非上場株式(自社株)の評価方法とは?相続専門の税理士が解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

【執筆者:税理士・藤井幹久】

会社の現金預金や土地などの資産は会社のものであり、オーナーである経営者個人の財産ではありません。しかし、その会社が発行する株式は株主であるオーナー経営者のものですから、亡くなった場合はその株式が相続財産として相続税の対象になります。

では、その価額はいったいいくらでしょうか?自社株の相続税評価額が1株あたりいくらになるのかは、残念ながら決算書類をどれだけ探しても、見つけることはできません。

そこで本記事では、非上場企業の株式の評価方法について、初めての方でも分かるようにできるだけ丁寧に解説していきます。

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非上場株式とは?

そもそも、株式とは何でしょうか?「株式市場」や「株式相場」のように、「株式」という言葉は新聞やテレビなどで日々耳にすることも多いと思いますが、改めて整理してみましょう。

株式とは

株式会社は、株主が出資した資金を元手に運営されています。この資金を出資してくれた株主に対して発行する証券のことを株式といいます。

ちなみに、以前は株券を印刷して株主に渡していましたが、現行の会社法では株券は不発行を原則としているため、実際にほとんどの会社では株券は発行されていません。

上場と非上場

証券取引所が厳正な審査を行い、株式が市場(証券取引所)で売買できるようになることを上場といいます。株式が上場されている企業のことを上場企業といい、市場から直接資金調達が可能になります。

いっぽう、証券取引所で売買できない株式を非上場株式といい、非上場株式を発行する企業を非上場企業といいます。

非上場株式の仕組み

非上場企業は証券取引所で株式を売買することができないため、その株式には市場価格というものが存在しません。また、市場で売買されていないわけですから、個人投資家が非上場株式を売買することは相当難しいといえます。

一般的に、非上場企業の株式の多くには株式の譲渡に関する制限が設けられており、ある株主が第三者に株式を譲渡しようとする場合には、取締役会もしくは株主総会の承認が得られなければ譲渡ができないようなルールが設けられています。

このように、非上場株式の多くは市場価格がない上に譲渡に制限まで設けられているため、実際に売買されることがほとんどないわけです。
 
関連記事:会社分割とは?会社分割の種類やメリット・事業譲渡との違いについて解説

非上場株式のメリットとデメリット

ではここで、非上場株式のメリットとデメリットを整理してみます。まずはメリットからです。

非上場であることのメリット

株式が非上場である事のメリットは、おもに以下の2点です。

  • 株主の意見に左右されずに経営を行える
  • 買収されるリスクは少ない

株主の意見に左右されずに経営を行える

非上場企業の株式は容易に売買ができないため、相続などを除けば、株主構成が変わる事はほとんどありません。

したがって、会社設立時からの安定株主が株式を保有し続けている場合が多く、オーナー以外の他の株主の意見に左右されることなく経営が行えます。

買収されるリスクは少ない

株式が上場していなければ、自社株が市場で売買されることはありません。また、株式に譲渡制限が設けられていれば、取締役会や株主総会での承認なしに自社株が譲渡されることもありません。

したがって、敵対的買収者などに買収されるリスクはかなり低いといえます。

非上場であることのデメリット

次は、デメリットです。株式が非上場である事のデメリットは、おもに以下の2点です。

  • 資金調達が難しい
  • 社会的信用が低い

資金調達が難しい

企業の資金調達方法は、大きく分けると2種類あります。一つは投資家からの出資で、もう一つは金融機関などからの融資です。

上場企業であれば、自社株を市場で売却して投資家から直接資金を調達することが可能ですが、非上場企業の場合は、(PEファンドからの出資などを除けば)金融機関などからの借り入れに限られてしまいます。

そのため、大規模な資金調達を行うことが難しく、企業の成長スピードが制限される場合があります。

社会的信用が低い

株式を上場させるには、証券取引所による厳しい上場審査を通過しなければなりません。したがって、上場企業になると、社会的信用度は極めて高くなります。

これに対して非上場企業の株式は、その価値や社会的信用度を担保する公平・公正なものがないため、上場株式と比べるとどうしても社会的信用は低くなってしまいます。

関連記事:類似業種比準価額方式とは?税理士がわかりやすく解説

非上場株式の評価方法とは?

