コインパーキング経営とは?利回りやメリット・デメリットについて

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

【執筆者:税理士・藤井幹久】

コインパーキング経営とは?

近年、市街地中心部にはコインパーキング用地が増えてきました。
場所によってはビルが建っていたところにも、コインパーキングができるといったこともあります。
土地をコインパーキングとして貸し出す人が多いということは、貸し出すメリットが多いからです。

まずはコインパーキングとはそもそもどのような土地活用方法なのか、コインパーキングの経営方法などを紹介していきます。

概要

コインパーキングとは、不特定多数の利用者が空いている駐車スペースに車を止め、利用した時間分の料金を支払う駐車場のことです。
コインパーキングを時間貸駐車場とも呼ぶこともあります。

コインパーキングには、ロック板(フラップ板)形式、カーゲート方式、チケット式とさまざまな種類があります。

ロック板(フラップ板)形式とは、車を止めた後数分でフラップ板が稼働し車をロックする方式です。
カーゲート方式とは、大型商業施設や大型コインパーキングでよく見る入口だけにゲートがあるタイプです。
チケット式とは、先にチケットを購入しておきフロントガラス前に駐車券を置いて規定の時間駐車しておく方式です。

コインパーキング経営方法

コインパーキングには5つの経営方法があり、それぞれの経営方法で責任や利益の大きさなどが違います。
コインパーキングには次のような経営方法があります。

  • 一括借上
  • 利益分配
  • 管理委託
  • 機械買取
  • 機械レンタル

各種コインパーキング経営方法の違いを表にまとめてみました。

経営タイプ 経営責任 初期費用 経営方式に向いている人の特徴
一括借上 なし 低予算(0円のケースもあり) 自分で管理をしたくない人や管理をすることができない人
利益分配 地主とコインパーキング業者との話し合い 地主とコインパーキング業者との話し合い 管理の量に見合った利益が欲しい人
管理委託 土地所有者 パーキング整備や設置費用 経営の一部だけを委託したい人
機械買取 土地所有者 パーキング整備や設置費用 自主経営を計画している人
機械レンタル 土地所有者 パーキング整備や設置費用 短期利用・土地活用として試用

表のようにどのようにコインパーキングを運営していきたいかにより、経営方法を選択することができます。
そのため、コインパーキング運営は土地所有者の状況に応じた経営方法を取ることができる運用方法です。

コインパーキングの経営に向いている土地

コインパーキングの経営に向いている土地には、一定の特徴があります。
具体的には以下の4つの特徴があります。

  • 繁華街や人が集まる施設に近い場所
  • 土地に接している道路の幅が5m以上
  • 土地の高低差がない
  • 近くに稼働率が高いコインパーキングがある

コインパーキングは駐車する需要が高ければ高い立地であるほど収入が増えます。
そのため、繁華街や人が集まる施設周辺にある土地の場合は、多くの利用者を見込むことができます。

また、コインパーキングに駐車しやすいかどうかも利用者の多さに影響してしまいます。
土地に接している道路が広ければ車を入れやすくなるため、ある程度、道幅が広いほうが良いでしょう。
何車線もあるような道路の場合は反対車線から入庫しづらくなるため、道路幅が広すぎるのはあまり良くありません。

コインパーキング内に高低差がある場合もあまり良いとは言えません。
コインパーキング内に高低差があると駐車や切り返しが難しくなり、利用を躊躇する利用者が出てきてしまいます。
そのため、コインパーキング内には高低差が少ない方が有利になります。

その他にも、近隣のコインパーキングの稼働率が高い場合は、良い立地であると言えます。
稼働率が高いということはその地域でまだまだコインパーキングが足らず、近隣のコインパーキングを使わざるを得ない状況になっていると推測することができます。

コインパーキング経営の利回り

ここからはコインパーキング経営をするとどのくらいの利回りが期待できるのかを紹介していきます。
また、利回りは2種類の表示方法があるため、利回りに関しても併せて解説していきます。

