戸建賃貸経営は儲かる?メリット・デメリットと成功させるポイントについて

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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戸建賃貸経営とは?

戸建賃貸経営とは、一戸建てを貸し出して賃料を得る賃貸経営方法です。

戸建賃貸経営をする場合、所有している土地の上に一戸建てを貸すケース、中古戸建を購入して貸すケース、自宅から転居した後に貸すケースなどが考えられます。
すべてのケースに共通するのが、一棟アパートや一棟マンション経営に比べて初期費用が少ないため、賃貸経営を始めたいという方にも戸建賃貸経営は敷居が低く賃貸経営方法です。

戸建賃貸経営を行うことにはメリットが多く、近年の一戸建て需要の高まりもあり、戸建賃貸経営を始める方が増えてきています。
また、戸建賃貸経営をする人が多くなってきたとはいえ、アパートやマンションなどに比べ一戸建て賃貸はまだまだ少なく、競合相手がいないことも賃貸経営初心者に向いていると言えます。

戸建賃貸経営は儲かる?

戸建賃貸経営をする人が増えてきていますが、みなさんが気になるのは戸建賃貸経営をすると儲かるかどうかではないでしょうか。
ここからは、戸建賃貸経営をすると収入はどのくらいなのか、戸建賃貸経営の利回り相場、必要な経費やランニングコストについて紹介していきます。

収入はどのくらい?

戸建賃貸経営をして得られる収入は家賃だけではありません。
戸建賃貸経営して得られる収入とおおよその収入額を表にまとめました。

収入を受け取るタイミング 収入項目 目安
定期収入 家賃 相場による
共益費 家賃の5~10%ほど
随時収入 礼金 家賃の1~2ヵ月分
更新料 家賃の1~2ヵ月分、定額の場合もある
一戸建て売却時 売却益 相場による

表のように戸建賃貸経営で得られる収入は数多くあります。
売却まで記載があるのは、賃貸経営をする際には売却するまでが賃貸経営になるためです。
賃貸経営が成功したか、失敗したかは売却時に黒字かどうかで決まります。
賃料を受け取っている段階で黒字でも、最終、売却するときに赤字になっていた場合は経営としては失敗です。

戸建賃貸経営の利回りと相場

一般的な工務店で戸建賃貸物件を建築したときの表面利回り相場は、およそ10%~15%前後と言われています。

ハウスメーカーで建築すると建築費用が上がり表面利回りは下がります。
あまり建築費用を高くしても入居率には影響しないため、賃貸に出すことを目的として一戸建てを建築する場合には建築費用を抑えていく方が良いでしょう。

戸建賃貸経営で必要な経費とランニングコスト

戸建賃貸経営をするときには費用も多くかかります。
この費用は大きく分けて初期費用とランニングコストに分かれます。
ここからは戸建賃貸経営にかかる費用を初期費用とランニングコストに分けて紹介していきます。

【初期費用】
戸建賃貸経営にかかる初期費用は次表のとおりです。

費用項目 概要
建築費・購入費用 戸建賃貸住宅を建てる費用や一戸建てを購入する費用
建築するメーカーや間取り、建材の質などによって費用は大きく異なります。
また、購入する場合、築年数や立地などで大きく費用が異なります。
保険料 火災保険や地震保険など
修繕費 購入後のリフォームやメンテナンスを行う際に必要な費用
ローン手数料 ローンを借りるにあたり発生する事務手数料や保証料

【ランニングコスト】
戸建賃貸経営にかかるランニングコストは次表のとおりです。

費用項目 概要
修繕・メンテナンス費 定期的なメンテナンス費用や、退去後のリフォーム費用など
保険料 火災保険や地震保険など
月額支払いの場合はランニングコストとして計上
管理手数料 管理会社に支払う費用で家賃の5%前後が相場
ローンの返済 金利や借入額、借入期間によって異なる
固定資産税 毎年1月1日現在の不動産所有者に課税
固定資産税評価額の1.4%に相当する額が課税される
都市計画税 市街化区域内に不動産を所有する場合に課税される税金
固定資産税評価額の0.3%に相当する額が課税される
事業税 事業をすることにより出た所得に課税される税金

