相続争いの原因とケース別の対処法まとめ〜相続争いを起こす人の特徴も解説〜

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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将来の相続争いを防ぎたい人はもちろん、「我が家は相続争いと無縁」という人にも一読していただきたい内容です。

相続トラブルは「家族の仲が良い悪い」「相続財産が多い少ない」に関わらず起こるものです。

ここでは相続争いが起こる原因と対処法、さらには相続を起こす人の特徴などを解説していきます。

まずは、相続争いになるポイントを抑えよう

相続争いには、起きやすいポイントがあります。これを知っておくと、トラブル回避をしやすくなります。

遺言書が残っている場合の相続争いのポイント

相続が発生したとき、「遺言書があるか否か」で相続の流れが大きく変わってきます。遺言書がある場合、故人の意思を尊重して相続を進めるのが基本です。ただし、配偶者や子などの法定相続人には、民法で定められた「法定相続分(相続割合)」を主張する権利があることにも留意しましょう。

上記の流れのなかで相続争いが起きやすいポイントはこちらです。

  • その遺言書は本物か
  • (本物だとして)遺言書に効力があるか
  • 法定相続人の範囲はどこまでか
  • 法定相続分がどこまで主張できるか

 など

遺言書がない場合の相続争いのポイント

遺言書がない場合、「法定相続分に沿って相続財産を分ける」のが基本です。この法定相続人同士の話し合いを遺産分割協議といいます。

上記の流れの中で相続争いが起きやすいポイントはこちらです。

  • 誰がどの相続財産を引き継ぐか
  • 相続財産(不動産や絵画など)の評価額は適切か
  • 把握していない法定相続人がいないか
  • 寄与分(次項でくわしく解説)が主張できるか

 など

相続争いの原因とケース別の対処法について

一口に相続争いといっても実にさまざまな原因があります。ここではよくある5つの原因とケース別の対処法について解説します。

ケース1.遺言書に問題がある場合

相続争いを回避するための遺言書そのものがトラブルの原因になることもあります。たとえば、被相続人(故人)の文字とは思えない遺言書が遺されている場合、遺言書の内容が不明確な場合、あるいは、遺言書の体裁が法的に有効か疑わしい場合などです。

いずれのパターンでも、遺言書が原因の相続争いは深刻なトラブルに発展しやすいといえます。だからこそ、早い段階で弁護士などの専門家を交えながら粘り強く話し合っていく対処が求められます。

ケース2.誰がどの財産を受け継ぐかで争う場合

「誰がどの財産を受け継ぐか」遺産分割協議でもめるケースもあります。具体的には、相続財産が自宅くらいしかないのに相続人が複数いる場合、あるいは、相続人の人数が多すぎて整理できない場合などが相続争いに発展しやすいです。

このケースの対処法としては、相続財産をそのままの形で分割する「現物分割」にこだわらず、さまざまな分け方を検討するのがよいでしょう。具体的には、不公平な部分を埋めるためにお金などを提供する「代償分割」、相続財産を一旦お金の価値に換えてそれを相続人で分ける「換価分割」、複数の相続人で相続する「共有分割」などがあります。

ケース3.見知らぬ兄弟姉妹が存在する場合

被相続人が以前結婚していた夫・妻との間にいた子から突然、法定相続分を主張されるようなこともあります。とくに故人に別の子がいたことを今のご家族が知らなかった場合、すぐに主張を受け入れ難いことが多いので相続争いに発展しやすいです。

とはいえ、被相続人の元妻または元夫の子もほかの子と同様、法定相続分を主張できます。この主張を頑なに拒めば、深刻な相続トラブルになりかねません。弁護士などの専門家を交えながら、法律に沿って冷静に話し合うことが大切です。

ケース4.相続人などが寄与分を主張した場合

「被相続人が生前の間ずっと介護をしてきた」などの理由で、その寄与分を考慮して相続財産を計算してほしいと相続人が主張するようなケースもあります。

寄与分の主張は相続人にのみ認められていますが、実際にどこまでが寄与分か判断しにくいため、相続争いに発展しやすいです。だからこそ、寄与分で相続トラブルになりそうなときは、早めに弁護士などの専門家に相談するのが無難です。

なお、2019年7月より相続人以外が寄与分の対価を請求できる「特別寄与料制度」がスタートしています。ただし、これは寄与分の主張でなく、寄与分の対価を請求できる制度という点に注意しましょう。

ケース5.生前贈与を多く受け取っていた相続人がいる場合

被相続人が生前の間、相続人のうち特定の人が「生前贈与」を多く受け取っていたため(これを「特別受益」という)相続争いに発展するケースもあります。

ほかの相続人からすれば、その生前贈与がなければ相続財産がもっと多かった可能性もあるため、納得できないという主張になりやすいです。

対処法としては特別受益を鑑みて、各相続人の相続分を計算して相続財産を分ける方法があります。とはいえ、どこまでの範囲が特別受益になるか判断が難しい面もあるため、相続を得意にする弁護士などに計算や調整を依頼するのが賢明です。

相続争いを起こしやすい人の特徴とは?

