遊休地の活用方法とは?目的にあった活用方法10選のメリット・デメリット

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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土地を相続した後に活用方法が見つからず持て余して、遊休地になることがあります。しかし、遊休地を所有しているだけで固定資産税や都市計画税を支払わなければいけません。このような税負担を抑えるためにも、遊休地を活用していきましょう。

今回は、読者の方の目的にあった土地活用方法をご紹介します。この記事を読めば、それぞれの土地活用のメリット・デメリットをはじめ、どのような人が向いている方法なのかまで分かるようになります。そのため、遊休地の活用を検討している方は、この記事を参考にしてみてください。

遊休地とは?知っておきたい基本知識


まずは、遊休地に関する基本知識をご紹介します。

遊休地とは

遊休地(ゆうきゅうち)とは「遊ばせている」「休ませている」状態の土地をいいます。すなわち、長期に渡って利用していない土地です。

国土利用計画法第28条~35条の遊休土地制度によって、所定の条件を満たす土地を2年以上利用していない場合、都道府県知事から土地活用または土地売却が推奨されます。

遊休土地に認定されて通知を受け取ったら、6週間以内に土地活用または土地売却のどちらにするか計画書に記載して都道府県知事に届け出なければいけません。この制度に該当するのは、1,000㎡以上の土地のため、全ての遊休地が該当するわけではないためご安心ください。

[遊休土地の条件]

  • 一定規模以上(1,000㎡以上)の土地である
  • 土地を取得後2年が経過している
  • 土地を利用していない
  • 周辺状況から土地活用が必要だと判断できる

遊休地は活用がおすすめ

遊休地を所有している方は、土地活用の検討をおすすめします。なぜなら、遊休地は所有しているだけで固定資産税・都市計画税の税金を負担しなければいけず、収益を得なければ単なる出費になるためです。

「土地活用は自己資金がないと始められない」「エリアの需要調査など労力がかかる」と放置している方が多くいますが、借地で貸し出すなど負担をかけずに収益化できる土地活用方法もあります。

少し労力はかかりますが、賃貸経営を行えば相続対策や節税対策も可能です。どのような土地活用方法をするかで見込める効果は異なりますが、眠っている状態の土地を活用していきましょう。

遊休地の種類

遊休地は「宅地」「農地」「商工業地」に分けられます。どのような土地を所有しているか、土地活用が変わってくるため、それぞれの特徴を覚えておきましょう。

・宅地

建物のための使用される土地をいいます。宅地であれば、住宅や店舗が建てられます。宅地は用途地域の種類に応じて、店舗、オフィスなどが建てられるか否かが変わってきます。そのため、宅地を所有している場合は不動産登記簿の用途地域を確認しましょう。

・農地

農地は農業を目的に使用される土地をいいます。現在、農業をしていなくても、いつでも取り組み始められる状態の土地も含まれます。農地転用すれば住宅を建てることも可能です。

・商工業地

商工業地は店舗や事務所、工場などを建てるための土地をいいます。住宅を建てることに関して規制はされていませんが、治安の面で不安が残るため住宅を建てる方は少ないです。住宅を建てる場合は、中高層や超高層マンションを建てる方が多いです。

遊休地の活用方法10選

遊休地を所有していると税金を負担しなければいけないため、収益が得られる土地活用を検討することがおすすめだと説明しました。土地活用には、さまざまな方法があるため、各方法のメリット・デメリットを覚えておきましょう。

広い遊休地の活用方法

広い遊休地を所有している人におすすめの活用方法が「医療施設/介護施設」です。

医療/介護施設


医療施設や介護施設に利用すれば、事業者からテナント代金を得られます。
土地に医療施設を建てて事業者に貸す方法もあれば、土地だけを事業者に貸す方法もあります。医療施設を建てて事業者に貸す場合は、建築費用は高くなりますが、公的補助も受けやすいです。

医療施設や介護施設に活用すれば、社会貢献ができるでしょう。また、需要のあるエリアであれば施設が潰れることもなく10年以上の長期契約が見込めます。土地の上に建物があれば、土地の評価額を下げられるため節税対策の効果が見込めます。

しかし、事業者が撤退した場合、次の借主を探すのが大変です。不動産投資の出口戦略が考えにくく、経営が失敗してしまう恐れもあります。そのため、集患が見込めるかどうか市場調査を徹底しましょう。

