マンション売却の査定の流れとは?事前準備と評価項目についても解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

マンション売却を考えたとき、査定を依頼する前に「査定の基本」を知ることが大切です。マンションの査定は中身が複雑なので、依頼する側も基本知識を学んでおき、準備をするなどの努力が求められます。この部分で手を抜くと「相場よりも安く買い叩かれる」「なかなか売れない」などの失敗確率が高まります。

そもそもマンション売却の査定とは?

マンションの査定とは、不動産鑑定士や不動産会社などの専門家が評価を行い、「今、市場に出すと、これくらいで売れるだろう」という価格を算出することをいいます。ただし、査定価格は見込額なので、それよりも高くなることも安くなることもあります。

参考までに、(公財)不動産流通推進センターの研究報告によると、査定価格よりも高く取引された割合は約6割、査定価格よりも安く取引された割合は約4割とのことでした。このように、査定価格はあくまでも目安です。マンションを不動産市場に物件を出すときの「売出価格」や実際に売却するときの「成約価格」とは差がある点に注意しましょう。

マンション売却時の査定方法は3通りある

マンション売却時の査定には、次の3通りの方法があります。

  1. 身近な不動産会社へ依頼する
  2. 一括査定サイトを利用する
  3. 不動産鑑定士へ依頼する

それぞれに特徴がありますので、相性のよい方法を選びましょう。

方法1:身近な不動産会社へ依頼

具体的には、下記のような不動産会社へ査定を依頼する方法です。

  • 近隣にある地域密着の不動産会社
  • 知り合いに紹介された不動産会社
  • マンションを購入した不動産会社

 など

この方法を選択するメリットは不動産会社が身近な存在のため、安心感があることです。デメリットは身近な存在だと査定価格に納得できない場合、断りにくく感じる人もいることです。

方法2:一括査定サイトを利用

不動産売買に特化した「一括査定サイト」では、売却したいマンションの基本情報を入力すると、複数の不動産会社から大まかな目安である簡易査定が提示されます。そのなかから目ぼしい不動産会社に実際にマンションを見てもらう訪問査定をお願いするとスムーズです。

方法3:不動産鑑定士へ依頼

マンションの売却では、方法1または方法2を選択するのが一般的です。しかし、専門家の客観的な意見を聞きたいとき、あるいは、不動産会社の査定価格に疑問を感じるときは不動産鑑定士に査定を依頼するケースもまれにあります。ただし、不動産鑑定士の査定はそれなりの費用がかかるため、高級マンションや一棟マンションなど高額物件の売却時に利用されることが多いです。

マンション売却時の査定の流れ

先ほどお話した通り、マンションの査定にはいくつかの方法があります。ここでは、「一括査定サイト」を選択した場合の流れを紹介します。

大きな流れとしては「簡易査定(机上査定)」「訪問査定(詳細査定)」の2段階を経て最終的に媒介契約をする不動産会社を絞り込むのが一般的です。

簡易査定(机上査定)とは?

一括査定サイトでは、マンションの基本情報をネット上で入力すると、登録している不動産会社が大まかな査定価格を提示してくれます。

簡易査定の場合、マンションの現物を見るわけではなく、過去の類似取引データや現在のマーケット状況などをもとに査定価格を計算します。そのため、平均1〜2日という短期間で査定価格が提示されるケースが多いです。

簡易査定を利用するときに大事なのは、たとえば4〜5社など「複数の不動産会社に依頼すること」です。複数の不動産会社に査定を依頼する理由は、使っているデータが各社で違うため、査定価格にばらつきが出やすいからです。また、手元に集まった査定価格の数が少ないと、その査定価格が適正なのかが判断できないためです。

訪問査定(詳細査定)とは?

