相続税還付とは?払い過ぎた税金が返金される条件や申請期限・手続き方法を解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

【執筆者:税理士・藤井幹久】

相続税を納め過ぎていた場合、一定の手続きをすることで払い過ぎていた税金を取り戻すことができます。
ただ還付手続きには期限があり、請求書の記載内容や添付書類に不備・不足があると税金を返してもらえませんので、本記事で相続税が還付されるケースと、払い過ぎた相続税を取り戻す際の手続き方法について解説します。

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相続税還付とは

相続税を本来の納付すべき額より多く税金を支払っていた場合、還付手続きをすることで払い過ぎた相続税の還付が受けられます。

相続税還付の定義と概要

相続税還付は、相続税の申告内容を確認し、払い過ぎた部分の相続税を返してもらう手続きです。
提出した申告内容に誤りが発覚した場合、申告期限内であれば訂正申告書を提出すれば申告内容が上書きされ、払い過ぎていた相続税額は過誤納金として税務署から返金されます。
申告誤りに気が付いたのが申告期限後のときは、更正の請求書を提出することになり、税務署が請求内容を認めた場合に払い過ぎていた相続税が還付されます。

相続税還付の対象となるケース

相続税還付を受けられるのは、提出した申告書より相続税の納税額が減るケースです。
相続税は相続財産の評価額を個々に計算しなければならず、計算誤りにより評価額が過大に算出されることがあります。
相続財産の中でも土地の相続税評価額の計算は特に難しく、税理士であったとしても相続税を専門としていない事務所では、適切な評価額を算出できないことも珍しくありません。
相続税の申告書を提出しただけで税金が還付になるケースは、贈与税の相続時精算課税制度を適用し、贈与税を納めていた場合です。

相続時精算課税制度は贈与税の特例で、相続時には贈与財産を相続財産に含めて計算することになります。
贈与税を納めているときは算出された相続税額から差し引くことができますが、相続税額よりも納付した贈与税額の方が多い場合には、相続税の申告書を提出することで差額の還付を受けられます。

相続税の還付手続きを行うメリット

相続税還付のメリットは、払い過ぎた相続税が戻ってくる点です。
相続税は納税額が大きく、土地等の評価誤りを直しただけで数十万円から数百万円の還付金が発生することもあります。
過大に納付していた相続税を返してもらうだけなので、更正の請求書を提出したとしても税務署に悪い印象を与えることはありません。
更正の請求が認められなかったとしても、納税額の増加や罰則を受ける心配がないため、相続税の還付が見込めるケースでは、更正の請求書を提出してみるのも選択肢の一つです。

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相続税還付の条件と期限

相続税還付を受けることができるのは相続税を多く支払った場合に限られ、手続きできる機関にはタイムリミットがあります。

相続税の払い過ぎが発生する要因

相続税の払い過ぎが発生する主な要因は、相続税の申告書はボリュームが多く、評価誤りや計算ミスが起こりやすい点です。
相続税は亡くなった人の財産に対して課される税金ですので、相続財産が多ければその分だけ計算する量も多くなります。
専門知識がないと財産ごとの評価額を適切に算出するのが難しいですし、土地については所在地や形状等を考慮する必要があり、評価対象地の状況次第では高度な専門知識が求められます。
また相続税は所得税とは違い、何度も作成する機会がありませんので、申告書作成が不慣れなことも申告内容に誤りが起きやすい理由です。

還付を受けるための必要条件

相続税の還付を受けられるのは相続税を支払った人のうち、提出した相続税の申告内容に誤りがある場合です。
主な相続財産が現金・預貯金のみであれば、相続財産を評価するのはそこまで難しくないため、税額計算のミスが無ければ相続税を過大に納めている可能性は低いです。
相続税の申告内容に誤りがあったとしても、元々の相続税の納税額がゼロであれば、評価誤りを訂正しても還付される金額は発生しません。

相続税還付の期限

相続税還付を受けるためには、更正の請求書を提出することになりますが、提出期限は原則相続税の申告期限から5年以内です。
相続税の申告期限は相続開始日の翌日から10か月以内ですので、相続開始日から計算すると更正の請求書の提出期限は5年10か月後となります。
例外的なケースとして、裁判等で遺産分割の内容が確定したなど、後発的理由などにより更正の請求を行う場合には、それらの事実が生じた日の翌日から2か月または4か月以内であれば更正の請求書を提出することができます。

