【不動産税理士が解説】相続対策で不動産の共有を解消した実例

不動産オーナーの相続対策の相談を受ける中で、既に共有の状態にある不動産が見つかることがあります。

不動産の共有は、将来的に親族間でトラブルの原因となる可能性があるため早めに解消すべきですが、現状で不都合がないときには放置され続けていることも多いです。

今回は、当事務所に相談があった案件の中から、実際に共有を解消できた実例をご紹介致します。

共有状態のまま放置されていたアパート

 今回の相談案件では、都内にあるアパートを長女、次女、三女の三姉妹で3分の1ずつ共有しており、家賃収入の管理や入居者との契約関係はすべて長女が行っておりました。

このアパートは三姉妹の父が購入したもので、父の相続の際に平等に3等分で相続したものです。築年数は古く、必要な修繕費が年々増加しているものの、駅から近いこともあり安定した家賃収入が得られておりました。

三姉妹は収入も経費も仲良く3等分しており、誰も共有状態を問題視しておりませんでした。しかし、3姉妹とも80代と高齢になり、共有状態のまま将来相続することに不安を感じた三女の子供から相談がありました。

共有不動産の問題点

 この案件については、まずは共有者である三姉妹に対して、アパートを共有状態のまま放置しておくことの問題点を伝えました。

共有不動産の売却、利用には共有者全員の同意が必要となります。現状ではアパートの共有者が三姉妹のみのため意見の調整がしやすい状況ですが、今後共有者のうちの1人が死亡した場合には、その配偶者や子供が共有者となり、共有者の数が増えて意見の調整が難しくなることが想定されます。

将来、親族間で禍根を残さないためにも、意見の調整が可能な今のうちに解消すべき旨を伝えると、共有解消に向けて動き出すことで三姉妹の了承が得られました。

共有の解消方法

共有者間の話し合いで共有を解消する場合、主な解消の方法は下記のとおりとなります。

共有物分割(現物分割)
広い土地などの場合に、現物を分割(分筆)して個々の単独の土地にする

持分の買い取り
共有者のうちの1人が、他の共有者の持分を買い取る

共同で売却
共有状態のまま第三者に売却して、持分で売却代金を分配

 今回のケースでは、建物があること及び土地に十分な広さがないことから①の共有物分割は難しく、また、自己資金で②の持分の買い取りをしてまで賃貸経営を継続したいという共有者もおりませんでした。

 したがって、③の共同で売却という手段を選択することになりました。売却により利益が出るため譲渡税がかかり、また、不動産が現金化されるため、相続時における評価額は高くなります。

 しかし、共有者の生前に現金化することでそれぞれの相続人に分けやすくなり、次世代に共有によるトラブルの可能性を持ち越さずに済みました。

不動産に強い税理士に相談を

 共有の解消については、共有者の希望、不動産の形状や価格などに応じて、どの選択肢をとるか慎重に判断する必要があります。また、解消時の税務リスクにも注意する必要があります。

 例えば共有物分割においては、元々の「共有持分比」と分割後の「土地価格比」が同一でないと贈与税や譲渡税の課税リスクが発生します。持分の買い取りにおいても、時価(市場価格)での買い取りでない場合には、贈与税の課税リスクが発生します。

 共有の解消を進める際には、まずは不動産に強い税理士に相談して解消の方向性を決めていくことをお勧めします。

※この記事は、「家主と地主8月号/相続税で検討したい節税のポイント 第三回 不動産の共有を解消した実例」に掲載された内容です。

著者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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