不動産オーナー業とは?仕事内容・収入・向いている人について解説!

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

【執筆者:税理士・藤井幹久】
不動産オーナー業に興味があるけれど、自分に向いているか分からないと、一歩目が踏み出せないこともあるでしょう。そのような悩みを抱えたら、不動産オーナーの仕事について理解を深めておくと適正があるか判断しやすくなります。
今回は不動産オーナーの仕事について解説します。この記事を読めば、不動産オーナー業が向いている人の特徴が分かり、自分が適しているかどうかが判断できるようになるはずです。ぜひ、賃貸経営を始めようか悩んでいる方は、この記事を参考にしてみてください。

不動産オーナーの仕事内容

不動産オーナーの仕事内容は、5つに分類されます。

  1. 入居者募集
  2. 建物管理
  3. 家賃回収
  4. 入居者トラブル対応
  5. 退去手続き

ここでは、それぞれの仕事内容について詳しく解説します。

入居者募集

賃貸経営で空室が出たら、必要書類を揃えて、不動産会社に入居者募集の依頼をします。

[入居者募集に必要な書類]

  • 間取り図
  • 案内図
  • 登記簿謄本(※1ヵ月以内のもの)
  • マンション管理規約
  • 印鑑
  • 物件の鍵
  • 本人確認証明書

物件の内覧や契約手続きは、不動産会社が行ってくれます。
賃貸借契約の前に行う入居者審査は賃貸管理会社にお任せできますが、ご自身で行うことをおすすめします。その理由は、入居審査が甘い賃貸管理会社が存在するためです。
入居者審査は、入居者の職業や年収だけでなく属性も確認することが大切です。入居者や連帯保証人に電話をかけてみて、信頼できる人であるか確認すると入居トラブルが発生しにくくなります。

建物管理

入居者が安心して住めるように、建物の清掃・点検・修繕を行います。建物管理が行き届いていれば、物件内覧時の印象が良くなり入居率を上げていけます。そのため、建物の隅々まで清掃しましょう。
また、建物は経年劣化していくため耐用年数が近づいたら、点検して修繕を行います。設備が壊れてから修繕すると入居者に迷惑がかかるため、国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」の修繕計画を参考に修繕していくことをおすすめします。

経過年数 修繕内容 予算
5~10年目 ベランダ(塗装)
階段や廊下(塗装)
給排水管(高圧洗浄)
室内設備の故障時(修理)
約10万円/戸
11~15年目 屋根(塗装)
外壁(塗装)
雨樋(塗装)
ベランダ(塗装・防水)
階段・廊下(塗装・防水)
給排水管(高圧洗浄)
給湯器(交換)
浴室やキッチン(部品交換)
エアコン(交換)
室内設備の故障時(修理)
約55万円/戸
21~25年目 屋根(葺替)
外壁(塗装)
雨樋(塗装)
ベランダ(塗装・防水)
階段・廊下(塗装・防水)
給排水管(高圧洗浄)
給湯器(交換)
浴室やキッチン(部品交換)
エアコン交換
室内設備の故障時(修理)
約115万円/戸
26~30年目 ベランダ(塗装)
階段・廊下(塗装)
給排水管(高圧洗浄)
給排水管(交換)
外構(修理)
室内設備の故障時(修理)
約22万円/戸

家賃回収

一般的に家賃は銀行振込で入金されます。そのため、家賃振込日の翌日に銀行通帳の記帳をして、家賃が振り込まれているか確認します。家賃を振り込んでくれていない方に対しては、以下の流れで対処していきます。

[家賃回収の流れ]

  1. 本人に連絡をして家賃の支払いを依頼する
  2. 連帯保証人に連絡して家賃の支払いを依頼する
  3. 督促状を送付する
  4. 賃貸契約の解除を行う
  5. 明渡請求を行う

借地借家法では、借主の権利が守られており、基本的に強制退去を命ずることはできません。強制退去を依頼すると、逆に入居者から訴えられてしまう恐れがあります。そのため、上記の流れで対応するようにしましょう。

入居者のお問い合わせ業務

入居者から、以下のようなさまざまなお問い合わせが入ります。

「隣の部屋から騒音が聞こえて、生活しにくくて悩んでいる…」
「給湯器が故障して、お風呂にお湯を湧かせない…」
「エアコンやヒーターが故障してしまった…」

このような入居者からのお問い合わせには、早急に対応しなければいけません。その理由は、対応が遅れると入居者の生活に支障が出てしまうためです。
また、お問い合わせには、「隣の住民が嫌がらせをしてくる」などの入居者トラブルも含まれます。早急な対応が難しい場合は、賃貸管理会社にお問い合わせ業務をお任せすると良いでしょう。

退去手続き

入居者から退去の申込みが入ったら、退去手続きを行います。まずは、部屋の点検をして原状回復工事が必要かを判断します。故意や過失によって生じた破損や汚損などについては借主負担となるため、原状回復費用を請求します。
敷金を預かっている場合は、原状回復費用を精算してください。借主から費用を請求できたら退去手続きをします。

[借主側の責任になる原状回復工事(例)]

  • 鍵を紛失したことによる鍵の取り替え工事
  • メンテナンスを怠ったことによる設備の故障
  • 故意や過失による内装の汚損

必要に応じて原状回復工事とハウスクリーニングを実施して、次の方が住めるような状態にすれば完了です。

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不動産オーナーの収入はどのくらい?

