確定申告の期間を過ぎるとどうなる?デメリットや期間後申告について解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

【執筆者:税理士・藤井幹久】

不動産に強い税理士をお探しの方へ
不動産税務に特化している税理士事務所
マルイシ税理士法人に相談してみませんか?

マルイシ税理士法人は、「不動産と相続」の専門税理士として相談件数20,000件以上、申告関与件数3,000件以上の経験があります。
不動産の贈与についても個別の案件ごとに相続対策の見解やアドバイスをお伝えできます。

確定申告の期間を過ぎることで発生するデメリット

所得税の確定申告の期間は、毎年2月16日~3月15日(土日祝の場合はその翌日)ですが、この期間を過ぎてしまったとしても、税務署は確定申告書の提出を受けてくれます。
その場合の確定申告のことを「期限後申告」といいます。
いつでも受け付けてくれるなら期限なんて守らなくていいじゃないかと思うかも知れませんが、この「期限後申告」にはさまざまなデメリットがあります。

無申告加算税が加算

期限後申告をすると、申告した所得税とは別に「無申告加算税」という税金が発生します。

無申告加算税の計算方法

期限後申告によって申告した税額×税率

無申告加算税の税率

無申告加算税の税率は、下記のとおり5%から最大20%になります。

期限後申告の時期 税率
税務調査通知前 5%
税務調査通知後~
更正・決定の予知前
10%(15%)
更正・決定の予知後 15%(20%)

※( )は納付すべき税額が50万円を超える場合、その超過部分に適用される税率。

上記のとおり、無申告加算税の税率は、税務調査の通知や更正・決定の予知によって上がります。
更正・決定の予知とは、税務署による更正や決定の処分(税務署が税務調査に基づき納税額を決める処分)があることを納税者が予知していたことをいいます。
自発的な期限後申告なのか、それとも税務調査で発覚することを見越して仕方なく行われた期限後申告なのかによって、無申告加算税の税率に差を設けているのです。
更正・決定の予知があったかどうかは、調査の内容や進捗状況、期限後申告に至る経緯などから総合的に考慮されます。

延滞税が加算

期限後申告には「延滞税」という税金もかかります。
延滞税とは、法定納期限までに納付されていない税額に対して発生する税金です。
税率は年率で定められており、法定納期限の翌日から納付する日までの日数、つまり納付が遅れた日数に対して日割り計算されます。
近年の確定申告の法定納期限は、下記のとおりです。

令和3年分の確定申告 令和4年3月15日
令和2年分の確定申告 令和3年4月15日
令和元年分の確定申告 令和2年4月16日

延滞税の計算方法

納付すべき本税の額(※)×延滞税の税率×(納付までの日数/365日)
(※)1万円未満切り捨て

延滞税の税率

延滞税の税率は、銀行の短期貸付けの平均金利の影響を受けて、基本的に毎年変わります。
令和3年と令和4年の延滞税の税率は、下記のとおりです。

【法定納期限の翌日~納期限の翌日から2か月経過日】

  • 令和3年1月1日~12月31日・・・年2.5%
  • 令和4年1月1日~12月31日・・・年2.4%

【納期限の翌日から2か月経過日の翌日以降】

  • 令和3年1月1日~12月31日・・・年8.8%
  • 令和4年1月1日~12月31日・・・年8.7%

【法定納期限と納期限の違い】
延滞税の計算が始まるのは「法定納期限」の翌日からです。
これに対し 「納期限」とは、期限後申告書を提出した日になります。

たとえば、令和3年分の確定申告の法定納期限(令和4年3月15日)を過ぎてしまい、その後、令和4年6月15日に期限後申告書を提出したとします。
この場合、延滞税の計算は、法定納期限の翌日である令和4年3月16日から始まります。
「納期限」は期限後申告書を提出した令和4年6月15日です。
この場合の延滞税の税率は、令和4年3月16日から8月15日(納期限の翌日から2か月経過日)まで年2.5%、8月16日から年8.8%が適用されます。

青色特別控除額の減額

事業所得や不動産所得の青色申告者が期限後申告をすると、55万円または65万円の青色申告特別控除が10万円に減ってしまいます。
55万円または65万円の控除を受けるための要件に、法定期限内に確定申告をしなければならないことが含まれているからです。

関連記事:名義預金は税務署にバレる?時効は?対処方法を税理士が解説

期間後申告の方法とは?

