大家さんが困る賃貸トラブルと対処方法を合わせて詳しく解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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大家さんを悩ます賃貸トラブルは、問題が長期化すれば解決が難しくなります。さらに、滞納リスクや空室リスクが上がり、賃貸経営の収益が見込みにくくなります。そのため、賃貸トラブルが発生したら迅速に対応しましょう。
今回は、賃貸経営でよくあるトラブルの対処方法をご紹介します。この記事を読めば、賃貸トラブルに備えられるようになります。それだけでなく、賃貸トラブルが発生しても慌てずに対処できるようになるはずです。そのため、賃貸トラブルに向けて対策を検討している大家さんは、この記事を参考にしてみてください。

大家が悩む賃貸トラブルの一覧表


まず、賃貸トラブルにはどのようなものがあるのかを知り、慌てずに対処できるようになりましょう。賃貸経営でよくあるトラブルをまとめたため、ぜひ参考にしてみてください。

家賃滞納トラブル 入居者の諸事情で家賃を滞納される
〈家賃滞納トラブルの原因〉
・家賃支払い日を忘れていた
・家賃を支払う資力がない
・家賃を支払いたくない
退去手続きトラブル 原状回復費用の負担の線引きで入居者と揉めてしまう
入居者間トラブル 迷惑行為により他の入居者から苦情が入る
<入居者間トラブルの原因>
・騒音がする
・悪臭がする
・無断駐車をしている
・嫌がらせをしてくる
規約違反トラブル モラルが低い人が入居してルールを守ってもらえない
<規約違反トラブルの原因>
・ゴミの出し方を間違えている
・ペットを飼育している
・喫煙をしている
物件・設備面のトラブル 屋根の雨漏れや水回り設備の故障が発生して生活に支障が出る

大家さんができる賃貸トラブルの対処方法


賃貸トラブルが発生したら、どのように対処していけば良いのでしょうか?次に賃貸トラブルにおける対処方法をご紹介します。

家賃滞納トラブル

家賃滞納トラブルが発生する原因は主に3つあります。

  • 家賃支払い日を忘れていた
  • 家賃を支払う資力がない
  • 家賃を支払いたくない

ここでは、それぞれの家賃滞納トラブルにおける対処方法をご紹介します。

家賃支払い日を忘れていた場合の対処方法

家賃支払い日を忘れていた場合は、口頭や手紙で家賃が支払われていない旨を伝えれば、すぐに支払ってもらえることが多いです。このような問題が再発しないように、入居者と連絡が取れたら、口座振替への切り替えを依頼すると家賃滞納トラブルが防止できます。

家賃を支払う資力がない場合の対処方法

冠婚葬祭による臨時の出費や収入減などにより家賃を支払う資力がない場合は、支払能力が回復する見込みがあるかを確認してください。
支払能力が回復する見込み場合は、3ヵ月程度の猶予期間を設けます。支払能力が回復する兆しが見えない場合は、法的措置を講じます。引越し費用を貸主が負担した場合は、借主に立替費用を請求できますが、破産して取り立てできなくなる場合もあると認識しておきましょう。

入居者が家賃を支払いたくない場合の対処法

モラルの低い入居者は家賃を支払いたくないと主張してきます。例えば、「隣人の騒音問題を解決してくれるまで家賃を支払わない」と主張する方もいます。このようなモラルの低い入居者に対しては、以下のような流れで立ち退き交渉をしましょう。

[家賃滞納者への対応方法]

  1. 口頭や手紙で家賃の支払いを催促する
  2. 連帯保証人に連絡する
  3. 督促状を送付する
  4. 内容証明郵便を送付する
  5. 法的措置を講じる

家賃滞納中の入居者を強制退去させると、反対に訴えられることもあるため気をつけてください。また、督促状に記載できる遅延損害金の利率の上限は年14.6%と定められています。専門知識が必要になるため、支払い催促から法的措置を講じるまでの対処方法に不安を感じる方は、弁護士に相談してみてください。

