相続税対策として青空駐車場を活用する際のポイントと注意点を解説!

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

【執筆者:税理士・藤井幹久】
貸付用として利用していた土地は、相続税評価額を減額できるだけでなく、小規模宅地等の特例を適用することで相続税を節税することも可能です。
しかし貸付用の土地が青空駐車場だった場合には、評価額を減額できないだけでなく、小規模宅地等の特例を受けられないケースもあるのでご注意ください。
本記事では、相続税における青空駐車場の取扱いと、相続税対策を行う際のポイントについて解説します。

青空駐車場とは

青空駐車場とは、更地の上にロープなどで駐車スペースを指定しているだけの駐車場をいいます。
未利用の土地を有効利用する場合、コインパーキングなど貸付駐車場として活用する方法もありますが、初期費用がかかるのが難点です。
それに対し青空駐車場は、土地に砂利やアスファルトなどを敷くだけで貸付駐車場として使用できるため、精算機や車止めを用意しなくても事業を開始することができます。

相続税における青空駐車場は、同じ貸付用の土地であっても、アパートなど建物の敷地として活用している土地や立体駐車場のように、構築物が存在する駐車場とは扱いが異なります。
土地の相続税評価額を算出する場合、利用用途に応じて補正計算を行いますが、青空駐車場は減額補正を適用できない可能性が高いです。
また、小規模宅地等の特例は土地に対して適用できる特例制度ですが、青空駐車場に適用するためには厳しい条件をクリアしなければなりません。
要件を満たさない青空駐車場に特例を適用してしまうと、税務調査で誤りを指摘されますので、事前に要件を確認しておくことが大切です。

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青空駐車場の相続評価と小規模宅地等の特例について

土地を青空駐車場として利用している場合、一般的な貸付用の土地とは相続税評価額の計算方法が異なりますし、小規模宅地等の特例を適用する際も注意すべきポイントがあります。

土地の相続税評価額の計算方法

土地の相続税評価額は最初に形状や立地、面積を加味し、評価対象地を自用地とした場合の価値を算出します。

自用地とは、他人が使用する権利が設定されていない土地をいい、自宅の敷地や未利用の土地などは自用地としての評価額が、そのまま相続税評価額となります。

貸宅地は、借地権など宅地の上に存する権利の目的となっている土地をいい、土地を借りた人が建物等を建築している場合、自用地評価額から借地権相当額を差し引いた額が貸宅地評価額です。
借地権相当額は、自用地評価額に借地権割合を乗じて算出しますが、借地権割合は路線価図(評価倍率表)に示されていますので、土地ごとに借地権割合を確認しなければなりません。
評価対象地が借地権割合60%の地域にあれば、自用地評価額の40%が貸宅地(底地)の評価額となるため、土地を貸付用として利用するだけで相続税評価額を大幅に減額することができます。

青空駐車場を評価する際の注意点

青空駐車場は貸付用として利用している場合でも、貸宅地評価を行うことはできません。
土地が他人の建物の敷地として利用されているとき、土地の上には他人の権利が設定されているため、土地所有者であっても土地は自由に使えない状態です。

貸宅地評価は土地の利用制限されていることを考慮し、評価額を減額する補正計算ですので、土地の上に権利が設定されていない土地は貸宅地ではなく、自用地として評価することになります。
貸付駐車場は、土地をそのままの状態で車両を保管することを引き受けるもので、自動車の保管を目的とする契約は、土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約とは本質的に異なる権利関係とされています。
また駐車場の利用権は契約期間に関係なく、土地自体に権利が及ぶものではないと考えられているため、貸付駐車場は自用地評価の対象です。
なお 貸付駐車場の契約において、車庫などの設備を駐車場利用者が造ることを認めている場合には、土地の賃貸借になると考えられますので、自用地評価額から賃借権の価額を控除した金額が評価額となります。

青空駐車場はそのままでは貸付事業用宅地等を適用できない

貸付用の土地に対して小規模宅地等の特例を適用する場合には、「貸付事業用宅地等」の適用要件を満たしているか判断します。
貸付事業用宅地等は、200㎡までの土地の評価額を50%減額できる制度であり、建物や構築物の敷地として利用している土地が対象です。
貸付アパートの敷地として利用している土地は貸付事業用宅地等の対象ですし、コインパーキングなど、土地の上に構築物がある貸付駐車場に対しても、特例を適用することは可能です。
一方で、ロープで駐車スペースを区切っているだけの青空駐車場には構築物が存在しないため、事業用の敷地として利用している土地とは言えず、基本的には貸付事業用宅地等を適用することはできません。

