ビルの建設費用の相場はいくら?計算方法から注意点まで解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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ターミナル駅周辺に土地をお持ちの方の中には、大きな収益が見込めるビルを経営したいと思う方もいるでしょう。しかし、ビル経営は多額の資金が必要になるため「自己資金やローンで足りるのだろうか?」と不安になるものです。そのため、建設会社に相談する前にビルの建設費用はいくらなのか計算したい方もいるでしょう。
今回はビル建設費用の計算方法について解説します。この記事を読めば、ビル建設に必要な費用がいくらか把握できるようになるため、ぜひ参考にしてみてください。

[構造別]ビルのメリット・デメリット

ビルの構造に応じて、建物の特徴が異なります。また、ビルの構造次第で建設費用や外観、内装の自由度も変わってきます。そのため、ビル経営を始める前に構造別の特徴を把握しておきましょう。

建築コストが安く抑えられる「鉄骨造」

鉄骨造(S造)とは、柱や梁の骨組みに鉄骨を用いた建物をいいます。鉄骨は耐久性が高く軽量で、このような優位性を持つため、住宅や倉庫、工場、ビルなど幅広い用途で利用されています。
鉄骨の厚みにより軽量鉄骨造と重量鉄骨造に分けられ、耐久性や耐震性、防音性を重視したい場合は「重量鉄骨造」にすると良いです。
鉄骨造は、工場で製造した主要構造部材(壁、床、柱など)を建築現場で組み立てるのが一般的です。そのため、鉄筋コンクリート造より工期が短く済み、建設費用が安く抑えられます。
しかし、鉄骨が水分で錆びてしまうため、法定耐用年数は19年~34年と短めとなります。

◆鉄骨造(S造)のビル建設費用の平均相場

オフィスビル 約70~90万円/坪
テナント・雑居ビル 約65~80万円/坪
高層オフィスビル 約90~110万円/坪

出典元:国土交通省『建築物着工統計』

性能に優れている「鉄筋コンクリート造」

鉄筋コンクリート造(RC造)は、柱や壁を鉄筋で組み立て、鉄筋コンクリートを流してつくる建物をいいます。耐久性、耐火性、機密性、防音性など性能が優れています。
鉄筋は錆びやすいという欠点がありますが、コンクリートで覆うことで錆防止ができるため、安心・安全です。
また、強度が優れているため、法定耐用年数も47年と長いです。そのため、オフィスビルやマンションなどで鉄筋コンクリート造は選ばれます。空間を広く利用したい場合は「ラーメン構造」、耐震性を強化したい場合は「ブレース構造」など希望に応じて変えられることが魅力です。
優れた性能がある鉄筋コンクリート造ですが、主要構造部材の工場製造の工程が少なく、現場作業が主となるため工期が長く建設費用が高くなります。

◆鉄筋コンクリート造(RC造)のビル建設費用の平均相場

オフィスビル 約80~100万円/坪
テナント・雑居ビル 約75~90万円/坪
高層オフィスビル 約100~120万円/坪

出典元:国土交通省『建築物着工統計』

高層ビルや高層住宅に利用される「鉄骨鉄筋コンクリート造」

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、鉄筋コンクリート造に近く、柱や梁に鉄骨を入れた建物をいいます。鉄骨のしなやかさが加わり、RC造と同等またはそれ以上の安全性を実現できます。そのため、高層住宅や高層マンションに用いられることが多いです。
しかし、作業工程が複雑になるため、工期が長く建設費用が高くなります。そのため、賃貸物件などに用いられることは少ないです。このような特徴を持つため、耐震性や耐久性にこだわりたい方に選ばれます。

