固定資産税・都市計画税とは?計算方法・軽減される特例を解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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固定資産税とは?

固定資産税とは、その年度の1月1日に固定資産を所有する個人や法人から、市町村が年度ごとに徴収する地方税です。

その税額は、市町村の「固定資産課税台帳」に登録されている固定資産の価格から市町村が計算し、第一回目の納期がやってくる頃に、所有者宛てに書面で通知されます。

固定資産税の計算方法

【計算式】固定資産税の課税標準額×税率(標準税率1.4%)

固定資産税の課税標準額とは

固定資産税の課税標準額とは、市町村の課税台帳に登録されている「固定資産の価格」(固定資産税評価額)に、特例による軽減措置や負担調整措置を適用した金額のことです。

「固定資産の価格」は、3年ごとに評価替えが行われます。令和3年度が評価替えの年度でしたから、次は、令和6年度です。

なお、令和3年度の評価替えの結果、課税標準額が増加する土地については、コロナの影響を考慮して、前年度の課税標準額に据え置く措置が講じられています。

固定資産税の標準税率とは

固定資産税の税率は、1.4%が標準税率になります。

ほとんどの市町村が1.4%を採用していますが、財政状況等に応じて、これより高い税率を課すことも可能です。

総務省の「地方税に関する参考計数資料」を見ると、令和2年度は、8.8%の市町村が標準税率を超える税率を採用していることがわかります。

(参考)総務省HP:地方税に関する参考計数資料

  • 「13市町村民税及び固定資産税の税率等別市町村数調(令和2年度)」
  • 固定資産税が軽減される特例について

    住宅用の土地や新築の家屋には、固定資産税を軽減する特例があります。

    住宅用地の課税標準の特例

    固定資産税のかかる土地が「住宅用地」である場合、その課税標準額が下記の割合に減額されます。

    面積 課税標準額
    住宅1戸につき200㎡までの部分(小規模住宅用地) 6分の1
    200㎡超の部分(一般住宅用地) 3分の1

    新築住宅(家屋)の固定資産税額の減額措置

    新築された住宅(一戸建て・マンション)のうち、一定の床面積要件などを満たすものは、建物の性能に応じて、3年分か5年分の固定資産税額が2分の1になります。(床面積が120㎡を超えると調整されます)

    【計算例】新築一戸建ての固定資産税はいくらか

    住宅用地と新築住宅の特例を、計算例で確認しましょう。

    住宅用地の特例は「課税標準額」を、新築住宅の特例は「固定資産税額」を減らすものですので、減額するタイミングがそれぞれ違うことがポイントです。

    例:固定資産の価格(固定資産税評価額)

    • 土地 4,500万円(面積200㎡)
    • 家屋 3,000万円(床面積100㎡)
    計算式課税標準額×税率

    • 土地 750万円(※1)×1.4%=10万5,000円
    • 家屋 3,000万円×1.4%=42万円

    納付する固定資産税額

    • 10万5,000円+21万円(※2)=31万5,000円

    (※1)小規模住宅用地の特例:4,500万円×6分の1=750万円
    (※2)新築住宅の特例:42万円×2分の1=21万円

    都市計画税とは?

    都市計画税とは、固定資産税と同様に、その年度の1月1日の土地や家屋の所有者が負担する税金です。
    税額の通知や徴収も、固定資産税と併せて行われます。

    課税対象は、固定資産税よりも狭く、市街化区域内にある土地や家屋に限定されます。
    ただし、市街化区域との均衡を保つために、市街化調整区域内の土地や家屋に都市計画税がかかることもあります。

    都市計画税の計算方法

    【計算式】都市計画税の課税標準額×税率(制限税率0.3%)

    都市計画税の課税標準額

    固定資産税の価格(固定資産税評価額)をもとに、都市計画税の特例による軽減措置や負担調整措置が適用されます。

    都市計画税の税率

    都市計画税の税率は、0.3%が制限税率ですので、0.3%以下の税率しか定めることができません。

    国土交通省による「令和2年度都市計画現況調査」を見ると、ほとんどの市町村の都市計画税に0.3%が適用されていますが、中には、0.1%などの市町村もあることがわかります。