メリット
  • 事業が上手くいけば安定収益が見込める
  • 固定資産税・都市計画税が安くなる
  • 社会貢献ができる
  • 建築時に公的補助が受けられる
デメリット
  • 出口戦略が考えにくい
  • 綿密な計画が必要である
  • 建築費用が高い
向いている人
  • アクセスしやすい土地を所有している人
  • 50坪以上の広い土地を所有している人
  • 社会貢献をしたい人

短期的に活用する方法

遊休地を短期的に利用したい方におすすめの活用方法として「駐車場経営」「資材置き場」「トランクルーム」があります。

駐車場経営

駐車場経営を行えば駐車料金が得られます。
「月極駐車場形式」と「コインパーキング形式」の2つの形式があります。

月極駐車場形式であれば設備投資は必要ありません。収益性は低くなりますが、いつでも気軽に始められる手軽さが魅力です。
コンパーキング形式であれば、設備投資(精算機・ロック装置・P看板・防犯カメラ・衝突防止パイプ)や舗装が必要となります。初期費用として300万円~500万円程度必要になりますが、高い収益性が見込めます。

賃貸経営と比較すると収益性は下がりますが、不整形地や狭小地、再建築負荷の土地でも駐車場経営をすることが可能です。

メリット
  • 災害リスクを気にせずに済む
  • 初期費用を抑えられる
  • 設備の撤去が簡単で土地流用が気軽にできる
  • 再建築不可の土地を活用できる
デメリット
  • 賃貸経営と比較すると収益性が低い
  • 節税効果が見込めない
向いている人
  • 交通量が多い場所に土地を所有している人
  • 変形地、狭小地を所有している人
  • 将来的には土地売却を検討している人

資材置き場

資材置き場にして建設業者や土木業者に貸し出せば賃料が得られます。
資材置き場には建材資材や運搬器具が保管されるため広い土地が必要です。また、トラックが出入りするため、幹線道路沿いなど全面道路の幅員や間口が広く、騒音がしても近隣に迷惑がかからない土地が好ましいです。

これらの条件に該当すれば、狭小地や不整形地でも貸し出せます。資材置き場として貸し出したい場合は不動産会社に相談するだけです。

見込める収益は、固定資産税の5倍程度と少額ですが、遊休地の税負担がなくなります。
しかし、資材置き場のニーズが少なくてエリアを選ぶ土地活用方法となります。

メリット
  • 狭小地や不整形地でも活用できる
  • 不動産の仲介手数料のみと初期費用が安い
  • 土地管理の必要がなくなる
  • 希望に沿った契約内容で締結しやすい
  • 土地の転用がしやすい
  • デメリット
    • 収益は低い
    • ある程度の広さが必要になる
    • 節税対策の効果は見込めない
    • 近隣トラブルが発生する恐れがある
    • ニーズが少なくて借主を探すのが大変
    向いている人
    • 遊休地を所有していたい人
    • 遊休地の税負担を軽減したい人
    • 変形地、狭小地を所有している人

    トランクルーム

    トランクルーム経営とは、コンテナハウスと呼ばれる倉庫を建築して収納スペースとして貸し出し収益を得ることをいいます。トランクルームの需要が拡大していて、注目を浴びている土地活用方法です。

    株式会社キュラーズ『2021トランクルーム市場成長予測』によると、市場規模は過去10年で倍増の670億円と拡大しています。市場規模の拡大の要因は、EC利用者の増加やコロナ禍の巣ごもり需要です。
    需要がありますが、寄託契約を締結して預かる物品の保証義務を負うことになります。盗難などに気をつけなければいけないため防犯対策が必要です。

    また屋外のトランクルームの場合は、温度・湿度の調整が難しいです。書籍や衣類などを保管しておいても、湿度で痛んでしまうなどの問題が生じます。

    また、コンテナ1台を設置するには数百万円が必要になりますが、融資が受けにくいです。
    そのため、短期的に土地活用する方法の中でも知識が必要になります。

    メリット
    • 賃貸経営より初期費用が安い
    • 修繕の必要がない
    • オフィスやマンションの近くなら需要が多い
    デメリット
    • 温度・湿度の調整が難しい
    • 盗難や破損、災害に気をつける必要がある
    • 節税効果が見込めない
    • 運営するためのノウハウが必要になる
    向いている人
    • 周辺に住宅やオフィスがある土地を所有している人
    • アクセス条件は良いけど不整形地で悩んでいる人

