住宅ローン控除とは?受けられる条件と申請方法・減税について

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームの購入や自宅のリフォームをしたときに受けられる、所得税の税額控除のことです。

基本的には、取得した住宅に入居した年から10年間又は13年間、各年の12月31日時点における住宅ローン残高の0.7%に相当する金額が、その年の所得税から控除されます。

控除期間は?

住宅ローン控除の控除期間は、新築住宅・一定の買取再販住宅(※)は13年又は10年、中古住宅は10年です。
(※)一定の買取再販住宅とは、一定のリフォーム工事が行われた家屋で宅地建物取引業者から取得したものです。住宅ローン控除を一定の買取再販住宅として適用を受けるには、建築時期や床面積、耐震基準などの要件をすべて満たす必要があります。
要件を満たしているかは、住宅を販売する宅地建物取引業者にご確認ください。

住宅ローン控除が受けられる条件・要件とは?

利用者の要件

  • 令和7年12月31日までに入居すること
  • 住宅の取得・増改築の日から6か月以内に入居すること
  • 控除を受ける年の12月31日まで引き続きその住宅に住んでいること
  • 控除を受ける年分の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • マイホーム売却時の3,000万円控除の特例などを、入居した年とその前2年及び後3年の計6年間受けないこと

住宅の要件

【新築・未使用住宅の取得】

  • 住宅の床面積が50㎡以上(※)あること
  • (※)合計所得金額が1,000万円以下の場合に限り、床面積40㎡以上も対象(令和5年(注)までに建築確認を受けた新築住宅に限ります)です。
    (注)令和6年度税制改正により「令和6年」に変更となる予定

  • 床面積の2分の1以上が居住専用であること

【中古住宅の取得】

  • 住宅の床面積が50㎡以上あること
  • 床面積の2分の1以上が居住専用であること
  • 登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以後(※)であること
  • (※)「登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以後」に該当しない場合は、取得日までに以下のいずれかの要件を満たすもの
    ⓐ耐震基準適合証明書が取得できたもの
    ⓑ既存住宅売買瑕疵保険に加入したもの
    ⓒ取得の日までに耐震工事を申請して、居住の日までに工事が完了したもの

【増築等】

  • 自己所有の自宅のリフォームや増築であること
  • 増改築後の床面積が50㎡以上で、床面積の2分の1以上が居住専用であること
  • 工事費用の額が100万円を超え、その2分の1以上の額が居住用部分の工事費用であること 
  • 次のア~カのいずれかの工事に該当すること
  • ア:増改築、建築基準法の大規模な修繕又は大規模の模様替えの工事
  • イ:マンションの専有部分の床、階段又は壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事
  • ウ:居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関又は廊下の一室の床又は壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
  • エ:耐震改修工事
  • オ:一定のバリアフリー改修工事
  • カ:一定の省エネ改修工事

住宅ローンに関する要件

  • 償還期間が10年以上あり、分割して返済するものであること
  • 土地のみに対する借入れでない(住宅とその敷地を取得するための借入れである)こと
  • 金融機関、住宅金融支援機構、地方公共団体、勤務先などからの借入れであること

ただし、従業員の特権で会社から年0.2%未満の利率で借り入れた金銭などは対象になりません。

住宅ローン控除で戻る金額はどのくらい?

住宅ローン控除が所得税から控除される仕組み

所得税は、その人の1月1日から12月31日までの所得の合計から、所得控除(社会保険料や扶養控除、基礎控除などのこと)を差し引いた残りに所得税率をかけて計算します。

住宅ローン控除は、所得税を減額する税額控除にあたります。

計算式にすると、次のとおりです。

【所得税の計算式】(その年の所得の合計−所得控除)×所得税率−住宅ローン控除=その年の所得税の納税額

計算例:給与800万円で住宅ローン控除を適用する場合

会社の給与が年800万円の人を例に、年末のローン残高が3,000万円(全額が住宅ローン控除の対象)だったときの所得税を考えてみましょう。

計算式

①その年の所得の合計を計算

  • その年の収入:給与800万円(他の所得なし)
  • 収入ー(800万円の基礎控除額)

800万円の給与所得控除額=(800万円×10%+110万円)=190万円
その年の所得の合計=800万円-190万円=610万円

②所得税を計算所得控除は以下のものとします。

  • 社会保険料控除 112万円(※)
  • 基礎控除 48万円

(※)社会保険料は給与に対して14%で計算しています。

  • その年の所得の合計ー(社会保険料控除+基礎控除)×所得税率(20%)-42万7,500円
  • 610万円-(112万円+48万円)=450万円
    450万円×20%-42万7,500円=47万2,500円
③住宅ローン控除を引いて所得税を考える