相続争いを起こしやすい人にはいくつかの特徴があります。これらをひとまとめにすると「我が家は相続トラブルと無縁」という過信です。いずれも相続の専門家を交えて事前対策を行うことで無用な相続争いを避けられます。

自己流の遺言書を作ってしまう人

相続争いを避けるための遺言書が、逆にトラブルの火種となるケースは数多くあります。その典型が「遺言書さえあればよい」という感覚で自己流の遺言書を作ってしまう人です。

被相続人の直筆で作成する「自筆証書遺言」には、法的に効力を持つ記載方法や体裁があります。たとえばこんな不備があると効力のない遺言書になる可能性が高いです。

  • 相続財産の内容や分け方があいまい
  • 作成日の記載がない(または途中で省略されている)
  • wordなど文書ソフトで作成されている

 など

相続対策を考えようとしない人

「自分が死んだ後のことなんか考えたくない」そんな考えから相続対策を一切しない人もいます。その結果、苦労するのは遺された家族です。相続対策がされていなかったために、仲の良いご家族が険悪になるのが相続争いの典型パターンです。

相続財産が自宅くらいだから大丈夫という人

相続財産が少ないから相続争いが起きないというのは思い込みです。むしろ分配する財産がないから「少ない財産をどう分けるか」で揉めるケースも数多くあります。相続財産が自宅のみで相続人が複数いる場合は要注意です。

相続争いを防ぐために余裕をもって行動しよう

相続争いを防ぐためには「(被相続人となる人が)生前の相続対策」と「相続が発生した直後の初動」の2つが大事です。これらをしっかり進めることで結果的に相続税対策にもなります。

相続争いを避けるための「生前の相続対策」

相続財産の確認

相続対策は「どんな相続財産があるか」を把握することから始まります。確認した相続財産は目録としてまとめて一定期間ごとに更新するのが理想です。

遺言書の作成

財産目録の作成とともに遺言書の作成も進めましょう。理想は法律の専門家のアドバイスに沿って作成できる「公正証書遺言」です。一方、ご自身の自筆で作成する「自筆証書遺言」は不備が出やすいため、弁護士や司法書士などの専門家のアドバイスに基づき進めるのが賢明です

相続争いを避けるための「相続が発生した直後の初動」

遺言書の有無の確認

「遺言書が残されているかどうか」で相続手続きの流れは大きく変わってきます。そのため相続が発生したとき、遺言書の有無を早めに確認しておくとその後の手続きがスムーズです。

法定相続人の確認

「法定相続人が誰か」を早い段階で整理しておくことも大切です。これは被相続人の戸籍謄本をもとに整理するのがセオリーです。

「相続税を払う可能性が高いかどうか」も生前の間に確認すべき

相続争いを防ぐための手段について、税理士の立場から補足したいと思います。

相続対策では「相続税を払う可能性が高いかどうか」も大事なポイントになってきます。相続税が発生する可能性が高い場合、被相続人となる人が生前のうちに適切な形で生前贈与を進めることが一番の相続税対策になります。

ただし、特定の子などに生前贈与が偏れば、相続争いの原因になりかねません。関係性を考慮しながら、公平な生前贈与になるよう配慮することが大事です。

また、相続争いの原因になりそうな形のある財産をお金に変えておくなどの施策も必要でしょう。こういった相続税対策は、相続に強い税理士に相談・依頼するのが確実です。

顧問税理士がいらっしゃらない人は、私が所属しているマルイシ税理士法人の無料相談をご利用ください。そもそも「相続税を払うのかどうかがわからない」という人もお気軽にご相談ください。

まとめ

ここでは、相続争いの原因とケース別の対処法などをテーマに解説してきました。

相続争いにはさまざまなケースがありましたが、共通するのは専門家(弁護士や税理士など)を交えて解決策にあたることです。相続トラブルに発展してからでは専門家といえども対処法が限られます。早い段階で相談するほど手数が増えますし、また相続人の無用なストレスも軽減できます。

この解説のなかで一番皆さんに伝えたいことは、「相続争いはどのご家庭にも起こる可能性がある」ということです。ご家族の仲が良い悪い、相続財産が多い少ないは関係ありません。このことを意識するかどうかだけでも、相続対策の結果が大きく変わってくるはずです。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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