相続対策に向いているマンション投資とは?ワンルームVS一棟を徹底比較

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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不動産投資は相続税対策として有効ですが、節税効果は購入する不動産の種類によって差が出てきます。 ワンルームマンションと一棟マンションでは、相続税の節税効果などに関するメリット・デメリットが異なりますので、ご自身の状況にあった物件を購入するのがポイントです。 本記事ではワンルームマンション投資と一棟マンション投資を比較し、どちらがオススメの投資方法なのかをご紹介します。

マンション投資が相続対策となる理由

マンション投資が相続対策になるのは、相続税において不動産は預金より評価額を抑えることができる財産だからです。
相続税は相続開始時点の財産が課税対象となり、預金は亡くなった時点の残高が相続税評価額です。

不動産の相続税評価

土地の相続税評価額は、路線価(評価倍率)を基に計算するのですが、路線価は公示価格の80%程度とされているため、預金を不動産に変更すると相続税評価額を20%減額することが可能です。
(路線価の価額は毎年変動します。)
建物の相続税評価額は固定資産税評価額をベースに計算しますが、固定資産税評価額は購入時点で時価相場よりも低く設定されていますし、建築年数が経過することで評価額は下がっていきます。
通常、建物の価値が下がれば資産価値も下がりますが、マンションは立地が取引価格の中で重要視されるため、戸建てに比べて建築年数の経過による取引価格の下落は少ないです。

マンションを貸付用として利用すれば、土地は貸家建付地評価、建物は貸家評価により評価額を下げられますし、土地については小規模宅地等の特例で相続税評価額を50%減額できます。
相続対策以外にも家賃収入を得られるメリットもありますので、マンション投資は相続税の節税を行いつつ資産を増やすことができる手段です。

ワンルームマンション投資の相続対策効果

ワンルームマンション投資は、マンションの一室を区分所有し、貸し付けることで家賃収入を得る投資方法です。

ワンルームマンション投資のメリット

不動産は大きな買い物なので、マンション一棟購入するとなると1億円以上かかることもありますし、一定の資産が無ければ融資を受けることも難しいです。
しかしワンルームマンション投資は、不動産投資の中では必要となる資金が比較的抑えられ、サラリーマンでも副業として行えるほど敷居は低いです。
購入費用についても数百万円から数千万円程度と、一括購入できる資金が手元にない場合でも融資を受けて始められます。

相続税対策の観点では

相続税対策の観点で考えた場合、ワンルームマンションは所有する土地の面積が小さいことがプラスに作用します。
路線価地域にある土地は路線価に土地面積を乗じて計算するため、所有する土地の面積が大きいほど算出される相続税評価額は高くなりますが、ワンルームマンションはマンション全体の土地を敷地権割合で乗じたものが所有面積となるため、建物面積に対して土地面積が小さいです。

また階数が多いマンションほど、一部屋当たりに割り当てられる面積は少なくなるため、預金を不動産に変えるだけで相続税評価額を大きく抑えられるケースもあります。
戸建て物件であれば土地の面積の大小で取引価格は上下しますが、マンションについては土地面積よりも建物の床面積の方が価格に影響しますので、資産価値を保ちつつ相続対策を行うことができます。

しかし、このようなワンルームマンションの相続税評価と市場価格の乖離が大きいことが相続税対策となることは、国税庁も注視しており、区分マンションの評価方法(通達)の改正がなされました。
令和6年1月1日以後の相続、贈与等により取得した区分マンションについては、新たな評価通達により評価額が計算されることになり、以前ほどは相続税対策としての効果が期待できなくはなりました。
ただし、このように評価方法の改正がなされたとは言え、区分マンションの相続税評価が想定時価の6割程度に抑えられるため、相続税対策としては以前有効なものであると考えられます。

ワンルームマンション投資のデメリット

ワンルームマンション投資を貸付物件として利用する場合、貸し付ける相手は1人しかいませんので、賃貸契約が終了すれば収入はゼロになります。
ワンルームマンションを複数保有する方法もありますが、利回りはマンション一棟を運用するよりも低く、購入する物件を選ばないと収支がマイナスになるリスクもあります。
新築物件や築年数が浅ければ入居者は途切れませんが、築年数が経過していくと賃貸物件としての魅力は低下するため入居希望者が少なくなり、家賃を下げるなどの対策が必要です。
空室期間が長ければ収入は減少しますし、家賃の値下はそのまま収入源を意味しますので、物件選びがとても重要です。

相続税対策の観点では

貸家建付地評価および貸家評価、小規模宅地等の特例は賃貸物件として利用している状態でなければ適用できません。
賃貸物件に該当するかの判断は相続開始時点なので、空室の状況が続いたままの状態で相続が発生してしまうと小規模宅地等の特例などが適用できず、相続税の節税効果が半減します。

一棟マンション投資の相続対策効果

一棟マンション投資とは、マンションを丸ごと購入(建築)し、賃貸マンションとして運用する方法です。
相続対策としての効果を最大限に考える場合、ワンルームマンション投資より一棟マンション投資の方が効果的です。