表面利回り

表面利回りとは、次の計算式で表される数字です。

表面利回り(%) = 年間賃料(満車時) ÷ 土地価格 × 100

表面利回りは不動産物件概要に掲載されていることが多い利回り表示方法です。
しかし、ランニングコストや初期費用を計算に入れていないため、ざっくりとした利回りを知るためだけに利用されます。
実際にコインパーキング経営などの賃貸経営をする場合は、次に紹介する実質利回りを基に経営方針を決めていきます。

実質利回り

実質利回りとは、次の計算式で表される数字です。

実質利回り(%) = (年間賃料 – ランニングコスト) ÷ (土地価格 + 初期費用) × 100

実質利回りは収入だけではなく、ランニングコストや初期費用を考慮した計算式です。
そのため、実際におこなわれる金銭の流れに近いため、賃貸経営の経営方針や賃貸経営するときの不動産購入は実質利回りを確認してから進めていきます。

利回りの相場

コインパーキングの利回りは一般的に表面利回りで5%~20%と言われています。
また、実質利回りでは5%前後と言われています。

コインパーキングの利回りはコインパーキングの立地や土地の形状で大きく左右されるため、利回りも大きく変動します。
その他にもコインパーキング経営の方法によって初期費用や収益が変わるため、相場が安定しません。
そのため、実際に利回りを確認したい場合は、コインパーキング経営をしたい土地を決め、近隣の時間貸し料金や稼働率を調べた上で、コインパーキング事業者と打ち合わせすると良いでしょう。

コインパーキング事業者から検討している土地でどのくらいの収益が上がるのか、どの経営方針で進めるとどのくらいの支出が発生するのかが明確に分かります。

コインパーキング経営のメリット

コインパーキングを経営することには多くのメリットがあります。
ここからはコインパーキング経営することのメリットを4つ紹介していきます。

初期費用が少ない

コインパーキング経営のメリットの1つ目は「初期費用が少ない」ことです。

コインパーキング経営はどの経営方式を選んでも総じて初期費用が少なくて済みます。
特に「一括借上方式」で経営する場合は、初期費用ゼロ円で済むこともあります。
そのため、土地購入をして資金が少なくなっても経営できるという敷居の低さがメリットです。

もし住居系賃貸経営を始めるのであれば、土地購入した後に建物建築費用がかかるため、かなりの初期費用が必要になってしまいます。

手軽に始められる

コインパーキング経営のメリットの2つ目は「手軽に始められる」ことです。

コインパーキングとして整備するのに時間がかからず収益発生が早く、前述のように初期費用が少ないため、手軽に賃貸経営を始めることができます。

建物建築があると収益発生が遅くなってしまい資金繰りに苦労することがありますが、コインパーキング経営はすぐに収益が見込めるため安心です。

転用性が高い

コインパーキング経営のメリットの3つ目は「転用性が高い」ことです。

コインパーキングは賃貸契約を早く解約でき、機材をすぐ撤去できる利点があります。
そのため、コインパーキング経営を辞めて住居系賃貸経営に切り替えたり、コインパーキングに自宅を建築したりすることができます。
賃貸経営方針が定まっていない場合の一時的な賃貸経営としてコインパーキング経営をする、ということもできます。

住居系賃貸経営をしている場合は、借地借家法に守られている居住者を立ち退かすのは難しく一度貸してしまうと自分の思い通りに利用することができなくなります。

土地の広さを気にしなくて良い

コインパーキング経営のメリットの4つ目は「土地の広さを気にしなくて良い」ことです。

コインパーキングは土地の広さにあまり影響を受けません。
極端な話、車1台でも駐車できれば運用自体は可能です。
また、あまりにも土地が小さいという場合でも、駐輪場やバイク置き場としても貸し出すことができる場合があります。
逆に広大な土地としても駐車場需要がある場所であればコインパーキング経営は可能です。

