贈与税の時効は6年?申告漏れ・無申告が発覚した際のペナルティと対処法を税理士が解説
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贈与税は、財産をもらった年の翌年2月1日から3月15日までの間に、申告・納税手続きが必要です。
申告義務を怠れば税務署から指摘を受ける可能性がある一方で、申告期限から一定期間を過ぎると時効が成立し、贈与税が徴収されなくなります。
ただ贈与税には時効が成立しないケースが存在しますので、本記事では贈与税の時効と申告しなかった場合のリスクについて解説します。
贈与税の時効は原則6年
贈与税の時効は、国が贈与税を徴収する権利が消滅する期間をいい、原則は法定申告期限の翌日から起算して6年を経過すると贈与税の時効が成立します。
所得税や相続税などの他の税金の時効は5年ですので、贈与税は他税目よりも時効成立までの期間が1年長いです。
たとえば令和3年分の贈与税の申告期限は令和4年3月15日でしたので、6年後の令和10年3月15日まで国は贈与税を徴収する権利を有しますが、時効が成立する令和10年3月16日以降は国が贈与税を徴収することはできません。
しかし税金の時効には例外規定があり、偽りや不正行為により税金逃れをした場合においては、時効までの期間が7年に延長されます。
単純に贈与税の申告手続きを忘れていただけでは不正行為には該当しませんが、贈与税を脱税する目的で贈与を隠すなどした際は、時効までの期間は6年ではなく7年となります。
贈与税で時効が成立するケースは少ない
贈与税の時効は6年または7年ですが、贈与税の時効が成立するケースは少ないです。
そもそも贈与税は、贈与により財産を取得したことを原因として課される税金であり、贈与者と受贈者が贈与に同意していることで贈与行為は成立します。
贈与者と受贈者が贈与の認識がある状態で、贈与税の申告をせず6年(7年)経過した場合には時効となります。
しかし贈与者が一方的に財産を渡し、受贈者が贈与を受けた認識がなければ、贈与がなかったものとみなされるため、贈与税の時効が成立することはありません。
また贈与は相続が発生する前に行われることが多いため、相続税の税務調査では贈与税の調査を行うことも珍しくなく、調べられる限り何年も前にさかのぼって贈与が行われていたかを確認します。
被相続人が配偶者の名義でお金を積み立てていたとしても、配偶者が贈与によりもらった認識がなければ贈与は成立せず、配偶者名義の預金は名義預金として相続税の課税対象となる可能性があるのでご注意ください。
なお贈与税の申告義務が生じているのにもかかわらず申告していなければ、時効前に贈与税の税務調査で無申告であることを指摘される可能性もあります。
贈与税の基礎控除額を超える財産をもらった際は、申告期限までに手続きを行ってください。
贈与税の申告漏れで発生するペナルティとは?
贈与税の申告漏れが指摘された場合、本税に加えて加算税・延滞税を支払うことになります。
加算税とは
加算税は、税金を過少に申告していた場合に課されるペナルティです。
無申告加算税・過少申告加算税・重加算税の3種類あり、申告書を提出する状況によって課される種類が変わります。
「無申告加算税」は、申告期限までに申告書を提出しなかった場合に課される税金で、税率は原則15%です。
「過少申告加算税」は、期限内に提出した申告書の内容に誤りがあった場合に課される税金で、税率は原則10%です。
「重加算税」は、仮装隠ぺい行為により、税金をごまかしていた場合に課される税金です。
期限内に申告書を提出していた場合の重加算税の税率は35%であり、無申告の場合には40%を重加算税として支払わなければなりません。
なお過少申告加算税および無申告加算税については、調査を受ける前に申告書を提出すると税率が軽減される措置があります。
延滞税とは
延滞税とは、申告期限までに贈与税を納めなかった場合に発生するペナルティです。
延滞税の金額は、滞納している贈与税に対して日割りで計算するため、贈与税の納税が完了するのが遅くなるほど、支払う金額は増えていきます。
延滞税の税率は毎年変動し、滞納期間が納付期限から2か月を超えると税率は高くなります。
そのため延滞税の支払いを抑えるためには、1日でも早く納税を済ませることがポイントです。
贈与税の無申告が発覚した際に発生するペナルティとは?
