アパート建築費用はいくら?費用を安く抑えるコツまで解説!

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

【執筆者:税理士・藤井幹久】

アパート経営を検討し始める中で「アパートの建築費用はいくらぐらいなのだろう?」と疑問を抱く方がいます。建築会社へ見積もり依頼する前に、概算金額を知りたいという方も多い印象です。今回は、そのような悩みを抱えた方のために、アパート建築費用の計算方法をご紹介します。アパート建築費用を安く抑えるコツまで紹介しているため、アパート経営の参考にしてみてください。

アパートの建築費用はどのぐらい?

アパート建築費用は「本体工事費用+付帯工事費用+諸費用」で計算できます。本体工事費用だけでなく、付帯工事費用や諸費用まで考慮しておかなければ予算オーバーになるため注意してください。ここでは、アパート建築費用の計算方法をご紹介します。

本体工事費用の坪単価

坪単価とは1坪当たりの本体工事費用をいい、本体工事費用は「敷地面積×建蔽率×階数×坪単価」で計算できます。建蔽率とは敷地面積に対する建築面積の割合をいいます。

例えば、敷地面積50坪、建蔽率80%、2階建ての木造アパートの本体工事費用の計算式は以下の通りです。

  • 50(坪)×80%×2(階)×56(万円)=4,480万円
  • 50(坪)×80%×2(階)×73(万円)=5,840万円

坪単価は構造別で変動するため、以下の表を参考にしてみてください。

構造別坪単価

木造 56万円~73万円
軽量鉄骨造 83万円~108万円
重量鉄骨造 83万円~108万円
鉄筋コンクリート造 96万円~125万円

出典元:『国土交通省 建築着工統計調査 第34表』

建築費用の内訳

アパートの建築費用は「本体工事費用+付帯工事費用+諸費用」で計算します。

  • 本体工事費用…建物本体の工事費用
  • 付帯工事費用…建物本体以外の工事費用
  • 諸費用…工事以外で必要な費用

それぞれの費用の内訳は以下の通りです。

アパートの建築費用の内訳

本体工事 75% 仮設工事
基礎工事
躯体工事
外装工事
内装工事
配線・配管工事など
付帯工事 15% 地盤改良工事
外構工事
造成工事
解体工事など
諸費用 10% ローン手数料
祭典費
税金
近隣挨拶の対応費用
入居者募集の看板設置費用
登記費用
保険料

[例]敷地50坪の2階建て木造アパートの建築費用

1.本体工事費用を「敷地面積×建蔽率×階数×坪単価」で計算する

50坪×80%×2階×56万円~73万円=4,480万円~5,840万円

2.<付帯工事費用を「本体工事費用×15%」で計算する/h4>
4,480万円~5,840万円×15%=672万円~876万円 … ②

3.諸費用を「本体工事費用×5%」で計算する

4,480万円~5,840万円×10%=448万円~584万円 … ③

アパート建築費用を「本体工事費用+付帯工事費用+諸費用」で計算する
+②+③=5,600万円~7,300万円 … ④

アパート建築費用に関する注意点

アパート建築費用の計算方法をご紹介しましたが、諸条件により建築費用が高騰する恐れがあるため注意してください。ここでは、アパート建築費用に関する注意点について詳しく解説します。

設備のグレードで建築費用は高くなる

競合物件と差別化して入居率を上げるために、設備のグレードを上げることもあるでしょう。アパート建築費用の見積書の概算金額は、最低限のグレードの設備しか含まれていないことが多いです。そのため、設備のグレードを変更すると予算オーバーになってしまう場合があります。
例えば、キッチンの水栓部分にハンドシャワー機能を付けるかで金額は変動します。そのため、設備にこだわりがある場合は、建築費用は高くなると考慮しておきましょう。

都道府県別で建築費用の相場は変動する

アパート建築費用は、どこで建てても同じ値段で建てられるわけではありません。都道府県別で建築費用の相場に差が出てきます。
一般的に大都市の平均相場は高くなります。その理由は、大都市は土地が狭く隣家との距離が近く、防音シートを使用するなど配慮しつつ建築工事を進めないといけないためです。また、重機の搬入が難しい狭い道路が多いため、建築費用の相場が高くなります。

都道府県別の建築費用の相場

北海道 63.1万円/坪
東京都 82.2万円/坪
神奈川県 67.3万円/坪
愛知県 65.7万円/坪
大阪府 65.6万円/坪
福岡県 62.3万円/坪

出典元:『国土交通省 建築着工統計調査(2021年)』

建築費の高騰で建築費用が上がる恐れがある

近年、主要建設資材の価格の上昇や労務単価の上昇などの影響を受けて、建築費用が高騰しています。また、2022年2月末のロシアによるウクライナ軍事侵攻により、各国が国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシア金融機関を遮断しました。ロシアは木材、天然ガス、石油の輸出大国として重要なポジションを築いていましたが、ロシアに輸出に頼れなくなり建築費用が高騰しています。このような社会情勢の影響を受けて、アパート建築費用より高騰してしまう恐れがあるため注意してください。

