不動産収入だけで生活する5つのポイントと手取金額を増やす方法

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

ここでは「将来、不動産収入だけで暮らしたい」と考える人に役立つ情報をお届けします。不労所得生活を実現している賃貸オーナーには、5つの共通点があります。不動産に強い税理士である筆者がその内容をくわしく解説します。

専業大家を目指すなら、「手取金額」に着目すべき

手取金額の計算方法

手取金額は、「賃料収入△経費△ローン返済△所得税等の税金」で算出されます。

不動産収入だけでの生活を目指すなら、増やさなければならないのは「賃料収入」でなく「手取金額」です。この部分を勘違いしてしまうと、不労所得生活は実現できません。

まずは不動産収入と経費についてそれぞれ見ていきましょう。

不動産収入

不動産収入としては、主に次の通りです。

  • 家賃
  • 更新料
  • 管理費
  • 共益費
  • 礼金
  • 駐車場・駐輪場

その他、自動販売機の設置による収入や通信設備の設置料金等があります。

不動産経営の必要経費

経費の主なものは次の通りです。

  • 税金(固定資産税・不動産取得税・事業税など)
  • 物件状態を維持するリフォーム費用
  • 委託管理費
  • 損害保険料
  • 共用部分の水道光熱費
  •  など

たとえば、1室あたり100万円の年間賃料収入があって、80万円が年間経費・ローン返済・税金支払なら、手取金額は20万円です。この手取金額が増えるほど「不動産収入だけでの生活」の実現が近づきます。

不動産収入だけでの生活を実現するための5つのポイント

不動産収入だけの生活を実現している人には、次の5つの共通点があります。

  1. 一棟物件を所有している
  2. 空室対策を徹底している
  3. 収益物件のメンテナンスを怠らない
  4. 信頼できるビジネスパートナーがいる
  5. 手取金額を増やすことを重視している

これら5つのポイントのうち満たしている数が多いほど、不労所得生活を叶えやすいといえるでしょう。

ポイント1:一棟物件を所有している

不動産収入だけで生活するには、ある程度の経営規模が必要です。たとえば区分マンションを1部屋所有するだけでは、それだけで生活ができるほどの所得を得ることはできません。

一般的に考えれば、不動産収入だけで生活するには、最低でも数十万円のお金が必要です。参考までに、総務省統計局の家計調査(令和2年度)によると、平均消費支出は月に24万4500円です(総世帯の場合)。不動産収入の手取金額だけでこれくらいのお金をまかなうためには、一棟物件のマンションまたはアパートを所有することが前提になるでしょう。

区分マンションでもたくさんの部屋数を確保するのは不可能ではありません。しかし、物件を探す手間やスムーズな融資を考えると、一棟物件を所有した方が効率的です。区分マンションの選択は「副業をしたい」「老後年金にしたい」などの目的の場合はよいのですが、専業大家を目指すのであれば不向きといえます。

ポイント2:空室対策を徹底している

せっかく一棟物件を所有していても、複数の部屋で長期空室が発生すれば、不動産収入だけでの生活は難しくなります。そのため、専業大家をずっと続けている人は、空室対策を徹底しているのが特徴です。具体的な空室対策としては、下記の選択が考えられます。

  • 立地のよい収益物件を購入する
  • サブリースを利用する
  • 満室保証を利用する
  • 家賃保証を利用する
  • など

「サブリース」とは

専門業者や管理会社が部屋を借り受けてくれる仕組みです。契約期間内は空室リスクがなくなります。

「満室保証」とは

新築等の場合で一定期間内に入居者が決まらなければ、それ以降の空室期間は家賃を保証してくれる仕組みです。

「家賃保証」とは

滞納が発生した際、家賃分を保証会社がカバーしてくれます。

ポイント3:物件の適切なメンテナンスをする

アパートやマンションは築年数が経つほど、家賃下落と空室のリスクが高まります。不動産収入だけで生活している賃貸オーナーは、これらのリスクを軽減するために物件のメンテナンスをこまめにしている人がほとんどです。

必要なメンテナンスとは具体的に、屋根や外壁の塗り替え、エアコンや給湯器など住宅設備の交換、共用部の床や壁の補修などです。なお、これらを適切に実行していくには、将来のメンテナンス計画を立案し、その内容に沿って毎年の手取金額の一部をストックしていく必要があります。

ポイント4:信頼できるビジネスパートナーがいる

長期的に成功している賃貸オーナーに共通する傾向としては、安定経営を実現するための専門家チームを持っていることも挙げられます。それぞれの分野(管理会社、客付け会社、工事会社、税理士など)で信頼できるパートナーを選び、それをチームとして機能させているイメージです。

ただし、チームづくりは一朝一夕ではできないことです。数多くの業者と会って、実際に仕事をしていくなかで信頼関係を築いていくしかありません。

マルイシグループなら各分野のプロフェッショナルと連携可能

マルイシグループでは、不動産税理士を中心に不動産オーナーのためのサポート体制を整えております。税理士業務はもちろん、不動産の管理、リフォーム、相続までワンストップで対応可能です。

ポイント5:手取金額を増やすことを重視している

不動産投資のよくある失敗は、手取金額を増やすはずがローン残債ばかり増やしてしまうというものです。数十年先の老後資金が目的であればそれでもよいかもしれません。しかし、不動産収入での生活を目指すのであれば、あくまでも手取を残すことが重要です。

関連記事:不動産投資とは?初心者のための始め方を徹底解説

「手取金額」を増やすための方法

先に紹介した5つのポイントのうち、「手取金額を増やすことを重視している」はとくに重要です。そのため、さらに深掘りしたいと思います。手取金額を増やす具体的な方法には次の3つがあります。