訪問査定とはその名の通り、マンションを実際に訪問してもらって査定価格を出す方法です。簡易査定の後、「対応のよかった不動産会社」や「査定内容に納得できた不動産会社」に訪問査定を依頼するとよいでしょう。こちらも複数の不動産会社に依頼したほうが賢明です。

訪問査定では、いくつかのチェック項目でマンションを診断して客観的な価値を出します。チェック項目例は「物件の広さと築年数」「交通の便」「立地条件」などです。このほかにも数多くのチェック項目があります。

なお、訪問してから査定価格が提示されるまでの平均的な期間は1週間以内です。ある程度の期間を要する理由は、現地調査で集めた情報を精査したり、現地調査でわからなかった情報を収集したりする手間がかかるためです。

訪問査定後は、信頼できると感じた不動産会社と媒介契約を交わし、売り出し(マンションの買い手探し)がはじまるという流れです。

マンション売却の査定前に準備すべきこと

マンションの訪問査定を受ける前に、ここでご紹介する準備をしておくと査定がスムーズに運びやすいです。

準備1:必要な書類を準備する

マンションの訪問査定のとき、用意しておくと不動産会社が助かる書類には次のものがあります。

  • 間取り図
  • 権利書
  • 固定資産税の納税通知書

 など

住宅ローンの残債がある場合は、住宅ローンの残高証明を確認したいといわれることもあります。ただ、訪問査定のときに必要な書類は不動産会社によって微妙に違うため、「当日、用意しておいたほうがよい書類はありますか?」と確認しておくのが間違いないかもしれません。

準備2:マンションの情報を整理しておく

マンションの査定時の心構えとしては、不動産会社が物件の魅力を深く理解することで、「販売活動がしやすくなる=売却確率が上がる」というものです。そのため、依頼主側も手持ちの物件情報を積極的に提供する努力が必要です。

あると不動産会社が助かる物件情報としては、分譲時のパンフレットがあります。なぜなら、外観を見ただけではわからない耐震性能や基本性能を確認できるからです。パンフレットがない場合も、マンションの性能・管理体制・修繕計画などを簡単なメモでまとめておくと担当者が助かります。

準備3:室内の掃除をしておく

基本的な考え方として、室内が整理整頓されているからといって、マンションの査定価格が高くなるわけではないというのが原則です。とはいえ、無料で査定をしてくれる不動産会社への礼儀として、最低限の掃除をしておいたほうがベターです。

また、査定は数多くのチェック項目で行われますが、その中には専有部分(室内)状況のチェックもあります。掃除をすれば良好な室内状況が、汚れているためにマイナス評価を受ける可能性もゼロではありません。やはり査定前には掃除をしておくのが無難です。

マンションの査定価格のもとになる7つの評価項目

訪問査定は不動産会社独自の基準で行われる一方で、その内容は業界内で指針とされている「価格査定マニュアル」(作成:不動産流通推進センター)が参考になっているのが一般的です。この価格査定マニュアルの内容を参考にしながら、マンション査定価格のもとになる評価項目を紹介します。

項目1:物件の広さ、築年数

物件の広さと築年数は、査定の基本となる情報です。一般的なマンションの査定では、平方メートルあたりの単価に専有面積と評価ポイント(評点)をかけて査定価格を計算します。当然ながら、平方メートルあたりの単価が同じなら、専有面積が広いマンションほど査定価格が高くなりやすいです。築年数については、単純に築浅の物件はプラス評価、築古の物件はマイナス評価になります。

項目2:交通の便

最寄り駅からの徒歩分数も、マンションの査定価格に大きく影響します。同じ最寄り駅でも、駅からの徒歩分数が短いほど査定でプラスになります。評価査定マニュアルの評価例では、駅からの徒歩分数10分を基準に、それよりも近いとプラス評価、遠いとマイナス評価となっています。

また最寄り駅から遠いバス圏のマンションの場合、バス停までの徒歩分数やバスの運行頻度などで評価します。ちなみに、不動産業界では徒歩1分を80メートルで換算します。

項目3:立地条件

立地条件とは、具体的に「周辺環境(例:一般住宅地など)」「店舗への距離」「公共施設利用の利便性」などです。ここでいう店舗とは日常の買い物をするスーパーやコンビニ、公共施設とは市役所や区役所図書館などが該当すると考えられます。これらが徒歩数分など至近だとプラス評価になります。

