底地とは?借地権との違いなどわかりやすく税理士が解説

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【執筆者:税理士・藤井幹久】

底地と借地権とは?

不動産にはさまざまな権利があり「底地」と「借地権」もその権利のうちの1つです。
底地と借地権は似たような状況で利用される言葉のため、内容の違いを知っておくとより底地と借地権について深く理解することができます。
まずは、底地と借地権の意味、そして底地と借地権との違いを解説していきます。

底地とは

底地とは、借地権や地上権が付いた土地の所有権のことをいいます。
土地の所有権の上に借地権などがあり、土地の所有権が権利の一番「底」にあるようなイメージです。

借地権とは

借地権とは、第三者の土地を借りて建物を建築したりする権利のことをいいます。
借地権を設定する場合、借りる対価として賃料を土地の所有者に支払う必要があります。

借地権と呼べるのはあくまで借地借家法が適用される利用方法のときだけです。
そのため、第三者の土地を借りて建物を建築する場合は借地権と呼びますが、借地借家法の適用を受けない青空駐車場用地、野立て看板用地などで借りる場合は借地権と呼ばず、使用貸借といいます。

底地と借地権の違い

底地は、借地権の付いた土地の所有権のことをいいます。
借地権は他人の土地を借りて利用できる賃借権のことをいうため、両者はまったく違う権利のことです。
分かりやすく言えば、底地は土地の所有権の話、借地権は土地を借りる権利の話です。
この違いが分かると、より底地と借地権の話の内容が簡単に理解することができるようになります。

この違いが分かれば固定資産税や都市計画税の課税対象は、底地なのか賃借権なのかも理解できます。
固定資産税などが課税されるのは1月1日現在の所有者に課税されます。
つまり、所有権がある人に固定資産税などは課税されるため、所有権の一種である底地に課税されます。
借りる権利の借地権には固定資産税などは課税されません。

底地の種類

借地権にさまざまな種類があります。
時代の流れに沿って借地に対する考え方が大きく変わってきており、借地権の種類を増やして現実に合うようにしています。

旧借地権

旧借地権とは、現在の借地借家法が適用になる前に設定されていた借地権のことです。
1992年7月31日より前に借地権が設定されていれば、旧借地権が適用されます。

旧借地権では、原則、借地人からの解約申出でない限り借地権を解除することができません。
そのため、土地所有者は正当な事由がない限り、借地人に土地を貸し続けなければならないわけです。

旧借地権は、建物の構造で契約存続期間が変わります。
どのように借地権の存続期間が変わるのかは、次の表のとおりです。

期間の定めなし 期間の定めあり
契約時 更新時 契約時 更新時
堅固建物 60年 30年 30年以上 30年以上
非堅固建物 30年 20年 20年以上 20年以上

普通借地権

普通借地権は現在の借地借家法の適用を受けた借地権で、定期借地権以外の借地権のことをいいます。
普通借地権の契約存続期間は30年以上と定める必要があり、1回目の更新は20年以降、2回目の更新は10年以降で設定することができます。

旧借地権と同じく、原則、土地所有者から借地権の解除を申し出ることはできません。
しかし、解除については少しだけ緩和されており、次のような事項があった場合には土地所有者から普通借地権を解除することができます。
建物が破損したのを理由に借地人が土地所有者の承諾なしに勝手に建物の建て替えをしたうえに、建て替えた建物が借地権の契約期間を超えるような耐久性のある建物であったとき
建物が破損や老朽化し借地人に土地を借りる理由がなくなったとき

定期借地権

定期借地権とは、一般定期借地権、建物譲渡特約付き借地権、事業用定期借地権のことをいいます。
旧借地権や普通借地権では土地所有者から解除を求めることが原則できず、土地を1度でも貸してしまうと戻ってこなくなってしまいます。
そのため、これでは借地権を利用する土地所有者が減ってしまうため、一定期間などが過ぎた場合に土地が戻ってくる制度が設けられました。

