マンション売却のタイミングはいつ?3つの軸から売り時を徹底解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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「マンションを売却したい」人は皆、少しでも高値で売りたいと考えるものです。しかし現実は、大半の人が売却価格に不満を抱く結果になっています。マンションを満足ゆく価格で処分するには、売り出しのタイミングが重要。そのために、どのように考えて行動するのがベターかを解説します。

マンションの売却にタイミングは重要?

不動産業界のアンケート調査を見てみると、

  • 「売却価格に満足できなかった」
  • 「予定していたより安い売却価格になった」

マンションを売却した大半の人がこのような不満を抱いています。
それくらいマンション売却は難しいということでしょう。

同じ失敗を繰り返さないためには、マンション売却の絶好のタイミングを図る必要があります。

マンション売却のタイミングを決めるポイント

考える上で軸になるのは、次の3つです。

  1. 経済情勢:景気、大規模開発、金利動向など
  2. 築年数:築数年、築浅、築10〜15年、築古など
  3. 時期:1年間のうちどの月で売り出せば有利か

それぞれの軸について、詳しくお話ししていきます。

マンションの売却に最適な時期・タイミングとは?

経済情勢から見るマンション売却のタイミング

マンションの相場に大きな影響を与える要素に経済情勢があります。

具体的には、下記の様な時期に売却を検討する事が多いです。

  • 中古マンションの相場が高い時期
  • 新築マンションの相場が高い時期
  • 住宅ローンの金利が低い時期
  • 好景気の時期

中古マンションの相場が高い時期

中古マンションの相場は、マンションの売却価格にダイレクトに影響を与えます。
そのためマンションの売却を考えるときには、必ず中古マンション相場の動向をチェックしましょう。
「中古マンション 価格推移」などで検索すると、不動産市場調査の専門会社などがまとめた相場を示すデータが見つかりやすいです。

新築マンションの相場が高い時期

中古マンションだけでなく、新築マンションの相場が高いときも売り時です。
新築の価格が高くなると、なぜ中古が売り時なのか不思議に思う方もいるかもしれません。
これは新築マンションの相場が高くなると、割安な物件を求めて中古市場に買い手が流れやすいからです。

参考:大規模開発があるとマンション価格が上がりやすい
そのマンションのあるエリア(区や駅など)で大規模開発があるときには、マンションを含む不動産価格が高騰しやすいので売り時です。

東京カンテイのデータによると、東京23区のなかでも大規模開発が集中する都心6区(千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・渋谷区)と他の区を比べると、都心6区が価格上昇率で大きく上回ります。


(引用:東京カンテイ「中古マンション70㎡価格月別推移」

他の地方都市においても、大規模開発があるとマンション価格の上昇傾向が強いのが一般的です。

住宅ローンの金利が低い時期

住宅ローンの金利が低い時期も、マンション売却に追い風といわれます。理由は金利が低いとローンを組むハードルが下がり、マンション需要が高まるからです。これにより、相場を押し上げる効果が期待できます。


(引用:フラット35「民間金融機関の住宅ローン金利推移〈変動金利等〉

上記のグラフのように、日本ではここ20年にわたって超低金利時代が続いています。
これは最近の中古マンション人気と無縁ではないでしょう。

好景気の時期

好景気のときは、まさに高値でマンションを売却しやすい時期といえます。
下記の表のように、過去約10年の日経平均株価とマンション価格動向(国土交通省発表の不動産価格指数)を重ね合わせるとほぼ一致します。


(引用:日本経済新聞・電子版 2020年6月1日付

すなわち、景気を象徴する株価とマンション価格には強い相関性があるということです。両者が連動している理由は、株価が上がると個人投資家や企業に余剰資金が生まれ、それを元手に不動産の購入者が増えて相場を押し上げるからだといわれます。

ただし、株価とマンション価格は完全に一致するわけではなく、半年程度のタイムラグがある(株価に不動産価格が半年遅れる)というのが通説です。

築年数から見るマンション売却のタイミング

築年数によっても中古マンション売却価格は大きく変わります。
買い手のニーズの高いタイミングで売り出すのが上手なマンション売却といえます。

築5年未満:微妙な時期

下記のグラフは、「東京23区の築年数別成約件数」です。こちらを見てわかるように築3年あたりまでは成約件数が少ない傾向です。購入直後は新築プレミアム価格の剥落によって価格下落率が高い時期です。


(引用:日本経済新聞・電子版 2020年11月30日付

そのため、売主にしてみると購入価格と売却価格とのギャップが大きく、売りに出すのには抵抗のある時期といえます。

築5年前後になると成約件数が急増し、徐々に売り時の時期に突入します。
築浅物件は人気が高いため、都心の超一等地の人気マンションなどは、市場の動向次第で新築との価格差が小さいケースもあるようです。