贈与税が無申告だった場合、無申告加算税(重加算税)の対象となりますが、期限後申告書を提出するタイミングによって、無申告加算税の税率は変わってきます。
自主的に期限後申告書を提出した場合
通常の無申告加算税の税率は15%ですが、自主的に贈与税の期限後申告書を提出した際の税率は5%と、税務調査を受ける前に申告書を提出した方が課される税率は10%低くなります。
期限内に申告書を提出し、その後税務調査を受けた際は過少申告加算税を支払うことになりますが、自主的に修正申告書を提出した場合、過少申告加算税は課されません。
なお自主的に期限後申告(修正申告)を行ったとしても、納税が完了するまでの期間に対して延滞税は発生します。
税務調査により期限後申告書を提出した場合
税務調査により贈与税の期限後申告書を提出する場合、期限後申告をするタイミングによって課される税率は異なります。
【期限後申告書を提出した時期に応じた無申告加算税の割合】
期限後申告の時期 | 税率 |
---|---|
法定申告期限の翌日から調査通知前まで | 5% |
調査通知以後から調査による更正等予知前まで | 10% (15%) |
調査による更正等予知以後 | 15% (20%) |
※上記の表のかっこ書きは、加重される部分に対する加算税割合です。
過少申告加算税は期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分、無申告加算税は50万円を超える部分について、加重分として税率が5%上乗せされます。
「調査通知」とは、「実地の調査を行う旨」、「調査の対象となる税目」、「調査の対象と
なる期間」の3項目についての通知です。
調査通知が行われる前で、かつ更正等予知前に期限後申告書を提出した場合は、自主的な申告とみなされますので、無申告加算税の税率は5%です。
しかし調査通知後から税務調査で指摘を受けるまでの間に期限後申告書を提出した場合、無申告加算税の税率は10%(15%)と、軽減される割合は少なくなります。
なお調査通知の有無にかかわらず、更正等を予知して期限後申告書を提出した際に課される無申告加算税は15%(20%)となりますのでご注意ください。
脱税行為と判断された場合
脱税行為により贈与税の申告をしなかった場合、重加算税の対象となります。
無申告の場合の重加算税は40%と、加算税の中で最も重いペナルティです。
また期限後申告等があった日前5年以内に、同じ税目に対して無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合、無申告加算税と重加算税の税率は10%上乗せされますので、贈与税の申告義務が発生しましたら、忘れずに申告手続きを行ってください。
贈与税を抑えて財産を渡す方法とは?
贈与税を抑えて贈与する手段は2つあります。
1つ目は、110万円の非課税控除以内の金額で贈与を行う方法です。
110万円控除は毎年利用できるため、コツコツ財産を移動させることで、贈与税を抑えることができます。
2つ目は、贈与税の非課税制度を活用して贈与を行う方法です。
贈与税には多くの特例制度が用意されており、要件を満たせば1,000万円を超える贈与であっても贈与税が非課税になるケースもあります。
【贈与税の主な特例制度】
- 贈与税の配偶者控除の特例
- 相続時精算課税制度
- 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度
- 教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度
- 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
※相続時精算課税制度で取得した財産は、贈与者が亡くなった際に相続税の課税対象となる点には注意してください。
※贈与を受ける年分や取得する住宅の種類によって、非課税控除額の上限が変わるので、税金対策で利用する際は、贈与するタイミングがポイントになります。
※元々親が子の教育費を支払うことは非課税なのですが、別居している祖父母が渡した教育資金は贈与税の対象となります。
そのため祖父母から教育資金を渡す際は、教育資金の非課税制度の活用もご検討ください。
※挙式費用や不妊治療以外に、新居への引越し費用やベビーシッター代に充てる目的の資金も非課税対象です。
まとめ
贈与税の課税対象になれば、申告期限までに申告書の提出および納税を行うのが原則です。
意図的な無申告は税務調査の対象になるだけでなく、重加算税が課されることもあるので大変危険です。
一方で、 過去に贈与した財産であっても、税務署が贈与行為自体を否認し、相続財産として課税するケースがあります。
贈与行為を否認されないためには、以前贈与した事実を証明する必要がありますので、贈与契約書などを作成したり、申告義務が生じた際は忘れずに申告することが大切です。
贈与税の特例は、贈与税だけでなく相続税を抑えるためにも活用すべき制度です。
具体的な節税方法につきましては、マルイシ税理士事務所へお気軽にご相談ください。