    遊休農地での活用方法

    遊休農地を短期的に利用したい方におすすめの活用方法として「太陽光発電」「借地」があります。

    太陽光発電


    太陽光発電とは、土地に設置したソーラーパネルで電力を発電し、電力会社に売電して収益を得る方法です。自然エネルギー庁が定めた「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」を利用すれば、10年間、20年間は固定価格で売電ができます。

    また太陽光発電であれば、賃貸経営のような空室リスクの心配をする必要がありません。そのため安定収入が得られます。

    しかし、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の売電価格は2012年頃に40円となっていましたが、2023年時点では11円と大幅に値下がりしています。また、太陽光の盗難などもあるため注意しなければいけません。しかし、日当たりの良い場所であれば、田舎の土地でも始めやすいです。

    メリット
    • 安定収益が得られる
    • メンテンスの手間がかからない
    • 郊外の土地を有効活用できる
    デメリット
    • 収益性が低い
    • 自然災害に気をつける必要がある
    • 盗難被害に遭う恐れがある
    • 短期の土地活用には向かない
    • 節税効果が見込めない
    向いている人
    • 日当たりが良い広い土地を所有している人
    • 自然災害の被害が少ない場所に土地がある人
    • アクセスが悪い立地の土地活用に悩んでいる人

    借地


    借地とは所有する土地を貸し出すことで賃料の収益を見込む方法をいいます。土地を貸すだけのため初期費用が少額で、不動産仲介会社に仲介手数料を支払うのみです。

    借地の種類には「事業用定期借地権」「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」があり、基本的に10年~50年以上土地を貸し出さなければいけません。借地契約は借主の立場が強く保護されているため、中途解除など基本的にできないため、長期間土地が戻ってこないことになります。

    しかし、安定した収益が見込めたり土地の上に建物を建ててもらったりするため、節税対策が見込めます。

    メリット
    • 安定した収益が得られる
    • 維持管理費用がかからない
    • 初期費用が少額で済む
    • 節税効果が見込める
    デメリット
    • 賃貸経営より収益が低くなる
    • 長期間土地が戻ってこない
    向いている人
    • 遊休地を保有していたい人
    • 初期費用をかけたくない人
    • 土地活用を検討していない人

    高収益が期待できる活用方法

    遊休地で高収益を期待したい方におすすめの活用方法として「賃貸経営(アパート・マンション)」「オフィスビル・商業施設」があります。

    賃貸経営(アパート・マンション)


    賃貸経営とは、アパートやマンション、戸建て住宅を賃貸して家賃収入を得ることをいいます。賃貸経営をする場合は、賃貸業務(入居者募集、家賃集金、滞納金の督促、契約の更新業務、退去手続き、建物の清掃、建物のメンテナンス)は多岐に渡ります。これらの業務は管理会社に委託することも可能です。

    エリアの調査を行い需要がある場所で賃貸経営をすれば、高い収益性が見込めます。しかし、場所を間違えてしまうと、空室率が上がり収益が見込めません。その結果、賃貸経営が失敗してしまう恐れがあります。このような失敗を防止するためにも、賃貸経営のシミュレーションを行いましょう。

    メリット
    • 高い収益が見込める
    • 生命保険代わりになる
    • 節税効果が見込める
    • 損益通算できる
    デメリット
    • 初期費用がかかる
    • 建物のメンテナンスが必要になる
    • ローン返済リスクがある
    向いている人
    • 高い収益を見込みたい人
    • アクセスなど立地条件が良い土地を所有している人
    • 節税対策をしたい人

    オフィスビル・商業施設


    賃貸経営とは、オフィスや店舗のテナンス収入を得ることをいいます。駅近の土地であれば、テナントビル経営も視野に入れられます。また、郊外でも大型の駐車スペースが設けられる場合は商業施設として需要があるでしょう。

    オフィスビルや商業施設は建築費用が高くなりがちです。しかし、賃貸物件と比較すると高い賃料が設定できることが魅力です。オフィスビルであれば保証金が設定でき、約6ヵ月~12ヶ月分の賃料が契約時に受け取れます。