    ちなみに東京都は、特別区を除いて0.3%未満の税率となっていますが、特別区の都市計画税には、小規模住宅用地に対する税額軽減の条例があります。

    詳しくは後述します。

    (参照)国土交通省HP: 「令和2年都市計画現況調査「都市計画税徴収市町村及び税率」

    都市計画税が軽減される特例について

    固定資産税と同様に、住宅用地の課税標準額の特例がありますが、割合が異なります。

    面積 課税標準額
    住宅1戸につき200㎡までの部分(小規模住宅用地) 3分の1
    200㎡超の部分(一般住宅用地) 3分の2

    東京都税条例では、小規模住宅用地にあたる都市計画税が2分の1に減額されます。

    一戸建ての都市計画税はいくらか

    例:固定資産の価格(固定資産税評価額)

    • 土地 4,500万円(面積200㎡)
    • 家屋 3,000万円(床面積100㎡・東京都特別区内)
    計算式課税標準額×税率

    • 土地 1,500万円(※1)×0.3%=4万5,000円
    • 家屋 3,000万円×0.3%=9万円

    納付税額

    • 2万2,500円(※2)+9万円=11万2,500円

    (※1)小規模住宅用地の特例:4,500万円×3分の1=1,500万円
    (※2)東京都税条例:4万5,000円×2分の1=2万2,500円

    固定資産税と都市計画税の違い

    固定資産税と都市計画税はいずれも、土地や家屋の所有者が支払う税金です。
    その通知も納期も、同じタイミングでやってきます。

    おまけに、納税者が自分で課税標準や税額を計算する機会のない「賦課課税方式」による税金ですので、固定資産税と都市計画税の違いを意識する機会はほとんどないと思います。

    ここでは、固定資産税と都市計画税の違いをまとめます。

    固定資産税と都市計画税の違いまとめ

    固定資産税 都市計画税
    課税理由 固定資産の保有と市町村が提供する行政サービスとの間の受益関係から生じる応益課税 都市計画法・土地区画整理法に基づく、都市計画事業又は土地区画整理事業の費用充当のため
    課税対象
    • 土地
    • 家屋
    • 償却資産
    • 市街化区域内の土地と家屋
    • 一部の市街化調整区域内の土地と家屋
    税率 標準税率1.4% 制限税率0.3%
    住宅用地の特例
    • 小規模住宅用地…6分の1
    • 一般住宅用地…3分の1
    • 小規模住宅用地…3分の1
    • 一般住宅用地…3分の2
    新築家屋の特例 新築された住宅が下記の要件を満たす場合、
    それぞれの年分の家屋の固定資産税額が2分の1になる。

    • ア:床面積など一定の要件を満たす住宅の場合…3年分
    • イ:アが認定長期優良住宅にあたる場合…5年分
    • ウ:ア・イの住宅が中高層耐火建築物等の要件を満たす場合…それぞれ+2年分

    ※認定長期優良住宅の減額は、1月31日までに市町村に必要書類を提出して申告しなければ受けられません。

    特になし

    固定資産税の対象になる「償却資産」とは

    固定資産税がかかる固定資産には、土地や家屋のほかに「償却資産」が含まれます。

    償却資産とは、事業を行っている法人や個人の事業用資産のうち不動産や車を除いたものと考えていただければ、本記事では差し支えありません。

    新築家屋の軽減措置

    新築家屋の軽減措置が法律で定められているのは、固定資産税のみとなります。

    なお、市町村独自の取り組みで新築家屋に関する他の減額措置が講じられている可能性はありますので、ホームページなどでご確認ください。

    まとめ

    固定資産税や都市計画税は、自分で計算することがないため、毎年納めていても、その計算のしくみはわかりづらいものです。

    市町村から送られてくる固定資産税の課税明細書の内容も、ほとんど見たことがないという方が多いのではないでしょうか。

    住宅を新築されて間もない方は、家屋や土地に特例がきちんと適用されているか、ぜひ一度、明細書を確認してみてください。

    また、固定資産税の課税明細書に記載されている、固定資産の価格(固定資産税評価額)は、不動産に関する相続税や贈与税、登録免許税の計算に使用されるものです。

    最新のものは大切に保管しておきましょう。

    監修者情報

    税理士

    藤井 幹久

    Fujii Mikihisa

    マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

    相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

    税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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