青空駐車場の相続税評価額を減額させる方法

青空駐車場に対して、貸付事業用宅地等を適用することは難しいです。
ただ貸付駐車場も特例の対象となっているため、相続開始前に対策を講じることで青空駐車場を特例対象地にすることは可能です。

貸付駐車場に対して特例を適用させるための要件

貸付駐車場に対して貸付事業用宅地等を適用するためには、次の2つの要件を満たす必要があります。

  • 土地の上に建物または構築物があること
  • 貸付事業を継続的に行っていること

建物は居住用や事業用として使用する目的で建てられた構造物をいい、構築物とは土地の上に定着した建物以外の工作物をいいます。
貸付駐車場として使用している土地の上に、建物が建築されているケースはほとんどありませんので、青空駐車場を特例対象地にするには、土地に構築物が設置してある状況を作らないといけません。

貸付事業を継続的に行っているかは、相場程度の賃料を得て貸し付けていることが判断基準となります。
貸付先が親族であったとしても、第三者に貸し付ける場合と同程度の賃料を受け取っていれば問題ありません。
反対に、貸付規模が大きくても賃料が固定資産税程度など相場よりも低い場合には、使用貸借と判断され、貸付事業用宅地等の適用対象外となるのでご注意ください。

小規模宅地の50%減額特例が適用できる青空駐車場の種類

貸付駐車場が次のいずれかに該当する場合、小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等を適用することができます。

<貸付事業用宅地等を適用できる青空駐車場の種類>

  • コインパーキング
  • アスファルト舗装
  • 砂利敷き

コインパーキングとして利用している土地は、精算機や料金を表示するための看板などが構築物に該当しますので、貸付事業用宅地等の対象です。
月極駐車場には精算機はありませんが、アスファルト舗装が構築物に該当するため、アスファルト舗装済みの土地に対しても特例を適用できます。
また、国税庁の「耐用年数の適用等に関する取扱通達」によると、表面に砂利、砕石等を敷設した砂利道または砂利路面については、「構築物」の「舗装道路及び舗装路面」に掲げる「石敷のもの」に該当すると定められています。

したがって、コインパーキングのような構築物がなく、アスファルト舗装をしていなくても、砂利を敷くことで青空駐車場を特例対象地にすることができます。
なお、アスファルト舗装が行われている場所が一部分のみで、それ以外の場所が更地になっているときは、アスファルト舗装されている部分だけが特例の対象です。
砂利敷きについても、砂利が土地に埋まっていたり、部分的にしか砂利が敷いていない場合には、構築物がないと判断されることもあるのでご注意ください。

小規模宅地等の特例を適用する際の注意点

貸付事業用宅地等は、貸付用として利用していることが前提となりますので、無償や低額での貸し付けている駐車場に対して適用することはできません。
また貸付駐車場の一部に自家用車を停めたり、家族に無料で使用させている場合、その部分は特例の対象外となります。
構築物が存在しない青空駐車場は、基本的に特例を適用することはできませんので、砂利敷きやアスファルト(コンクリート)舗装、コインパーキングなどの構築物を設置する必要があります。
小規模宅地等の特例は併用適用が認められていますので、適用要件を満たしている土地が複数ある場合、それぞれの土地に特例を適用することも可能です。

ただし、小規模宅地等の特例には限度面積があり、適用する制度の種類によって限度面積の上限は異なります。
貸付事業用宅地等は、小規模宅地等の特例の中で最も限度面積が小さく、減額割合も低いため、他の小規模宅地等の特例を適用できる土地がある場合には、必ず節税効果を比較してください。

まとめ

青空駐車場は貸付地評価による補正計算の対象外ですし、貸付事業用宅地等を適用するのであれば、アスファルト舗装やコインパーキングの設備を設置するなど、生前から対策する必要があります。
小規模宅地等の特例を適用できる土地が複数ある場合には、他の土地から優先的に特例を適用することも検討しなければなりません。
土地に関する節税には専門知識を要しますので、不動産・相続税を専門とする税理士にご相談することをオススメします。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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