マンションは売却と賃貸どちらを選ぶのが正解?メリットとデメリットを比較

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

目次

不動産に強い税理士をお探しの方へ
不動産税務に特化している税理士事務所
マルイシ税理士法人に相談してみませんか?

相続が発生して相続税申告が必要な方について、マルイシ税理士法人では面談相談(初回無料)を行っています。
累計1万件以上の相談実績のある相続専門の税理士が、個別の案件ごとに見解やアドバイスをお伝えします。
記事では書ききれないような、具体的な実務上の取り扱いなどもお話しできますので、お気軽にお問合せください。

今、住んでいる「マンションを売却・賃貸どちらにするか」で迷っている人に役立つコンテンツです。この記事の前半では、売却・賃貸のメリット・デメリットを客観的に比較。さらに後半では、どのようなケースで売却・賃貸を選択した方がよいかを紹介。不動産専門の税理士が徹底解説します。

マンションの売却・賃貸の基本的な考え方

「マンションを売却・賃貸どちらにするか」をテーマにした記事は他にもありますが、業者目線になっている内容も多いので要注意です。仲介系の不動産会社は売却した方が利益になるためこちらを推しますし、管理系の不動産会社は賃貸を推します。

このような業者目線に流されないためには、売却・賃貸の客観的なメリット・デメリットを把握する必要があります。本稿は売却・賃貸のどちらかを推すものではありません。あくまでも選択するときのヒントとしてご活用ください。

マンションを売却するメリットは?

売却のメリット1:まとまったお金が入る

マンションを売却して得られたお金は、相続費用にしたり、老後資金にしたりすることもできます。また、次の住まいの引っ越し・購入資金などにも利用できるでしょう。あるいは、このお金を住宅ローン完済の一部にあてがうこともできます。

売却のメリット2:ランニングコストがかからない

マンションを売却することで、所有しているとかかる管理費や税金をカットできるメリットもあります。ランニングコストには組合に払う修繕積立金や管理費、税金には毎年支払う固定資産税・都市計画税などがあります。

売却のメリット3:売却価格の値下がりを避けられる

これから先のマンション価格は、値下がりリスクを抱えているという見方もできます。主なリスク要因は、人口減少による地価下落、高値止まりになっている不動産価格の暴落などです。マンションを手放して賃貸住宅に移れば、値下がりリスクを気にしなくても済みます。

マンションを売却するデメリットは?

売却のデメリット1:仲介手数料などが発生する

マンションを売却すると、仲介手数料や登記関連費用のコストが発生します。ちなみにマンションを売却して得られる売却益には譲渡所得税がかかりますが、「特別控除の特例」があるため3,000万円までの利益には課税されません。

売却のデメリット2:賃貸に出した方がお得なケース

好立地のマンションの場合、築年数が経ってもほとんど価格が変わらなかったり、逆に値上がりしたりすることもあります。こういった資産価値の高い物件は、売却するよりも賃貸に出した方がお得なケースもあります。

売却のデメリット3:タイミングで売却価格が変わる

マンションの価格は、売却するタイミングによって大きく変わってきます。価格が下落している局面で売却したり、売り急いで買い叩かれたりすることで損をすることもあるのでご注意ください。

マンションを賃貸するメリットは?

賃貸のメリット1:不労所得を得られる

マンションを賃貸する最大の魅力は、家賃収入を得られることです。マンションを売却すると一時的にまとまったお金が入りますが、それが尽きれば終わりです。賃貸であれば入居者がいる限り、毎月決まった不労所得を得られます。

賃貸のメリット2:ローンとの差益を得られる

まだ、住宅ローンの返済が終わっていないマンションを貸し出すパターンもあるでしょう。この場合、「家賃収入−必要経費」で十分な収益が出るなら、賃貸のメリットが大きいとも考えられます。とはいえ、住宅ローンを返済中のマンションは賃貸に出せないのが契約上のルールです。たとえば、転勤や実家にいる親の介護で一時的に住めなくなったなど、やむを得ない事情があれば認められることもあります。なお、金融機関に無断で賃貸に出すと、発覚したときに一括返済などのリスクがあります。

賃貸のメリット3:所得税を抑えながら経営できる

賃貸マンションの家賃収入には所得税がかかりますが、課税されるのは家賃全額ではなく「家賃収入−必要経費=不動産所得」に限られます。この経費にはさまざまな種類があるため、所得税を抑えながら不労所得を得られます。

不動産投資の経費例

●減価償却費●損害保険料●管理会社に支払う管理委託費●修繕費●退去時の修繕費●固定資産税・都市計画税●その他、不動産投資に必要な諸経費(書籍代・通信費・交通費)など

マンションを賃貸するデメリットは?

