消費税の課税取引とは?不動産の消費税の課税・非課税をまとめて解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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消費税とは?

消費税は、物やサービスを最終的に消費するお客さんが負担し、それを受け取った事業者(=お店や会社など)が税務署に納税するしくみの税金です。

負担する人と納税する人が異なることから、「間接税」と呼ばれています。

消費税が発生する「課税取引」とは

消費税は、日本国内において、事業者が行う①「資産の譲渡」、②「資産の貸付け」、③「役務の提供」の対価にかかります。

つまり、お客さんとして事業者から、

  • 買う(①)
  • 借りる(②)
  • サービスを受ける(③)

と、代金とその消費税を負担します。

逆に、自身が事業者(課税事業者)として、取引先やお客さんに

  • 売る(①)
  • 貸す(②)
  • サービスを提供する(③)

と、代金とその消費税を受け取ります。

消費税の対象になる①~③の3つの取引をまとめて、「課税取引」といいます。

不動産に関しても、この3つの取引をすると、その対価に消費税がかかります。

消費税の課税対象

不動産について消費税が課税される取引一覧

  • 戸建住宅やマンションなどの建物の代金
  • 賃貸用物件の建物の代金
  • 事務所用ビルの建物の代金
  • 事務所や店舗の家賃
  • 駐車場の賃料
  • 不動産会社に支払う仲介手数料
  • 建築工事やリフォーム工事の代金
  • 土地の造成や整地の費用
  • 司法書士、土地家屋調査士など専門家への報酬

不動産は「課税取引」と「非課税取引」の区別に注意

不動産に関する取引で注意が必要なのは、「課税取引」の要件を満たしていても、

  • 対象物の性質が消費になじまない
  • 社会政策的な面から、消費税を課すことがふさわしくない

といった理由から、法律で「非課税取引」に指定されているものがあることです。

「非課税取引」には、消費税がかかりません。

不動産に関する「非課税取引」には主に、

  • 土地の譲渡
  • 土地の貸付け
  • 住宅(居住用の建物)の貸付け

があります。

消費税の課税・非課税一覧表

譲渡(購入・売却)

土地 非課税
土地の上に存する権利 地上権や土地の賃借権、地役権、永小作権 等 非課税
建物 課税

貸付け(借りる・貸す)

土地(駐車場を除く) 下記以外 非課税
一時的な使用、貸付期間が1か月未満 課税
建物や施設利用に伴う使用 課税
土地(駐車場) 下記のいずれかにあてはまる場合

  • 地面の整備をしている
  • フェンスor区画or建物の設置をしている
  • 駐車する車両の管理をしている
課税
上記以外(例:更地に駐車している等) 非課税
一時的な使用、貸付期間が1か月未満 課税
土地の上に存する権利 地上権や土地の賃借権(借地権)、地役権、永小作権 等 非課税
借地権の更新料、名義書換料 非課税
建物(居住用) 下記以外 非課税
一時的な使用、貸付期間が1か月未満 課税
建物(居住用以外) 課税
建物(店舗等併設住宅) 住宅の部分 非課税
店舗等の部分 課税
建物(契約上、居住用かどうかが明らかにされていない) 建物の状況等から居住用であることが明らかな場合
(例:住宅の賃借人が個人で、その住宅が人の居住の用に供されていないことを賃貸人が把握していない場合等)
非課税
建物の状況等から居住用であることが明らかでない場合 課税
敷金、保証金、共益費など(居住用の建物) 借り主に返還されないもの
(返還されるものは不課税)
非課税
敷金、保証金、権利金など(居住用以外の建物) 借り主に返還されないもの
(返還されるものは不課税)
課税
駐車場付き住宅 全体が住宅の貸付けとされる駐車場 非課税
マンション管理組合に支払う駐車場代 組合員以外の者に対する貸付け
(組合員に対する貸付けは不課税)
課税

役務の提供(サービスを受ける・提供する)

工事費用、土地の造成・整地費用、修繕費など 課税
仲介手数料 課税
専門家への報酬 例:司法書士に登記申請を依頼したときの報酬
(登録免許税、印紙税などの立て替え分は不課税)
課税
行政手数料 例:住民票などの取得代金 非課税
保険料 例:火災(地震)保険料や団体生命信用保険などの保険料 非課税

消費税の総額表示について

「消費税の総額表示」とは、消費税を含めた支払価格を表示することです。

事業者が、不特定多数の人に対して価格を表示するときの義務になります。

近年、消費税率が短い期間で移り変わったことから、平成25年10月1日から令和3年3月31日の間は、お客さんに価格を誤認させないための措置を講じることを条件に、総額表示の義務は免除されていました。

店舗などの作業負担を考慮した結果の特例です。

この特例期間が終了し、4月1日から、消費税の課税事業者は、再び総額表示をしなければならなくなっています。

まとめ

不動産に関する消費税について解説しました。

消費税の課税取引にあたるかどうかは、まず非課税取引にあたるものを把握することがポイントになります。

消費税の非課税取引にあたるものは限定的なので、これを先に知っておくことで、課税取引を見分けやすくなります。

なお、消費税にはもう一つ、「不課税取引」と呼ばれるものがあります。

「不課税取引」とは、事業として行われていない取引や対価性のない取引など、そもそも「課税取引」にあたらない取引のことです。たとえば税金や返還される敷金の支払いなどがこれにあたります。

「非課税取引」と「不課税取引」の区別は、消費税を納税する人(課税事業者)になる場合に意識していただければ大丈夫ですが、その判定には専門的な知識を要します。

また、本記事では紹介しておりませんが、消費税に関しては課税方法の選択等について事前の届出が必要になることがあります。

必要に応じて消費税に詳しい税理士に相談しながら取引を進めるようにしましょう。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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