海外不動産投資のメリット・デメリットと国を選ぶ時のポイント

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

海外不動産投資には、国内にはない魅力があります。特徴やメリット・デメリット、対象国を選ぶときのポイントなどを解説します。

海外不動産投資とは?

海外不動産投資とは

海外不動産投資とは、海外の収益物件を購入し、インカムゲイン(家賃収入)とキャピタルゲイン(売買差益)を得ることを目指すビジネスです。国内に数多くの収益物件があるにもかかわらず、「わざわざ海外不動産に投資をする必要はないのでは?」という意見もあるでしょう。しかし海外不動産投資には、国内にはない魅力があります。

海外と国内の不動産投資の違いは?

個人投資家の注目度が上がっている海外不動産投資ですが、国内の不動産投資とはいったい何が違うのでしょうか。大きく違うのは「物件スタイル、立地、市場環境」の3点です。

根本の仕組みは同じだが「物件のスタイルと立地」が違う

海外と国内の不動産投資は、根本の仕組みは一緒です。収益物件を購入して家賃収入と売買差益を得ていくことを目指します。両者で大きく違うのは「収益物件のスタイル」です。

国内の不動産投資では、一棟アパートや都心の区分マンションなどが主流です。海外不動産投資の場合、高級コンドミニアム(マンション)を購入するのが一般的です。高級コンドミニアムというと物件価格が高額になりそうですが、国内のワンルームマンションくらいの予算で購入可能です(新興国の場合)。

もうひとつの違いは「立地」です。国内だと人口の安定した東京圏や大都市圏が主流です。海外不動産の場合、都心の一等地または人気のリゾート地が多いです。

市場環境(インフレ率)が違う

もうひとつの海外と国内の不動産投資の大きな違いは「市場環境」です。日本は人口減少社会のため、モノの価値が高まりにくい(インフレ率の低い)状況が長く続いています。これにより、都心の一等地の物件を除いて、不動産の値段が高くなりにくい状況ですので、売買差益を得るのが難しい市場環境です。

一方、新興国では経済発展が著しいためインフレ率が高く、不動産の値段が高くなりやすい市場環境となっています。また、先進国でも日本インフレ率を大きく超える国が大半です。例えばアメリカは直近20年、毎年2〜3%のインフレ率をほぼ毎年続けています。これに対して、日本の直近20年のインフレ率は半分以上の年でマイナスを記録しています。

このような市場環境によって、海外不動産投資では次に紹介するようなメリットが享受できます。

関連記事:不動産投資とは?初心者のための始め方を徹底解説

海外不動産投資のメリット・デメリット

海外不動産投資のメリットは?

海外不動産投資には国内にはないメリットが数多くあります。日本の資産と上手く組み合わせることで強固なポートフォリオ作ることが可能です。

売買差益が期待できる

前述した通り、海外不動産投資の最大のメリットは、キャピタルゲイン(売買差益)が期待できることです。国内の不動産投資では、インカムゲイン(家賃収入)によるリターンを中心に考えるのがセオリーです。不動産価格は買ったときよりも安くなるのが当たり前なのです。海外不動産なら、売買差益と家賃収入、両方のリターンが期待できます。

高利回りが期待できる

不動産投資では売買差益と合わせて、家賃収入の上昇による高利回りも期待できます。例えば、発展著しい都市で労働者が大量流入している、海外企業の進出が積極的で外国人ビジネスパーソンが急増しているとなどのタイミングだと、家賃相場が上がりやすいと考えられます。国内不動産の場合は、平均的に年間1%ずつ家賃が下落していくのが普通です。

資産の分散投資ができる

安定した資産運用のためには、分散投資の視点が必須です。ただ日本の資産だけで分散投資をしても本当の意味のリスクヘッジにはなりません。例えば、日本の株式、日本銘柄を中心にした投資信託、日本の不動産などに分散していても、日本経済が伸び悩めば運用利回りを得にくくなります。日本と海外の株式や不動産にまんべんなく分散投資していれば、仮に日本経済が低調でも、資産を着実に増やしていくことが可能になります。

日本より低いコストで投資ができる

これは新興国の海外不動産投資に限ったメリットですが、日本よりも低コストで投資をすることができます。日本で不動産投資を始める場合、新築ワンルームマンションでも平均価格2千万円以上です(東京23区の場合)。新興国だとこれよりもかなり割安な価格で物件を取得することが可能です。

一例では、海外不動産投資で人気の新興国のひとつ、フィリピンの相場はマニラ都市部のコンドミニアムで1400万円超、 リゾート地だと600万円前後です。相場は時期によって異なりますが、海外不動産が割安なことには変わりありません。

海外不動産投資のデメリットは?