◆鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のビル建設費用の平均相場

オフィスビル 約90~110万円/坪
高層オフィスビル 約110~150万円/坪

出典元:国土交通省『建築物着工統計』

ビル建設費用の算出方法と相場

ビルの建設費費用の算出方法は2通りあります。

  • ビルの設計図が完成している場合の算出方法…坪数ごとの建設費用
  • ビル建設の計画をしたい場合の算出方法…階数別の建設費用

ここでは、それぞれの算出方法をご紹介します。

坪数ごとの建設費用

ビルの設計図が完成していたり、希望の広さが決まっていたりする際に建設費用を計算したい場合は「延床面積の坪数×坪単価」で算出できます。
延床面積とは建物各階の床面積の合計を表します。床面積は〇㎡で表示されることが多いですが、0.3025を乗じると坪数に変換できます。例えば、1000㎡の場合の坪数は302坪です。この坪数に坪単価を乗じていきます。
302坪の鉄骨造テナントビルの建設費用は、302×75=2億2,650万円となります。

階数別の建設費用

ビル建設の計画する際に建設費用を把握したい場合は、「土地の坪数×建蔽率×階数×坪単価」で算出します。

◆オフィスビルの建設費用の平均相場

階数 鉄骨造(S造) 鉄筋コンクリート造(RC造) 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
3階建て 1億3,440万円 1億5,360万円 1億7,280万円
4階建て 1億7,920万円 2億480万円 2億3,040万円
5階建て 2億2,400万円 2億5,600万円 2億8,800万円
6階建て 2億6,880万円 3憶720万円 3億4,560万円
7階建て 3億1,360万円 3億5,840万円 4億320万円
8階建て 3億5,840万円 4億960万円 4億6,080万円
9階建て 4億320万円 4億6,080万円 5億1,840万円
10階建て 4億4,800万円 5億1,200万円 5億7,600万円

[条件]土地80坪、建蔽率80%、坪単価(鉄骨造:70万円、鉄筋コンクリート造:80万円、鉄骨鉄筋コンクリート造:90万円)

ビル建設費用に関する注意点

ビルの建設費用について解説しましたが、諸条件に応じて平均相場は変動するため注意してください。ここでは、ビル建設費用に関する注意点をご紹介します。

地域で建設費用の相場は異なる

ビルの建設費用の相場は地域によって、以下のように差があります。一般的に東京など都心部の建設費用が高くなります。その理由は、都心部は広い土地がなく、隣家との距離が近いため事故が起きないように配慮しながら工事する必要があるためです。
また、旗竿地などの土地だと重機が入りづらくなり、手作業で工事が行われます。手作業は労力がかかるため、建設費用が高騰してしまうのです。このような理由で、地域で相場は異なってくるため注意してください。

◆地域別・構造別の工事費用

鉄骨造(S造) 鉄筋コンクリート造(RC造) 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
北海道 25万6000円 26万5000円 28万4000円
青森 25万6000円 30万1000円 28万4000円
東京 30万9000円 32万7000円 36万4000円
大阪 25万6000円 26万5000円 28万4000円
京都 26万9000円 26万5000円 28万4000円
長崎 25万6000円 26万5000円 28万4000円
沖縄 27万9000円 26万5000円 28万4000円

出典元:国税庁『地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)【令和4年分用】』

ビルの種類により建設費用の相場は変動する

ビルの種類は「オフィスビル」「テナント・雑居ビル」「高層オフィスビル」の3つがあります。
オフィスビルと雑居ビルの違いは、不特定多数の業種のテナントが入るかどうかです。
テナント・雑居ビルは、喫茶店や飲食店、事務所などが入ります。また、エステやクリニックがテナントで入ることも多いです。一方で、オフィスビルは大部分がオフィスとして使用されるビルをいいます。
オフィスビルはデザインをどのようにこだわるかが重要のため、テナント・雑居ビルより建設費用が高くなります。