退去手続きトラブル

退去手続きを行う際に、原状回復費用の負担の線引きで入居者と揉めてしまう恐れがあります。契約時に借主から預かった敷金で原状回復工事費用が相殺できる場合は問題が発生しにくいです。大体は入居者と円滑に退去手続きが進められるでしょう。
その一方で、入居時に敷金を預かっておらず、原状回復費用を退去者に実費負担してもらう場合は揉めてしまうかもしれません。その理由は、入居者は退去費用を安く抑えたい思うためです。

原状回復費用トラブルへの対処法

原状回復費用の負担の線引きで入居者と揉めた場合は、契約書の内容に沿って原状回復費用を算出します。借主が契約書の内容や請求金額に納得できない場合は、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に沿って、原状回復義務について説明してあげましょう。下記の原状回復義務を押さえておくと自信を持って説明できるようになるはずです。

借主負担 貸主負担
禁煙物件の室内で禁煙した
結露を放置してカビが発生した
冷蔵庫やテレビによる電気ヤケが起きた
キャスター付きの家具で床を傷つけた
物を落として床に凹みができた
床に家具の設置跡が付いた
建具・窓 ペットが傷つけた 地震でガラス割れた
給湯器 誤操作で給湯器が故障した 老朽化で給湯器が故障した
不注意で鍵を紛失した 次の入居者のために鍵を交換する

入居者間トラブル

賃貸経営していると、迷惑行為による入居者間トラブルが発生する恐れがあります。迷惑行為の中でも多い相談が騒音の問題です。
賃貸物件は床や壁が薄く、近所に生活音が響きやすい構造になっています。そのため、騒音の苦情が発生してしまうのです。入居者間トラブルが発生した場合は事実確認をします。事情徴収して、加害者が事実を認めた場合と事実を認めていない場合で対処方法が変えましょう。

加害者が事実を認めた場合の対処法

加害者が騒音の問題を認めた場合は、再発しないように通知書を作成して注意しましょう。通知書には、再び騒音で近隣住民に被害が出た場合は契約解除すると記載しておき、借主の同意を得ておきます。

加害者が事実を認めない場合の対処法

加害者が騒音の問題を認めない場合は、被害状況が分かる証拠を被害者に提供してもらいます。証拠を提示して加害者に注意喚起を呼びかけます。また、共有部分の掲示板に騒音に関する警告書を貼って、加害者以外にも注意喚起を呼び掛けておくと騒音トラブルが落ち着くでしょう。

被害者側がクレーマーである場合の対処法

被害者側がモンスタークレーマーである場合もあります。事実確認をして苦情のような問題が発生していなかった場合は、その旨を伝えます。立て続けに起きるクレーム内容と事実確認の証拠を記録しておき、嫌がらせが改善されない場合は明渡訴求をしましょう。
クレーマーが入居していると、近隣住民は恐れて退去してしまい空室率が上がります。賃貸経営に影響が出るため、退去費用を負担してあげてクレーマーに退去してもらいましょう。

規約違反トラブル

モラルが低い人を入居させてしまうと、規約違反トラブルが発生します。ゴミの出し方の規約違反は、他の入居者からも苦情が出やすいです。その理由は、建物の景観を損ねて悪臭や害虫が湧く恐れがあるためです。
このようなトラブルが発生したら、入居者全員のポストに手紙を入れたり、掲示板に警告書を貼ったりして改善していきます。規約違反が改善される見込みがない場合は直接関係者と話し合います。
また、喫煙禁止やペットの飼育禁止と規約を定めているにも関わらず、規約違反する入居者がいます。このような規約違反者には退去を促せて、原状回復費用を請求することも可能です。

物件・設備面のトラブル

賃貸物件では、屋根からの雨漏れや水回り設備の故障などのトラブルが起きます。物件や設備面のトラブルが発生したら、借主の生活に支障が出るため迅速に対処しましょう。対応が遅れてしまうと、生活に支障が出ている分、賃料が減額されてしまいます。
経年劣化による故障は貸主が負担し、使用上の問題での故障は借主が負担します。そのため、物件や設備の故障の原因の解明が必要です。設備の交換が必要な場合は、入居者のニーズを汲み取って、新しいものを取り付けることで入居満足度を上げられます。

