角地・準角地の相続税評価額の計算方法を不動産税理士が解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

税理士の見解

藤井 幹久

どの対処方法がよいかは、各自の状況によって異なります。相続でお悩みの方は、不動産相続に強い税理士に相談をしてみてください。

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角地であれば、日当たりがよく開放的な家を建てられます。正面・側面が道路に接しているため、間取りの自由度も高いです。
しかし、利便性の高い角地は、他の土地と比較して相続税評価額が高くなります。そのため、どれぐらいの相続税評価額となるのか計算して確かめておきましょう。
今回は不動産税理士が角地・準角地の相続税評価額の計算方法について解説します。

角地・準角地とは

まずは、角地・準角地の概要を理解しましょう。

角地とは

角地とは、交差点やT字路の角に位置しており、正面と側面の2方向が道路に接している土地をいいます。2方向から採光を取り込めるため、日当たりが良いです。また、駐車スペースなど間取りの自由度が高いことが魅力となっています。
交差点などは多くの交通量が見込め、住宅だけでなく店舗や事務所としての需要もあり、資産価値が下がりにくいです。そのため、他の土地よりも税金(不動産取得税・固定資産税・贈与税)が高くなります。

準角地とは

準角地とは、曲がり角の内側に位置しており、正面と側面の2方向が道路に接している土地をいいます。
角地と比較すると交通量は多くありませんが、2方向が道路に接しているため、採光を取り込めて開放的な暮らしができる家を建てられます。そのため、準角地も注文住宅を建てたい方などから需要があり、資産価値が下がりにくいです。そのため、角地と同じように、他の土地より税金が高くなります。

角地・準角地の違いとは

角地・準角地は意味も異なりますが、「側方路線影響加算率」が大きく違います。
角地・準角地は2方向の道路に接しているため、建築の自由度が高く、利便性が良いです。そのため、他の土地と比較すると評価額が高くなります。

このように、道路と土地の位置関係で評価額が変わることを「側方路線影響」といい、「側方路線影響加算率」を活用して相続評価額を計算しなければいけません。角地・準角地は「側方路線影響加算率」が異なります。(※詳細は計算方法の箇所で解説しています。)

角地緩和の条件について

角地・準角地を相続するか考える際に知っておきたいこととして「角地緩和の条件」があります。特定行政庁が指定する要件を満たせば、建ぺい率の上限が緩和(建ぺい率+10%)されることをいいます。そのため、横に広い建物をつくることが可能です。

建ぺい率とは

角地緩和の条件で上限が緩和される建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合です。簡単に説明すると、敷地面積に対してどの程度の規模が建てられるかを表すものをいい「建築面積÷敷地面積×100」で求められます。
土地の用途地域によって建ぺい率が決まっていますが、角地緩和の条件に該当すれば10%ほど増えます。

【用途地域別の建ぺい率】

住居系地域 第一種低層住居専用地域 30~60%
第二種低層住居専用地域 30~60%
田園住居地域 30~60%
第一種中高層住居専用地域 30~60%
第二種中高層住居専用地域 30~60%
第一種住居地域 50~80%
第二種住居地域 50~80%
準居住地域 50~80%
商業系地域 近隣商業地域 60%~80%
商業地域 80%
工業系地域 工業専用地域 30~60%
準工業地域 50%、60%、80%
工業地域 50%、60%

注意:角地緩和で容積率は変わらない

角地緩和の条件を満たして建ぺい率+10%になっても、容積率は変わりません。つまり、建物面積の広さは同じであることを覚えておきましょう。
角地緩和の条件が定められている理由は、角地や準角地の建物は、道路の採光の確保を踏まえて建物の高さに制限がかけられているケースが多いです。これを道路斜線制限といいます。
路斜線制限によって、高さのある建物を作れないため、横に面積を広げて広さを確保するという目的で角地緩和が存在します。このような理由で角地緩和があるため、建物が広くなるわけではないことを覚えておきましょう。

角地・準角地の相続税評価額の計算方法

角地・準角地の概要について理解できて相続を希望される場合は、相続税評価額がどれぐらいになるか計算していきましょう。

1.正面路線の判定

角地・準角地の相続税を計算する場合は、2方面の道路のどちらを正面路線にするかを調べます。

[正面路線の調べ方]

