタイミングはいつなのか、仮に金利が上がったとしても利益を残せるか、何%までなら金利上昇を許容できるのかなども事前に検証する必要があります。

複数の金融機関を比較する

不動産投資を検討する場合は、物件を取扱う不動産会社と金融機関とが提携しており、提携金融機関のローンを利用できる場合があります。提携金融機関のローンは審査に通りやすい場合もあるなど、メリットが大きいものです。

しかし、提示される借り入れ条件が必ずしも最良とは限らないため、利益を最大化するためには、提携金融機関のローンを利用できるとしても、複数の金融機関を比較することが必要です。

借り入れ条件に関する自分なりの基準を定めたうえで、基準に外れるような条件を提示された場合は、他の金融機関へ相談することも視野に入れる必要があります。

また、提携金融機関がない場合でも、あらかじめ複数の金融機関を開拓しておくことは不動産投資において有利に働きます。もし既に実績を持っている投資家とつながりがある場合などは、金融機関を紹介してもらうのも1つの方法です。

まとめ

不動産投資ローンにはアパートローンとプロパーローンの2種類があります。
プロパーローンは借り入れ元の金融機関で証券口座を開設しているなど、利用実績と一定以上の資産規模が認められる場合に利用可能です。初めて不動産投資を進める場合などは、アパートローンを利用するのが一般的と言えます。

不動産投資ローンを選ぶ基準は複数考えられますが、何よりも着目すべきポイントは金利です。支払金利は不動産投資に必要な経費の中でも大きな割合を占めるため、少しでも金利を抑制することが利益拡大につながります。

そのほか、返済期間も短いほど1ヶ月当たりの返済額が増えて負担が重くなるため、可能な限り長期間に設定できる方が有利です。

不動産投資ローンを選ぶ上では、先に金利などに関する自分なりの希望条件を設定したうえで、複数の金融機関を比較することが重要になります。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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