親が死亡した際に必要な手続きとは?時系列・項目別で解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

【執筆者:税理士・藤井幹久】

親が死亡した際の手続きには何がある?

親が亡くなると、葬儀、医療保険や年金、相続や税金などに関する手続きが待っています。
特に期限がある手続きは、その期限と手続きを行う場所をチェックしておくことで、手続きをし忘れたり大切な給付金をもらい損ねたりすることがなくなります。

親が死亡した際の手続き一覧(時系列)

親が亡くなった後、期限のある主な手続きは以下のとおりです。

期限 手続名
死亡後すぐに
  • 死亡診断書(死体検案書)の取得
  • 通夜・葬儀の手配
7日以内
(通常、葬儀の前まで)
  • 死亡届/火葬(埋葬)許可申請書の提出
10日以内
  • 厚生年金の受給権者死亡届
14日以内
  • 国民年金の受給権者死亡届
  • 国民健康保険、後期高齢者医療制度の資格喪失手続き
  • 介護保険の資格喪失手続き
  • 世帯主変更届
相続開始後、遅滞なく
  • 自筆証書遺言の検認
3か月以内
  • 相続放棄、限定承認の手続き
4か月以内
  • 準確定申告
10か月以内
  • 相続税の申告
1年以内
  • 遺留分侵害額の請求
2年以内
  • 埋葬料等の請求
  • 高額療養費の申請
  • 死亡一時金の請求(寡婦年金との併給不可)
3年以内
  • 保険会社への保険金請求
5年以内
  • 公的年金の請求

※期限には起算日が死亡日でないものがありますので、おおまかなスケジュールの把握のためにご利用ください。
※亡くなった人によっては不要な手続きもあります。

親が死亡した際の手続き一覧(ジャンル別)

続いて親が亡くなった後の手続きをジャンル別に、より詳しく整理します。

手続き チェック 手続き内容 主な手続き先
通夜・葬儀関係 親族等への連絡 親族、勤務先、友人など
死亡診断書(死体検案書)の取得 病院など
葬儀社の手配、ご遺体の搬送 葬儀社、お寺など
通夜、葬儀、火葬(埋葬)
法要(四十九日など)
戸籍・住民票関係 死亡届/火葬(埋葬)許可申請 区市町村役場
世帯主変更届
年金関係 年金受給権者の死亡届 区市町村役場
年金事務所または年金相談センター
死亡一時金の請求
公的年金の請求
医療保険関係 資格喪失の手続き 区市町村役場
社会保険事務所(協会けんぽなど)
埋葬料等の請求
高額療養費の申請
介護保険 資格喪失の手続き 区市町村役場
その他行政機関への手続き パスポートの返納 パスポートセンター
運転免許証の返納 警察署または運転免許センター
遺産相続関係 自筆証書遺言の検認/遺言書保管事実の確認 家庭裁判所/遺言書保管所(法務局)
相続財産の調査 金融機関、法務局、信用情報機関など
法定相続人の調査 区市町村役場
相続放棄・限定承認の手続き 家庭裁判所
遺産分割協議/遺産分割協議書の作成
遺留分侵害額の請求
税金関係 準確定申告 亡くなった人の住所地を管轄する税務署
相続税の申告
民間サービス 保険金請求 保険会社
電気、水道、ガス、電話、インターネット契約などの解約 各種契約先
クレジットカードの解約 カード会社
住宅の賃貸借契約 不動産管理会社
その他有料サービスの解約やSNSの退会 各種契約先

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死亡後すぐに必要な手続き

親族等への連絡

親族や生前に親しかった人、勤務先などへの連絡を行います。
早く知らせなければならない相手や通夜や葬儀の手伝いを頼みたい相手には、深夜や明け方の連絡になることもやむを得ません。
知人や勤務先への連絡は、通夜・葬儀の場所と日程が決まってから連絡することが一般的です。

死亡診断書(死体検案書)の取得

死亡診断書(または死体検案書)とは、医師が発行する死亡の証明書です。
病院などで受け取ります。
死亡診断書(死体検案書)は、役所への死亡届の際に提出しなければなりません。
後のさまざまな手続きにおいて死亡事実の分かる書類として提出できることがありますので、役所に提出する前に何枚かコピーを取っておきましょう。

