アパート経営の修繕費はどのくらい?費用の相場や時期も解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

「アパートの修繕費にはどんな種類がある?修繕費の相場はどれくらい?」こんな疑問を持つアパート経営者も多いようです。本記事ではアパート修繕費の主な項目や相場、さらに修繕をする際の注意点とポイントも合わせて解説します。修繕が発生してから慌てないよう、知識を身に付けておきましょう。

アパート経営に必要な4つの修繕費とは?

アパート経営に欠かせない修繕費には、次の4つの種類があります。まずは、それぞれの修繕費がどのような内容なのかを把握していきます。

  1. 退去時の原状回復費
  2. 周期的な修繕費
  3. 突発的な修繕費
  4. 大規模修繕費

アパートの修繕費1.退去時の原状回復費

原状回復費は、入居者が退去するたびに毎回かかる修繕費です。「原状回復」の言葉が示すように、部屋をもとの状態に戻すための修繕費です。

原状回復費には「貸主(大家)側が負担する修繕費」と「借主(入居者)側が負担する修繕費」があります。この違いを認識しておかないと入居者とのトラブルに発展しやすいので注意してください。

東京都が作成した「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(2019年4月改訂版)」を参考にすると、借主・貸主が負担する修繕費の一例は次の通りです。

貸主(大家)側が
負担する修繕費
・鍵の取替え
・経年劣化による設備の使用不能
・一般的な画鋲やピン穴
・日照などによる床の変色 など
借主(入居者)側が
負担する修繕費
・鍵の破損や紛失による取替え
・不適切な手入れや使用による設備の故障
・飼育ペットによる柱の傷や臭い
・通常の汚損を超えるクロスの変色や臭い
・引っ越し作業などで生じた引っかき傷 など

アパートの修繕費2.周期的な修繕費

アパートに付属する設備・部材などには、それぞれ「交換時期の目安」があります。この目安に合わせて設備・部材などを入れ替えていくときに負担するのが、周期的な修繕費です。

アパート経営者のなかには、交換時期を過ぎても設備・部材などを交換しない人もいます。しかし、設備が古くなったり部材が傷んだりすると、物件の競争力が失われ空室リスクが高まりやすくなります。このような状況に陥る前段階で「必要なタイミングで必要なモノを交換する」のが無難といえます。

アパートの修繕費3.突発的な修繕費

アパートに付属する設備・部材などには、交換時期の目安に達しないうちに故障したり、破損したりするものもあります。加えて、台風後の雨漏りや火災・地震による破損などによる修繕費もあります。

こういった突発的な修繕に備えるため、アパート経営者は十分な手元資金を用意しておくべきでしょう。合わせて、故障や破損を放置すると入居者の生活が不便になるため、スピーディーな対応も大事です。

アパートの修繕費4.大規模修繕費

外壁塗装や屋根まわり・バルコニー・屋上防水など大がかりな工事を行うのが大規模(長期)修繕です。大規模修繕を怠った場合もアパートの競争力が低下し、空室リスクが高まる原因になりかねません。リスクを回避するため、計画的に実施していく必要があります。

関連記事:アパート・マンション経営の大規模修繕とは?費用相場やタイミングを解説

アパート修繕の費用相場はどれくらい?

修繕費というテーマで、アパート経営者が一番気になるのは「それぞれの修繕費に費用がいくらかかるのか」ということではないでしょうか。実際にかかる費用は地域や業者などによってケース・バイ・ケースですが、一般的な相場は次の通りです。

部分的なアパートの修繕費の相場

鍵の交換費用の相場

鍵の防犯性能などによって相場は変わってきます。たとえば、ある程度の防犯性能が期待できるディンプルキーなら鍵代は1万5,000円〜2万5,000円程度、ロータリーディスクシリンダーなら1万円〜2万円程度が相場です(別途:作業費1万円〜)。

エアコンの交換費用の相場

エアコンの相場は、機能や対応する畳数によって大きく変わってきます。工事費用2万円〜4万円程度プラス、エアコンの機器代が目安です(追加費用がかかることもあり)。エアコン自体の購入費用は8畳用で5万円台〜が相場です。

