【不動産のプロが解説】空き地の活用方法15選を収益・土地別に比較検証

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

【執筆者:税理士・藤井幹久】

空き地を活用するメリット

空き地活用のメリットは主にお金に関連することです。税金と収益に関連する内容が空き地活用のメリットとして挙げられます。

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節税対策として有効

アパート・マンション・戸建住宅などを建てて運用する場合は特に、空き地の活用は節税対策として有効です。運用すれば収益が入ってくるのに、なぜ節税対策になるのかと疑問に感じる人もいるのではないでしょうか。

運用目的でアパートやマンションなどを建設する場合は、アパートローンなどのローンを利用するのが一般的です。不動産運用による収益はサラリーマンなど本業の給与所得と損益通算できます。

損益通算とは、確定申告において不動産運用による収益を給与所得の収入と合算して収支計上することです。もし不動産運用によって赤字が発生した場合は給与所得と合算することで所得税・住民税を節税できます。

なお、詳細はデメリットの項で解説しますが、空き地を所有し続けることによって発生する固定資産税と都市計画税を考慮すると、空き地を放置するよりは何らかの形で活用して収益を上げていく方が賢い選択であると言えます。

収益源の確保が可能

空き地を活用する最大のメリットは、資産運用による収益源の確保につなげられることです。後の項で詳しく解説しますが、家やアパートを建てるのみにとどまらず、自動販売機の設置や駐車場運用など空き地の活用方法には様々な種類があります。

空き地の広さや場所によって有効な方法はことなるものの、もし狭小地であったとしても何らかの活用方法があると考えて問題ありません。

また、空き地の活用は1度始めてしまえば維持管理を業者に委託できるものも多く、得られる収益を不労所得として活用できます。不労所得を得られれば、日々の生活費にできるほか老後の年金対策や二次運用によるさらなる資産拡大など、様々な選択肢について検討することが可能です。

関連記事:【空き家特例】相続した家の売却時に使える3000万円特別控除とは?

空き地を活用しないデメリット

税金がかかる

使用の有無・運用の有無にかかわらず、不動産を所有しているとそれだけで税金が発生します。発生する税金の種類は固定資産税と都市計画税です。

これらの税金は家を所有していると毎年課税されますが、建物が建っていない更地の土地を所有している場合も家を所有している場合と同様に課税されます。なお、固定資産税と都市計画税は毎年課税される税金です。どちらも4分割して6月・9月・12月・2月に納税します。

空き地を所有しているのに活用しないと、土地を所有していることで収益が入ってくるわけでもないのに税金だけを支払うことになってしまいます。

維持費用がかかる

空き地は建物が建っていない土地のことを指す言葉であり、何も建物が建っていないのであれば、維持管理は特に必要ないと思う人もいるのではないでしょうか。

しかし、空き地であっても適切に管理しないと、雑草が生え放題になってしまったり浮浪者がいついてしまったり、あるいはゴミを放置されてしまうなど、後のトラブルにつながりかねない状態になってしまいます。

また、後に土地を売却しようとしても、荒れ地の状態だと買主に買いたたかれてしまうなど資産運用の面でも空き地の放置はデメリットが大きいものです。維持管理に関しても税金と同じで、収益が発生しないのに費用だけが掛かることになります。

近隣トラブルのリスクがある

前項で解説した通り、空き地を放置して雑草が生え放題などの荒れ地になってしまった場合、空き地の近隣住民とトラブルに発展する可能性もあります。

税金や維持管理費用などのお金が出ていくだけならまだ所有者個人の問題で済みますが、近隣住民との話し合いを要するなどの状態に発展してしまうと、空き地を抱えているだけで精神的な負担を背負うことにもなりかねません。話し合いに当たって弁護士など代理人を立てるとしても、その費用がかかるため金銭的な負担につながってしまいます。

おすすめの空き地活用事例15選

①アパート・マンション経営

アパートやマンションの運用は、空き地の活用方法として最もオーソドックスな方法であると言えるでしょう。

成功すればリターンが大きいというポイントがアパートやマンションの運用におけるメリットです。

ただし、運用方法については地場の不動産業者と相談しながら決めるのがおすすめです。アパートやマンションの運用は、初期費用が大きくかかる運用方法なので大手の業者に相談する方が安心と感じる人もいるかもしれません。

しかし、大手の業者が必ずしも空き地があるエリアについて詳しいとは限らず、取りあえずその業者が持っているパッケージ商品を進められることも多いものです。

アパートやマンションの運用をする場合は空室リスクなども考慮する必要があるため、空き地があるエリアのマーケット理解が重要になります。

なお、税負担を考慮すると、賃貸用の住宅が建っている土地の評価額は約20%減額されるため、節税の面からもアパート・マンションの運用はおすすめです。

②介護福祉施設/保育園経営

介護福祉施設や保育園は現代社会において需要が非常に強くなっています。少子高齢化が進んでいる背景から介護福祉施設の需要は強く、共働きが一般化している中では保育園の需要が高まっているためです。