一方で、海外不動産投資には日本の不動産にはないデメリットも数多くあります。これまで国内で不動産投資の豊富な経験をしてきた方でも同じ感覚で参入するとリスクがあります。注意しましょう。

為替変動によるリスクがある

為替変動リスクは海外不動産投資の最大のデメリットです。将来的にその国の通貨が円高になると、いくらその国が経済成長をしていて家賃や不動産価格が上がっていても利益が圧縮されます。逆にいうと、将来的に通貨が円安になる国で不動産投資をすると、不動産価格の上昇と為替差益の両方のリターンが得られるチャンスもあります。

国によって安定性が低い

新興国の中には政治・経済が不安定で、長期的な不動産投資に不向きな国もあります。内政状況の悪化はもちろん、周辺国や敵対国との紛争になると不動産投資どころではなくなります。

情報収集が困難

国内の不動産投資に関する情報は、信頼性の高いネットメディアや本などで手軽に得られます。これに対して海外の不動産情報は少なく、信頼性のない情報もかなりあるようです。併せて、手軽に現地を訪れることができないため、リアルな情報も得にくい環境といえます。

不動産に関する法律が未整備

日本では不動産に関する法律が充実しているため、購入者が業者にあからさまに騙されるケースは少ないです。一方、新興国は不動産に関する法律が未整備で投資家が被害にあうこともよくあります。一例では、日本では法律で禁じられている青田買い(プレビルド)の物件を購入したのに、工事が全く進まないといったこともよくあるようです。

投資先の法律や税制の変更

海外では、不動産や外国投資家に関する法規制が変更になることもあります。特に新興国では予告なしで法規制の内容が変わることも考えられます。

海外不動産投資のエリア選び 先進国と新興国の違いは?

海外不動産投資において「どの国に投資するか」も成功を左右する要素です。「あの国が好きだから」「よくあの国に遊びに行くから」といった理由で投資先を決める人もいますが、あくまでも投資なので感情ではなく、国ごとのメリット・デメリットを比較した上で決定するべきでしょう。

具体的な国を選ぶ前に、投資先は大きく欧米などの「先進国」と東南アジアの「新興国」に分かれます。それぞれの特徴を見ていきます。

先進国の不動産投資

海外不動産の投資先として、日本人に人気の先進国にはアメリカ、イギリス、オーストラリアなどがあります。ただ一口にアメリカの不動産といってもニューヨーク、東海岸、ハワイなど数多くの選択があります。その中でも、金融ビジネス街や世界的に有名な大学に近いエリアは特に価値が高いです。

これら先進国の特徴は、政治経済が安定しているため、家賃収入が安定していることが挙げられます。そのため、長期スパンで不動産投資をしたい人に向いています。

新興国の不動産投資

海外不動産の投資先として、日本人に人気の新興国にはタイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム、フィリピンなどがあります。さらに同じ国でも、都市部とリゾート地の選択があります。

これら新興国の特徴は、経済発展が著しいため売買差益が期待できることです。経済成長をすると、それに伴って不動産価格や家賃が上昇しやすいのは先ほど触れた通りです。割安な価格で物件を購入し、上手いタイミングで売り抜ければまとまった利益を得やすいです。これは日本の不動産投資にはない魅力といえます。

先進国と新興国の比較

端的にいうと、先進国の不動産投資はミドルリスク・ミドルリターン、新興国はハイリスク・ハイリターンです。先進国への不動産投資は、基本的に日本の不動産投資に近い経営環境といえるでしょう。一方、新興国の不動産投資は、同じ不動産投資といってもまったくの別モノと考えた方がよいかもしれません。それだけに、購入・運用をサポートしてくれる現地の不動産エージェント選びが重要になってきます。