  1. 高利回り物件からはじめる
  2. ローン負担を軽くする
  3. 減価償却が終わった物件を売却する

方法1:高利回り物件からはじめる

はじめに購入する1棟目が低利回りだと、その後の新規融資で不利になり、規模拡大が進みにくくなります。これを回避するため、賃貸経営の目的が「不動産収入による生活」の場合は、高利回り物件からはじめるのが無難です。

一般的には、「東京都心部<政令指定都市<その他の地方」の順で高利回りの傾向にあります。ちなみにエリア別の利回りの相場は次の通りです。

  • 東京都心部:3〜9%
  • 政令指定都市:7〜12%
  • その他の地方:10%〜

さらに同じエリアでも、築年数が経つほど高回りの傾向が強まります。一方で、高利回りになるほど空室リスクが高まるのが普通です。利回りと空室率のバランスを考えながら、エリアや築年数を選定していく必要があります。

方法2:ローン負担を軽くする

不動産収入を増やすには、ローン負担を軽くする視点も欠かせません。そのためには、以下を意識するべきでしょう。

  • 低金利で融資を受ける
  • 頭金を増やす
  • 返済期間を長くする

上記のうち、「返済期間を長くする」については補足があります。不動産収入だけでの生活が数十年後など、ずっと先に叶えばいいという考え方であれば、返済期間を長くして月々の返済額を減らした方が「年間の手取り金額」が増えます。

ただし、 出来る限り早い段階で不労所得生活を実現したいのであれば、上記のうち1と2を重視して「トータルの手取金額」を増やす方がよいでしょう。

方法3:減価償却が終わった物件を売却する

ときには所有物件の経費計上が少なくなった段階で売却し、新規物件に入れ替える施策も必要でしょう。これにより、手取金額の安定または増加が可能になります。物件の売却時期としては「減価償却期間が終わるタイミング」が考えられます。減価償却費を計上できなくなると経費が少なくなるため、所得税等の税金が高くなり、必然的に手取金額が減少してしまうからです。

ちなみに不動産投資において減価償却費を計上できる期間(法定耐用年数)は、以下のように定められています。

  • 木造モルタル造:22年
  • 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造:47年

中古の木造アパートを購入した場合は、上記の法定耐用年数に代えて「中古資産の耐用年数(※)」を選択することも可能です。ただし、築古のアパートなどの場合、中古資産の耐用年数を選択すると減価償却期間がかなり短くなるケースも多いので、出口戦略(売却タイミング)を明確にした上での購入が必須となります。
※国税庁では、中古資産の耐用年数の独自の計算方法を定めています。

一例では、簡便法として下記の計算方法を定めております。
①法定耐用年数の全部を経過した資産
 その法定耐用年数の20%に相当する年数
②法定耐用年数の一部を経過した資産
 その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に、経過年数の20%に相当する年数を加えた年数

不動産収入だけで生活するために考えたい税金対策

不動産収入による生活を目指すなら「不動産に強い税理士を見つけること」も欠かせないポイントでしょう。

5つのポイントでみたように、不動産収入での生活を実現するには、賃料収入の多い一棟物件の所有が必須です。ただ一棟物件は経営規模が大きいため、確定申告の仕方などにより毎年の税金が大きく変わることがあります。そのため、税理士の存在が不可欠なのです。物件の売買契約をする前後など、早い段階で不動産分野に強い税理士を見つけておくと安心です。

また、不動産収入での生活を考えるなら、適切な段階で法人化するケースもよくあります。ビジネスパートナーに経験豊富な税理士がいれば、適切なタイミングを見極めやすいです。さらに一棟物件を所有すると、将来的には相続税対策も必要です。この対策は早めに着手すると節税効果が高くなるケースがほとんどです。相続税対策を考えても税理士の存在が欠かせません。

不動産に強い税理士を見つけるには、無料相談などを通して実績やサポートメニューをヒアリングするところからはじめるのがスムーズです。

マルイシ税理士法人では、不動産オーナー向けに無料相談を実施しています。下記リンクより詳細をご確認ください。

不動産と相続專門の税理士による無料相談はこちら

まとめ

まず一棟物件を所有して、まとまった賃料収入があるからこそ、不動産収入による生活が成り立つという前提があります。そこに「空室対策」「適切なメンテナンス」「信頼できるビジネスパートナー」の要素が加わることで不労所得生活の可能性が高まるわけです。

そして、「(賃料収入ではなく)手取金額にこだわること」も大切な要素でした。

ここで一番皆さんにお伝えしたかったことは、不動産投資の目的が変われば意識すべきポイントが変わるということです。何のために賃貸経営をするのか。これを明確にした上でブレない不動産投資を実行しましょう。

参考:賃貸オーナーのうち、専業大家は約8人に1人

不動産収入だけで生活する賃貸オーナーの割合を確認したいと思います。そもそも専業大家の割合が極端に低ければ、挑戦がムダになってしまう可能性が高いからです。

参考データとして、不動産投資家に人気の某収益物件の情報サイトの投資家アンケートの職業欄を参考にしてみましょう。このアンケートでは回答者の職業が公開されています。回答者のうち、職業を「不動産経営」と書いているのは全体の13.3%です。

(出所:健美家「第13回不動産投資に関する意識調査」

つまり、不動産投資家の約8人に1人が家賃収入を主体に生活している専業大家ということになります。この割合を「実現可能」と見るか「不可能」と見るかは人それぞれですが、数千人に1人、数万人に1人という夢のような話ではないことは確かです。

実際に、当税理士法人のクライアントにも専業大家の人はいらっしゃいます。本気で目指されるのであれば、挑戦する価値はあるのではないでしょうか。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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