介護福祉施設や保育園の経営は、空き地の場所が都心または都心から少し離れた郊外であるなどの場合はおすすめの活用方法であると言えます。

どちらも人を集められるほどの施設を建てるためには相応の資金が必要となりますが、介護福祉施設を建てる場合は補助金制度を活用可能です。

ただし、どちらの施設も相応の広さが必要となるため、空き地が狭小地であるなどの場合は選択肢から外れます。

③商業施設経営

住宅・福祉施設と並んで考えられる運用方法は、店舗が入る商業施設を建設して経営することです。入居者としては個人経営の飲食店や小売店・コンビニエンスストア・事務所使用の法人などがあります。

そのほか、空き地の状態から建物を建てるのであれば、観光客が宿泊するためのシェアハウスやホテル経営なども可能です。

商業目的の入居者に対しては、居住目的の入居者と比較すると家賃を高額に設定できる点でメリットあります。ただし、場所によっては集客できずに入居者が入らないこともあるため、需要の見極めが重要です。

④駐車場

空き地が建物を建てるには狭い場合や、初期費用をあまりかけられない場合などは駐車場による運用がおすすめです。駐車場には月極駐車場とコインパーキングの2種類があります。

月極駐車場は場所によって収益性の上下が激しいものの、必要な初期費用が少ないので自己資金があまりない場合はおすすめです。コインパーキングは協力業者によって初期費用がかかることもあるものの、管理を協力業者に一任できるため手間がかかりません。

なお、駐車場設備は建物扱いにならないため、既に解説した税評価額減などのメリットはありません。駐車場運用には相応の税金がかかるため、場所と収益性を考慮して検討することが必要です。

⑤トランクルーム経営

空き地の場所を考慮すると賃貸住宅や駐車場の経営が難しいという場合は、トランクルームによる運用も選択肢の1つです。

トランクルームはアパートやマンションなど住宅ほどの初期費用がかからないほか、維持管理費も抑制できます。個人が設備を置いて経営することも可能ですが、業者とフランチャイズ契約を結んだり、一括借り上げ(サブリース)などを利用したりするのが一般的です。

なお、収納ニーズがないエリアでは収益性を見込めないため、トランクルーム経営は周辺に集合住宅が多いなどの場合に有効な空き地活用方法であると言えます。

⑥コインランドリー経営

空き地の場所が住宅街である場合はコインランドリーの経営も有効です。特に単身者向けの賃貸住宅には浴室乾燥機が入っていないことも多いほか、乾燥機能付きの洗濯機を入れられるスペースがないことも少なくありません。

また、コインランドリーは土地が狭くても問題ないため、都心の狭小地で競合店が少ない場合は特に有効な運用方法となります。

⑦資材置き場

資材置き場とは建設資材やブルドーザーなどの重機を保管する場所のことです。最低限の維持管理ができていれば問題ないので、費用や手間がほとんどかからない活用方法であると言えます。

ただし、周辺で建設工事が行われない・周辺に重機を扱う業者がいないなどの場合は需要がないのでこちらも事前調査が重要です。

⑧自動販売機の設置

自動販売機の設置も費用や管理の手間が比較的少ない運用方法となっています。機械の設置・飲み物の補充などは業者に委託するのが一般的で、オーナーが負担するのは電気代のみです。

業者との契約に応じて売り上げの一部がオーナーに入ってきます。一定以上人通りがあるエリアならば売り上げを見込めるため、場所と周辺の状況によっては自動販売機の設置を検討するのも有効です。

⑨戸建賃貸経営

前項で解説したアパート・マンションのほかに、場所によっては戸建住宅の運用が適切な場合もあります。賃貸住宅の市場はその大半をアパート・マンションが占めており、賃貸戸建住宅は非常に少ないのが実態です。

しかしながら、広めの賃貸住宅を探す人は少なからずいるため、ニーズの見極めができれば戸建住宅の賃貸経営は非常に有効な運用方法となります。

例えばペットを飼育可能にしてペット用の足洗い場を作るなど、競合との差別化を図れば入居者が入る可能性は上がります。

なお、ファミリー世帯が入居した場合は長期間の入居が見込めるため、単身者世帯がメインターゲットのマンション・アパート経営と比較すると安定性が高いのも戸建賃貸経営のメリットです。

⑩賃貸併用住宅

賃貸併用住宅とはオーナーが居住する住宅と賃貸用の住宅とが混在している建物のことです。1階または2階がオーナーの住宅になっているアパートなどを賃貸併用住宅と呼びます。