  • 住宅ローン控除を差し引く前の所得税 47万2,500円
  • 住宅ローン控除額 30万円(3,000万円×1%)
  • 住宅ローン控除後の所得税(納税額) 47万2,500円-30万円=17万2,500円

(参考)国税庁HP:給与所得控除

(参考)国税庁HP:所得税の税率

上記のとおり、本来納める税額は47万2,500円でしたが、住宅ローン控除によって17万2,500円になります。

本来なら国に納めていたはずの30万円を手元に残すことができるので、住宅ローンの一部が、家計に戻ってきた感覚を受けるでしょう。

所得税額<住宅ローン控除の場合

先ほどと同じ条件で、今度は給与が年600万円だったらどうなるか見ていきます。

この場合の所得税は、20万6,500円です。

したがって、住宅ローン控除30万円を所得税から全て控除することができません。

所得税額から控除しきれない分は、その人の住民税から控除されます。

ここに特別な手続きは必要なく、年末調整や確定申告をいつもどおりすれば、市町村が次の年度の住民税額から自動的に引いてくれます。

この人の住民税額は、大体ですが30万円程度です。

ここから控除しきれなかった住宅ローン控除額が差し引かれます。

住民税額の通知書がご自宅か勤め先に送られてきたとき、確認してみてください。

住民税額でも控除しきれないとき

もう一歩踏み込んで、給与が年500万円だったときを見ておきましょう。

このときの所得税額は、14万500円、住民税は約24万円です。

年600万円のときと同様、住宅ローン控除30万円を、2つの税金ですべて控除できるように思えます。

しかし、住民税から控除できる金額の上限は「13万6,500円」です。

つまり、所得税から控除しきれない額が13万6,500円を超えると、住宅ローン控除のうち戻ってこない金額が発生します。

このように、所得に対して住宅ローンの額が大きいと、住宅ローン控除の恩恵を100%受けられないことがあります。

控除できない額が生じないようにするには、収入に対していくらまでなら控除できるかを、事前に把握しておくことが大切です。

住宅ローンの控除額シミュレーション

給与年収から、いくらまで住宅ローン控除が適用できるかをシミュレーションしてみました。

(A)家族の控除なし (B)家族の控除あり(配偶者)
給与年収 所得税額 住民税額 上限目安 所得税額 住民税額 上限目安
300万円 6万円 11万円 17万円 4万円 8万円 12万円
400万円 9万円 17万円 22万円 7万円 14万円 20万円
500万円 14万円 24万円 28万円 10万円 21万円 24万円
600万円 21万円 31万円 34万円 17万円 27万円 31万円
800万円 47万円 45万円 61万円 40万円 42万円 53万円
1,000万円 81万円 62万円 94万円 73万円 59万円 87万円
1,500万円 234万円 118万円 248万円 234万円 118万円 248万円
2,000万円 391万円 165万円 405万円 391万円 165万円 405万円

※それぞれ万円未満を四捨五入しています。

左半分(A)の所得控除は、先ほどと同じ社会保険料控除と基礎控除のみ、右半分(B)は(A)は、配偶者控除(38万円)を追加したものです。

多くの方は、これ以外にも受けている所得控除があると思いますので、控除目安は最大値として参考にしてください。

住宅ローン控除を受ける際の注意点

土地部分のみの住宅ローンでは受けられない

土地のみの住宅ローンで控除を受けることはできません。

住宅ローンに、家屋部分に対する借入れを含めることが絶対条件です。

住宅ローン控除に上限がある

住宅ローン控除には、年35万円の上限があります。

1億円の住宅ローンでも、最大で借入限度額までの部分しか控除の対象になりません。

新築・未使用取得した住宅が「認定長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」にあたる場合、上限が年50万円になります。

住宅の取得対価を超えられない

住宅ローンの額より、住宅や土地を取得した対価が低い場合、住宅や土地の取得対価にあたる部分までが住宅ローン控除の対象になります。

たとえば、3,000万円の住宅に対し、住宅ローンの年末残高が4,000万円ある場合、その年の控除額は28万円ではなく21万円になります。

住宅取得資金贈与との併用

住宅取得等資金の贈与と住宅ローン控除を併用することは可能です。

ただし、贈与された金額を、住宅や土地の取得対価から控除しなければなりません。

たとえば、3,000万円の住宅を取得するために、親から1,000万円の住宅取得等資金の贈与を受けた場合、住宅の取得対価は2,000万円です。

このとき、住宅ローンの年末残高が2,500万円であっても、2,000万円から住宅ローン控除を計算します。

11年目から13年目までの控除額は計算方法が変わる

控除期間13年の特例は、通常より3年分多く控除が受けられます。

その分、お得ではあるのですが、追加された11年目から13年目までの3年間で受けられる控除は、住宅ローン残高の1%よりも少なくなる可能性があることを知っておきましょう。

1年目~10年目 住宅ローン残高×1%
11年目・12年目・13年目 次のいずれか低い額

  • 住宅ローン残高×1%
  • 建物の対価の額(税抜き)×2%÷3年(※)

(※)消費税8%→10%の増税による負担を軽減するため、増税分(2%)を3年間で均等に控除しています。

住宅ローン控除を受けるための手続き方法とは?

