失敗しない!中古アパート経営の方法とは?5大メリットとリスクについて解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

アパート経営をはじめたいけれど、中古と新築で迷っている」という人向けのコンテンツです。記事の前半では、中古アパートのメリットとリスクを客観的に評価。後半では中古アパートの選び方のコツを解説します。「新築アパートを経営すればよかった」逆に「中古アパートにするべきだった」と後悔しないよう、最後までお読みいただければと思います。

アパート経営の基本については、「アパート経営とは?知っておきたい基礎知識を税理士が解説」で解説しておりますので、こちらも合わせて御覧ください。

中古アパート経営の5大メリットとは?

同じアパート経営でも、中古と新築ではメリットもリスクも大きく変わってきます。まず、中古アパートだからこそのメリットは次の5つです。

中古アパート経営メリット1:新築アパートよりも割安、利回りが高い

中古アパートと新築アパートの価格を比較すると、同じ規模・立地なら中古の方が割安です。なぜ安いかというと、土地の価値は中古も新築も変わりませんが、建物の価値が築年数とともに減っていくからです。当然ながら、築年数の経っている築古アパートになるほど割安になります。価格が安い分、高利回りの賃貸物件もあり、初期費用の回収が効率的なケースも多いです。

中古アパート経営メリット2:家賃収入がすぐに入ってくる

中古アパート経営には、オーナーチェンジ(入居者付きで売買すること)の魅力もあります。購入直後に家賃収入が入ってくるため、とくにキャッシュフロー重視のオーナーは安心でしょう。これに対して、新築アパートは建物が完成した前後から、入居者募集を本格的にスタート。そこから入居者が決まるまでに期間を要するため、家賃収入を得るまでにタイムラグがあります。

中古アパート経営メリット3:超高利回り物件にすることも

中古アパートのなかには空室だらけの物件もあります。こういった物件は、長期空室リスクがあるためバーゲンセールになっていることが多いですが、リフォームや集客の改善で再生できれば超高利回りのお宝物件に育てることもできます。

中古アパート経営メリット4:すぐにアパート経営をはじめられる

多忙なオーナーにとって中古アパート経営は、「ビジネスの立ち上げに手間がかからない」というメリットもあります。新築アパートの場合、土地探しや建物の建築などを経てようやくアパート経営がスタートします。中古アパート経営はすでに建物があるため、契約後すぐにアパート経営をはじめられます。

中古アパート経営メリット5:短期間に多額の減価償却費を計上できる

これは高所得者にとって大きなメリットです。木造の新築アパートの耐用年数は22年です。これに対して、中古アパートは下記の計算式で耐用年数を割り出すため、短期間でまとまった減価償却費を計上できます。

中古アパートの耐用年数の計算式
・耐用年数の経過前
新築時の耐用年数−経過年数+経過年数×0.2
・耐用年数の経過後
新築時の耐用年数×0.2

これにより、ほかの事業所得や給与所得とまとまった額の損益通算(黒字と相殺すること)がしやすくなり、所得税を圧縮することができます。

中古アパート経営の5大リスクとは?

中古アパートには、「新築アパートよりも割安」「家賃がすぐに入ってくる」などのメリットがありました。一方、下記の5つのリスクにも要注意です。

中古アパート経営リスク1:空室・家賃下落リスクがある

中古アパートのなかでも築古物件は、物件の魅力が弱まり空室リスクが高まるのが一般的です。とくに周辺に競合アパートの集中するエリアでは空室リスクが高まります。また、空室リスクを回避するために家賃を安く設定することで、想定していたリターンを得られない家賃下落リスクもあります。

中古アパート経営リスク2:融資審査で不利なケースもある

中古アパートの耐用年数が短いことはメリットの1つですが、見方を変えるとリスクにもなります。多くのオーナーが初期費用を融資でまかなうケースが多いと思います。しかし、耐用年数の残りが少ない、あるいは、耐用年数を過ぎていると「建物の資産価値がない、価値が低い」と金融機関に判断されるのが一般的です。その結果、審査に通らない、頭金を多めに入れるよう要請されるなど、融資で不利になることがあります。

中古アパート経営リスク3:修繕費がかかりやすい

建物・住宅設備は築年数が経つほど、不具合や破損が発生しやすくなります。そのため、とくに築古アパートを買うときには、修繕費をできる限り細かく見積もることが大切です。そして、この修繕費を手元資金や融資で十分カバーできる、と判断したときだけ中古アパート経営をはじめるのが無難です。

中古アパート経営リスク4:瑕疵担保責任が弱いことも

瑕疵(かし)担保責任とは、不動産を購入したあとに発覚した欠陥の責任を売主が負うことをいいます。この瑕疵担保責任は売主が不動産業者の場合、「購入後2年以上」と定められていて買主(購入者)のリスクヘッジになります。これに対して、売主が個人になると瑕疵担保責任のルールがありません。そのため、売主が欠陥の責任を負わない、あるいは、責任期間を短くするといった買主に不利な契約になるケースが多いです。