過去の確定申告書の作成

期限後申告は、通常の確定申告と同じ方法で行います。
ただし作成する確定申告書は、過去の年分のものを使用します。
たとえば令和元年分の期限後申告をする場合、最近公開された新しい様式を使うのではなく、令和元年分のものを使うということです。

確定申告書の作成方法

手書きで作成

確定申告書は手書きで構いません。
手書きの場合、まずは確定申告書の用紙を入手します。
国税庁のWebサイトからダウンロードして印刷するか、税務署で無料交付しているため取りに行きましょう。
数年前の確定申告書であれば、国税庁のWebサイトから印刷して入手したほうがよいかも知れません。

国税庁HP: 確定申告書(令和2年分以前用)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/r02.htm

国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成

国税庁がWebで無料公開している「確定申告書等作成コーナー」を使用し、過去の年分の確定申告書を作成することもできます。
入力したデータを印刷して書面で提出することもできますし、e-Taxによる電子申告にも対応しています。
税額計算などが自動で行われるため安心です。
「〇年分」の選択を間違えないようにしましょう。

市販の会計ソフト

確定申告書は、市販の会計ソフトでも作成することができます。
確定申告書等作成コーナーと同じく、印刷して書面で提出することもできますし、e-Taxによる電子申告に対応しているものもあります。

過去の確定申告書の提出方法

確定申告書の提出方法も、通常時の方法と同じです。
窓口提出、郵送、電子申告の3つから選択できます。

窓口での書面提出

書面による確定申告書を、税務署の窓口に持参する方法です。
時間外用の収受ボックスもあります。

郵送による書面提出

書面による確定申告書を税務署に郵送する方法です。(ゆうパック、ゆうメール、ゆうパケットは不可)
郵送の場合、通信日付けが提出日とみなされます。
確定申告書の控えと返信用封筒を同封すれば、収受日付印(受理された日付け付きのスタンプ)を返送してもらえます。

電子申告によるデータ提出

e-Taxによる電子申告で、データのまま確定申告書を送信する方法です。
国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用して確定申告書を作成する場合、そのまま画面の案内にしたがって操作することにより電子申告に進むことができます。
ただし、初めて電子申告を利用する場合はe-Taxの利用開始手続きが必要です。

過去の確定申告の納税方法

期限後申告によって確定した所得税及び復興特別所得税、それに対する無申告加算税、延滞税の納税が必要になります。

所得税及び復興特別所得税の納税

確定申告書(期限後申告)を提出した日が納期限となりますので、なるべくその日のうちに納税します。
納税方法は下記を参考にしてください。

国税庁HP:納税の方法
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2018/a/02/2_04.htm

無申告加算税・延滞税の納税方法

期限後申告をした後、税務署から納付書が届きます。
納付書に記載された金額を定められた期限内に納めます。

まとめ

確定申告の期間を過ぎた場合のデメリットや、過去の確定申告の方法について解説しました。
デメリットのとおり、期間内に確定申告をすれば税負担は最小で済みます。
特に個人事業主にとって、青色申告特別控除65万円または55万円の節税効果はとても重要です。
この特典がなければ、所得税や住民税の納税額が増えてしまい、結果的に無申告加算税や延滞税も増えることになります。
確定申告をする時間がなければ、デメリットを受けないよう早めに税理士に確定申告書の作成を依頼しましょう。
なお「期限後申告をすれば無申告加算税や延滞税がかかるなら、このまま申告しないでおいたほうが得だ」という方も、もしかするといらっしゃるかも知れません。

しかし、その間に税務調査の連絡が入れば、それだけで無申告加算税の税率が上がりますし、延滞税も膨らみます。
期間を過ぎて確定申告をしていないことに気が付いた方は、正確な内容の期限後申告をなるべく早く提出することが最善の策です。
期限後申告は、税理士にご相談ください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

税理士紹介はこちら

  • ページタイトルと
    URLがコピーされました