賃貸トラブルのリスクを抑える方法


賃貸トラブルの対処法をご紹介しましたが、トラブルが起きないに越したことはありません。そのため、賃貸トラブルのリスクを抑える方法を覚えておきましょう。

入居審査を行う

賃貸トラブルが発生しないように、賃貸借契約を締結する前に厳しく入居審査をしましょう。入居審査では収入や雇用形態、勤続年数など経済的な信用力だけでなく、人柄を確認するために面談をおすすめします。入居マナーを守ってもらうためには、素行が悪そうな人を入居させてはいけません。
借主の人柄を見極めるためには経験が必要です。そのため、入居審査は賃貸管理会社にお任せしましょう。また、滞納発生時に家賃を立て替えてくれる連帯保証人を立てたり、保証サービスへ加入させたりすると滞納時も安心できます。

賃貸管理会社に任せる

賃貸経営の管理形態には「自主管理」と「委託管理」があります。賃貸管理会社を利用する場合に支払う管理委託費を抑えて、不動産投資の利益の最大化を狙う不動産大家も多くいます。確かに、自主管理で管理委託費を抑えられますが、賃貸経営に詳しくない大家さんが管理すると空室リスクが上がるため注意してください。
少しでも賃貸経営に不安を感じる方は、賃貸管理会社に業務委託することをおすすめします。その際には、管理業務の実績を豊富に持っており、迅速に対応してくれる信頼できる会社であるかを見極めましょう。

情報収集をしっかりと行う

賃貸管理会社に業務委託しても、賃貸トラブルが出てくる恐れがあります。
例えば、賃貸管理会社の中には、物件の清掃を下請け業者が入るところもあります。このような場合、物件の清掃が行き届いていないなどの悩みを抱えてしまうかもしれません。そのため、所有している物件には定期的に足を運び、適切な管理が行われているのかを確認しましょう。
また、不動産投資で収益を得るだけでなく、不動産売却益で収益を得ようと考えている大家さんもいるでしょう。これらの情報を専門業者にお任せするのではなく、不動産市場がどのような状況なのかも情報収集してください。

賃貸借契約の民法を覚えておく

2020年4月の民法改正により、賃貸借契約を締結する際のルールが変更されました。賃貸トラブルが発生しないように民法改正がされたため、民法に関する知識も蓄えておきましょう。民法改正による変更点は以下の通りです。

[民法改正の内容]

  • 連帯保証人を付ける場合は、保証人が支払の責任を負う金額の上限額を定めておく
  • 急迫の事情が起きた場合は借主側で建物や設備の修繕ができる
  • 設備の故障などによる賃料減額は、使用できなくなった部分の割合を交渉できる
  • 契約中に物件の所有者が変わった場合は、所有権の保有者に賃料を支払う
  • 原状回復義務の線引きの基準が明確になった
  • 敷金は家賃の滞納があったときに請求されますが、基本的には借主に返すものである

信頼できる弁護士を探しておく

賃貸管理会社に管理業務を委託しても、トラブルの内容次第では対応してもらえない場合があります。例えば、入居者間トラブルが発生した場合に賃貸管理会社は対応してくれないでしょう。
入居者間トラブルは、弁護士に相談するのが一般的です。そのため、どのようなトラブルにも対応できるように、信頼できる弁護士を見つけておきましょう。依頼先を探す場合は、賃貸経営関連の訴訟を得意とする弁護士であるかを確認してください。賃貸経営関連の訴訟の実績を豊富に持つ弁護士であれば、どのようなトラブルにも的確に対処してくれて安心できるはずです。

まとめ

賃貸経営する上でトラブルが発生してしまう場合があります。賃貸トラブルが起きても慌てずに対処できるように知識を蓄えておきましょう。今回は、賃貸経営でよくあるトラブルの対処方法をご紹介しました。トラブル対処方法を把握しておけば、迅速にトラブルに対応できて安心してもらえるでしょう。
また、賃貸トラブルのリスクは抑えることも可能です。厳しい入居審査をしたり、信頼できる賃貸管理会社に業務したりすれば不安が和らぐでしょう。万が一に備えて、弁護士との繋がりを持ったり、賃貸借契約に関する法律を学んでおいたりすると安心できます。ぜひ、この記事を読んで賃貸トラブルに備えてみてください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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