賃貸のデメリット1:空室リスクがある

賃貸しているマンションが空室になれば、家賃収入が途絶えます。その間、管理費や固定資産税などの出費を手持ち資金で埋めなければなりません。最近は、広範囲のエリアで人口減少が進んでいるため、ずっと入居者が決まらない長期空室リスクにも要注意です。

賃貸のデメリット2:修繕・リフォーム費用がかかる

賃貸しているマンションの住宅設備(エアコンや給湯器など)は、故障時に加えて、一定期間ごとに交換するべきものです。この費用はオーナー負担になります。また、築年数が経ってきて室内の傷みが激しい、あるいは、古さが目立ってきた場合は、リフォーム費用が必要になることもあります。

賃貸のデメリット3:資産価値の下落リスクがある

マンションの流動性(換金のしやすさ)には、築年数が大きく関わります。たとえば、築30年以上などになってくると、空室リスクが高まる、あるいは、資産価値が低いなどの理由で買い手がつきにくくなります。そのため、「流動性がある今のうちに売却したほうがよい」という考え方もできます。

マンションを売却した方がよいケースは?

売却がよいケース1:まとまったお金が今すぐ必要である

今すぐお金が必要なら、間違いなく売却を選択すべきです。賃貸でまとまったお金を手に入れることはできません。ただし売り急ぐと、相場の価格以下で買い叩かれるリスクもあります。これを防ぐには、複数の不動産業者の査定を受けたり、ご自身で相場を調べたりするのがポイントです。

売却がよいケース2:不動産価格が上昇している

不動産マーケットは景気の影響を受けるのが一般的です。不動産価格が上昇している局面では、有利な条件で売却しやすいため、こちらを選択するのもよいでしょう。なお、マンション価格の動向は、東京カンテイの「中古マンション市況レポート」などを参考にするとよいでしょう。ネット上で無料閲覧できる有益情報です。

売却がよいケース3:エリアの入居者ニーズが低下している

マンションのあるエリアの人口が急減している、あるいは、競合物件が急増しているといった場合は、売却を選択した方が賢明かもしれません。なぜなら、このようなエリアのマンションを所有していても空室と家賃下落リスクが高まるばかりだからです。長期空室になると、ランニングコストだけを負担し続けることになります。

売却がよいケース4:面倒な手間を省きたいとき

たとえば、賃貸マンションを相続したものの、物件管理や確定申告を行うのが面倒という人は、早めの売却を検討した方がよいかもしれません。物件・入居者の管理を怠れば空室リスクが高まります。また、確定申告を行わなければ税務署などから連絡がきます。

売却がよいケース5:高値掴みをしている

マンションを高値掴みで購入しているときは、売却をしても損失になる可能性が高いです。そのため、一見すると「賃貸に回して損失を穴埋めした方がよい」ように感じられます。しかし、長期空室になるとさらに損失が膨らむ恐れがあるため、早めに損切りするのが賢明という考え方もできます。

売却がよいケース6:高金利で購入している

高金利でマンションを購入している場合も、売却した方がよいケースが多いようです。たとえ入居者が見つかっても、割高な金利とランニングコストの負担で儲かりにくい体質だからです。仮に、利益が出ていても利幅が薄いと、空室や家賃下落でたちまち赤字になってしまいます。

マンションを賃貸に出した方がよいケースは?

賃貸がよいケース1:再びここで住みたいと感じる

一時的な転勤や親の介護などで今はマンションに住めないものの、将来的にまたここで暮らしたいという希望があるなら、賃貸の選択もありです。「このマンションに再び住むかどうかはっきりしない……」というときも、とりあえず賃貸に出して様子見をするのもよいでしょう。

賃貸がよいケース2:都心部など立地がよい

マンションのあるエリアが大都市の都心部なら、賃貸の選択も考えられます。ただし、「エリアの人口が長期的に安定している」ことが条件になります。人口が安定しているということは、入居者ニーズが安定しているということです。将来の人口に関しては、各自治体の人口動態予測などのデータを参考にしてみましょう。

賃貸がよいケース3:マンションが築浅である

マンションの築年数が10年以下など、築浅の場合も賃貸の選択が考えられます。理由は、建物が比較的新しいため、賃貸物件としての魅力があるからです。とくに「都心部×築浅」で手頃な家賃設定なら空室リスクは軽減しやすいです。

まとめ

上記のように「売却した方がよいケース」と「賃貸がよいケース」を実際に比べてみると、前者(売却)の方がケース数の多いことがわかります(だからといって、賃貸の方がよいということではありません)。もう1つ、売却と賃貸を考えるときの基準としては、「マンション経営を支えるチームづくりができるか」もあります。賃貸マンションを安定経営していくには、次の3者で構成される専門家チームが必須です。

  • 物件管理を担当する管理会社
  • 入居者付けをする客付会社
  • 節税や確定申告をサポートする税理士

税理士についていえば、「単に税理士がいればよい」ということではありません。マンション経営に関する税金は種類が多く複雑なため、不動産専門の税理士を選ぶのが無難です。当メディアを運営するマルイシ税理士法人は、不動産案件で国内トップクラスです。賃貸マンションの税務についてはお気軽にご相談ください。また、売却時の譲渡所得税のサポートも承ります。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

税理士紹介はこちら

  • ページタイトルと
    URLがコピーされました