賃貸用マンション・アパートを購入した際にかかる税金とは?

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

【執筆者:税理士・藤井幹久】

賃貸用マンション・アパートの購入にかかる税金や、個人で不動産賃貸業を開業したときの手続きについて解説します。

不動産を購入して賃貸経営を始める場合、後の相続対策についても早めに考えておくことが望ましいです。

家を購入した際にかかる税金一覧

賃貸用マンション・アパートを購入した個人には、下記の税金がかかります。

消費税

資産の売却やサービスの提供などにかかる税金です。

マンションやアパートの新築工事の代金や既存の物件(建物)の購入費などにかかります。

土地については、土地そのものの購入代金に消費税はかかりません。

しかし、マンションやアパートを建築するための土地の造成費用、土地の売買を仲介した業者への手数料、登記手続きや契約書の作成などを専門家に依頼したときの報酬などには消費税がかかります。

なお、ひと昔前は、賃貸マンションやアパートの購入時に支払った消費税の還付を受けるためのさまざまなスキームがありました。

しかし、税制改正の結果、現在は、賃貸用マンション・アパートの購入費にかかる消費税の還付はほぼ受けられなくなっています。

関連記事:消費税の課税取引とは?不動産の消費税の課税・非課税をまとめて解説

印紙税

法律に定められた一定の文書を作成したときにかかる税金です。

不動産の売買契約書や工事請負契約書は、印紙税の課税文書(第1号文書・第2号文書)に該当しますので、これらを作成したときは、書類の記載金額に応じた印紙税が必要になります。

契約書は、通常、各当事者用に1通ずつ作成しますが、この場合、1通ずつに対して印紙税がかかります。

証明力をもたない単なるコピーの作成や、文書にあたらない電子データなどは印紙税の対象外になります。

印紙税の額

売買契約書や工事請負契約書の印紙税額は下記のとおりです。

いずれも令和6年3月31日まで、軽減措置があります。

課税文書 印紙税の金額
売買契約書 工事請負契約書 本則 軽減措置
1万円未満 1万円未満 非課税 非課税
10万円以下 100万円以下 200円 200円
50万円以下 200万円以下 400円 200円
100万円以下 300万円以下 1,000円 500円
500万円以下 2,000円 1,000円
1,000万円以下 1万円 5,000円
5,000万円以下 2万円 1万円
1億円以下 6万円 3万円
5億円以下 10万円 6万円
10億円以下 20万円 16万円
50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円
記載がないもの 200円 200円

なお消費税額は、印紙税の記載金額に含まれませんので、消費税を区分して記載することによって、印紙税の負担を軽減できる場合があります。

【記載例】✱「1,045万円(消費税等込み)」
▷ 1,045万円が記載金額になるため、印紙税は1通あたり1万円
✱「950万円 消費税等95万円 合計額1,045万円」
▷ 950万円が記載金額になるため、印紙税は1通あたり5,000円

印紙税の納税者

印紙税の納税義務があるのは、課税文書を作成した人です。

契約書のように二者以上が共同して課税文書を作成したときは、連帯して印紙税を納めるルールになっています。

このルールから、各当事者で1通分ずつの印紙税を分担することが一般的です。

関連記事:印紙税とは?契約書・領収書の各印紙税額一覧【2023年版】

不動産取得税

不動産の購入時などにかかる税金です。

賃貸マンションやアパートのように、購入した不動産が「住宅」であれば、その不動産の固定資産税評価額に3%の税率をかけた額になり、さらに宅地は、その2分の1となります。(令和6年3月31日まで)

