少額で始められる不動産投資3選!メリット・デメリットも解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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不動産投資というと、高額な初期費用がかかるアパートやマンションの経営を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、不動産投資には少額でも始められる商品もあります。ここでは具体的にどんな選択肢があるのか、少額な不動産投資のメリット・デメリットは何かなどについてお話します。

少額で始められる不動産投資3選

少額で不動産投資を始められる代表的な商品には次の3つがあります。

  1. 不動産投資信託(REIT)
  2. 不動産小口化商品
  3. 不動産投資クラウドファンディング

これらの投資金額や利回りの目安をまとめると以下のようになります。

商品の種類 投資金額の目安 利回りの目安
不動産投資信託
(REIT)
10万円程度〜 2〜5%程度
不動産
小口化商品
100万円程度〜 3〜7%程度
不動産投資
クラウド
ファンディング
1万円程度〜 3〜10%程度

不動産投資信託の目安は2021年10月頃の内容です。

それぞれの投資商品の内容をよりくわしく見ていきましょう。

投資商品1.不動産投資信託(REIT)

不動産投資信託(REIT)はマーケット規模が大きいため、資産の保全性を重視する人に向いています。

不動産投資信託(REIT)の特徴と仕組み

不動産投資信託(REIT)はアメリカ生まれの投資商品で日本でも20年以上の歴史があります。2021年3月時点の国内REIT(J-REITと呼ばれる)の市場規模は、時価総額は17.5兆円を超えるまでに成長しています。

REITの仕組みは、投資信託とほぼ同じです。大勢の投資家から集めた資金を不動産のプロ(不動産投資法人)が運用、その家賃収入と物件の売買益から生まれるリターンを投資家に定期的に分配します。加えて、株式のようにREIT自体の価格(投資口価格)が上がれば値上がり益も得られます。

不動産投資信託(REIT)の投資方法

REITの投資方法は、上場投資信託や上場株式と同じです。証券口座を持っている人なら、その口座を通して売り買いができます。REITは銘柄数が60以上とたくさんの選択肢があり、それぞれ投資テーマや投資物件が違います。テーマの一例には、物流施設、オフィス、商業施設、ホテルなどがあります。

不動産投資信託(REIT)のポイント

「この投資テーマはこれから伸びそうだ」「長期的に安定してそうだ」あるいは「この REITは割安ではないか」と感じる不動産投資信託に投資するのがよいでしょう。銘柄の善し悪しの判断がつかない場合は、複数のテーマに分散投資する「総合型」の銘柄を選ぶ手もあります。

投資商品2.不動産小口化商品

不動産小口化商品(任意組合型)は、少額な不動産投資のなかでは1口あたりの投資金額が高く、物件の所有権も得られるので相続税対策をしたい人向けです。

不動産小口化商品の特徴と仕組み

不動産小口化商品は、不動産投資の流動性や透明性を高めるために不動産特定共同事業法(以下、不特法)に基づいてつくられた仕組みです。というと複雑に感じられるかもしれませんが、大枠はシンプルです。複数の投資家で不動産に投資をして(あるいは、不動産を所有して)、運用益を分配します。

この説明だけではREITと同じ投資商品のようですが両者は根本が違います。REITは物件の所有権がないのに対し、不動産小口化商品は物件の所有権が発生するため(任意組合型の場合)、実際の不動産投資に近い感覚で運用できます。

不動産小口化商品の投資方法

不動産小口化商品には「匿名組合型」と「任意組合型」があり、スキーム自体が違います。どちらがご自身の目的に合うのか、しっかり見極めたうえで購入することが大事です。

もし、相続税の節税の必要がなく手軽に投資をしたいなら「匿名組合型」の選択でもよいでしょう。対照的に、相続税の節税をしたいなら「任意組合型」の選択が必須です。両者の違いを表にまとめると、次のようになります。

種類 出資先 不動産の
所有権
相続税の
節税効果
匿名組合型 事業者への出資 事業者 なし
任意組合型 共有持分への出資 投資家 あり

不動産小口化商品の投資は、原則、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けた事業者が設定した商品を購入することで始められます。1口当たりの投資金額はさまざまですが100万円程度(任意組合型の場合)が一般的です。