アパート建築費用を安く抑えるコツ

アパート建築費用は工夫次第で安く抑えられます。次に、アパート建築費用を安く抑えるコツをご紹介します。

設計施工一貫方式の建築会社を選ぶ

アパート建築費用は工事の発注方式でも変動します。
建築会社にアパートの設計から施工までを依頼する設計施工一貫方式(デザインビルド方式)で発注すれば建築費用を安く抑えられます。一方で、アパートの設計と施工を別々の建築会社に発注する設計施工分離方式で発注すると割高になるため注意が必要です。
設計施工一貫方式と設計施工分離方式の設計費用の比較表を見ても、どの程度の差があるかは一目瞭然です。そのため、アパート建築費用を安く抑えたい方は設計施工一貫方式の建築会社を選びましょう。

発注方式 設計費用
設計施工一貫方式 本体費用の1%~5%
設計施工分離方式 本体費用の5%~15%

複数社のプランを比較する

アパート建築費用を安く抑えたい方は、複数の建築会社に見積もり依頼をしましょう。その理由は、各会社で見積金額に差が出るためです。
同じプランでも、自社施工が可能な場合と施工管理以外は全て下請けさせる場合とで金額差が生じます。完全自社施工は不可能ですが、可能な限り下請け業者の使用が少ない建築会社を探すことで建築費用が安く抑えられます。

部屋数を必要以上に増やさない

アパート建築費用を抑えながら、賃貸経営を成功させたい方は必要以上に部屋数を増やさないように注意しましょう。その理由は、部屋数を増やすと設備費用が増えて建築費用が上がってしまうためです。
部屋数を増やせば、その分の賃料が見込めると思うかもしれません。しかし、1部屋の広さが狭くなると入居率に影響が出てしまいます。ハウスコム株式会社の独自調査では、部屋選びの際に広さを重視すると回答した人が51.4%。家賃や最寄り駅までの距離に次いで、広さが重視されています。この結果から分かるように、賃貸経営を成功させたい場合は、必要以上に部屋を増やさずに建築費用を抑えることがカギを握ります。

設備や内装はシンプルにする

アパート建築費用を安く抑えたい場合は、建築会社の標準仕様の設備を採用して、シンプルに仕上げましょう。その理由は、建築会社は標準仕様の設備を大量に仕入れているため、それらを使用すると安価価格でアパートが立てられるためです。
どのような入居者が部屋を借りてくれるかもわからないため、万人受けする設備を入れておくと入居率が下がる心配もありません。各建築会社で標準仕様は異なるため、気になる方は複数社から見積もりを取得してみてください。

アパート建築費用に関するよくある質問

最後にアパート建築費用に関するよくある質問をご紹介します。

Q.アパート建築で自己資金はどれぐらい必要ですか?

アパート建築で必要な自己資金は建築費用の20%です。
アパートローンを借りる方が大半ですが、金融庁のアンケート調査結果では95%の銀行で頭金が必要だということが分かります。また、15%の金融機関が融資の際に頭金を絶対に求めると回答しています。そのため、建築費用の10%の頭金は用意しておきましょう。
また、アパートローンには諸費用を含めることはできません。そのため、10%分の諸費用を自己資金で蓄えておく必要があります。

Q.アパートローンの金利はどれぐらいですか?

アパートローンの金利は借入先により相場が変わります。給与振込口座に指定している金融機関や投資信託やネットバンクの口座を開設している金融機関がある場合は、金利が優遇されやすいです。そのため、普段から利用している金融機関のアパートローンをチェックしてみると良いでしょう。

アパートローンの金利相場

都市銀行 1.8%~2%
日本政策金融公庫 1.2%~2%
信用金庫、信用組合 2%
ノンバンク 2.9%~4.5%
地方銀行 1.5%~3%

※アパートローンを好条件で借りる場合は、金融機関に事業計画の妥当性を納得してもらう必要があるため、入念な事業計画書の作成が必要です。

Q.アパート建築で利用できる補助金はありますか?

アパート建築で利用できる代表的な補助金として「長期優良住宅の補助金」があります。長期優良住宅に適合するアパートを建築すれば、補助金140万円が受け取れます。
しかし、長期優良住宅に適合するアパートを建築する場合は申請が必要です。建築会社に申請書を作成してもらう場合は、申請費用代として30万円程度かかります。また、長期優良住宅に適合するアパートを建築するために建築費用が高くなる恐れがあります。そのため、本当に長期優良住宅の補助金を利用した方が良いのか専門家に聞いてみてください。
また、それ以外の補助金として、自治体の補助金が利用できます。

関連記事:アパート経営とは?知っておきたい基礎知識を税理士が解説

まとめ

今回はアパートの建築費用について解説しました。基本の計算式を覚えておけば、どの程度の金額が必要になるか把握できます。そのため、アパート経営を検討している方は、この記事を参考に建築費用を計算してみてください
また、建築費用だけでなくアパートローンの金利分を含めた返済計画を考えて、収益が見込めるか把握することが大切です。そのため、大まかなアパート建築費用を計算して、賃貸経営を始める決意ができたら、専門家に具体的な収支シミュレーションを依頼してみてください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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