不動産投資で自己破産?破産してしまう原因と対策法について

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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すべての投資には、リターンに応じたリスクがあります。不動産投資も例外ではありません。不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資手法です。決してハイリスクではありませんが、それでも一部の投資家が失敗、さらに自己破産に追い込まれています。自己破産に至る原因とその対処法について解説します。

不動産投資で自己破産することはある?

はじめに、不動産投資でなぜ自己破産になるのか、自己破産になるとどうなるかなどについて整理します。

不動産投資で自己破産とは?

そもそも自己破産とは借金の返済ができなくなった個人の破産手続きのことです。不動産投資の場合、物件の初期費用をまかなったローンの返済ができず、自己破産する可能性があります。

不動産投資で自己破産に追い込まれる典型的なパターンは、見込んでいた家賃収入を得られず、融資の返済が滞るというものです。ただ、これだけなら自己破産にまでは発展しません。賃貸経営の赤字分や売却損をほかの所得や貯蓄でカバーできれば、一時的な損失で済みます。

ところが、投資物件に見合った所得や貯蓄がない人は、損失をカバーできないため自己破産に追い込まれやすいのです。

不動産投資の自己破産率はどのくらい?

不動産投資家のどれくらいの割合が自己破産しているかについては信頼できるデータはありません。しかし、参考になる情報はあります。

不動産投資サイトの健美家が実施した投資家向けのアンケート(第7回)では、「今までに不動産投資で失敗したことがありますか?」との問いに対して、40.7パーセントが「失敗したことがある」と答えています。このうちの一部は大損した人も含まれるでしょう。やはり不動産投資には、潜在的な自己破産リスクがあるということです。

事実かどうかは別として、株式投資の世界でよく言われる言葉で「最終的に個人投資家の9割(あるいは7割、8割)が負ける」というものがあります。株式投資ほどの厳しい世界ではありませんが、不動産投資も甘い世界ではありません。

自己破産するとどうなる?

賃貸オーナーが自己破産をすると、当然ながら投資物件は処分されます。加えて、「99万円以下の現金」と「(一点あたり)評価額が20万円以下の財産」以外の財産は原則処分されることになります。

自己破産によっていわゆるブラックリスト(信用情報機関の事故情報)に登録されると、新規のローンやクレジットカードの利用は難しくなります。事故情報の保有期間は約10年と言われますが、この期間が終われば新規の借り入れを必ずできるというわけではありません。

不動産投資で自己破産してしまう原因

不動産投資で自己破産をする典型的なパターンは、投資物件の初期費用をまかなったローンの返済ができないというものでした。このような状況に追い込まれる主な原因には次の4つがあります。

  1. サブリース契約を見直された
  2. 空室リスクを甘く見た
  3. 家賃収入が減った
  4. 詐欺被害にあった

自己破産の原因1.サブリース契約を見直された

サブリース絡みで自己破産に追い込まれるケースは相当数あります。サブリースとは管理会社が投資物件を借り上げ、転貸借(又貸し)をする契約形態です。物件を借り上げた管理会社は、賃貸オーナーに対して空室でも満室でも保証賃料を支払うのが基本です。

サブリースで自己破産をした事例としては、管理会社から一方的に保証賃料を大幅に引き下げる通告を受けて収支が赤字に転落、自己破産に至ったケースがあります。(ライフソレイユが運営するメディア「ローン滞納.com」で紹介の事例)。

2018年に社会問題化した「かぼちゃの馬車事件」も、根本はサブリース契約が原因です。この事件の被害者を取材した書籍「やってはいけない不動産投資(著者:藤田知也氏)」よると、契約書では保証家賃の額が10年間変わらないと取り決められていました。それにもかかわらず、その約束は簡単に破られたのです。

自己破産の原因2.空室リスクを甘く見た

先にご紹介した健美家の投資家アンケートでは、不動産投資で失敗した経験がある人(全体の約4割)に対して、さらに「どんな失敗をしましたか?」と重ねて聞いています。この設問に対する回答の第1位は「空室が埋まらなかった(36.6パーセント)」です。不動産投資のリスクでは、よく空室リスクがフォーカスされますが、やはりセンシティブになるべきテーマです。

