空き家を相続したときに知っておきたい注意点や特例について税理士が解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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最近は新聞やTVなどをはじめ、さまざまな場所で「空き家問題」が論じられています。
日本社会は2010年から人口減少が始まっており、これから数十年に渡って人口の約30%近くが減少していくことが予想されています。

今回は、空き家を相続した人・これから相続する予定のある人を対象に、空き家を相続した場合の問題点やその対処法、
また空き家を相続した場合の税金の特例などについて、じっくりと解説していきます。

空き家が増えていくことは誰でも簡単に想像できると思いますが、そもそも空き家を相続することのいったい何が問題なのでしょうか?
もし仮に問題なのだとすれば、空き家を相続した後でどうすれば良いのでしょうか?あるいは、そもそも相続しない方が良いのでしょうか?

相続で空き家を取得してしまう事例は多い

核家族化が進んだ現代社会では、親元から離れた子供の多くはそれぞれが自宅を所有しています。やがて親が亡くなると実家が空き家になってしまいますが、子供たちもそれぞれ自宅を持っているため、実家に住む相続人は誰もいません。当然、実家は空き家になります。

あるいは、一人っ子同士が結婚して郊外に自宅を購入した場合、お互いの両親が住むお互いの実家は、やがてどちらも空き家になってしまいます。

どちらのケースも相続によって空き家が発生し、そして財産を相続することにより(幸か不幸か)空き家を取得してしまうことになってしまうのです。

昔のように相続人が多ければ誰かが実家を相続するため空き家にはならなかったでしょうが、少子化が進み一人っ子が多くなった世の中で相続が起こった場合、かなりの確率で空き家が発生し、そして空き家を相続によって取得してしまう事例が増えてしまいます。

空き家を相続した場合の問題点

それでは空き家を相続などで取得してしまった場合、いったい何が問題になるのでしょうか?空き家を相続した場合の問題点としては、主に以下の3点を挙げることができます。

  • 管理費・維持費がかかる
  • 取り壊し費用を請求される場合がある
  • 固定資産税等がはね上がる場合がある

問題点① 管理費・維持費がかかる

まず、誰も住んでいなくても水道光熱費の基本料金は毎月必要になります。また、住宅は人が住んでいてもいなくても経年劣化していくため定期的なメンテナンスが必要です。キッチンや風呂場・トイレなどの水回りや屋根などの防水、そして外壁などの塗装も定期的に行わなければなりません。更には火災保険の加入も必要ですし、庭木の手入れもしなければなりません。これらの管理費・維持費は定期的に必ず必要になります。

問題点② 取り壊し費用を請求される場合がある

空き家の維持管理を怠り放置しておくと、家屋の崩壊が進み周辺に悪影響を及ぼす場合があります。このようなケースでは「空き家対策特別措置法」により行政による空き家の強制撤去が行われることがあります。

もちろん、いきなり取り壊しということにはなりませんが、最悪の場合これらの取り壊し費用を自治体から全額請求されることになってしまいます。

問題点③ 固定資産税等がはね上がる場合がある

空き家の維持管理を放棄し、家の劣化が進み続けると「空き家対策特別措置法」により管理不全空き家や特定空き家に指定されることがあります。こうなってしまうと固定資産税・都市計画税の軽減措置の対象から外れてしまうため、固定資産税が従来の金額の約6倍、都市計画税が従来の金額の約3倍になってしまう可能性があります。

このように、空き家を相続すると毎月必ず何らかの維持費が発生し、かといって維持費を支払わなければ最終的には更に高額な費用を請求されてしまう可能性もあります。

相続で取得した空き家の対処法

では、実際に相続で空き家を取得せざるを得なかった場合、どのように対処すべきかについて検討してみましょう。この条件で考えられる選択肢は以下の5つです。

  • 売却する
  • 管理・維持をする
  • 賃貸として貸す
  • 住居として住む
  • 相続放棄する

それでは、一つ一つをじっくりと検討してみましょう。

選択枝① 売却する

将来的にもその住宅に住む可能性が低く、かつそれなりの価格で売ることが出来るのであれば、相続後に売却するという選択肢を選ぶことが出来ます。日本の人口減少は今後数十年間続くため、一部商用地を除けば不動産価格は長期的に下落傾向となります。

売却できるうちに売却しておけば現金を手に入れることが出来ますし。毎月の維持費や万が一の場合のリスクを負う必要もなくなります。

売却に関しては、後ほどご紹介する「空き家の3,000万円特別控除の特例」を活用できれば、原則として譲渡益から最大3,000万円を控除することができるため、節税をすることも十分に可能です。ただし、必ず確定申告を行わなければなりません。