◆鉄骨造(S造)のビル建設費用の平均相場

オフィスビル 約70~90万円/坪
テナント・雑居ビル 約65~80万円/坪
高層オフィスビル 約90~110万円/坪

出典元:国土交通省『建築物着工統計』

対象事業者により建設費用は変動する

ビルの建設費用は、どのような事業者を対象とするかで建設費用が異なってきます。例えば、ショッピングセンターであれば、特殊な設備を導入する必要がなく、間取りにもこだわる必要がありません。
その一方で、病院や老人ホームであれば、賃貸住宅のように各部屋を区切った間取りにしなければいけず、利用用途に応じて特殊な設備を導入する必要もあります。そのため、どのような事業者を対象にするかで建設費用は変動します。

ビル建設を成功させるためのポイント

ビル建設費用の注意点をご紹介しましたが、ビル経営で成功させるためのポイントも押さえておきましょう。ここでは、ビル建設を成功させるためのポイントをご紹介します。

ビル経営に向いている土地か見極める

ビル経営ができる立地は限定されてしまいます。賃貸住宅の場合は、都心や郊外に関係なく需要が見込めます。しかし、ビルの場合はターミナル駅周辺の土地ではないと需要が見込みづらいです。
需要予測を間違えてしまうと、テナント募集に苦戦して空室が出てしまいます。立地がビル経営の命運を分けることもあるため、ビル経営に向いている土地かどうかを見極めるようにしましょう。

複数のプランを比較・検証する

ビル経営で成功したい方は、複数の建設会社の土地活用提案プランと収支プランを比較・検証してください。まずは全体像を掴みましょう。その上で魅力的なプランを提案してくれる建設会社を選ぶことが大切です。
オフィスビルは長期で経営していくため、建設費の安さだけでなく信頼できる業者を選ぶことが重要となります。そのため、複数の業者に問い合わせをして信頼できるところに依頼するようにしましょう。

入居されやすいビルをつくる

ビル建設を依頼する際は、建設会社にお任せするのではなく、施主も入居されやすいビルについて知識を蓄えておくことが大切です。主に入居されやすいビルの特徴は以下の通りです。

【入居されやすいビルの特徴】

  • レイアウトがしやすい長方形の空間にする
  • 柱が出てこない無柱空間にする
  • 各テナントが空調の設定ができる個別空調を採用する
  • 天井を高めにする
  • トイレをキレイに作る
  • エントランスの仕上げを豪華にする
  • 禁煙室をつくる
  • セキュリティシステムを導入する
  • 全館LED照明を採用するなど省エネビルで付加使用料を下げる
  • 専有部の入口にも看板を出せるようにしておく

ビル経営のセミナーや書籍などを読み、自分自身で勉強することでビル経営は成功しやすくなります。

ビル建設の税制上の優遇措置を受ける

ビル建設では、以下のような優遇措置が受けられます。

相続税の節税効果

ビルを建設すれば、現金と比較して評価額が2~3割程度安くなる
ビル経営で第三者にテナントを貸し出せば、貸家建付地として土地評価額が2~3割程度安くなる
被相続人と相続人が同居していた場合は、一定の土地面積の控除が受けられる

相続税の納税資金準備

ビルを建設しておくと、毎月の家賃収入が受け取る。これらの家賃収入を蓄えておき、ビルと現金を一緒に相続させてあげれば納税資金を渡すことができる。

所得税の節税効果

ビル経営の事業収入は、給与所得などと合算できる。
ビル経営が赤字になっても給与所得などから差し引けるため、所得税や住民税が安くなる。

税制上の優遇措置や節税効果について詳しく知りたい場合は、税理士などに相談することをおすすめします。

まとめ

今回はビル建設費の算出方法について解説しました。どのような種類のビルを建設するかで費用は変動します。しかし、希望するビルがどれぐらいの相場で建てられるかを把握しておけば資金計画が立てやすくなるでしょう。そのため、この記事を参考にしながら、ビル建設費を算出してみてください。
また、ビル経営は50年と長期に渡るものです。不動産事業の中でも立地場所の需要により収益が変動します。そのため、ビル建設費を算出して資金を蓄えた後は、信頼できる専門家を探しましょう。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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