不動産投資物件(収益物件)の探し方と注意すべきポイント

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

本稿の前半では不動産投資を成功させるための「収益物件探しの方法」、後半では失敗しないための「注意すべきポイント」を解説します。不動産投資に初めてチャレンジする人でも理解しやすいよう、わかりやすさ重視でお届けします。

不動産投資物件(収益物件)の探し方

収益物件探しの具体的な方法には、大きく「不動産ポータルサイト」と「不動産会社」があります。収益物件を効率的に探したいのであれば、「不動産ポータルサイト」の活用が必須になります。また、掘り出しモノ物件を探したいのであれば、「不動産会社」を併用するのがオススメです。

さらに、不動産ポータルサイトと不動産会社それぞれが以下のように分かれていきます。A〜Dの方法にどんなメリット/デメリットがあるのかを見ていきましょう。

1.不動産ポータルサイト 2.不動産会社
  • A:収益物件専門のポータルサイト
  • B:一般住居用のポータルサイト
  • C:収益物件専門の不動産会社
  • D:総合型の不動産会社

不動産ポータルサイトを活用して収益物件を探す

最近の収益物件探しでは、ポータルサイトの利用が欠かせません。ポータルサイトとは複数の不動産会社の情報をひとまとめにしたサイトのことです。「収益物件専門のポータルサイト」「一般住居用のポータルサイト」があります。

方法A:収益物件専門のポータルサイトを活用する

収益物件専門のポータルサイトの主なものには、「楽待」「健美家」「不動産投資 連合隊」などがあります。これらを利用すると、下記の特徴をもとに収益物件を効率的に絞り込めます。

  • 物件タイプ(区分、一棟、戸建てなど)
  • エリア
  • 築年数
  • 利回り

など

収益物件専門のポータルサイトのメリット/デメリットを整理すると、下記のようになります。

メリット デメリット
  • 収益物件の情報を効率的に収集できる
  • 数多くの収益物件を比較しやすい
  • 掘り出しモノ物件がすぐ売れてしまう
  • 膨大なデータから絞り込む手間がかかる

デメリットの2つ目「膨大なデータから絞り込む手間かかる」については、検索条件を明確にしておけば効率化しやすいです。

方法B:一般住居用の不動産ポータルサイトを活用する

一般住居用の不動産ポータルサイト(例:SUUMO、アットホームなど)を利用して収益物件を探す手もあります。当然ながら、一般住居用のポータルサイトであれば、購入者が住むための物件を取り扱っているのが普通です。しかし中には、収益物件に転用できるものもあります。

一般住居用のポータルサイトのメリット/デメリットを整理すると、下記のようになります。

メリット デメリット
  • 掘り出しモノ物件と出会いやすい
  • たくさんの物件から選ぶことができる
  • リサーチする手間がかかる
  • 中古物件でも入居者付けをしなければならない(オーナーチェンジ物件がない)

補足をすると、一般住居用のポータルサイトだと「なぜ、掘り出しモノ物件と出会いやすいか」というと、売主が売り急いでいるケース、相場を知らないケースもあるからです。

不動産会社を活用して収益物件を探す

不動産ポータルサイトに加えて、不動産会社経由の情報収集ネットワークを持っておくことで、不動産マーケットに出される前、あるいは、出された直後のお買い得な収益物件を探しやすくなります。

不動産会社と知り合うきっかけは、「知り合いの紹介」「セミナーに参加した」「ポータルサイトの掲載物件を問い合わせた」などさまざまでしょう。いずれにしても、「新規の収益物件が出てきたら教えて欲しい」と一声かけておくと情報提供してもらえる可能性があります。

一口に不動産会社といっても「収益物件専門の不動産会社」と「総合型の不動産会社」があります。この違いは抑えておきたいところです。

方法C:「収益物件専門の不動産会社」で収益物件を探す

収益物件専門の不動産会社は、得意ジャンルが決まっていることが多いです(例:新築の区分マンション、中古の一棟アパートなど)。そのため、「どんなタイプの収益物件を購入するか」が決まっている人とは相性がよいと考えられます。

メリット デメリット
  • 得意ジャンルの専門性が高い
  • 得意ジャンルの取り使い物件数が多い
  • 提案が得意ジャンルのポジショントークになりがち

方法D:「総合型の不動産会社」で収益物件を探す

住居用の売買や賃貸を扱っている総合型の不動産会社の中にも一部、収益物件を扱っているところもあります。このタイプの不動産会社は、戸建て、区分、一棟など幅広いジャンルを扱っているケースも多いです。競争率が低い地方都市の不動産会社だと、思わぬ掘り出しモノ物件が出てくることもあります。

メリット デメリット
  • 幅広いジャンルを扱っていることが多い
  • 思わぬ掘り出しモノ物件が出てくることも
  • リサーチする手間がかかる

不動産投資物件を探す際のポイント

不動産投資で失敗する典型的なパターンは、経験のない人が「なんとなく収益物件を買ってしまう」というものです。
失敗のリスクを回避するには、次に挙げる3つの注意ポイントを意識すべきです。