海外不動産で投資国を選ぶときのチェックポイント

海外不動産投資を始めるときには「どの国を対象にするか」を決めることがファースト・ステップになります。その際のチェックポイントは次の通りです。

国の経済が安定しているか

その国の経済が悪化する、あるいは伸び悩むと、空室や価格下落のリスクが高まりやすいです。このリスクを完全に回避することはできませんが、少なくともその国の過去のGDP、予測GDPは把握した方がよいでしょう。リスクが大きいか、小さいかが判断できます。

ただし、世界的な経済危機は予測するのが困難です。経済危機のときは先進国以上に新興国のダメージが大きいケースもあるため、新興国の不動産投資は余力の範囲内でやることが基本と考えましょう。

政治が安定しているか

政治が安定していることも投資判断に欠かせない材料になります。体制変更があると不動産関連の法律が変わったり、税制が変わったりということも考えられるからです。傾向としては、先進国は不動産のルールが予告なしにいきなり変わることは少ないですが、新興国は政権交代などによってルールが激変することもあり得ます。

為替変動リスクがないか

「海外不動産投資のデメリット」で解説した通り、為替変動リスクは要注意です。いくら物件価格や家賃収入が上昇しても、為替が円高に振れてしまえば利益が圧縮されてしまいます。

将来の為替変動リスクを予測するのは難しいことですが、ひとつの考え方として、豊富な資源を有していて貿易黒字が大きい経済発展国なら通貨が強くなりやすいため、長期的に見たときに円安に振れる可能性が高いという考え方もあります。

親日的な国民性か

海外とはいえ不動産投資は原則、中長期的な投資になります。運用は現地の管理会社に任せますが、もともと反日感情の強い国だとその感情が何かのきっかけで高まったときにトラブルになったり、不利益をこうむったりしかねません。出来る限り、親日の国を投資先に選ぶのが賢明です。その国が親日感情と反日感情どちらが強いかは、ネットで過去のニュースなどを検索すればすぐにわかります。

対象国を決めた後のステップは?

上記のチェックポイントを参考に対象国を絞り込んだら、次は業者を決めます。基本的には、対象国での実績が豊富な不動産エージェントが主催している、日本開催のセミナーや現地ツアーに参加し、その国特有のルールや最新情報(不動産市況、法律改正の動きがないか、政治経済は安定しているかなど)を知ることが大切です。

海外不動産投資は、日本国内のように法律で手厚く守られているわけではないため、業者選び、物件選びは国内以上に慎重に行う必要があります。

まとめ:為替の動向を読んで、絶妙なタイミングでの参入を

ここでは海外不動産投資のメリット・デメリット、さらに国を選ぶときのチェックポイントなどを中心に解説してきました。その内容を振り返ってみましょう。

海外と国内の不動産投資の違い

冒頭では、海外と国内の不動産投資の違いとして「物件スタイル、立地、市場環境」の3点を挙げました。このうち最も重要なのは「市場環境」です。海外ではインフレ率が日本よりも高いため、モノ(不動産)の価値が長期的に高まっています。

海外不動産投資のメリット

これにより、購入したときよりも物件価格が上がりやすくキャピタルゲイン(売買差益)を得やすい環境です。これは国内の不動産投資にはないメリットといえます。この他、高利回りが期待できる、分散投資ができるなどのメリットもありました。

海外不動産投資のデメリット

一番のデメリットは、為替変動リスクがあることです。投資した国の通貨に対して円高になってしまうと、不動産価格や家賃が上昇しても利益が圧縮されてしまうので要注意です。他にも、国によって安定性が低い、不動産に関する法律が未整備などのデメリットもありました。

そして最後に国選びのチェックポイントとして、「国の経済が安定しているか」「政治が不安定ではないか」「為替変動リスクがないか」「親日的な国民性か」を紹介しました。

この記事を通して、海外不動産投資にはたくさんの要素が関わっていることをご理解いただけたでしょう。その中で一番注目すべきは「為替変動」です。これを上手く使えば利益を膨らませることもできますし、逆に利益が圧縮される原因にもなります。その意味では、為替の動向をしっかり読んで絶妙なタイミングで参入することが理想です。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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