戸建賃貸経営に向いている土地

戸建賃貸経営に向いている土地には一定の特徴があります。
戸建賃貸経営に向いている土地の特徴は次のとおりです。

  • アパートなどが建築できない狭い土地
  • 土地の形状や方位の悪い土地
  • アパートの供給が過剰な地域の土地

戸建賃貸経営はアパートやマンションなどが建築できないような土地でも経営することができます。
一戸建ての強みを活かし、アパート供給が過剰な地域など戸建需要が高い場所で戸建賃貸経営をおこなっていきます。

土地活用で戸建賃貸経営を行うメリット

土地活用で戸建賃貸経営を行うメリットは多くあります。
ここからは戸建賃貸経営を行うメリットを紹介していきます。

安定した収入

戸建賃貸経営を行うメリットの1つ目は「安定した収入」です。

安定した収入を得るためには、入居者に長く住んでもらうことと空室率を下げることが重要です。
その点、一戸建てに入居する人はファミリーが入居する確率が高く、ファミリーは長く居住する傾向があります。
そのため、戸建賃貸経営は入居者が決まると収入が安定する傾向にあります。
反面、アパートやマンションは単身者が入居することがあり、単身者は引っ越しのサイクルが短いとされています。

高い利回り

戸建賃貸経営を行うメリットの2つ目は「高い利回り」です。

一戸建ての建築費用はアパートやマンションに比べ、建築費用などの初期費用が安く済みます。
その上、一戸建ての賃料はアパートやマンションに比べ高い傾向にあります。
そのため、利回りがアパートやマンションより高くなります。

アパートやマンション経営の場合は、表面利回りが10%以上あれば良いとされますが、戸建賃貸経営の場合は表面利回り10%を超えることが多くあります。

立地条件

戸建賃貸経営を行うメリットの3つ目は「立地条件」です。

アパートやマンションは駅から近くないと入居率が落ちると言われますが、一戸建ての場合はアパートやマンションほど利便性の高さは入居率にあまり影響しません。
そのため、駅から離れたところでも戸建賃貸経営をすることができます。

駅から離れた場所でも経営することができるということは、土地や中古戸建を安く購入できることにもつながります。

質が高い

戸建賃貸経営を行うメリットの4つ目は「質が高い」です。

一戸建てに入居するのはファミリーが多いことは前述しましたが、年収が高い人が入居しやすいメリットもあります。
一戸建て賃貸はアパートやマンションよりも賃料が高いケースが多く、その高い賃料を支払うことができる人が入居します。
また、子どもを養育できるような安定した職業に就いているため、人としての質が高い傾向があります。

管理しやすい

戸建賃貸経営を行うメリットの5つ目は「管理しやすい」です。

戸建賃貸経営はアパートやマンション経営と違い入居者の数が少ないため、管理がしやすい経営方法です。
家賃回収も1家族だけですし、マンションの共用部と違い敷地の管理は入居者が行ってくれます。

また、入居者の入居期間が長い傾向にあるため、空き家になりにくく、空き家になるごとに行うリフォームの回数を減らすことができます。

土地活用で戸建賃貸経営を行うデメリット

土地活用で戸建賃貸経営を行うメリットは数多くありますが、デメリットも存在します。
ここからは戸建賃貸経営を行うデメリットを紹介していきます。

トラブル

戸建賃貸経営を行うデメリットの1つ目は「トラブル」です。

一戸建ての場合、マンションとは違った独自の地域ルールがあります。
地域ルールはゴミ出しの場所や捨てる日にちなどのルール、自治会の活動などさまざまです。
このようなルールに合わない入居者は近隣トラブルを起こす可能性があります。