不動産オーナーの平均収入は約540万円です。国税庁「申告所得税標本調査結果」を見ると、年度別の不動産所得の平均値は以下の通りになります。

年度/th>

平均収入
2016年 5,120,638円
2017年 5,170,151円
2018年 5,181,407円
2019年 5,207,633円
2020年 5,399,575円

[注意]不動産オーナーの収入=家賃収入ではない

不動産オーナーの収入とは、賃貸経営における収入から支出を引いたものです。不動産オーナーには、さまざまな支出がかかります。例えば、以下の表の場合は「収入900万円―支出360万円=不動産オーナーの収入540万円」となります。

◆家賃5万円15室のアパート経営時の収入

収入(900万円) 家賃
共益費
礼金
更新料
駐車場賃料
支出(360万円) ローン返済費
管理委託料
仲介手数料
建物修繕費
保険料
税金
諸経費

不動産オーナーに向いている人の特徴

不動産オーナーに向いている人には、以下のような特徴があります。

長期的な視野で物事を考えられる

賃貸経営は、株や仮想通貨のように短期間で大儲けできるわけではありません。短期間で大儲けしたい場合は、株や仮想通貨などの投資をした方が満足できるでしょう。
毎月、家賃収入が入ってきても、ローン返済や修繕費の積み立てをしていかなければいけません。そのため、長期的な視野で物事を考えられる人が賃貸経営に向いています。

勉強熱心である

賃貸経営には建物に関する知識や税金に関する知識など、さまざまな知識が必要になります。税金に関しては改正して税率が変わることもあるため、繰り返して勉強しなければいけません。
成功している不動産オーナーは、参考書を購入したりセミナーに参加したりと勉強熱心な方が多いです。そのため、不動産事業を成功させるためにコツコツと勉強できる方が、不動産オーナーに向いています。

人と関わるのが好き

賃貸経営では、不動産会社や入居者など、さまざまな人と関わります。明るく挨拶をして、コミュニケーションを取り、相手に好印象を持ってもらうことで賃貸経営は安定していきます。なぜなら、好印象を抱いてもらえれば、不動産会社から手厚いサポートが受けられるようになり、入居者も安心して住めるようになるためです。
入居者と友達になる必要はありませんが、笑顔で挨拶することは大切です。そのため、人と関わるのが好きな人が不動産オーナーに向いています。

不動産オーナーになるために抑えておきたいポイント

不動産オーナーになりたい方は、賃貸経営で失敗しないために事前準備をしておくことが大切です。ここでは、不動産オーナーになるために抑えておきたいポイントをご紹介します。

賃貸経営に必要な経費を覚える

賃貸経営には、賃貸経営に必要な経費や税金などがかかります。
建物を所有すると、毎年、固定資産税や都市計画税を支払わなければいけません。また、15年目、25年目には建物の大規模修繕が必要になるため、修繕積立金を積み立てておく必要があります。
これらの賃貸経営に必要な経費を把握しておかないと、キャッシュフローが悪化して賃貸経営が失敗してしまうかもしれません。そのため、賃貸経営に必要な経費を覚えておきましょう。
賃貸経営向けの物件を購入する方は、信頼できる専門家に収支シミュレーションを作成してもらうと、必要な経費が抜け落ちることがないため安心です。

税金の支払い

賃貸経営には、さまざまな税金がかかります。毎年、支払わなければいけない税金は6つあります。

固定資産税 1月1日時点の土地・建物の所有者に対して課税される
固定資産税…課税標準×1.4%
都市計画税 1月1日時点の土地・建物の所有者に対して課税される
都市計画税…課税標準×0.3%
所得税 アパート経営の利益に課税される
所得税…累進課税5~45%
住民税 アパート経営の利益に課税される
住民税…一律10%
事業税 不動産所得が290万円を超えると課税される
個人事業税=(利益―290万円)×税率5%
消費税 不動産所得が1,000万円を超えると課税される
賃貸物件の一部を店舗や事務所にした場合に課税される
消費税…一律10%

物件情報を収集する

賃貸経営で成功するためには、物件選びが重要となります。中古の物件を購入する場合は、建物の構造的に問題がないかなどをチェックしましょう。
また、建物の周辺環境で入居率は変わります。そのため、周辺を散策して、スーパーや飲食店、病院が近くにあるかを見ておきましょう。また、周辺に新しく建物が建つ計画はないか、取り壊しの計画がないかまで情報収集しておくと賃貸経営を有利に進めていけます。

賃貸管理会社の選び方を覚える

賃貸経営を成功させるためには、信頼できる賃貸管理会社に業務委託することが欠かせません。そのため、賃貸管理の業務委託する場合は、以下のような会社を選ぶようにしましょう。

[管理会社の選び方]

  • 客付け力が高くて速やかに入居者を見つけられる
  • 家賃収入の5%程度の管理委託費である
  • 賃貸管理会社の担当者の対応が丁寧である
  • 物件情報を組織全体で共有している
  • 入居者管理から建物管理まで対応してくれる
  • 地域情報に精通している賃貸管理会社に依頼する

賃貸管理会社の管理物件の入居率などの実績から、集客力や建物管理力を見抜くことができます。

まとめ

今回は不動産オーナーの仕事について解説しました。不動産オーナーに向いている人の特徴や、賃貸経営を始める前に抑えておくポイントを把握しておけば、投資事業で成功しやすくなります。
不動産投資で成功するためには、綿密な計画が必要になります。そのため、自分で勉強したり、専門家に相談したりしましょう。ぜひ、この記事を読んで不動産オーナーになりたいと思った方は1歩目を踏み出してみてください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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