遺産分割とは?相続との違いや遺産分割方法について解説
目次
遺産分割とは?
はじめに「相続」と「遺産分割」という言葉の意味を定義したいと思います。この2つの言葉の違いを知っておくと、相続関連の知識を理解しやすくなります。
相続と遺産分割の違い
相続
被相続人(故人)から相続人(配偶者・子・孫など)が相続財産を受け継ぐことです。
遺産分割
複数の相続人がいるときに相続財産を一旦共有のものとし、その後、当事者同士で話し合って「誰が・どの財産を受け継ぐか」わけ方を決めることです。とりわけ、「遺言が遺されているか否か」が重要になります。
複数の相続人がいても遺言がある場合は、故人の意思が尊重されるため、遺産分割協議(当事者同士の話し合い)は必要ありません。
遺言が遺されていても、相続人全員が話し合って納得すれば、遺言と違う形で遺産分割をすることも可能です。
遺言が遺されていない場合は、遺産分割協議を速やかに行って、それぞれの相続人がどの相続財産をどれくらい受け継ぐかを明確にするのが望ましいです。
相続時の遺産分割の種類
相続人同士で話し合って相続財産をわける方法には、次の4つの種類があります。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
- 共有分割
これらについてはどれを選択するとメリットが大きいという類いのものではありません。状況に合った種類を選択することが大切です。
現物分割:財産項目ごとに遺産分割
現物分割は「現物=財産項目」ごとに相続財産をわける方法です。たとえば、自宅は長男、東京にある賃貸マンションは長女、大阪にある賃貸マンションは次女が受け継ぐといった内容です。「誰がどの相続財産を受け継ぐか」がシンプルでわかりやすいため、一般的な相続でよく使われる方法です。
換価分割:相続財産を金銭的価値に換えて遺産分割
換価分割は「換価=相続財産をお金に換えて」わける方法です。現物分割をした場合、たとえば長女が受け継ぐ賃貸マンションの価値が3,000万円、次女が受け継ぐ賃貸マンションの価値が1,500万円といった具合に不公平になるケースがあります。
そのため、相続財産を一旦お金に換え、遺産分割で取り決めた割合に応じてわけることで不公平感が生まれにくくなります。先の例でいえば、2つのマンションを売却して4,500万円にして、長女と次女が公平にわけるといったやり方です。
換価分割についてさらに詳しく知りたい方は、「換価分割とは?メリットやデメリット・遺産分割協議書への記載方法を解説」を御覧ください。
代償分割:金銭などで代償して遺産分割
代償分割は「代償=代わりのものを提供して」遺産をわける方法です。たとえば、長男が5,000万円の価値の自宅、長女は3,000万円の賃貸マンションを受け継ぐ場合、長男と長女の間に不公平感が生まれます。
この不公平感を解消するため、長男が長女に対して現金を支払う形で遺産分割するような形が代償分割です。
代償分割についてさらに詳しく知りたい方は、「代償分割とは?遺産分割の方法や相続税の計算方法もわかりやすく解説」を御覧ください。
共有分割:複数の相続人で共有して遺産分割
共有分割とは、複数の相続人が1つの相続財産を共有する形で遺産をわける方法です。たとえば、相続人の1人が「どうしても自宅を売りたくない」と主張した場合、それぞれの相続人が持ち分を決めて自宅をわけるようなやり方です。
ただし、共有分割は相続トラブルのリスクがあります。なぜなら、共有財産は相続人1人の意思では利用や処分ができないからです。とくに期間が経つと、持分が相続人から子や孫に受け継がれるため権利関係が複雑になりトラブルが起こりやすくなります。
相続時の遺産分割手続きの種類
遺産分割の手続きには次の3種類があります。
- 遺産分割協議
- 遺産分割調停
- 遺産分割審判
当事者同士の話し合いが不調に終われば、「1.遺産分割協議、2.調停、3.審判」の順に進んでいくのが一般的です。
1.遺産分割協議(当事者同士の話し合い)
被相続人が遺言書を遺していない場合、相続財産は民法に定められた割合で相続することになります。ただし、民法では具体的に「どの相続財産を誰が継承するか」まで規定しているわけではありません。そのため、相続人全員で相続割合に応じて受け継ぐ遺産を決めていく必要があるわけです。この当事者同士の話し合いが遺産分割協議です。
