遺族年金はどのくらいもらえる?支給額や確認事項についてのまとめ

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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遺族年金とは

遺族年金の種類

遺族年金とは、亡くなった人のご遺族が受給できる公的年金です。
国民年金や厚生年金に加入している人、または過去に加入していた人が亡くなったとき、その人に生計を維持されていた遺族に対して支払われます。

遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」がある

遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類に分かれます。
「遺族基礎年金」は国民年金の加入状況に応じて支給される遺族年金であり、「遺族厚生年金」は厚生年金の加入状況に応じて支給される遺族年金になります。
厚生年金とは、社会保険に加入している事業所(会社など)に雇用された人で一定要件を満たす人が加入する年金であり、国民年金の上乗せという位置づけになります。
そのため、厚生年金に加入したことのある方であれば、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れる場合があります。

遺族年金をまったく受け取れない人もいる

ここまでのとおり、遺族年金は亡くなった人の公的年金の加入状況によって受け取れる可能性のある遺族年金の種類が異なります。
さらにそれぞれ異なる受給要件が定められているため、2種類の年金を受け取れる人もいれば、どちらか1種類のみ、あるいはまったく受け取れない人もいます。
また、亡くなった人と生計維持関係のあるご遺族(亡くなった人から生計を維持されていたご遺族)でなければ、どちらの遺族年金の受給者にもなりません。

生計維持関係とは

亡くなった人から生計を維持されていたご遺族にあたるかどうかは、次の2つの状況から判断します。

  • 亡くなった人と同一生計であったこと
  • 生前、同居をしていたご遺族や、別居のご遺族の場合は「仕送りなどで生計を支えてもらっていた」「健康保険の扶養親族であった」などの事実から判定します。

  • 年入が850万円未満であること
  • 亡くなった人から生計を維持されていたご遺族の前年の年収が850万円未満であることも必要です。
    ただし、亡くなった当時に年収850万円以上であっても、近いうちに退職や廃業の予定があるなどで、おおむね5年以内に年収が850万円未満となると認められる場合は要件を満たすとされています。

関連記事:【相続対策】3つの基本(相続税対策・納税資金対策・分割対策)を解説

支給される金額について

遺族年金を受給できる人の要件、受給できる金額や期間などを、遺族基礎年金と遺族厚生年金に分けて解説します。

遺族基礎年金

受給できる人の要件

遺族年金は、亡くなった人とご遺族がそれぞれ要件を満たしていなければ受給することができません。
遺族基礎年金を受給できる要件は、下記のとおりです。

【遺族基礎年金の受給要件】

亡くなった人 次の1~4のいずれかの1つの要件を満たすこと

  1. 国民年金の被保険者が死亡した
  2. 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた人が死亡した
  3. 老齢基礎年金(いわゆる年金)の受給権者が死亡した
  4. 老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡した
ご遺族 亡くなった人に生計を維持されていた次のいずれかのご遺族

  • 一定年齢以下の子がいる配偶者
  • 一定年齢以下の子

「一定年齢以下の子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある子のことです。
一般的に、高校卒業までの子が該当します。
子が障害年金の障害等級1級または2級にあたる場合は、20歳未満まで対象になります。

遺族基礎年金の受給額の計算式(令和4年4月~)

受給者 受給額 子の加算額
子のある配偶者 777,800円+子の加算額
→「子の加算額」は、子の人数に応じて変わります。(右欄参照)
  • 1人目 22万3,800円
  • 2人目 22万3,800円
  • 3人目以降
    1人あたり7万4,600円
777,800円+2人目以降の子の加算額
→上記を子の人数で割った額が、1人あたりの受給額になります。

受給期間

子が18歳になった年度の3月31日に到達するときまで(障害等級1級・2級に該当する障害の状態にあるときは、20歳に到達したときまで)受給することができます。
なお、上記の他にも受給権を失うケースがあります。
下記を参考にしてください。
日本年金機構HP:遺族年金を受けている方が結婚や養子縁組などをしたとき
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/izoku/jukyu/20140421-19.html

遺族厚生年金

受給できる人の要件

【遺族厚生年金の受給要件】

亡くなった人 1~5のいずれかの1つの要件を満たすこと

  1. 厚生年金保険の被保険者が死亡した
  2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡した
  3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている人が死亡した
  4. 老齢厚生年金の受給権者が死亡した
  5. 老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡した
ご遺族 亡くなった人に生計を維持されていた以下のご遺族で、もっとも順位の高い人

  1. 妻・55歳以上の夫・一定年齢以下の子
  2. 55歳以上の父母
  3. 一定年齢以下の孫(年齢は子と同じ)
  4. 55歳以上の祖父母

もっとも優先順位の高い「妻・55歳以上の夫・一定年齢以下の子」は、妻のみ年齢制限がありません。
このうち、子のある妻・子のある55歳以上の夫は、もっとも優先されます。
子は、18歳になった年度の3月31日まで(障害年金の障害等級1級または2級にあたる場合は、20歳未満まで)が対象になります。

受給額の計算式(令和4年4月~)