コインパーキング経営のデメリット

コインパーキングを経営することにはメリットがある反面、デメリットもあります。
ここからは、コインパーキングを経営することのデメリットを紹介していきます。

税金が多い

コインパーキング経営のデメリットの1つ目は「税金が多い」ことです。

コインパーキングは更地として評価されてしまうため、固定資産税の住宅用地の特例が利用できません。
住宅用地の特例とは、土地上に住宅がある場合、200㎡までの固定資産税評価額が6分の1に、200㎡を超えた部分の固定資産税評価額が3分の1になる減税措置です。

また、コインパーキングは相続税の節税にもあまりなりません。
コインパーキングは更地評価のため、貸宅地や貸家建付地に該当せず、相続税評価額を抑えることができません。

その他にも小規模宅地等の特例で200㎡50%減額しか受けられず、住宅系賃貸経営より減額幅が少なくなります。
なお、小規模宅地等の特例とは、一定条件を満たす場合、相続で受けた不動産の相続税評価額を50%から80%減できるという減税措置です。

効率は低い

コインパーキング経営のデメリットの2つ目は「効率は低い」ことです。

コインパーキングは基本的に平面しか使うことができないことと、住居や事務所のように高額で貸すことがあるため、収益の効率は悪くなってしまいます。

また、月極駐車場とも違うため、コインパーキングの稼働率により収益が安定しないこともあります。

コインパーキング経営で失敗しないためのポイント

コインパーキング経営を上手くおこなうためには、失敗しないポイントを抑えていく必要があります。
ここからはコインパーキング経営で失敗しないためのポイントを紹介していきます。

立地選び

コインパーキング経営で最も大切なことは、コインパーキングの立地選択です。

コインパーキングは立地に大きく左右され、高収益を上げるのも収益を低下させてしまうのも立地次第と言えます。
そのため、コインパーキングの立地として良いと言われる条件を把握し、経営するコインパーキングを探すことが重要になります。
コインパーキングとして良い立地とされているのは、次のような場所です。
繁華街や近くにスーパーや駅などの日常生活で良く利用する施設の近隣にある土地
レジャー施設や観光地など人が集まるエリアにある土地
道路が駐車禁止エリアや停車禁止エリアに設定されている地域にある土地
再開発地域に指定されるなど今後コインパーキングとして需要が見込める土地

競合調査

コインパーキングの立地として良い土地を見つけた後には、競合コインパーキングの調査を行います。
調査する主な項目は次のとおりです。

  • 良い場所から埋まっていくため今日が自身のコインパーキングより良い立地かどうか
  • 競合コインパーキングの稼働率(できれば朝・昼・夜それぞれの稼働率も把握する)
  • 競合コインパーキングの価格と時間設定

価格設定

競合コインパーキングの調査が完了したら、自身のコインパーキングの価格設定をします。

価格設定をするときには、最大料金や何分時間が経過したら課金していくのかなども併せて検討します。
なお、時間で決める料金には4タイプあるため、その違いを表にまとめてみました。

コインパーキングの時間料金
単位時間 1時間200、30分200円
単位時間の料金 1時間300円、1時間300円
深夜料金 昼間1時間400円、夜間1時間200円
最大料金 1時間300円で最大料金1,500円

各時間料金の内容を把握し、時間あたりの金額や、深夜料金、最大料金まで設定します。
価格決定するには、競合コインパーキング価格の比較をおこなうようにしましょう。

まとめ

賃貸経営の1つとしてコインパーキング経営という手法があります。
コインパーキングとは、不特定多数の利用者の車を時間単位や日数単位で駐車させる代わりに料金を徴収する駐車場のことです。

コインパーキング経営は初期費用が少なく、建物建築がなくすぐに利益を上げることができるため、賃貸経営を初めておこなう人に向いています。
ただし、コインパーキング経営は節税効果が少ないこと、収益の効率性が悪いことに注意しておこなう必要があります。

また、コインパーキング経営はコインパーキングの立地によって収益性が大きく変わるため、立地調査には時間をかけて調査するようにしましょう。
調査するときには、競合コインパーキングの立地と価格も調査し、競合に利用客を取られないようにすることが大切です。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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