中古アパート経営リスク5:出口戦略が描きにくい

出口戦略とはアパートを売却処分することを指します。中古アパートは物件が古くなるほど買い手がつきにくくなります。この影響で将来的に空室だらけのお荷物アパートを抱えてしまうリスクもあります。

中古アパート経営をするときは要チェック!物件選びのコツ

中古アパート経営は、物件の価値さえしっかり見極められれば高利回りを実現することも可能です。その反面、「物件選び方が難しい」というハードルもあります。リスクのある中古アパートを選ばないコツは次の通りです。

中古アパート選びのコツ1:空室率が高いときは原因を確認する

中古アパートを検討している人は、まず利回りと空室率(稼働率)に注目することが多いのではないでしょうか。検討している物件の空室率が高いときは、「その原因を把握すること」が何より重要です。原因の種類によって、購入後に空室率を改善できるか、しにくいかを判断できます。

空室率を改善しにくいケース

・エリアの人口が急減している
・以前近くにあった大学キャンパスや大規模工場がなくなった
・近隣に入居者が敬遠する嫌悪施設がある
・建物が極端に傷んでいてリフォームが難しい など

空室率を改善できる可能性があるケース

・エリアの人口が比較的安定している
・現在のオーナーの集客意欲がない
・相続されたアパートなどで放置されている
・適切なリフォームをすれば物件の魅力が打ち出せる など

空室率が高いときは、不動産仲介会社などを通して現在のオーナーに必ず原因を確認しましょう。空室の原因がはっきりしない、あるいは、説明されても納得できないときは手を出すべきではありません。

中古アパート選びのコツ2:家賃の延滞状況を確認する

空室率の確認と併せて、「家賃がきちんと支払われているか」の確認も大切です。直近1年〜の家賃の滞納がないかを必ず確認しましょう。支払い忘れなどで1〜2週間入金漏れがある程度のケースは気にする必要はありませんが、 長期滞納者や滞納常習犯には要注意です。

長期滞納者がいる場合は、 法的な手続きをとって立ち退いてもらなければなりません。夜逃げされるリスクもありますし、手間と費用(弁護士報酬など)がかかるため、不動産投資の初心者は手を出さないのが無難でしょう。

中古アパート選びのコツ3:現地確認をする

空室率や家賃の支払い状況などを確認し、それでも魅力を感じる中古アパートなら現地確認をしてから買付を出すのが安全です。現地確認のチェックポイントは次の通りです。

  • 物件情報だけでは把握できない大きな問題がないか
  • 周辺環境の雰囲気はどうか
  • 周辺の競合物件の空室状況はどうか
  • 駐輪場やエントランスが荒れていないか
  • 空室率は事前情報と合っているか

 など

中古アパートの売買では、不動産会社から事前に教えてもらった空室率と実際の空室率が違うケースもあります。これに気づかないまま購入してしまうと、期待していたリターンを得られなくなってしまいます。次に挙げる複数の視点で稼働している部屋を確認しましょう。

  • 部屋にカーテンがかかっているか
  • 郵便ポストが閉じられていないか
  • 玄関周りに生活感があるか

 など

巧妙なケースだと、空室の部屋にカーテンをつけて稼働しているように見せかけるケースもあります。そのため、複数の視点でチェックすることが大事です。

中古アパート選びのコツ4:違法物件は避ける

違法物件でないかも事前に確認しましょう。違法物件とは、たとえば法律で決められた容積率をオーバーしているようなアパートです。このような違法物件は融資審査が通りにくいため、物件を検討した手間や時間がムダになってしまう可能性が高いです。

仮に、融資審査に通って購入できたとしても、アパートを売却するときに苦労する可能性が高いです。なぜなら、そのアパートを購入したいという人が出てきても融資審査に通る確率が低いからです。

ちなみに以前は、関西エリアなど違法物件でも融資審査が通りやすいエリアもありました。最近は金融機関のコンプライアンスの意識が高くなっているため、違法物件の融資は相当ハードルが上がっています。

まとめ

最後の注意点としては、中古アパート経営をはじめるときには顧問税理士を決めておいた方が安心です。不動産投資では、物件を購入するとき、運営しているとき(さらに毎年の確定申告)、売却するときなど数多くの種類の税金が発生します。顧問税理士を事前に決めておかないと、多額の税金の支払いが発生したり、節税の手法が使えなくなったりします。

当メディアを監修するマルイシ税理士法人は、不動産専門の税理士事務所です。中古アパート経営サポートの実績も豊富です。もし、顧問税理士がお決まりでないようでしたら、お気軽にご相談ください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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