    しかし、オフィスやテナント、商業施設は景気で賃料が変動します。また、コロナ禍などの不測の事態で空室率が上がることもあるため、ビルやテナント経営する場合は専門家に相談して慎重に計画を練るようにしましょう。

    メリット
    • 高い収益が見込める
    • 建築基準の規定が住宅より厳しくない
    • 節税効果や相続対策ができる
    デメリット
    • 建築費用が高い
    • 景気に需要がされやすい
    • 空室リスクが高い
    向いている人
    • 駅近などビジネスマンが多くいる土地を所有している人
    • 多くの自己資金が用意できる人
    • 高い収益を見込みたい人

    その他の活用方法

    土地活用以外には「土地信託」や「土地売却」の選択肢もあります。

    土地信託

    土地信託とは信託銀行に土地を預けて活用してもらい、収益の一部を配当金として受け取る方法です。信託銀行が資金調達して賃貸やビルを建築して事業を運営し、収益から経費や信託報酬を差し引いた残りを配当金としてもらえます。

    どのような事業を行うかは信託銀行が決めるため、詳細に関しては打ち合わせが不要です。また、土地に建物を建ててくれるため節税効果が見込めます。

    しかし、信託契約の期間は10年~30年と長期になるため、将来的に売却したいなど計画がある方には不向きです。また、賃貸型の信託銀行は契約期間が終了したら、建物付きの土地をもらえます。しかし、ローンの残債も引き継がれてしまうため注意しなければいけません。土地信託を利用する場合は、信頼できる信託会社を選びましょう。

    メリット
    • 初期費用が不要
    • 賃貸経営に関する業務をお任せできる
    • 節税効果が見込める
    デメリット
    • 長期間、土地が戻ってこない
    • 契約終了時にローン残債が引き継がれる恐れがある
    • 信託会社選びは慎重に行わなければいけない
    向いている人
    • 初期費用なく賃貸経営を始めたい人
    • 賃貸経営に関する業務をお任せしたい人
    • 節税対策を検討している人

    土地売却


    土地売却とは遊休地を売却して現金化することをいいます。土地を手放すため、固定資産税や都市計画税を支払わずに済みます。また、現金化すれば相続人に振り分けやすくなることも魅力です。

    しかし、土地売却を検討しても即座に買主が見つかるとは限りません。また、自分が希望する価格で売れないこともあります。また、土地を手放すと収益を得る機会がなくなります。管理が負担となっており土地を手放したいと考えているなら、土地売却を検討してみても良いでしょう。

    メリット
    • 売却代金を得られる
    • 現金化すれば相続がしやすくなる
    • 固定資産税や都市計画税を支払わずに済む
    デメリット
    • 売却費用がかかる
    • 売却に時間がかかる
    • 収益の機会がなくなる
    向いている人 土地を手放したいと考えている人

    遊休地活用で知っておくべきポイント

    遊休地をどのように活用すべきか「立地条件」「土地形状」「周辺環境」「将来の計画」「初期費用」などで変わります。そのため、独断で判断するのではなく土地活用のプロに相談するようにしましょう。

    不動産会社やFP、金融機関など多くの相談先がありますが、統合サービスを提供している会社だと複合的に考えて具体的な提案をしてもらえます。依頼先を選ぶ場合は、以下の基準を参考にしてみてください。

    • 土地活用の実績を豊富に持っているか
    • 歴史が長く安定経営していて倒産リスクはないか
    • 質問に対して誠実に回答してくれるか
    • 市場調査からプラン計画まで全てをお任せできるか
    • お客様や取引先から信頼を得ている会社であるか

    まとめ

    遊休地(ゆうきゅうち)とは「遊ばせている」「休ませている」状態の土地をいいます。遊休地を所有している方は、土地活用の検討をおすすめです。その理由は、遊休地を所有しているだけで固定資産税・都市計画税の税金を負担しなければいけず、収益を得なければ単なる出費になってしまうためです。

    この記事では、高収益を見込みたい人向けや短期活用したい人向けなど、目的別に遊休地を活用する方法をご紹介しました。さまざまな土地活用方法がありますが、立地条件や周辺環境、オーナー様の意向などの観点から、どの活用方法が良いかを判断することが大切です。そのため、土地活用のプロに相談をしましょう。

    監修者情報

    税理士

    藤井 幹久

    Fujii Mikihisa

    マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

    相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

    税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

    税理士紹介はこちら

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