話し合った結果、相続人全員が納得すれば「遺産分割協議書」といわれる書面でその内容を証拠の意味で残すのが得策です。
2.遺産分割調停(法律の専門家を交えた相続人同士の話し合い)
遺産分割調停とは、調停委員(裁判官と2名の調停委員から成る)に仲立ちをしてもらって相続人同士で話し合って解決する方法です。遺産分割協議で話し合った結果、相続人同士の合意がとれないケースもあります。その場合、調停の場を借りて解決するのが一般的です。
遺産分割調停では裁判のような形式ではなく、調停委員と相続人がテーブルを囲んで話し合います(別室も可)。その結果、合意に至れば話し合いの内容をもとに調停調書が作成されます。ちなみに、調停調書は裁判の確定判決と同じ効力があるものです。
遺産分割調停を行っても相続人全員の合意に至らない場合、「再度調停を行う」または「審判に進む」いずれかの選択があります。
3.遺産分割審判(裁判所が遺産分割の内容を決める)
遺産分割審判は、家庭裁判所が遺産分割の内容を決めるやり方です。審判に至る過程、関連資料、それぞれの当事者の主張などをもとに裁判所が具体的に遺産分割方法を指定します。
この審判の内容に対して当事者が異議を唱えなければ確定となり、法的拘束力を持ちます。不服がある場合は「即時抗告」で意思を示す必要があります。
相続の遺産分割を行う流れ
遺産分割に決まった流れはありませんが、次の手順で進めていくケースが多いです。
1.遺言があるかどうかを確認する
なお、遺言の存在が重要なのかというと、被相続人(故人)が遺言を遺している場合、その内容を尊重するのが原則だからです。そのため、遺言が遺されていれば遺産分割協議の必要はありません。
2.相続財産と相続人を明らかにする
遺言が遺されていない場合は、遺産分割協議を行う必要があります。
ただし、相続財産の項目と価値が整理されていなければ、相続人同士でいくら話し合っても遺産分割協議を進めるのは難しいでしょう。まずは相続財産をリストアップし、必要に応じて相続財産の価値を専門家に算出してもらいましょう。
併行して、早い段階で相続人を明らかにするのも重要です。遺産分割協議がまとまっても、新たな相続人が現れれば無効になってしまいます。
3.相続人同士で遺産分割協議を行う
遺産分割協議では、相続人全員の同意が必要です。ただし、これは相続人全員で同じテーブルで話し合わなければならないということではありません。協議に参加できない相続人がいても、最終的に同意がとれれば問題ありません。
4.決まった内容を「遺産分割協議書」にまとめる
相続人全員で同意した内容については、遺産分割協議書として保管するのが賢明です。これにより、後日、水掛け論になるようなトラブルリスクを回避できます。なお、相続財産に不動産が含まれる場合は、相続手続きに遺産分割協議書が必須となります。
関連記事:遺産分割協議書の書き方とは?作成の流れと注意すべきポイント
5.遺産分割が決まらない場合は調停・審判へ
遺産分割協議が不成立に終わった場合は、前項で解説した「調停」を行い、それでもまとまらなければ「審判」に進んで解決を目指します。
まとめ
ここでは、遺産分割協議の種類・手続き・流れについて解説してきました。その内容を振り返ってみましょう。
「相続」と「遺産分割」は違います。「相続」とは被相続人から相続人が遺産を受け継ぐことです。「遺産分割」とは(遺言がない場合で)複数の相続人がいるときに相続財産をどのようにわけるか決めることです。
相続時の遺産分割には次の4種類があります。適切な種類を選びましょう。
- 現物分割:財産項目ごとに遺産分割
- 換価分割:財産を金銭的価値に換えて遺産分割
- 代償分割:金銭などで代償して遺産分割
- 共有分割:複数の相続人で共有して遺産分割
遺産分割の手続きには次の3種類があります。「1.遺産分割協議、2.調停、3.審判」の順に進んでいくのが一般的です。
- 遺産分割協議:当事者同士の話し合い
- 遺産分割調停:法律の専門家を交えた当事者同士の話し合い
- 遺産分割審判:裁判所が遺産分割の内容を決める
遺産分割を行う一般的な流れは次の通りです。
- 遺言があるかどうかを確認する
- 相続財産と相続人を明らかにする
- 相続人同士で遺産分割協議を行う
- 決まった内容を「遺産分割協議書」にまとめる