住宅ローンの残高は、返済とともに減少しますので、住宅ローン控除の額は年々減少します。

毎年変化するこの控除額を、どのようにして所得税の計算に反映させるのかというと、確定申告による方法と、会社で受ける年末調整を使って、会社で調整してもらう方法があります。

ただし、住宅ローン控除を受ける最初の1年目だけは、確定申告を行う必要があります。

1年目 必ず確定申告
2年目以降
  • 確定申告
  • ↕ どちらでもよい

  • 年末調整

1年目の手続き(確定申告)

住宅の新築・取得の場合

【必要書類】
  • ア: 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
  • イ:(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • ウ: 家屋の登記事項証明書、請負契約書・売買契約書の写しなど

アは、金融機関が作成する、その年の12月31日時点の住宅ローン残高が記載された書類です。
毎年10月頃に、年末の予定額を記載して郵送してくれます。
初年度はローン契約を行った時期によって、届く時期が遅れることがあります。

イは、確定申告書の添付書類です。
確定申告書作成コーナーを利用するなどして、確定申告書と一緒に作成します。
会社員の方は、源泉徴収票を見ながら確定申告書の作成を進めてください。

ウは、取得した家屋が、住宅ローン控除の要件を満たしているかを確認するための書類です。

【状況によって必要になる書類】
住宅ローンに土地の借入れが含まれているとき

  •  土地の登記事項証明書
  •  売買契約書の写し

上記の土地を、家屋に先行して取得している場合

  •  その取得時期に応じて別途書類が必要

家屋が認定長期優良住宅・低炭素建築物にあたる場合

  •  計画認定通知書
  •  住宅用家屋証明書(建築証明書も可)

家屋が中古住宅の場合

  •  中古住宅の要件を満たしていることが証明できる一定の書類(例:耐震基準適合証明書など)

国や地方公共団体から補助金を受けた場合

  •  その金額がわかる書類

住宅取得等資金の贈与の特例を受けているとき

  •  贈与税の申告書の写しなど

住民票をその住宅に異動していない場合

  •  入居年月日を明らかにする書類

会社等から給与を受け取っている人

  •  その年分の給与所得の源泉徴収票

増改築の場合

【必要書類】
  • ア:住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
  • イ:(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • ウ:家屋の登記事項証明書、請負契約書
  • エ:工事の種類に応じて必要となる書類

ア・イ・ウは住宅の新築・取得と同じです。

エは、増改築の工事内容で変わります。

「増築、改築、建築基準法に規定する大規模の修繕又は大規模の模様替え」であれば、下記のいずれか1つが必要になります。

  • 建築確認済証の写し
  • 検査済証の写し
  • 増改築等工事証明書

その他の場合には、「増改築等工事証明書」を提出します。

【状況によって必要になる書類】
国や地方公共団体から補助金を受けた場合

  • その金額がわかる書類

住宅取得等資金の贈与の特例を受けているとき

  • 贈与税の申告書の写しなど

会社等から給与を受け取っている人

  • その年分の給与所得の源泉徴収票

(参考)国税庁:令和2年分(特定増改築等)住宅借入金等特別控除を受けられる方へ

2年目以降の手続き(確定申告の場合)

【必要書類】

  • ア:住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
  • イ:(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書

必要書類は一年目にくらべて非常に少ないですが、2年目以降も、イの計算明細書は作成しなければなりません。

2年目以降の手続き(年末調整の場合)

1年目に確定申告をすると、税務署から、年末調整用の書類として

  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書(住宅ローン控除証明書)
  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(住宅ローン控除申告書)

が送られてきます。

上記は1枚の書類で、控除期間の年数分の枚数が用意されています。

届いたら保管し、年末調整のときに、その年分の1枚を記載して、銀行からの残高証明書とともに会社に提出します。

まとめ

住宅ローン控除について、その条件や要件、どのくらいの金額まで控除できるかの解説やシミュレーション、注意点、手続きや必要書類を解説しました。

最後になりましたが、マイナンバーカードをお持ちの方は、確定申告でマイナポータル連携を利用すると、手続きが楽になります。

マイナポータルは、金融機関、税務署、保険会社等と納税者を繋ぐ、国のネットワークです。

マイナポータルを通じて、銀行の残高証明書や税務署の控除証明書のデータを、確定申告書作成コーナーや年調ソフトに取り込めば、住宅ローン控除額を自動で計算できます。

ぜひ活用を検討してみてください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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