【遺族厚生年金の受給額】
亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分×4分の3

【老齢厚生年金の報酬比例部分】
「老齢厚生年金の報酬比例部分」は、厚生年金保険料の算定基礎となる「標準報酬月額」や「標準賞与額」の平均から計算されます。
計算式は「平成15年3月以前の加入期間」と「平成15年4月以降の加入期間」で変わります。

・平成15年3月以前の加入期間
平均標準報酬月額(※1)×7.125/1,000×平成15年3月までの加入月数

・平成15年4月以降の加入期間
平均標準報酬額(※2)×5.481/1,000×平成15年4月以降の加入月数
(※1)…各月の標準報酬月額の総額を加入期間で割ったもの
(※2)…各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を加入期間で割ったもの

・亡くなった人の被保険者期間が300月(25年)未満の場合
上記の【遺族厚生年金の受給要件】で、亡くなった人が条件1~3に該当し、かつ、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合、300月とみなして計算します。
たとえば厚生年金の被保険者期間が200月の場合、年金額が「300月/200月」倍になるという意味です。

受給期間

受給開始から終了の時期は、遺族厚生年金を受給するご遺族によって変わります。
注意点のあるご遺族は、次のとおりです。

・子のない30歳未満の妻
年金を受け取る権利を得てから5年間のみ受給できます。

・夫、父母、祖父母
受給開始は60歳からです。
ただし遺族基礎年金を受給する夫は、それよりも前から受給できます。

・子、孫
子が18歳になった年度の3月31日(障害等級1級・2級に該当する障害の状態にあるときは、20歳)に到達するまで受給できます。

・その他
他にも受給権を失うケースがあります。
下記を参考にしてください。
日本年金機構HP:遺族年金を受けている方が結婚や養子縁組などをしたとき
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/izoku/jukyu/20140421-19.html

その他確認事項について

遺族給付制度について

遺族年金の制度で知っておきたいのが国民年金(遺族基礎年金)からの独自給付である「寡婦年金」と「死亡一時金」です。
国民年金の第1号被保険者(自営業者など)として保険料を納めた人が年金を受け取らないまま死亡した場合、遺族が受給できる可能性があります。
寡婦年金と死亡一時金は、どちらか一方しか受給できません。

寡婦年金とは

寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者(自営業者など)として保険料を納めた人が年金を受け取らないまま死亡した場合、死亡時に生計を維持されていた妻が60歳から65歳になるまでの間に受給できる年金です。

【受給要件】

亡くなった夫
  • 生前に老齢基礎年金・障害基礎年金を受けていないこと
  • 第1号被保険者として保険料納付済みの期間と保険料免除期間が合計10年以上あること
  • 夫婦の婚姻期間が10年以上継続していること(事実婚を含む)
  • 夫によって生計を維持されていたこと
  • 65歳未満であり、年金の繰り上げ支給を受けていないこと

【受給額】
夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3を受給することができます。

【計算式(令和4年4月~)】
777,800円×(夫の第1号被保険者期間)/480月×4分の3

死亡一時金とは

死亡一時金とは、国民年金の第1号被保険者(自営業者など)として保険料を納めた人が年金を受け取らないまま死亡した場合、死亡時に生計を維持されていた一定の遺族が受給できる一時金です。

【受給要件】

亡くなった人
  • 生前に老齢基礎年金・障害基礎年金を受けていないこと
  • 第1号被保険者として保険料納付済みの月数が36月以上あること(一部免除された期間は免除された割合を乗じて数える。例:半額納付月→2分の1月で数える)
ご遺族
  • 遺族基礎年金を受けられる遺族がいないこと
  • 死亡した人と同一生計であった①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹のうち、もっとも高順位の者であること

【受給額】
12万円~32万円です。保険料を納めた月数に応じて変わります。

保険料納付月数 死亡一時金の額
36月以上180月未満 12万円
180月以上240月未満 14.5万円
240月以上300月未満 17万円
300月以上360月未満 22万円
360月以上420月未満 27万円
420月以上 32万円

(※)死亡した人が付加保険料を36月以上納めていれば、上記に+8,500円。

遺族年金は非課税

遺族年金は遺族基礎年金・遺族厚生年金ともに非課税です。
所得税や住民税、相続税などの税金は課税されません。

離婚・別居の配偶者について対象かどうか

離婚の場合

離婚した元配偶者が遺族年金の受給権を得ることはできません。
ただし、子は受給できる可能性があります。
なお、事実婚関係にある人も遺族年金を受給できる可能性があります。

別居の場合

生計を維持されていれば受給できる可能性があります。
別居の場合、仕送りの有無、健康保険の扶養親族かどうかといった点から判定されます。

まとめ

遺族年金について、遺族年金の種類、それぞれの受給要件、受給できる金額などを解説しました。
遺族年金の請求手続きには、時効があります。
遺族基礎年金・遺族厚生年金や寡婦年金は死亡日の翌日から5年、死亡一時金は2年です。
時効を過ぎてしまうと請求できません。
しかし、ご家族が亡くなられると他にも葬儀の手配や相続の手続きなど、やらなければならないことが非常に多く、すべての手続きを漏れなくすすめることは困難です。
ご家族の死亡後の手続きや相続に不安がある方は、相続の専門家に相談しましょう。
マルイシ税理士法人においても、お客様の相続手続きをご支援することができます。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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