年金を相続すると相続税はかかるの?相続の際の手続きまとめ

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

年金の受給者や加入者が亡くなった際、その後の年金の取扱いはどうなるのかについて知りたいご家族は多いでしょう。

本稿の前半では「遺族年金、死亡一時金、寡婦年金などをもらえる要件」について、後半では「私的年金・公的年金と相続税の関係」について、わかりやすく解説します。

遺族年金、死亡一時金、寡婦年金などをもらえる要件は?

公的年金の受給者や加入者が亡くなった場合、ご家族は遺族年金、死亡一時金、寡婦年金などをもらうことができます。
ただし、ご家族といっても「故人によって生計を維持されていた人(遺族年金)」などの要件があります。

一定の条件を満たすご家族なら遺族年金などをもらえる

公的年金の加入者や受給者が亡くなったとき、ご家族は「遺族年金、死亡一時金、寡婦年金」などをもらうことができます。ただ公的年金といっても、いくつかの種類があります。この種類によって受け取られる年金が変わってきます。

相続人が加入・受給していた年金の種類 もらえる年金の種類
国民年金 遺族基礎年金、死亡一時金、 寡婦年金
厚生年金 遺族厚生年金、死亡一時金

遺族年金、死亡一時金、寡婦年金の違いについては下記をご参照ください。

年金の種類 内容
遺族年金 亡くなった人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」がもらえる
死亡一時金 一定期間、年金を納めていて年金を受け取らずに加入者が亡くなった場合、生計を同じくしていた遺族(配偶者、子、父母、孫など)がもらえる
寡婦年金 亡くなった夫が年金を一定期間納めていた場合、その夫と10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻が60〜65歳になるまでの期間もらえる

※ここでいう子とは18歳になった年度の3月31日までの間にある者

要注意!それぞれの年金には細かい要件がある

これらの遺族がもらえる年金にはそれぞれ細かい要件があります。年金がもらえるのか不明確な場合、年金事務所などに確認するのが賢明です。

たとえば、遺族基礎年金と遺族厚生年金では以下のような要件があります。

種類 遺族の要件
遺族基礎年金 1.故人が生計を維持、生計が同一だった
2.子のある配偶者または子
※上記の1と2は必須
遺族厚生年金 1.故人が生計を維持、生計が同一だった
2.年収850万円未満
3.子、妻または55歳以上の夫
4.55歳以上の父母
5.孫
6.55歳以上の祖父母
※上記の1と2は必須
※3〜6はいずれか

※このほか、被相続人側の要件もあります。

年金の種類と相続税の関係

同じ年金でも公的年金には相続税がかかりませんが、私的年金にはかかります。私的年金に相続税がかかる理由は、「みなし相続財産」に該当するからです。

公的年金には相続税がかからない、私的年金にはかかかる

年金と相続税の関係自体はシンプルです。以下の表のように「公的年金」であれば相続税が非課税(相続税がかからない)、私的年金であれば「みなし相続財産」として相続税の対象(相続税がかかる)となります。

年金の種類 相続税がかかるか否か
遺族基礎年金
(公的年金)
かからない
遺族厚生年金
(公的年金)
かからない
寡婦年金
(公的年金)
かからない
死亡一時金
(公的年金)
かからない
未支給年金
(公的年金)
かからない
退職年金/企業年金
(私的年金)
かかる
個人年金
(私的年金)
かかる

公的年金にはなぜ相続税がかからないのか

遺族年金、寡婦年金、死亡一時金などに相続税がかからない理由は、遺族年金に対しては「租税を課することができない」と定められているからです。ちなみに、これらの公的年金は所得税も非課税 です。
※ただし、未支給年金は、遺族の一時所得として所得税がかかります(その年の一時所得が50万円以下なら申告不要)。

私的年金にはなぜ相続税がかかるのか

企業年金や個人年金などの私的年金が相続税の対象となる理由は、これらが「みなし相続財産」だからです。みなし相続財産とは、被相続人が亡くなったことで発生した財産のことです。

みなし相続財産は、被相続人が生前のときに存在していなかった財産です。そのため、厳密にいうと相続財産になりませんが、税法上は相続財産として扱われます。補足すると、みなし相続財産には「相続放棄をしても受け取ることができる 」こととなっており、ほかの相続財産と違う性格を持っています。

亡くなるタイミングで「非課税枠の適用あり/なし」が変わる

みなし相続財産の注意点としては、被相続人が私的年金の「支払い開始前に死亡したか」「支払い開始後に死亡したか」で死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の適用が以下のように変わってくることです。

支払い(受給)開始前に死亡 非課税枠の適用あり
支払い(受給)開始後に死亡 非課税枠の適用なし

関連記事:相続財産とは?相続税がかかる財産とかからない財産を税理士が解説

被相続人の死後に行うべき手続きと注意する点

被相続人の死後の公的年金に関わる手続きには、「受給権者死亡届(報告書)」と「未支給年金の請求」があります。受給権者死亡届は、年金の支払いをストップさせるためのものです。一方、未支給年金の請求は、受け取っていない年金や亡くなった月までの年金を請求するものです。

「受給権者死亡届(報告書)」の内容と注意点

「受給権者死亡届(報告書)」は、被相続人の年金支払いをストップさせるための書類です。年金受給者が亡くなったとき、遺族は受給権者死亡届を速やかに提出しなければなりません(※)。

この手続きを放置しておくと、年金がそのまま振り込まれてしまいます。後日、返還手続きが発生して手間がかかるため必ず提出しましょう。
※マイナンバーを日本年金機構に収録されている人は原則省略可

年金受給者死亡届の提出期限は、「国民年金なら14日以内」「厚生年金なら10日以内」 と定められています。提出先は年金事務所などになります。なお、受給権者死亡届を提出するときには下記の添付書類も必要になります。

  • 被相続人の年金証書
  • 被相続人の死亡を証明する書類(戸籍抄本、死亡診断書のコピーなど)

「未支給年金請求の届出」の内容と注意点

未支給年金請求の届出は、受け取っていない年金や亡くなった月までの年金がある場合に行います。請求できるのは亡くなった年金受給者と生計を同じくしていたご家族です。

なお、請求できる優先順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母の順で最大3親等内の親族となっています。未支給年金請求には時効があり、請求手続きをした時点からさかのぼって5年までとなっています。

  • 被相続人の年金証書
  • 被相続人と請求者の続柄が確認できる書類(戸籍謄本など)
  • 被相続人と請求者が生計を同じくしていることが書類(被相続人の住民票/除票など)
  • 預金通帳
  • など

まとめ

本稿の前半で解説したように、一定の条件を満たす(例:生計を同じくしていたなど)ご家族なら遺族年金、死亡一時金、寡婦年金などをもらえます。ただし、それぞれ細かい要件があるため、まずは年金事務所などに確認するのが賢明です。

また、後半で解説したように「公的年金」は相続税の対象外、「私的年金」は相続税の対象になります。被相続人が亡くなったときの公的年金の手続きとしては「受給権者死亡届(報告書)」と「未支給年金請求の届出」があります。

被相続人が亡くなった直後は葬儀などで大変だと思いますが、「受給権者死亡届」は10日以内(厚生年金)または14日以内(国民年金)に提出しなければなりません。煩雑さに紛れて忘れてしまわないよう注意しましょう。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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