「生計を一にする」とは?具体例と所得税・相続税で使われるケースを徹底解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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「生計を一にする」は、所得税・相続税など税金に関する法律で使用されている用語であり、控除や特例を適用する際の判断要素として用いられています。 本記事では「生計を一にする」の意味と、具体的に所得税および相続税で「生計を一にする」の判断が必要になるケースについて解説します。

【生計を一にする】とは?

「生計を一にする」とは、日常生活の財産を共にすることをいいます。
イメージとしては、生活費を一つの財布でまかなっている家族は「生計を一にしている」に該当します。
たとえば夫婦それぞれに収入がある場合、生活費をお互いの財産から工面しているときは、「生計を一にする」に該当します。
一方で、年齢や血縁関係だけで「生計を一にする」には該当することはありません。
親子が同じ建物に居住していても、生活空間を分け、それぞれの収入から支払っている場合、生計を一にしているとはいいません。
同居の有無は、「生計を一にする」を判断する際の直接的な要件ではないため、次のケースに当てはまる場合、別居している家族であっても「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

<別居状態でも「生計を一にする」に該当するケース>

  • 別居家族へ生活費や学資金、療養費などを常に送金している
  • 日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしている

なお別居している場合、一般的には生計を別にしていることが多いため、仕送りや生活の財布が一緒であることを説明できるよう、預金通帳などの書類は保管しておいてください。

「生計を一にする」に該当する3つの具体例

具体例1:世帯主が単身赴任で長期出張をしている場合

夫婦と子1人(学生)の家族において、夫が長期出張で別居している際は、妻と子の生活費を誰が工面しているかが、「生計を一にする」を判断するポイントです。
妻と子に収入が無く、家族の生活費は夫の収入でまかなわれている場合には、夫婦と子は生計を一にしているとみなされます。

具体例2:子どもが大学進学のために上京した場合

子が大学進学のために一人暮らしをはじめた場合、子の収入や仕送りの状況によって「生計を一にする」状態であるかを判断します。
子がアルバイトをしている場合でも、親が生活費として毎月仕送りをしている場合には「生計を一にする」に該当します。
ただし仕送り額が少額である場合や、子自身の収入のみで生活できる状態にあるときは、生計を一にするとは認められない可能性がありますので注意してください。

具体例3:施設に入居している親の療育費を支払ってい

別居している家族が入院している場合、療育費を誰が支払っているかがポイントになります。
入院している親が自身の預金から療育費を支払っているときは、子と親は生計を一にしている状態とはいえません。
しかし、親子が別居している場合であっても、親の養育費を子が常に支払っているケースにおいては、生計を一にする状態であると認められます。

所得税で【生計を一にする】が使用されているケース

所得税では、所得控除を適用する際、「生計を一にする」が判定要素となっていることが多いです。
たとえば医療費控除は納税者が支払った医療費が対象ですが、生計を一にする配偶者や親族の医療費を支払った場合についても、医療費控除の対象となる支出に該当します。

<「生計を一にする」の判定要素がある主な所得控除>

種類 「生計を一にする」が関係する箇所
医療費控除 自己または自己と生計を一にする配偶者、その他の親族に係る医療費を支払った場合
社会保険料控除 自己または自己と生計を一にする配偶者、その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合
地震保険料控除 自己または自己と生計を一にする配偶者、その他の親族の有する常時その居住用として利用する家屋に対する保険料(掛金)を支払った場合
扶養控除 居住者と生計を一にしている配偶者以外の親族であること
雑損控除 居住者またはその者と生計を一にする配偶者、その他の親族が所有する資産について、災害・盗難・横領による損失が生じた場合

※所得控除ごとに「生計を一にする」以外にも適用要件があります。

相続税で【生計を一にする】が使用されているケース

相続税で「生計を一にする」が使用されるケースは、小規模宅地等の特例を適用する場合です。
小規模宅地等の特例は、土地の利用状況によって適用する制度の区分が異なり、区分ごとに生計を一にしていることが特例の適否判定に関係してきます。

<小規模宅地等の特例で「生計を一にする」が適用要件となるケース>

区分 「生計を一にする」が関係する箇所
特定事業用宅地等 被相続人の親族が当該被相続人と生計を一にしていた者であり、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を自己の事業用として利用していること
特定居住用宅地等 被相続人の親族が被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を自己の居住用として利用していること
貸付事業用宅地等 被相続人の親族が被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を自己の貸付事業用として利用していること

※小規模宅地等の特例には、「生計を一にする」以外にも適用要件があります。

まとめ

「生計を一にする」に該当するかは、同居・別居の状況だけでは判断できません。
住民票の住所が同じであっても、生活の財布が別々である場合には「生計を一にする」とはいえませんし、別居していたとしても、生活費を同じ財布から工面していれば生計を一にしていると認められます。
税金の控除や特例制度を適用する際は、生計を一にしているかどうかが適否に影響してきますので、「生計を一にする」の判断に迷う場合は、税理士へご相談することをオススメします。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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