また、新築の賃貸マンションやアパートの取得であれば、床面積40㎡以上の独立した区画ごとに、固定資産税評価額から1,200万円を減額できる特例があります。

このときの敷地についても、不動産取得税の額から、下記のA・Bのいずれか大きい額を控除することができます。

  • A:4万5,000円
  • B:土地1㎡当たりの固定資産税評価額×2分の1×「住宅の床面積×2」(※)× 3

(※)「住宅の床面積×2」は200が上限

新築住宅やその敷地の特例を使うには、都道府県に申告が必要になります。

関連記事:不動産取得税とは?税率・計算方法から軽減措置の申請方法まで解説

登録免許税

購入した不動産の登記を行うときにかかる税金です。

土地については、原則は不動産の価格(固定資産税評価額)の2%になりますが、令和5年3月31日までの登記であれば、1.5%に軽減されます。

賃貸用の建物の登記については、新築などの保存登記を行う場合、不動産の価格の0.4%です。

移転登記の場合は2%になります。

窓口で登記を申請する場合は、登録免許税をあらかじめ金融機関等で納めておき、その領収書を申請書類に貼り付けます。

登録免許税の額が3万円以下の場合は、税額相当の収入印紙を申請
書類に貼り付ける方法も認められます。

司法書士に登記手続きを依頼した場合、登録免許税は立て替え払いされますが、後から報酬と一緒に請求されます。

関連記事:登録免許税とは?税金の計算と軽減税率について解説

固定資産税

不動産を保有している間、毎年、発生する税金です。

毎年1月1日の不動産の所有者に納税義務が課されます。

税額は、「固定資産税評価額×1.4%(標準税率)」になりますが、住宅用地には、減額措置があります。

不動産を購入したタイミングで発生する税金ではありませんが、不動産取引では、購入日までに相当する固定資産税を日割りで算出し、購入日からの固定資産税は購入者が負担して、売主に支払うという慣習があります。

この代金を、固定資産税精算金といいます。

日割り計算の起算日を1月1日とする場合と4月1日とする場合がありますので、その地域などの慣習に従うこととなります。

関連記事:固定資産税・都市計画税とは?計算方法・軽減される特例を解説

都市計画税

主に市街化区域の不動産の所有者に対して、毎年、発生する税金です。

固定資産税とともに徴収されます。

税額は、「固定資産税評価額×0.3%(制限税率)」です。固定資産税と同様に、住宅用地には軽減措置があります。

こちらも、不動産を購入したタイミングで発生する税金ではありませんが、不動産取引の慣習として、購入者が、購入日からの日割り分を負担します。

関連記事:固定資産税・都市計画税とは?計算方法・軽減される特例を解説

賃貸を行う際に必要な手続き

必要な手続き

個人事業の開業届を提出する

個人で不動産賃貸業を営む場合、住所地を管轄する税務署に「個人事業の開業届出書」を提出します。(廃業届との兼用様式です。)

提出期限は、開業から1か月以内になります。

任意で行う手続き

青色申告の承認申請

不動産所得について青色申告を始めるための申請です。

税務署に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

提出期限は、開業年であれば、開業から2か月以内ですが、1月15日までの開業であれば、3月15日までになります。

一度承認を受ければ、以後は手続きをする必要はありません。

提出後、年内(11月以降に開業した場合は、翌年2月15日まで)に税務署から特に連絡がなければ、承認されたことになります。

一般的には、開業届の提出期限に合わせて、一緒に提出しますが、開業年より後に青色申告を始めることもできます。

その場合は、青色申告を始めたい年の3月15日までに提出します。

※青色申告を実際に行うには、帳簿書類の保存や青色申告決算書の作成・提出など、条件があります。

青色申告事業専従者給与の届け出

個人で営む不動産賃貸業に関して、生計を一にする配偶者や親族に給与を支払っても、それらは原則として経費になりません。

ただし、それが事業専従者である場合は、必要経費として一定の控除を計上することができます。(事業専従者控除)

さらに、青色申告をする個人が、その事業専従者への給与に関して税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出すると、届け出た金額の範囲内で、支給した給与の金額が必要経費になります。

なお、事業専従者控除も青色専従者給与も、不動産賃貸業を事業的規模(貸家なら5棟、アパートやマンションなら10室など)で営んでいることが前提ですのでご注意ください。

開業年に提出する場合は、開業日や専従者がいることになった日から2か月以内(1月15日までの開業であれば、3月15日まで)に提出してください。

減価償却資産の償却方法の届け出

個人で行う不動産賃貸業で減価償却費を計上する場合、税務署に何も届け出をしなければ、すべて「定額法」で計算することになりますが、届け出によって、これを「定率法」にすることができます。

ただし、平成28年4月1日以後に取得した建物、建物附属設備、構築物の償却方法は、定額法しか選択することはできません。

提出期限は、開業年の確定申告期限までとなります。

なお、後から償却方法を変更するには、税務署に承認申請を行うこととなります。

関連記事:【相続対策】3つの基本(相続税対策・納税資金対策・分割対策)を解説

まとめ

賃貸用マンション・アパートの購入にかかる税金や、個人で不動産賃貸業を開業したときの手続きについて解説しました。

手続きは、税務署関係のものをまとめましたが、たとえば不動産賃貸収入によって、社会保険の扶養から外れる人や、会社を早期リタイアする人などは、勤務先への社会保険の手続きも必要になります。

なお、今回は、個人での開業手続きについて解説しましたが、不動産賃貸の収入が増えると、会社を設立して賃貸経営を法人化することで、個人で賃貸経営を続けるよりも、税負担を抑えられる場合があります。

また、不動産を購入して賃貸経営を始める場合、後の相続対策についても早めに考えておくことが望ましいです。

詳しくは不動産と相続を専門とする税理士にご相談ください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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