また、一戸建てだと騒音問題などに発展しないと思い込んでいる入居者やバーベキューなどをする入居者がいます。
しかし、一戸建てでも騒音問題や臭いの問題は起きるため、問題が起きないと思い込んでいる入居者が近隣に迷惑を掛けることも考えられます。

リフォーム

戸建賃貸経営を行うデメリットの2つ目は「リフォーム」です。

賃貸物件では賃貸人が退去した場合には、退去するたびに室内をリフォームしなければなりません。
リフォームをしないと次の入居者探しに悪影響を及ぼしてしまいます。

戸建賃貸経営は賃貸人の入居期間が長い傾向にありますが、一度にかかるリフォーム費用はアパートやマンションより高くなってしまいます。
一戸建てはアパートやマンションより建物内の表面積が多く、設備も多くあることから費用が割高になります。

空室リスクが大きい

戸建賃貸経営を行うデメリットの3つ目は「空室リスクが大きい」です。

戸建賃貸経営で最も大きいデメリットは空室リスクが大きいことです。
一戸建ては賃貸人が1家族だけのため、賃貸人が退去してしまうと家賃がゼロ円になってしまいます。
これがアパートやマンション経営の場合、1室が空き家になったとしても他の部屋が埋まっていれば、総額家賃がそこまで減ることにはなりません。

家賃収入がゼロになった場合にも、固定資産税や都市計画税などの税金は課税され、ローンを組んで一戸建てを購入した場合にはローン返済をしなければなりません。
そのため、賃貸人が退去してしまうと支払いが積み重なってしまいます。

賃貸人が1家族しかいないのは管理の手間を省くことができるメリットがある反面、このように空き家になると支出のみになってしまうことには注意が必要です。

戸建賃貸経営を始める前に知っておくべき基礎知識

戸建賃貸経営を始める前には知っておくべき基礎知識があります。
基礎知識を知っていることにより戸建賃貸経営のデメリットを抑えていきます。
ここからは戸建賃貸経営を始める前に知っておくべき基礎知識を紹介していきます。

投資額の決定

戸建賃貸経営を始めるには一戸建てを建築するか、一戸建てを購入する必要があります。
建築・購入するときに投資額を明確に決めておくことが大切です。
できる限り投資額は多目にして、ローンを借りる金額を極力抑えておきます。

戸建賃貸経営をしているときに賃貸人が退去してしまうと、家賃収入がゼロ円になってしまいます。
そのときに、ローン返済額が多額になると賃貸経営に行き詰まり、一戸建てを売却しないといけないということが発生する可能性があります。

一戸建て建築・購入のときの投資額は建築・購入代金の10%~30%は投資するようにしましょう。
そして、戸建賃貸経営をしていき貯蓄ができたときには繰り上げ返済を行い、ローン返済額を抑え、空き家になったときのリスクを減らしていきましょう。

形式を知る

一戸建てを貸す場合には貸す形式があります。
この形式は借地借家法に定められており、普通借家契約と定期借家契約の2つがあります。
普通借家契約と定期借家契約の違いは次表のとおりです。

普通借家契約 定期借家契約
・契約更新がある
・契約期間は1年以上で設定しなければならない
・賃貸人からの契約解除は正当な事由がなければ退去してもらえない
・契約更新ができず決めた賃借期間が終了したら退去しなければならない
・賃借期間は自由

通常、住居の賃貸契約は普通借家契約で締結します。
定期借家契約で契約する場合は、一定期間後自宅として利用したいなどの理由があれば定期借家契約で契約します。
なお、定期借家契約で契約する場合は、普通借家契約に比べ家賃を低くしないと入居者が見つかりにくい傾向があります。

土地の確認

戸建賃貸経営が上手くいくかは土地の立地が影響します。
そのため、戸建賃貸経営に向く土地の特徴を知っておく必要があります。
戸建賃貸経営に向く土地の特徴は次のとおりです。