給湯器の交換費用の目安

給湯器の相場は、追い炊きや暖房機能があるか否かで変わってきます。工事費用3万円〜6万5,000円程度プラス、給湯器の機器代が目安です(追加費用がかかることもあり)。給湯器自体の購入費用は、追い炊き機能ありのタイプで7万円〜30万円程度が相場です。

クロスの交換費用の相場

クロスの張り替えの相場は、一般的な壁紙であれば1平方メートルあたり1,000円〜1,500円程度です。壁紙のグレードが上がったり、もとの壁紙の廃棄があったりすれば追加費用がかかることもあります。

畳やフローリングの交換費用の相場

畳(新調)の交換費用の相場は、一般的なものであれば6畳あたり7万円程度〜です。一方、フローリングの交換費用の相場は、6畳あたり9万円〜18万円程度です(張り替え工法の場合)。

アパートの大規模修繕費(外壁塗装)の相場

アパートの外壁塗装の相場は、建物の大きさ、壁材や塗料の種類などで変わります。目安は2階建てで120万円程度〜、3階建てで150万円程度〜です。ただこれは戸数が少ないコンパクトタイプの相場ということに留意しましょう。

アパート修繕の実施時期の目安

アパート修繕は、適切なタイミングで実施することが重要です。修繕時期が遅ければ入居者の満足度が下がりやすいですし、逆に早過ぎればコストがかさみます。アパート修繕には「部分的(周期的)な修繕」と「大規模修繕」がありますが、それぞれの実施時期の目安は次の通りです。

「部分的なアパート修繕」の実施時期の目安

部分的なアパート修繕の実施時期の目安は、設備や部材によって異なります。実際の傷み具合や調子を見ながらタイミングを判断しましょう。

項目 交換時期の目安
エアコン 7〜13年程度
給湯器 7〜10年程度
フローリング 15〜20年程度
10〜15年程度(表替え4〜7年)
システムキッチン 10〜20年程度
ユニットバス 15〜20年程度

※上記は一般的な交換時期の目安です。メーカーや種類によって交換時期の設定は異なります。

「アパートの大規模修繕」の実施時期の目安

国土交通省が示す(マンションを対象にした)ガイドラインでは、大規模修繕(長期修繕)の周期は「12年程度」が目安となっています。

とはいえ、必ずしも12年間隔で大規模修繕を行わなくても構いません。なぜなら、外壁などの傷み具合は、立地環境や材料の質などによって変わってくるからです。アパート経営者は1年〜数年おきなど定期的に物件のコンディションを確認し、どのタイミングで大規模修繕をすべきかを慎重に検討していくべきでしょう。

アパート修繕を行う際に知っておきたい注意点とポイント

アパートの修繕を行う際、とくに気をつけたい注意点は「管理会社や業者任せにしないこと」です。送られてきた請求書をなんとなく承認するのは絶対に避けてください。相場よりも高額な修繕費になっている恐れがあります。

アパートの修繕費を抑えるポイントは「相見積りを必ず取ること」です。少なくとも数社から見積りを取ることをおすすめします。ただし、安い見積もりを見せかけで出しておいて、追加費用を後で請求してくる悪徳業者もいます。そのため、見積りを受け取ったときは、「追加費用になりそうな項目がすべて含まれているか」を確認するのが賢明です。

関連記事:アパート経営とは?知っておきたい基礎知識を税理士が解説

まとめ

ここではアパートの修繕費の内容や相場などについて解説してきました。アパートの修繕費には次の4つの種類があり、それぞれの特徴に合わせて適切に処理していくことが欠かせません。

  1. 退去時の原状回復費
  2. 周期的な修繕費
  3. 突発的な修繕費
  4. 大規模修繕費

アパート経営者の責任としては、これらのすべての修繕費に対応できるよう十分な手元資金を用意しておくことです。とくに手元資金がないことで「突発的な修繕費」に対応できなければ、入居者の生活に支障が出てしまいます。

こういったことが起きないよう、「原状回復費」「周期的な修繕費」「大規模修繕費」で概ねいくらかかりそうかを事前に計算した上で準備し、さらに「突発的な修繕費」に対応できる余力を残しておく必要があります。

「マルイシ税理士法人」では、アパートの修繕費をどうコントロールしていくかの観点からもアパート経営者へのアドバイスが可能です。ご不安な方はお気軽にご相談ください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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