一棟マンション投資のメリット

一棟マンション投資の最大の特徴は、高い収益性です。
投資した金額に対して得られる収益の割合を「利回り」といい、利回りが高い物件ほど早期に投資費用を回収できます。
たとえば1億円で購入したマンションの年間収益が1,000万円だった場合、利回りは10%となるため、10年間貸付を行っていれば初期投資費用を回収できる計算です。
またマンションは鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄筋鉄骨コンクリート造なので、耐用年数が木造よりも長く、経費として減価償却費を長期間計上できます。

一棟マンションとワンルームマンションの違い

一棟マンションはワンルームマンションよりも利回りが高くなることが多く、投資費用を回収できるタイミングは早いですし、回収以後は利益を生み出した分だけ資産を増やせます。
空室リスクについても、一棟マンション投資であれば複数の部屋を貸し付けることにより収入がゼロになる可能性は低く、安定して家賃収入を得られるのもメリットです。

相続税対策の観点では

相続税評価額の計算では、土地の規模が標準的な土地よりも大きいことによる形状補正を適用できます。
標準的な土地の広さは戸建て物件を建てる際の面積程度なので、評価額を計算する際はマンションの敷地が広いことがプラスに作用し、戸建て物件を賃貸用として使用するより評価額を抑えることが可能です。

一棟マンション投資のデメリット

一棟マンション投資は投資金額が大きく、損失が発生した場合のリスクをよく理解しておくことが大切です。
購入する際の頭金として購入金額の2割程度は支払うことになるため、融資を受けて1億円のマンションを購入するとしても、現金2,000万円は用意しなければなりません。
またワンルームマンションと同様、不動産は建築年数が経過するほど人気が下がっていくため、長期的に運用するとなると空室が発生したり、家賃を下げて入居者を募集するなどの対策が必要になってきます。
マンション投資は立地が重要であり、駅チカのマンションであれば建築年数が経過していても人気が下がることはなく、常に入居者がいる状態を維持できます。
しかし居住者が少ない場所や、賃貸物件の需要が少ない地位にマンションを建ててしまうと、新築であっても入居者が集まらないことも考えられ、空室を埋めることが難しいです。

一棟マンションとワンルームマンションの違い

ワンルームマンションであれば売却して損切りすること可能ですが、不人気な場所にあるマンション一棟を購入する人は少ないため、売却できない状態に陥ることも考えられます。
なお賃貸物件の敷地に対して適用できる小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)は、200㎡の限度面積があり、200㎡を超えた部分に対して特例は適用できません。
空室部分に対応する土地は貸家建付地評価ではなく自用地評価となりますので、相続開始時点での貸付状況を確認しながら評価することになります。

【徹底比較】ワンルームVS一棟。相続税対策で有効な投資はどちらか?>

ワンルームマンション投資と、一棟マンション投資の比較表です。

【ワンルーム・一棟マンションの比較表】

ワンルームマンション投資 一棟マンション投資
相続税の節税効果 ・不動産による評価額の減額
・土地の貸家建付地評価
・建物の貸家評価
・小規模宅地等の特例の適用
・不動産による評価額の減額
・土地の貸家建付地評価
・建物の貸家評価
・小規模宅地等の特例の適用
メリット ・投資額を抑えられる
・融資を受けやすい
・リスクは限定的
・利回りが高い
・相続税の節税効果が高い
・空室リスクを分散できる
デメリット ・空室によるリスクが高い
・利回りが低い
・一棟マンション投資より相続対策の効果は薄い
・多額の資金が必要
・出資額に応じたリスク
・小規模宅地等の特例を土地全体に適用するのは難しい
購入金額
(目安)
数百万円から 1億円から

ワンルームマンションは購入金額を抑えられますが、相続税対策の効果で比較する場合、一棟マンション投資に軍配が上がります。
ワンルームマンションはマンションの一部屋を所有しているだけなので、管理組合の規約に従って貸付をしなければいけませんし、1人しか貸し付けることができないため、空室リスクを分散させるには複数のマンションを保有しなければなりません。
それに対し一棟マンション投資は、ワンルームマンション投資よりも利回りが高いですし、時代や環境の変化に応じてマンションの方針を決められるのがメリットです。
マンション全体を保有していれば、貸付方針や入居者の範囲を任意で決めることができるため、ペット入居可や女性専用・高齢者歓迎など、マンションの特徴を示すことにより空室対策を行えます。
また1つの不動産で複数人へ貸し付ければ、一定の入居率を維持することで安定した賃貸収入が得られますので、総合的に考えた場合に相続対策として活用できるオススメの不動産投資は一棟マンション投資です。

まとめ

相続税対策としてより節税効果が見込めるのはマンション一棟購入することですが、資金面や運用リスクを踏まえると、ワンルームマンションから始めることも選択肢になります。
不動産投資に共通する重要なポイントとしては物件選びがあり、好条件の物件を見つけることができれば相続対策はもちろんのこと、収益を出すことで資産運用としての効果も期待できます。
ただ入居者が少ないと修繕費等の支出で赤字となりますし、相続開始時点で空室だと小規模宅地等の特例などを適用できませんので、相続対策の一環として不動産投資のご検討されている際は、必ず相続税専門の税理士へご相談することをオススメします。
マルイシ税理士法人は不動産と相続に強い税理士事務所ですので、ご不明な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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