項目4:階数、住戸位置

マンションの階数が上にいくほどプラス評価になります。一例では、3階を基準にそれ以下の階はマイナス評価、それ以上の階はプラス評価になります(エレベーターがある場合)。住戸の位置は角部屋がプラス評価、日照・通風が悪いとマイナス評価になります。

項目5:専有部分

専有部分とは、ご本人やご家族が住んでいる部屋の部分です。たとえば、室内の維持管理状況が優れる、専用庭やテラスがあるなどはプラス評価、外部からの騒音振動がある場合はマイナス評価となります。これらに加えて、眺望・景観のよさやバリアフリーに対応しているかなども査定価格に影響を及ぼします。

項目6:建物部分

「マンション外観・エントランスの状態」「耐震性能」「省エネルギー性能」などが査定価格に影響します。具体的には、長期優良住宅と同レベルの耐震性があればプラス評価、建築基準法に適用していれば標準(プラスマイナスゼロ)の評価、旧耐震基準以下であればマイナス評価といった具合です。

ちなみに旧耐震基準とは、1981年5月31日以前に建築確認申請が受理された建物です。比較的最近に建てられたマンションであれば建築基準法はクリアしています。

項目7:設備、施設

マンションの査定で注目される住宅設備は「セキュリティ」と「インターネット」です。
オートロックやインターネットありでプラスマイナスゼロの評価になります。これらに対応していないとマイナス評価になります。

その他

さらに、下記の評価項目も査定価格に影響してきます。

  • 適切な修繕計画があるか
  • 十分な修繕積立金がストックされているか
  • 共用部の清掃はこまめに行われているか

 など

併せて、大手デベロッパーのハイクラスブランドのマンションであれば、ブランド価値もプラス材料になるケースもあります。

マンション売却で得た利益を申告しないとペナルティの可能性

ここまでの内容でマンション売却時の「査定の基本」についてはご理解いただけたと思います。実際に査定を受けてみて、利益(譲渡所得)が出そうな場合は、あらかじめ税理士に相談しておくのが無難です。

なぜなら、マンションを売却で得た利益は、確定申告の義務があるからです。これを怠ることは「無申告」にあたり、「無申告加算税」や「延滞税」などのペナルティが課せられる可能性があります。

とはいえ、大半の人は「知っている税理士がいない」とケースがほとんどだと思います。そういった場合は、税理士事務所の無料相談を利用するとよいでしょう。無料相談は、一部の税理士事務所が用意しているサービスです。

マンションの譲渡所得を相談する場合は、不動産に強い税理士事務所の無料相談サービスがよいでしょう(ちなみに、当事務所でも無料サービスをご用意しています。お気軽にご利用ください)。

関連記事:マンション売却の流れを7つのステップと注意ポイントで詳しく解説

まとめ

最後に、ここで解説してきた「マンション売却における査定の基本」をおさらいしましょう。マンションの査定方法は3通りありましたが、そのなかで一般的なのは「一括査定サイトの利用」でした。

そして、一括査定サイト利用の大まかな流れは、簡易査定を経て訪問査定を依頼するというものでした。簡易査定とはネット上の基本情報だけで査定を提示してくれるやり方、訪問査定とは実際のマンションを見て査定をしてくれるやり方でした。
加えて、マンションの訪問査定のときに準備すべきこともいくつかありましたが、そのなかで最重要なのは「必要な書類を準備すること」です。準備しておくとよい書類は、間取り図・権利書・固定資産税の納税通知書などです。

査定価格のもとになる評価項目は、下記のように数多くあります。

  • 物件の広さと築年数
  • 立地条件
  • 階数、住戸位置
  • 専有部分の状況
  • 建物部分
  • 設備、施設
  •  など

本文でも触れましたが、マンションの査定を成功させるポイントは「複数の不動産会社に依頼をすること」です。「営業マンが好印象だから」「査定価格が高いから」といった理由で1社のみに査定を依頼するのは避けるべきです。

複数の不動産会社に査定を依頼しなかったことで百万円単位、千万円単位の差になることも考えられます。ひと手間かかりますが、必ず複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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