  • 国税庁のホームページにある「路線価図・評価倍率表」で路線価を調べる
  • 路線価×奥行価格補正率で2つの路線価の相続税評価額を比較する
  • 相続税評価額が高い道路を正面道路と判定する

基準となる道路を正面路線、もう一方の道路を側方路線と呼びます。奥行価格補正率は地区区分と奥行距離に応じて決められています。
参考:『国税庁 奥行価格補正率表』

側方路線影響加算率で評価額を加算

角地・準角地は利便性が高い土地であるため、側方路線の相続税評価額に側方路線影響加算率を加えます。
つまり、1㎡あたりの相続税評価額は、「正面路線価+(側方路線価×側方路線影響加算率)」で計算します。
1㎡あたりの相続税評価額が計算できたら、「面積×1㎡あたりの相続税評価額」で土地の相続税評価額が出てきます。

【側方路線影響加算率表】

地区区分 加算率
角地の場合 準角地の場合
ビル街地区 0.07 0.03
高度商業地区
繁華街地区
0.1 0.05
普通商業・
併用住宅地区
0.08 0.04
普通住宅地区
中小工場地区
0.03 0.02
大工場地区 0.02 0.01

出典元:『国税庁』

角地・準角地の相続税評価額の計算例

角地・準角地の相続税評価額の計算問題を解いてみましょう。

問題

  • 路線A:200,000円
  • 路線B:100,000円
  • 正面路線から見た奥行距離:50m
  • 側方路線から見た奥行距離:10m
  • 面積:100㎡
  • 地区区分:普通住宅地

1. 正面路線の判定
路線価A:200,000円×0.89=178,000円
路線価B:100,000円×1.00=100,000円
※路線Aの評価額が高いため、正面路線はAで側方路線がBとなる

2.側方路線影響加算率で評価額を加算
角地1㎡の価格は「178,000円+(100,000×0.03)」で181,000円
土地評価額は100㎡×181,000円=18,100,000円

角地・準角地に関するよくある質問

最後に角地・準角地を相続する際によくある質問をご紹介します。

Q.角地・準角地のメリット・デメリットを教えてもらえますか?

角地・準角地のメリット・デメリトットを簡単にまとめると以下の通りになります。

[メリット]

  • 2方向の道路に面しているため、自由に間取りを決められる
  • 2方向から採光が望めるため、日当たりがよい
  • 2方向が道路に面しており、隣家を気にせずに暮らせる
  • 角地は需要が高いため、資産価値が下がりにくい
  • 住宅をはじめ、店舗や事務所の需要があるため、売却しやすい
  • 交通量が多いため、泥棒に入られる確率が低い
[デメリット]

  • 交通量が多いため、音が気になることがある
  • 交通量が多いため、衝突トラブルを避けるために外構工事を行う必要がある
  • 資産価値が高いため、各種税金(不動産取得税・固定資産税・相続税)が高い

Q.土地の相続手続きはしなければいけませんか?

土地の相続手続きは、遺産分割協議や不動産の名義変更など労力がかかりますが、必ず行わなければいけません。2024年から相続登記の義務化が始まり、正当な理由なく土地の相続手続きを怠った場合は10万円以下の過料が適用されることになりました。
そのため、土地の相続手続きは必ず行うようにしましょう。

Q.相続税を支払うお金が用意できない場合はどうすればいいですか?

角地・準角地にある土地・建物を相続したいけれど、現預金がない場合の対処方法は4つあります。

  • 相続税を分割払いにする延納
  • 不動産や株などで支払う物納
  • 相続物件を売却して現金化
  • 金融機関からの借入

どの対処方法がよいかは、各自の状況によって異なります。そのため、相続でお悩みの方は、不動産相続に強い税理士に相談をしてみてください。

まとめ

角地(または準角地)は正面と側面の2方向が道路に接している土地をいいます。
どちらも利便性が高い土地であるため、各種税金(不動産取得税・固定資産税・相続税)が高くなります。そのため、相続をする前に、どれぐらいの税金を負担するのかを計算しておきましょう。
また、不動産を相続する場合は、相続前に売却して現金化するという方法があります。どのような方法が良いかはお客様の考え、状況によって変わります。
そのため、「相続税はいくらなのだろうか?」「物件を売却すべきなのか?」と悩んだら、不動産や相続に強い税理士に相談をしてみてください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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