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相続税還付の手続き方法について

相続税還付を受けるためには、更正の請求書だけでなく、請求内容に応じて必要書類を添付する必要があります。

相続税還付の手続きの流れ

相続税還付を受ける場合、管轄税務署に対して更正の請求書を提出します。
税務署は提出した請求書を確認し、請求内容を認めた場合には相続人に対して更正通知書を送付し、1〜2か月後に指定した口座に振り込まれます。
更正の請求書を提出してから還付を受けるまでには、3か月以上かかることもあるので、払い過ぎていた相続税をすぐに返してもらうことはできません。

相続税還付の手続きに必要な書類

更正の請求書には、評価額等を見直した場合における相続税額だけでなく、更正の請求をするに至った経緯を記載し、関連する書類を提出することになります。
添付書類が不足しているだけでも請求内容が認められず、払い過ぎた税金は戻ってきませんのでご注意ください。
添付すべき書類は更正の請求書を提出する理由によって違いますが、土地の評価誤りで相続還付手続きを行うのであれば、正しい土地の評価額を算出するのに用いた測量図や写真等の添付は必須です。

相続税還付事例と成功パターン

相続税還付は条件が揃っていないと受けることはできません。

相続税還付を成功させるために知っておくべきこと

相続税還付が成功する主なパターンは以下の3つです。

  • 相続財産の評価誤り
  • 税額の計算誤り
  • 特例制度の適用誤り

成功パターンに共通しているのは、専門家が提出した申告書を再度見直す必要がある点です。
相続税還付は納め過ぎていた税金を戻すだけですので、還付される材料がなければ還付手続きを行うことはできません。
相続人の人数の数え間違えや債務の計上漏れであれば、更正の請求が認められる可能性が高いですが、評価誤りについては根拠となる証拠書類の添付は不可欠です。

更正の請求書は税務署がチェックしますので、更正の請求書の内容に不備がある場合や添付書類が不足している場合、更正の請求が認められないこともあります。

当事務所の相続税還付事例

マルイシ税理士法人は不動産専門の税理士事務所であるため、不動産に関連した相続税還付が多いです。
土地評価は土地の利用用途に応じて個々に評価しなければいけませんが、一つの土地に自宅と貸付アパートなどがある場合、一体評価してしまっているケースがあります。
評価単位ごとで計算すれば形状補正の適用で評価額を下げることができますし、貸付不動産であれば、利用用途に応じた補正計算をすることで評価額を更に抑えられます。
斜面にある土地や道路との間に段差がある土地については、減額補正の適用が漏れていることも多いので、土地の相続税評価額に少しでも違和感がある場合には、当事務所にご相談ください。

まとめ

相続税還付の対象になるかは、提出した相続税の申告書を確認してみないと判断ができません。
土地の相続税評価額は過大に算出されていることが多いので、申告書を提出してから5年以内の場合は、今一度申告内容をご確認ください。

相続税還付にまつわるQ&A

Q1.相続税還付の対象となるケースは

相続税還付が発生するのは、相続税を納め過ぎていた場合です。
提出した相続税の申告内容に誤りがあり、申告内容を直すことで納税額が減少するときは、更正の請求書を提出することで差額の相続税が還付されます。

Q2.相続税還付は専門家に依頼すべきなのか

相続税還付の手続きは相続人のみで行うことも可能ですが、手続きする際には申告書の再計算だけでなく、相続税還付が発生する根拠と証拠書類の提出が不可欠です。
不足書類があるだけでも請求が認められないケースもありますので、相続税還付手続きについては専門家に依頼することを推奨します。

Q3.相続税還付手続きを依頼する税理士の選び方

相続税は数ある税金の中でも特に専門性が高い税金ですので、相続税還付手続きを依頼する際は、相続税を専門とする税理士に依頼するのが望ましいです。
相続税還付が発生する主な要因は土地の評価誤りですので、相続財産に不動産がある場合は不動産専門のマルイシ税理士法人にご依頼ください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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