選択枝② 管理・維持をする

思い入れがあり手放したくない場合、また将来的に子や孫に相続させたいと考えている場合は、空き家を管理・維持することを選択できます。

ただし、毎月の維持費や定期的な修繕費用などは必ず必要なため、長期的な費用の合計額と空き家の資産価値を比較し、できるだけ正確なシミュレーションを事前にしておいた方が良いでしょう。

選択枝③ 賃貸として貸す

もし空き家を賃貸物件として誰かに貸すことが出来るのであれば、貸すというのも選択肢として考えられます。賃料が入り収益物件となれば、空き家が毎月利益を生み出すようになります。

ただし、空き家として維持する以上の維持費が必要となり、また、売却したいと思った場合でもすぐに売却することはできません。更に、継続して長期間借りてくれる保証はありません。そしてもちろん、毎年確定申告をしなければなりません。

選択枝④ 住居として住む

今住んでいる場所を引き払い、空き家に住むことが出来るのであれば、住宅として空き家に住むという選択肢も考えられます。家賃などを支払う必要もありませんから、現在家賃を支払っている方であれば、決して悪い選択肢ではありません。

ただし、空き家の状況によっては近いうちに大規模修繕が必要となる可能性もあり、場合によっては新築物件を購入した方が得をすることもあります。

選択肢⑤ 相続放棄する

①から④までのどの選択肢も選ぶことが出来ない場合、空き家を相続しないように相続放棄を選択枝として考えることができます。

ただし、相続放棄をする場合は空き家以外の財産も放棄しなければなりません。また、相続放棄後も相続財産管理人が空き家の管理を開始するまでは引き続き空き家の管理義務責任は継続するため、空き家の管理・維持から完全に開放されるわけではありません。

空き家の3,000万円特別控除の特例

相続した空き家を売却した場合、譲渡益から最大で3,000万円を控除してもらえる特例があります。これを「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。

譲渡所得の税率は約20%ですから、簡単に言うとこの特例を使えば相続した空き家を売った場合最大600万円の税金が安くなるというわけです。ただしこの特例を使うためには、以下にご紹介する様々な要件を満たさなければなりません。

対象となる建物と土地

この特例を使うことができる建物と土地は、以下の要件をすべて満たさなければなりません。

特例の対象となる建物の要件

建物の要件は以下の3つです。

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  • 区分所有建物登記がされている建物(マンションなど)でないこと
  • 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと(※)

※被相続人が老人ホームに入所していた場合、一定の要件を満たす場合には特例あり

特例の対象となる土地の要件

土地の要件は以下の1点です。

・相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地

特例を受けるためには、建物と土地がこれらのすべてを満たしていなければなりません。条件を読んでいるとややこしく思われるかもしれませんが、イメージとしては、亡くなった方が古い一戸建てに一人暮らししていた場合が対象になると思っていただければ大丈夫です。

特例を受けるための適用要件

建物と土地が要件を満たした上で特例を受けるためには、更に以下の要件をすべて満たさなければなりません。

  • 建物の耐震リフォームが済んでいるのであれば建物と土地をセットで、そうでなければ建物を取り壊した後で土地だけを売却すること
    なお、令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以後の譲渡の場合には、譲渡年の翌年2月15日までの取り壊し(以前は、譲渡時までに譲渡側で取り壊す必要がありました)と要件が緩和されております。
  • 相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用、居住用に供されていないこと
  • 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 空き家について他の特例を受けていないこと
  • 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと

不動産に関する税金は専門家集団マルイシへご相談を

相続した空き家を今後どのようにしたら良いのかを判断するためには、綿密なシミュレーションを行わなければなりません。空き家が売れるからと言ってすぐ売ってしまっては、3,000万円の特別控除が受けられなくなる場合があります。また、空き家に借り手が見つかった場合でも、貸す前には不動産投資のリスクと節税プランを組み合わせたシミュレーションを行ってからでなければ、本当に正しい判断はできません。

マルイシは不動産と相続に特化した専門家集団のため、節税はもちろんのこと、長期的な視野に立った不動産や相続のコンサルティングを行うことができます。

空き家の相続についてお考えの方はぜひ一度ご相談ください。

まとめ

少子化と人口減少により、空き家を相続する人が今後さらに増えていきます。空き家は、うまく活用すれば収益物件にすることもできますし、売却時に特例を使って安い税金で済ませられる可能税もあります。

しかし、何を選択する場合でも、事前に綿密な準備をしておかなければ望んだ結果を出すことは難しいでしょう。

空き家を相続する可能性がある方や相続した方、そしてご心配に思っている方は、ぜひマルイシへご相談ください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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