一般定期借地権

一般定期借地権とは、借地権の契約期間が満了した場合、土地が更地となって戻ってくる借地権です。
一般定期借地権を利用する場合には、契約期間を50年以上と定めて公正証書などの書面に、契約の更新はできない、建物再建築による期間延長はできない、契約期間満了後の建物の買い取り請求はできないという3つの項目を定める必要があります。

建物譲渡特約付き借地権

建物譲渡特約付き借地権とは、30年以上の借地権を設定し、その期間が満了した時点で建物を土地所有者が買い取る特約が付いた借地権です。
契約期間が満了したら土地所有者は建物を買い取る代償をもとに、借地権を解除することができます。

事業用定期借地権

事業用定期借地とは、借地人が事業をするために土地を借りるための借地権で、契約期間が満了した場合には土地が更地で戻ってきます。
事業用定期借地権を設定する場合は、契約期間を10年以上、50年未満に設定し公正証書を作成しなければなりません。

底地のメリット・デメリット

底地を持っていることには、メリットやデメリットがあります。
ここからは、底地のメリットやデメリットを紹介していきます。

メリット

底地を所有するメリットは、建物投資が不要、撤退リスクが低いことが挙げられます。
それぞれのメリットについて、詳しく説明していきます。

建物投資が不要

底地の場合は、土地を貸すだけで建物投資など資金が必要ありません。
そのため、借金を背負うことなく安定的な収益を上げることができます。

以前は一度、土地を貸してしまうと返ってこなくなる大きなマイナス面がありました。
しかし、現在では定期借地権を利用することにより、安定的な収益を確保しつつ、将来的には土地が戻ってくる底地もあります。
そのため、定期借地権の底地は人気がある投資物件になりつつあります。

撤退リスクが低い

借地人は借地上に建物を建築するため、建築投資費用を回収するまでなかなか撤退をしません。
そのため、賃料が途切れる可能性が低くなります。
特に、借地上に住居を建築した場合、住居人を追い出すことができないため、契約期間満了まで借地料を得ることができます。

反面、事業用定期借地でコンビニエンスストアに貸した場合は、数年という短期間撤退もあり得るため、事業用定期借地の場合は少し注意が必要です。

デメリット

底地を所有するデメリットは、収入が低いこと、相続税対策効果が薄いことが挙げられます。
それぞれのデメリットについて、詳しく説明していきます。

収入が低い

底地の借地料は、家賃などの建物賃料に比べると安い傾向があります。
建物投資をしない分、賃料収入が少なくなるのは仕方がないことかもしれません。
リスクを取って大きな収入を得たいか、リスクを減らして安定的な収入を得たいかでデメリットと考えるのか変わってきます。

相続税対策効果が薄い

底地の場合建物投資がないため、借金を背負って相続税を圧縮することができません。
相続税は資産から負債を引いた相続財産の多さにより課税されます。
そのため、負債が大きくなればなるほど相続税が課税されなくなります。
底地ではこの方法が利用できません。

また、底地を購入して投資をする場合はより相続税に注意しなければなりません。
底地は時価よりも相続税課税評価額のほうが上回るケースがあり、購入した金額よりも相続税で評価される額の方が大きくなる場合があります。
例えば、1億円で底地を購入したのにも関わらず、相続税課税評価額が1億3,000万円だった場合、3,000万円分の相続税が無駄に発生してしまうことになります。

まとめ

底地とは借地権や地上権が付いた所有権のことで、借地権とは土地を借りる権利のことをいいます。
そのため、底地と借地権とは全く別の権利です。
そして、借地権には多くの種類があり、旧借地権や普通借地権のように土地所有者から借地権解除をすることが原則できない権利から、定期借地権のように一定期間が経過したら借地権が解除される権利まであります。

定期借地権があるため、底地を持つメリットが大きくなっていますが、デメリットもあります。
相続税に関してはデメリットが大きいため、底地を持っているときにはあらかじめ相続税について税理士などの専門家に相続時の相談をしておくと良いでしょう。
どのくらいの相続税が課税されるのかを事前に把握し、底地を運用していくのがポイントです。

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