賃貸借契約時に法定更新された場合の更新料はどうなる?

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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賃貸経営者の中には法律の知識をもたないまま、アパート経営を始める方がいます。その結果、「収支シミュレーション通りの利回りが出ない」「計画通りの賃貸経営が行えなくなる」というトラブルが招いてしまいます。特に賃貸借契約を法定更新した場合に更新料が請求できなくなったというトラブルは多いです。そのため、法定更新について理解を深めておきましょう。この記事では、賃貸借契約の法定更新について詳しく解説します。

法定更新とは?

賃貸借契約の更新方法には「法定更新」と「合意更新」があります。

法定更新

法定更新とは借地借家法(※)の定めに基づいて、賃貸借契約を自動的に更新することをいいます。契約当事者が(1)契約の更新をしないこと(2)契約条件を変更することを通知しない場合は、従来の契約条件にて更新されます。法定更新した場合は契約期間が定められていません。
また、貸主側が賃貸借契約の更新をしない場合には正当な理由が求められます。基本的に賃貸借契約は借主側が有利となる契約内容になっていると理解しておきましょう。
(※)借地借家法:賃貸借契約の期間や更新方法に関して定められた法律を指す

貸主側が更新拒絶できる正当な理由とは?

貸主側が賃貸借契約の更新を拒絶できるのは、借主に何らかの問題があるケースです。また、震災で借主が自宅を失ってしまったなど、病む得ない理由も更新拒絶の正当な理由とみなされます。

【更新拒絶の正当な理由】

  • 何度も家賃滞納をされている
  • ペット不可の建物なのに隠れてペットを飼っている
  • 近隣住民の方に迷惑をかけている
  • 震災で自宅を失ってしまった

合意更新

合意更新とは、契約当事者の合意により賃貸借契約を更新することをいいます。合意更新をする場合に契約期間に制約はありません。しかし、1年未満と定めた場合には契約期間の定めがないものとみなされます。
また、合意更新時に契約内容を自由に変更できますが、借地借家法の強行規定(契約当事者の意思で変更することが許されていない法律内容)の関係で、借主側に不利な条件内容は無効となります。

法定更新と合意更新の違い

法定更新と合意更新の違いは、賃貸借契約を更新する場合の契約当事者の合意の有無です。契約更新の合意がない場合でも、解約や契約条件の変更の通知がなければ、法定更新で賃貸借契約は更新されます。
このような規定を設けていなければ、合意更新のし忘れなどにより、借主は住む場所を失ってしまうかもしれません。法定更新は借主が住む場所を失わないようにするための救済措置(消費者保護)として存在します。

法定更新の際に更新料を請求できる?

結論から説明すると、賃貸借契約を法定更新した場合には更新料は請求できません。2011年4月27日に東京地方裁判で行われた裁判では、

  1. 当事者間に明確な支払いの合意があること
  2. 更新料の金額が暴利的でないこと

上記の内容を満たさずに、法定更新した場合には更新料が請求できないと判決が下されました。

法定更新で更新料を請求する方法

賃貸借契約を法定更新して更新料を請求したい場合は、契約書に「法定更新の場合でも更新料を支払うこと」と明記しておきましょう。
ただしこの場合、一度更新されるとその後は期限の定めの無い契約にあるので更新料を請求する機会は無くなります。
契約書で更新方法について触れる場合は「法定更新」「合意更新」と明確に記載する必要があります。どちらの更新を指すか不明瞭にすると、説明不足とされて契約内容が無効となるため注意してください。

補足:2年毎に更新料を請求しよう

賃貸借契約を法定更新すると、契約期間に定めがなくなります。その結果、2年毎の更新料が請求できなくなります。この問題を解決するために自動更新条項(従前と同条件で更新を行う)を記載し、そして「2年毎の更新の際は更新料を支払うものとする」と契約書に記載しておきましょう。
自動更新であれば2年毎など定められた期間ごとに更新料を請求することができます。賃貸借契約は、一般的に2年に1回の更新が多いです。これは、借地借家法29条に大きく関与しており、法律上では1年未満の賃貸借契約をした場合に期間の定めがない契約とみなされるからです。

法定更新のよくあるトラブル

賃貸借契約を法定更新する場合に、トラブルが起きることがあります。そのため、どのようなトラブルが起きるかを把握して対策しておきましょう。

【トラブル1】更新料が請求できなかった

賃貸借契約を法定更新する場合は、契約書に更新料の支払いを記載しなければいけないと説明しました。
契約書で更新料について触れていなかったり、更新が法定更新か合意更新か不明確だったり不備がある場合は強制力が働きません。貸主側が更新料を支払いたくないと述べてきたら従わなければいけません。
このようなトラブルは、契約書内容の確認不足で起きます。そのため、契約書の確認すべき箇所を押さえておくようにしましょう。

【トラブル2】更新拒否が認められなかった

貸主側による賃貸借契約の更新拒否は基本的に認められにくいです。家賃滞納や入居者間トラブルを起こしたなど借主に何らかの問題がある場合は正当な理由で認められます。しかし、その他の理由では更新拒否が認められにくいです。
例えば、出張期間中に空室で賃貸経営をしたいなど、賃貸経営期間が限られている場合には「定期借家契約」を借主と締結しなければいけません。賃貸経営を短期で行いたかったけれど、更新拒否ができずに予定が狂ってしまったというトラブルも多いです。

【トラブル3】賃貸経営の予定が狂ってしまった

建物の老朽化が激しくて不動産売却や建て替えを検討する場合もあるでしょう。借地借家法では、貸主が借主にやむを得ない理由で退去を依頼する場合は6ヵ月前に予告する必要があると定められています。
不動産売却や建て替えを理由に、すぐに退去してもらうことはできません。この事実を知らずに賃貸経営を始めてしまい、当初のシミュレーションの予定が大きく狂うというトラブルも多いです。

【トラブル4】借主に条件変更を承諾してもらえない

賃貸借契約は法定更新と合意更新がありますが、家賃の値上げなど条件変更を申し出ても借主が受け入れてくれるとは限りません。借主には、基本的に契約条件の変更を受け入れる義務がないからです。合意更新は、契約当事者の双方が納得した上で更新することをいいます。
合意更新ができなかった場合は、自動的に法定更新となります。そのため、借主に条件変更を承諾してもらえずに更新に至ったというトラブルも多いです。

補足:不動産に詳しい専門家にアドバイスをもらう

賃貸借契約の更新について理解を深めておかなければ、予想外のトラブルに巻き込まれてしまいます。そのため、賃貸経営を始める方は契約書の内容を専門家に見てもらいましょう。
法律を知らずに賃貸経営を始めてしまうと、シミュレーション通りの収益や利回りが得られなくなります。そのため、少しでも不安に感じた方は、不動産に詳しい専門家にアドバイスをもらってください。

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まとめ

賃貸借契約を法定更新すると、更新料が請求できなくなる等の予想外のトラブルを招きます。このようなトラブルを防止するためにも、法定更新について理解を深めておきましょう。
法律に関する理解が難しく感じる場合は、不動産に関する専門家の力を借りることをおすすめします。マルイシ税理士法人でも、賃貸経営のサポートを行っていますので、賃貸経営に不安を感じた方はお気軽にご相談ください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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