通夜・葬儀の手配

葬儀社への連絡

ご遺体の搬送と葬儀を依頼する葬儀社に連絡をします。
葬儀社を病院などで紹介してもらう方法もありますが、スタッフの対応や費用の面において信頼できる葬儀社を自分たちで選んだほうが後悔がないでしょう。
搬送のみを請け負ってくれる葬儀社もありますので、葬儀を依頼するかどうかすぐに決められない場合は相談してみることをおすすめします。
なお、いわゆる終活の一つとして、亡くなった親が生前に葬儀社を選んでいるケースもあります。

ご遺体の搬送

葬儀社に依頼して、ご遺体を病院や警察署などから自宅などに搬送してもらいます。

通夜・葬儀の打ち合わせ

葬儀社と通夜や葬儀の打ち合わせをします。

お寺への連絡

お寺(一般的には菩提寺)に通夜や葬儀の場所と日程を連絡します。
お坊さんの朝は早いので、深夜の場合は朝になってから連絡するとよいでしょう。

役所への死亡届・火葬(埋葬)許可申請

役所に死亡届を提出します。
葬儀社が火葬許可申請とともに代行してくれることが一般的です。
自分で手続きをする場合は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡した場合は、3か月以内)に役所(①亡くなった人の死亡地、②亡くなった人の本籍地、③届出人の住所地を管轄するいずれかの市区町村役場)に死亡診断書(死体検案書)を持参します。

死亡後に必要な手続き

葬儀や葬儀社への支払いが終わったら、社会保険(年金や医療保険など)、遺産相続、税金などの手続きを始めます。
期限が短い手続きは社会保険に多いため、まずは社会保険の手続きから行います。
中には期限にゆとりのある社会保険の手続きもありますが、同じ場所でできる手続きは同時に行っておくと効率が良いです。

年金の手続き

【10日・14日以内】年金を受給権者死亡届

年金を受け取っている人が亡くなった時の手続きです。
年金の支給を止めてもらうために行います。
 

期限 手続き先
国民年金 14日以内 区市町村役場
厚生年金 10日以内 年金事務所または年金相談センター

【2年以内】死亡一時金の請求

年金を受け取る前に亡くなった人が一定要件を満たしている場合、その遺族が請求できる一時金です。
寡婦年金の受給要件も満たしている場合は、どちらか一方しか受け取れません。

期限 手続き先
死亡日の翌日から2年 年金事務所または年金相談センター

・【5年以内】各種年金の請求
未支給の年金がある場合や他の年金の受給要件を満たしている場合は、これらの請求を行います。
 

期限 手続き先
未支給年金 年金支払い日の翌月1日から5年 年金事務所または年金相談センター
遺族年金 死亡日の翌日から5年 遺族基礎年金:区市町村役場(※)
遺族厚生年金:年金事務所または年金相談センター
寡婦年金 死亡日の翌日から5年 区市町村役場、年金事務所または年金相談センター

(※)亡くなった人が国民年金第3号被保険者の場合、年金事務所または年金相談センター

医療保険(健康保険など)

加入する医療保険を確認

医療保険は、

    ①:勤務先で加入する健康保険(協会けんぽ)
    ②:職種などの組合による健康保険
    ③:区市町村の国民健康保険
    ④:75歳以上が加入する後期高齢者医療制度
    に分かれています。
    まずは健康保険証などから、親がどの医療保険に加入しているかを確認します。

    【14日以内】資格喪失・保険証の返却>

    親が亡くなる時に加入していた医療保険の保険者に対し、加入資格の喪失手続きや保険証の返却を行います。
    上記の①や②は勤務先が手続きをするため、勤務先に保険証の返却を行ってください。
    上記の③と④は区市町村役場で手続きを行いますが、死亡届を提出すれば手続きを不要とする役所もあります。

    【2年以内】埋葬料等の請求

    埋葬料等とは、医療保険に加入している人の葬儀や埋葬を行った場合に請求できる5万円ほどの一時金です。
    医療保険の保険者に対して、2年以内に請求します。
    医療保険によって名称や金額、請求時効の起算日が若干異なります。

    【2年以内】高額療養費の申請

    高額療養費とは、ひと月あたりに負担した医療費が月収などに対して高額である場合に申請できる医療費の払戻し金のことです。
    親が亡くなる時に加入していた医療保険の保険者に支給申請を行います。
    申請期限は「診療月の翌月1日から2年」です。