  1. 不動産投資をする目的を決める
  2. 収益物件を選ぶ基準をつくる
  3. 目先の高利回りに惑わされない

ポイント1:不動産投資をする目的を決める

目的によって買うべき収益物件は変わる

不動産投資の失敗パターンは、「なんとなく収益物件を買った」「業者に営業トークを鵜呑みにした」というような無目的なものです。こういった買い方だと、自分に合っていない収益物件や儲からない収益物件をつかむリスクが高くなります。

本などにもよく書かれていますが、収益物件を買う前に目的を決めることが何よりも大切です。

不動産投資の目的例:老後資金、早期リタイア、節税目的など

では、不動産投資の目的とはどのようなものでしょうか。人によってさまざまですが、一例として次の目的が考えられます。

  • お小遣いがほしい
  • 生活費の足しにしたい
  • 子どもの学費の足しにしたい
  • 老後資金をつくりたい
  • リタイアしたい
  • 所得税の節税がしたい
  • 相続税の節税がしたい

など

ポイント2:収益物件を選ぶ基準をつくる

不動産投資をする目的が決まると、おのずと収益物件を選ぶ基準ができます。わかりやすくいうと、「このタイプの収益物件は自分に合っている、合っていない」という取捨選択がしやすくなるのです。この点について、不動産オーナー向けの月刊誌『家主と地主』の編集長永井ゆかりさんは次のように解説しています。

どの不動産にもメリットとデメリットがある。重要なのは、その特性を理解した上で、どのような不動産の購入が「今の自分」に合っているかということ。
(引用:『生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主入門」』)

たとえば、「不動産投資をする目的」「それに合う収益物件タイプ」「物件タイプごとのメリット/デメリット」をひとまとめにしたのが下記の表です。ご参照ください。

目的例 物件タイプ例 メリット デメリット
老後資金 新築区分 耐用年数が長い 現時点のキャッシュフローが出にくい
お小遣い 中古区分、戸建 現時点のキャッシュフローが出やすい 修繕コストや空室のリスクがある
相続対策 都心区分、タワマン 相続税評価額を圧縮しやすい 物件価格が高額なことが多い
リタイア 中古一棟 まとまったキャッシュフローを得やすい オーナーの負担が大きい

ポイント3:目先の高利回りに惑わされない

利回りは収益物件探しの1つの指標でしかありません。利回りを信じすぎるのは危険です。

そもそも物件情報に記載されている利回りはたいていの場合、満室状態が続いたら得られる「期待(満室)利回り」です。この利回りは以下のようなことが原因で大きく低下する可能性があります。

  • 長期空室が発生する
  • 大規模修繕費がかかる
  • 家賃が下落する

など

とくに相場よりも高利回りの収益物件は何らかのリスクを抱えている可能性があります。大事なのは、一般的な利回りでも安定収益を確保できそうな収益物件を選ぶことです。

なお、「どれくらいの利回りが適正か」については、物件タイプ、立地、築年数などで変わってきますが、たとえば一棟物件の平均的な利回りは次の通りです。

エリア ワンルーム ファミリー
東京都内(城南地区) 4.2% 4.3%
さいたま 5.2% 5.3%
千葉 5.2% 5.3%
横浜 4.9% 5.0%
名古屋 5.0% 5.2%
大阪 4.8% 5.0%
福岡 5.0% 5.2%

(参照:日本不動産研究所「第43回 不動産投資家調査」

不動産投資を始める前に専門家に相談すると安心

不動産投資を始めるときには、どうしても「収益物件探し」に意識がいきがちです。もちろん、それも大切なことですが、目的に合わせて専門家に相談しておくと失敗のリスクを回避しやすくなります。

一例では、老後資金をつくるために不動産投資を始めるなら、不動産にくわしいファイナンシャルプランナーに「どのタイプの収益物件を、どんな方法で購入するとよいか」アドバイスしてもらうのが無難です。また、相続税の節税目的で不動産投資を始めるなら、不動産に特化した税理士にコンサルティングしてもらうと安心です。

あくまでも、目的を達成するために不動産投資という手段があるのです。不動産投資をすること自体が目的にならないよう注意してください。

不動産投資の始め方や基礎知識について知りたい方は、まず「不動産投資とは?初心者のための始め方を徹底解説」を御覧ください。

まとめ

不動産投資の収益物件探しのコツは、「これぞ!」と感じる物件に出会うまで地道にリサーチし続けることです。不動産投資の世界で成功している人は、物件情報をこまめにチェックしているケースが多いです。

といっても、多忙な日々の中で物件情報をリサーチし続けるのは大変なことです。習慣にするために、「この時間(または曜日)は物件情報をリサーチする」と決めておくとルーティン化しやすいでしょう。たとえば、「毎日10分間はこのポータルサイトをチェックする」「1週間のうち、月・水・金は物件情報をリサーチする」といった具合です。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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