築5〜10年未満:ニーズが急増する時期

10年くらい前はこのあたりが中古マンション成約件数のピークでした。
買い手が多く流動性が高いため売り時だったといえます。

しかし最近では、中古マンションへの抵抗感が薄れた影響などにより、築15年前後がピークになっています。
立地や建物のランクによっては築浅で購入してこのあたりで手放すとプラスの収支になることもあります。

築10〜15年:まさに売り時

最近の中古マンションの成約件数はこのあたりがピークですから、まさに売り時といえます。

ただこのあたりは、給湯器などの住宅設備を交換するタイミングでもあります。
そのため、売りに出す前後で修繕やリフォームの費用がかかりやすい時期でもあります。
明らかに修繕が必要な場合、これらの費用は売主が負担するのが一般的です。

築20年以上:第2のピークの時期

最近では築20〜30年以上の中古物件をリノベーションして、自分らしいライフスタイルで暮らしたいというニーズも強くなってきています。

前出のグラフを見ると、最近(2016〜2020年)の傾向としては築27年前後、築37年前後に再び成約件数のピークがあることがわかります。

このように最近は、かなりの築古マンションになっても一定のニーズがあります。ただし築古物件は不具合や傷などが多いので、売買契約書などに物件状況を細かく記載しないと「契約不適合責任」が発生するリスクがあります。

これは、契約書に書かれていなかった不具合などについては、買主が売主に対して後から修繕費や代替品の費用を請求できるものです。

時期から見るマンション売却のタイミング

不動産業界では、中古マンションを売却しやすい(または購入しやすい)タイミングは、転勤や進学などで人が本格的に動く春先前後というのが通説です。これは事実でしょうか。

不動産流通推進センターの「2020不動産業統計集」によると、
2019年3月~2020年2月までの中古マンションの成約件数がピークを迎えるのは 2月(3,749件)と3月(4,117件)です。2月直前の12月と1月は2000件台ですが、2月に差し掛かると一気に1000件前後増加します。

また、4月もそれなりの成約件数がありますが(3,440件)、5月になると反動で一気に 2000件台まで下降します。

成約件数が多いということは、それだけ市場が活発に動いているということです。「春先前後に中古マンションを売りやすい」というのは事実でしょう。

成約件数が多い時期が高値で取引できるとは限らない

ただしここで注意したいのは、成約件数が多い時期に必ずしも高値で取引できるとは限らないことです。
同じ調査の首都圏中古マンションの売買平均単価(平方メートルあたり単価)を月ごとに見ていくと、最も高値で取引されたのは成約件数が少ない11月と1月です。

これは景気動向や新築マンションの供給量など様々な要因が影響を及ぼしていると考えられます。
いずれにしても「成約件数が多い=高値取引できる」わけではないことは参考情報として覚えておきましょう。

マンションの売却タイミングを考える場合の注意点

マンション売却のタイミングを考えるときの注意点としては、不動産は所有する期間によって譲渡所得(売却益)にかかる税率が異なることです。

たとえば、4,000万円のマンションで購入したマンションが5,000万円で売れたとしたら、差額の1,000万円には譲渡税(所得税・住民税・復興特別所得税)がかかります。この譲渡税は、不動産の所有期間(※)が5年超であれば約20%、5年以下であれば約40%とほぼ倍になります。
※不動産の所有期間は売却する年の1月1日時点で計算します。

翌年に売却タイミングを延長すれば譲渡税が安くなる人は、マンションの売却タイミングを再考するのも一案です。

売却益が出そうとき、税理士に依頼するタイミングはいつ?

絶好のタイミングでマンションを売り出せば、それだけ売却価格も期待できます。売却価格が高くなれば売却益が出やすいので、譲渡所得にかかる税金には注意したいものです。

ただ「売却益が出そうなので税理士に相談したい」と思っても、どの段階でコンタクトをとればよいかわからない人も多いのではないでしょうか。一例としては、売却を進める前段階で税理士に軽めに相談し、実際に売却する前後に依頼する流れがスムーズでしょう。

不動産、マンションに強い税理士に相談すれば、状況に合わせてマイホームの特例の適用など有益なアドバイスが受けられるはずです。まずは相談してみましょう。

まとめ

ここでは、マンションを有利に売却するタイミングの考え方について解説してきました。マンションの売却では、「経済情勢」「築年数」「時期」の3つの軸が大切になります。どれを優先するかはその人次第でしょう。

ただマンション売却のタイミングに関する知識を持っていて、「この時期に売り出したい」という考えがあっても、売却までのスケジュール管理ができなければ意味がありません。

一般的なマンション売却のスケジュールでは、不動産仲介会社への売却相談をスタートしてから契約引き渡しまでに要する期間は、3ヵ月〜半年程度が平均的といわれます。

目安としては、売り出したい時期の数ヶ月前に不動産仲介会社に査定依頼をする(あるいは、査定を終わらせる)のがよいでしょう。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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