    介護保険

    【14日以内】介護保険の資格喪失・保険証の返還

    亡くなった親が65歳以上である場合や40歳以上で特定疾病等の理由により介護保険証の交付を受けている場合に行う手続きです。
    資格喪失届の提出と保険証の返還の両方が必要な役所もあれば、死亡届の際に保険証を返還するだけでよい役所もあります。

    その他役所など行政機関への手続き

    【14日以内】世帯主の変更届(役所)

    親が住民票の世帯主であり、かつ、残された世帯員が2人以上いる場合に必要となる手続きです。

    パスポートの無効処理(パスポートセンター)

    亡くなった親がパスポートを所有している場合、都道府県のパスポートセンターにおいてパスポートの無効処理を行います。
    パスポートの現物、パスポートの名義人が死亡した事実がわかる書類(死亡診断書のコピーなど)、手続きをする人の本人確認書類などを持参します。

    運転免許証の返納(警察)

    義務ではありませんが、亡くなった親の運転免許証を返納することもできます。
    返納すれば、警察からの免許更新のお知らせをストップさせることが可能です。
    返納先は、警察署や運転免許更新センターなどになります。

    遺産相続の手続き

    社会保険の手続きが落ち着いたら、遺品整理と同時進行で親の遺産相続の手続きを始めます。

    遺言書がないかどうかの確認

    亡くなった親の遺言書がないかどうかを確認します。
    もし遺品から自筆証書遺言が見つかった場合は開封せずに、家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
    遺言書保管制度を利用している可能性があれば、遺言保管所(法務局)に確認します。

    相続財産・法定相続人の調査

    相続財産の内容や法定相続人を調査します。
    財産だけでなく負債も相続する対象になりますので、借金などの有無も調べる必要があります。
    負債の金額の調査は、相続放棄・限定承認の判断に欠かせません。

    【3か月以内】相続放棄・限定承認の判断

    財産をすべて相続するか、相続放棄または限定承認をするのかを判断します。
    相続放棄や限定承認をする場合、親の死亡日から3か月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。

    【目安:6か月以内】遺産分割協議

    相続人同士で、誰がどの財産を相続するかを話し合います。
    期限はありませんが、相続税の申告書を作成することを考えて6~7か月以内に終わらせることを目指しましょう。
    相続税の申告期限は10か月以内になります。

    【1年以内】遺留分侵害額の請求

    親の相続において遺留分(相続分の2分の1)を遺言や生前贈与で侵害された場合、その侵害額の金銭の支払いを相手に請求することができます。
    請求の期限は、「贈与または遺贈があったことを知った時から1年」か、「死亡日から10年」のいずれか早い日です。

    税金に関する手続き

    【4か月以内】準確定申告

    準確定申告とは、亡くなった人の所得税の確定申告のことで、親が亡くなった日の翌日から4か月以内に行います。
    たとえば5月10日に死亡した場合の期限は、9月10日です。
    ただし、すべての人が準確定申告をしなければならないわけではありません。
    準確定申告が必要になるかどうかは、こちらの記事をご覧ください。
    https://maruishi-tax.jp/column/column150/
    なお、準確定申告によって相続人が納めた所得税は相続税の債務控除に、還付される所得税があれば相続税の課税対象になります。

    【10か月以内】相続税の申告

    相続税とは、亡くなった人の相続財産に対してかかる税金です。
    財産を取得した相続人や受遺者(遺言によって財産を取得した人)で申告書を作成・提出し、申告した相続税を納めます。
    相続税の申告期限は、親が亡くなった日の翌日から10か月以内です。
    ただし、相続財産が少なければ相続税の申告は必要ありません。
    相続税の申告が必要になるかどうかは、こちらの記事をご覧ください。
    https://maruishi-tax.jp/column/column144/

    準確定申告や相続税の申告先

    申告先の税務署は、亡くなった親の納税地(通常は住所地)を管轄する税務署になります。

    民間保険の手続き

    【3年以内】死亡保険金の請求

    亡くなった親を被保険者とする生命保険に加入している場合、保険会社に保険金の請求を行います。
    親が自身を被保険者として生命保険に加入していることもあるため、遺品の保険証券、口座の引き落とし、保険会社からの郵便物などから、そういった保険契約がないかどうか確認します。
    保険金の請求期限は、死亡から3年以内になります。