非上場株式は、上述のように市場で流通しているわけでないため、株式に価格はついていません。しかし、価格がついていないからといって、価値がないわけではありません。

そこで、非上場企業の株式の時価(=相続税評価額)がいくらになるのかを知るためには、株式の評価を行わなければなりません。

なお、非上場株式の評価を行う方法には、以下の3つがあります。

  • 類似業種比準方式
  • 純資産価額方式
  • 配当還元方式

類似業種比準方式

類似業種批准方式とは、株式を評価する非上場企業と同業種で上場している企業とを、利益や配当、純資産の3つの点から比較し、上場企業の株価から逆算して非上場企業の株価を算定する方法のことをいいます。

上場している類似業種と比較して株価を算定することから、非上場企業の中でも規模の大きなものに対して用いられています。

純資産価額方式

純資産価額方式とは、会社の資産・負債を財産評価基本通達に定められたルールに基づいて評価したうえで純資産価額を算定し、それを発行済株式数で割ることで1株あたりの株価を算定する方法のことをいいます。

簡単に言うと、いま会社を清算したら株主に1株あたりいくら戻って来るのかを株価として評価するのが、この純資産価額方式です。非上場企業の中でも小規模~中規模程度の会社の株式の評価を行う際に用いられています。

配当還元方式

配当還元方式とは、株式を所有することによって受け取る一年分の配当金を、一定の利率(10パーセント)で割り戻して元本である株式の価額を評価する方法です。

簡単に言うと、今後10年間貰える(であろう)配当金の合計額を株式の評価額とするのが、この配当還元方式となります。

株式の価値を配当額から算出することから、会社の経営などに影響力を持たない少数株主が当該株式を取得する場合にこの評価方法が用いられています。

どの評価方法を使うのか?

非上場株式の評価方法には上述の3つの方法がありますが、どの方法を使って評価をするのかはかなり細かく定められています。

非上場株式の特例的評価方式

まず、非上場株式を誰が取得するかで評価方法が分かれます。同族株主以外の株主が非上場株式を取得した場合、会社の経営権などを掌握することはできません。したがって、配当金を貰う程度しか株式の価値はないとみなし、配当還元方式によって株式の評価を行います。これを、特例的評価方式といいます。

これに対し、同族株主が非上場株式を取得する場合は、原則的評価方式によって株式の評価を行います。

非上場株式の原則的評価方式とは

株式を評価する非上場会社を、総資産価額や従業員数、取引金額によって大会社、中会社、小会社のいずれかに区分して評価する方法を、原則的評価方式といいます。

原則的評価方式で非上場株式を評価する場合、その評価方法は以下のように定められています。

  • 大会社・・・類似業種比準方式
  • 中会社・・・類似業種批准方式と純資産価額方式を併用する折衷方式
  • 子会社・・・純資産価額方式

まとめ

非上場株式は、上場株式と違って市場での取引がないため、市場価格はありません。したがって、「今どれくらいの価値があるのか」を知るためには、正しい評価方法で株式の評価をする必要があります。

その際に、非上場企業は土地などの資産に含み益を抱えている場合が多いため、株価が高くなる傾向にあります。

株価が高過ぎると相続時に高額な相続税が課税されかねないため、定期的に自社の株価を評価し、できるだけ早い段階から適切な対策をとっておくと良いでしょう。

マルイシ税理士法人は不動産と相続に特化した専門性の高いサービスを提供しており、非上場株式の評価や株価対策についても、個別の状況に適した具体的なアドバイスなどを日常的に行っております。自社株の評価について少しでも疑問や不安などをお持ちの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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