自己破産の原因3.家賃収入が減った

長期空室が発生しなくても不動産投資で失敗し、損失をこうむるケースもあります。「ローン滞納.com」で紹介している事例では、ある賃貸オーナーが複数のワンルームマンションを所有していたところ、購入から年数が経って家賃が下落。月々のキャッシュフローがマイナスとなり、さらに一部物件の空室が重なり損失が拡大しました。

この事例では、投資物件と自宅を売却した代金で損失をカバーできましたが、同じような流れで自己破産に追い込まれる人もいるはずです。

自己破産の原因4.詐欺被害にあった

前出の書籍「やってはいけない不動産投資」には、かぼちゃの馬車事件以外の事例も取材し、悪質な不動産業者の手口に迫っています。そのなかには、投資物件の利回りを計算するときに重要な資料となるレントロールを改ざんする手口や入居ニーズのない田んぼが広がる立地に強引にアパートを建設させる手口などが紹介されています。

このような詐欺に引っかかると、想定していた家賃収入と大きくズレるため、自己破産のリスクが大きく高まります。

ここでは4つの原因を取り上げましたが、そもそも「投資物件を高値づかみしていた」「高金利で借入をしていた」などの原因も考えられます。

不動産投資で自己破産を避けるための対策法

不動産投資で自己破産になるのを避ける対処法には次の3つがあります。

  1. 知識を身につける
  2. シミュレーションする
  3. 専門家に相談する

対処法1. 知識を身につける

自己破産する人に目立つのは、危機的状況に陥ってはじめて不動産投資の勉強を本気でしたというものです。その結果、「取り返しのつかない失敗をしてしまった」と気づくのがよくあるパターンです。

この順番を逆にして、十分な勉強をしてから不動産投資をはじめていれば、自己破産に追い込まれることはなかったはずです。不動産投資の知識を身につけるときに意識したいのは、デメリットやリスクについても深く知ることです。失敗パターンを熟知していればそれを回避しやすくなります。

対処法2. シミュレーションをする

不動産投資で失敗する人の多くが「不動産業者の言いなりになってしまった」といったことを口にします。不動産投資は千万円単位、億円単位の投資です。大きなお金を動かすのですから、投資物件を購入する前に収支のシミュレーションをするべきです。

ただ現実的には、不動産投資の初心者が収支のシミュレーションをするのは簡単ではありません。ご自身でシミュレーションをするのが難しい場合は、不動産投資にくわしい税理士やファイナンシャルプランナーのサポートを受けるとよいでしょう。

対処法3.専門家に相談する

不動産投資で専門家に相談するタイミングは3つあります。

1つ目は前項でお話したように投資物件を購入する前段階の収支のシミュレーションです。2つ目のタイミングは実際に不動産投資をしていて収支が厳しくなってきたときです。「現実と向かい合いたくない」と相談を先延ばしにすれば自己破産リスクが高まります。この段階だと、出口戦略も含めて税理士に相談するのがよいでしょう。

3つ目のタイミングは、不動産投資の収支が悪化して借金地獄のような「どうにもならない状況」になったときです。この段階になると弁護士に相談するべきでしょう。まずは各弁護士事務所の相談サービスを利用してみましょう。

まとめ

ここでは、不動産投資によって自己破産に至る原因とその対処法についてお話してきました。そのなかで一番お伝えしたいことは、不動産投資の知識を身に付けることに勝る対処法はないということです。ただし、バランスのよい知識を身につける必要があります。 偏った知識では、逆にリスクを高める可能性もあります。

なお、バランスのよい不動産投資の知識を身に付けるには、たとえば下記のようなテーマにアンテナを張るとよいでしょう

  • 投資物件の種類ごとの特徴
  • 不動産投資のリスク
  • 収益の計算方法
  • 税金の考え方
  • 不動産投資の成功/失敗パターン
  • 先輩大家さんの体験談

など

このような不動産投資の知識を勉強することで、破産リスクを減らすだけでなく、結果的に成功率を高めることにもなります。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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