賃貸併用住宅は、オーナー自らが居住するためだけに家を建てても土地が余るという場合などにおすすめの活用方法です。

賃貸併用住宅の建設にはローンを利用できるため、賃料収入からローンを返済しながら家に住めることがメリットとなります。しかし、入居者が入らなければローン返済だけが発生するため、事前に賃貸住宅のニーズを見極めることが重要です。

⑪貸し農園

空き地が郊外もしくは地方に位置している場合などは、貸し農園として農家向けに土地を貸し出すのも有効です。近年では農家でなくても菜園を楽しみたいという需要があるため、必ずしも農家向けでなくても問題ない場合もあります。

貸し農園は資材置き場と同様に初期費用や維持管理費用があまりかからない運用方法です。しかしながら、賃貸住宅や駐車場の経営などと比較すると収益性が低いことは否めません。収益性を上げるためには、区画を区切って複数人に貸し出すなどの工夫が必要となります。

⑫看板広告

看板広告も手間と費用が少なくて済む運用方法です。広告用の設備が整っていれば、広告掲出の費用などは借主が負担することになります。

不動産の賃貸運用と比較すると、契約期間が短かったり賃料が少なかったりなどのデメリットがある一方で、手軽に始められる点はメリットです。

⑬太陽光発電

周辺にほとんど人がいないなど、不動産の利用に関するニーズをほとんど見込めない場合には太陽光発電設備の設置も選択肢の1つとなります。

一定以上の広さがあって送電線を敷設できる場所であれば良いため、空き地が郊外や地方の田舎に位置している場合でも始められる点が太陽光発電設備の強みです。

ただし、収益をあげるためには十分な日当たりを確保する必要があるほか、太陽光発電パネルは機械設備なので相応の維持管理を要します。維持管理は業者に委託するのが一般的ですが、費用が発生するため収益性の事前確認は必須です。

また、一時期は行政がパネル設置を強く推進していたため、設置に当たって多額の補助金があったものの、現在では当時ほどの補助は受けられません。初期費用の回収には一定以上の期間をかけることが必要です。

⑭土地貸し出し

ここまでご紹介した活用方法は主にオーナー自らが手を加えて収益をあげるものでした。一方で、オーナー自身は特に手を加えずに事業用地として法人向けに土地を貸し出すという方法もあります。

例えば都心では定期借地権付きのマンションが建設されることも多いものです。定期借地権付きのマンションは、個人もしくは法人がデベロッパーに土地を貸し出すことで建設されています。

定期借地契約は50年などの期限付きで締結されることが多く、借主は契約期間満了後に更地にして返還するのが条件です。空き地の場所によっては法人と定期借地契約を締結して借地料を収入とするのも1つの方法となります。

土地活用方法を悩んだ際のポイント

ここまで様々な空き地の活用方法をご紹介しましたが、そもそも法規制によって「この方法は選択できない」ということが発生する場合もあります。空き地の活用に関係する規制とは、主に以下の2つです。

市街化区域または市街化調整区域のどちらに指定されているか
何の用途地域に指定されているか

空き地が市街化区域に該当する場合は問題ありませんが、市街化調整区域に該当する場合はそもそも建物を建てられません。建物を建てられない場合は、活用方法の大半が制限されることになります。

また、用途地域によって店舗や住宅など建物の用途が制限されるほか、容積率及び建蔽率の指定によって建物の大きさが制限されます。

空き地の活用を成功させるためには、まずどの活用方法を採用できるのか確認するとともに、方法ごとのニーズと競合を見極めることが重要です。

どんな活用方法であってもニーズが無ければ収益は上がらないほか、競合が多すぎると値下げ競争に巻き込まれて収益が下がることもあります。

なお、活用の成功確率を少しでも上げるためには、最初から方法を1つに絞らず様々な業者から話を聞いて比較検討することが必要です。万一ベストな活用方法が見つからないという場合は、土地を売却するという選択肢もあります。

土地の売却には譲渡所得税が課税されますが、まとまったお金が入ってくることは大きなメリットです。入ってきたお金を運用するのも賢い選択と言えます。

まとめ

税負担や維持管理の手間・費用を考慮すると、空き地は放置せずに何らかの形で活用するのがおすすめです。本記事では14通りの活用方法に加えて売却に関しても解説しましたが、どんな土地でも探せば何かの活用方法が見つかります。

活用方法が多すぎてどれが良いのかわからないと感じる人もいるかもしれません。最適な活用方法を絞り込むためには、まず所有する空き地に関する法規制を確認するのがおすすめです。

規制がある場合は選択肢がある程度限られてきます。続いてニーズと収益性を比較しながら絞り込んでいけば、ベストな活用方法が見つかるでしょう。重要なポイントは複数の方法と業者を比較しながら絞り込んでいくことです。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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