  • 住環境は良いか
  • 駐車場は確保できる土地か
  • 戸建て需要があるエリアか

戸建賃貸経営をする土地はアパートやマンションと違い、利便性の高さよりも住環境の良さを優先するようにしましょう。
一戸建てを選択する人は利便性の高さよりも住環境の良さを重視する傾向があるためです。

戸建て需要があるかどうかは街並みを見るとおおよその検討がつきます。
戸建て需要があるエリアは、マンションよりもアパートや戸建ての方が多くなります。

戸建賃貸経営を成功させるためのポイント

戸建賃貸経営を成功させるためには4つのポイントがあります。
ここからは戸建賃貸経営を成功させるための4つのポイントを紹介していきます。

初期費用をかけすぎない

戸建賃貸経営を成功させるためには、初期費用をかけすぎないことが大切です。
建物の質が高ければ入居率が多少上がるかもしれませんが、家賃が大幅に上がるということはありません。
良い建物を建築し貸したいという気持ちはあるかもしれませんが、初期費用をかけても収益性は上がらない可能性があります。

できる限り初期費用は抑え、支出を減らすことが戸建賃貸経営を上手く行うコツです。

シンプルな間取りにする

建築する一戸建ての間取をシンプルにすることも、戸建賃貸経営を成功させるコツの1つです。

間取りをシンプルにすることにより、建築費用を抑えることができます。
また、万人受けする間取りにすることにより、借りてくれる人の絶対数を増やす効果があります。
特殊な間取りにすると特定の人が入居してくれる確率は上がりますが、借りてくれる人の数は減ってしまいます。

戸建賃貸経営は空室の長さを減らすことが重要なため、万人受けする間取りを採用し、借りる人の数を増やしていくような計画をしていきましょう。

定期点検を行う

戸建賃貸経営のメリットとして敷地などの管理を賃借人に任すことができることがあります。
しかし、敷地の管理などを賃借人に任すことができても管理をしっかりとしてくれるかどうかは分かりません。
もし管理をしてくれない場合は管理を任せ続けることにより、修繕費が上がってしまうケースがあります。

例えば、庭の草刈りを賃貸人がしてくれない場合、草が増えれば増えるほど草刈りの金額が増加してしまいます。
そのようなことにならないよう賃貸人で定期的な点検やメンテナンスを行います。
定期的な点検をすることにより修繕費が抑えられます。

アピールポイントを作る

戸建賃貸経営はアパートやマンション経営より競合が少ないことがメリットですが、少ない競合先にも競り勝てるようにアピールポイントを作っておくことが大切です。

一戸建てのアピールになりやすい項目は次のとおりです。

  • 2台以上駐車可能
  • 南向きの土地に建築する
  • ペット可にする
  • ガーデニングができるなど庭を広く取る
  • 収納にも子どもの遊び場にも使うことができるロフトを設置する
  • カーポートを設置する

などなどアピールポイントはたくさんあります。
アパートやマンションと違い、一戸建てはアピールポイントを作りやすいため、初期費用が跳ね上がらない程度にアピールポイントを作ることをおすすめします。

まとめ

戸建賃貸経営とは、一戸建てを賃貸物件として貸し出す賃貸経営方法です。
戸建賃貸経営は、アパートやマンション経営と違い初期費用が少なくて済み、高い利回りを実現できることが多いため近年人気が出てきています。

その他にも、一戸建て賃貸の入居者はファミリーが多く、一旦入居すると長く入居してくれたたり、入居者が1家族のため管理が楽など多くのメリットがあります。
しかし、賃貸人が退去してしまうと家賃収入がゼロ円になってしまったり、賃借人が退去してしまった後のリフォーム費用がアパートやマンションに比べ高かったりするデメリットがあります。

戸建賃貸経営をするにはメリットとデメリットを知ったうえで、経営する必要があります。
初期費用を少なくする、万人受けするシンプルな間取りにするなど対策を講じ、デメリットを抑えながら賃貸経営を行っていきましょう。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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