不動産小口化商品のポイント

不動産小口化商品の内容は「匿名組合型」と「任意組合型」でだいぶ違います。運用期間で見ると、匿名組合型は3か月などの短期間、任意組合型は数年など長期間に設定されるケースが目立ちます。また 1口当たりの出資金額でみると、匿名組合型は1万円などの少額、任意組合型は100万円程度などまとまった金額が必要なケースが多いです。

投資商品3.不動産投資クラウドファンディング

不動産投資クラウドファンディングは投資金額が安く運用期間も短いため、手軽に不動産投資をしたい人に向いています。

不動産投資クラウドファンディングの特徴と仕組み

不動産投資クラウドファンディングに絶対的な定義はないものの、一般的には「小規模不動産特定共同事業」にもとづいた少額な不動産投資のことを指します。なお、この事業形態は、前述の不特法の要件が緩和されて2017年に誕生したものです。

小規模不動産特定共同事業には、条件さえあてはまれば事業者として登録できるため、数多くの不動産業者などが不動産投資クラウドファンディングに参入しています。

不動産投資クラウドファンディングの投資方法

不動産クラウドファンディングは、下記に挙げるような投資をスタートするまでのすべての手順をネットで完結できます。多忙なビジネスパーソンなど時間のない人に向いている投資方法といえます。

  • サービスに関する情報収集
  • 会員登録
  • 出資者情報の登録
  • 出資の応募
  • 契約書の確認、契約締結 など

不動産投資クラウドファンディングのポイント

「不動産投資クラウドファンディング」というキーワードで検索するとお分かりいただけると思いますが、実に多くの企業がこの投資商品をリリースしています。そのため、複数の不動産投資クラウドファンディングを比較検討したうえでの利用をおすすめします(比較軸としては事業者の信用力、物件の立地、利回りなど)。

少額な不動産投資を行うことのメリット・デメリット

次に、ここまでご紹介してきた少額な不動産投資(1.REIT、2.不動産小口化商品、3.不動産投資クラウドファンディング)に共通するメリット・デメリットについて解説します。

少額な不動産投資のメリット

少額な不動産投資のメリットは、アパート経営など単独の不動産投資と比べて元出がセーブできることです。単独の不動産投資であれば、区分マンションなら数千万円、1棟物件なら1億円程度の初期費用がかかります(新築の場合)。これに対して、不動産クラウドファンディングであれば、1万円から100万円程度の投資金額で済みます。

少額な不動産投資のデメリット

少額な不動産投資では金融機関の融資が難しいため、レバレッジを使えません。さらに、投資額が少額ということもあり、まとまった利益を確保しづらいというデメリットがあります。

このデメリットは、アパート経営など単独の不動産投資で考えるとわかりやすいです。不動産投資のメリットとしてよく挙げられるのは、融資を利用して初期費用(頭金)にレバレッジをかけられるというものです。たとえば同じ利回り5パーセントでも500万円なら年間のリターンは25万円ですが、この500万円に10倍のレバレッジをかけて5,000万円で運用できれば年間のリターンは250万円になります。

少額な不動産投資では、このレバレッジという武器が使えません。なぜなら、少額の不動産投資に融資をしてくれるケースはほとんどないからです。

まとめ

ここまで本稿では、少額な不動産投資の商品の特徴やポイント、さらに、これらに共通するメリット・デメリットについてお話してきました。

REIT、不動産小口化商品、不動産投資クラウドファンディング……どの商品を選んでも預金の利回りよりも大きなリターンを得られるチャンスがあります(ただし、元本保証がされるわけではありません)。その反面、アパート経営など単独の不動産投資で成功した場合に比べると、リターンが下回るケースも多いでしょう。

端的に申し上げると、少額な不動産投資は「専業の大家になりたい」「不労所得生活を叶えたい」 といった大きな目標を叶えるのは難しいです。資産形成を目に見える形で進めたい人は、アパートやマンションの経営など単独の不動産投資が向いています。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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