    その他の保険契約がある場合

    亡くなった親が、たとえばお子さんなどを被保険者とする生命保険などに加入していることがあります。
    この場合も保険会社に連絡をし、解約するのか、契約者変更ができるのであれば相続人が引き継ぐのかどうかを決めます。
    ただし、解約返戻金を受け取ると相続財産を処分した(相続の単純承認をした)とみなされることがあるため、相続放棄を考えている場合は注意が必要です。

    公共料金等の手続き

    亡くなった親が契約しているサービスがある場合は、解約や契約者変更の手続きを行います。
    不必要な料金の支払いや無用なリスクを負わないために、できるかぎり早めに手続きをします。

    • ガス、水道、電気、インターネット、電話、NHKなど
    • それぞれの契約書や料金の明細書などで、契約先を確認します。
      書類がなければ、メールで受信している場合もあります。

    • クレジットカード
    • カード会社に解約の連絡を行います。
      解約後は、カードをハサミなどでカットして処分します。

    • 賃貸住宅
    • そのまま相続人が住み続けることもできますが、不要であれば早めに退去連絡を入れます。

    • その他のサービス
    • クレジットカードの明細書、銀行口座の引き落とし、スマートフォンの決済通知などを確認し、定期購入している商品やサブスクなどの有料サービスを解約します。
      他にも、アカウント登録をしているサービスがあればなるべく解約することが望ましいです。
      たとえばSNSはアカウントを乗っ取られて悪用されるリスクもゼロではありません。
      必要が無ければ早めに退会等の手続きをしておきましょう。

    親が死亡後に相談すべき専門家は誰?

    通夜や葬儀の手配は葬儀社に

    通夜や葬儀の手続きの専門家は葬儀社になります。
    親を亡くしたというショックな出来事に見舞われたばかりの時に、わからないことを気軽に尋ねられる専門家がいることは心強いです。

    相続人や相続財産の調査は相続専門の士業事務所に

    相続人の調査や相続財産の調査は、相続専門の士業事務所に相談するとスムーズです。
    弁護士、司法書士、税理士事務所などが考えられます。
    税理士にご依頼いただく場合のメリットは、相続税申告や税務調査を見据えた財産調査ができることにあります。

    遺産分割で相手と交渉して欲しい場合は弁護士に

    遺産分割の際、折り合いの悪い親族と争いになることがあります。
    自分の代理人として他の相続人と交渉してもらいたい場合、専門家は弁護士になります。

    節税や税務申告は相続専門の税理士に

    相続税の申告や準確定申告の専門家は税理士になります。
    もっとも節税できる遺産分割のやり方などの相談にも応じられますし、財産評価や相続税申告書の作成・提出まですべて任せることができます。

    相続登記は司法書士

    遺産分割後、不動産の所有権移転登記などのいわゆる“相続登記”をする場合、専門家は司法書士になります。
    登記の手続きは遺産を取得した原因によって必要書類が複雑に分かれますので、お任せするのが安心です。

    親が生前のときに行っておくべきこと

    遺言書を作成する

    生前のうちに誰にどの財産を相続させるかなどを遺言書で指定しておくことで、自分の想いを実現できるだけでなく、相続人同士が争うことを避けられる可能性があります。
    また、財産や負債の目録を作成して添付しておくことで、お子さんたちの財産調査を進めやすくなります。

    遺言書に書けないことはエンディングノートに書いておく

    エンディングノートに、葬儀や納骨の方法、遺言書に書ききれない相続財産のより詳しい内容、デバイスのパスワードなどを書き遺しておきましょう。
    遺族が迷わずに葬儀や相続の手続きを進めることができます。

    相続税の節税対策をする

    相続税の節税対策は、生前から対策をしておくことがもっとも効果的です。
    相続税を大きく節税できるだけでなく、ご家族が喜ぶ顔を生前のうちに見ることができるのも被相続人にとって良いことだと考えています。

    まとめ

    親が死亡した際に必要となる手続きについて解説しました。
    ここまで見てきたとおり、親が亡くなった後にやらなければならない手続きは非常に多く、期限が短いものもあるため、人によってはかなりハードなスケジュールになります。
    自分たちだけで手続きをすることが難しいと感じた場合、相続の専門家の力を借りることをおすすめします。
    特に、不動産がある相続では税金が高くなりやすく、同じ税理士でも不動産相続のノウハウや専門知識の量によって申告税額に差がでます。
    生前の節税対策や相続税申告は、不動産相続の専門であるマルイシ税理士法人にご相談ください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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